• 更新日 : 2024年4月3日

サイト譲渡契約とは?サイト売買時に定めるべき基本事項を解説

サイト譲渡契約は、ウェブサイトの売買をするときに取り交わす契約です。ウェブサイトを使った事業を譲り渡す行為も事業譲渡の一種であり、重大な権利義務の移転が行われますので、契約書にて取り決めを明確に定めておく必要があります。

このサイト譲渡契約書に記載すべき基本事項について解説していきますのでぜひ参考にしてください。

サイト譲渡契約書とは?

「サイト譲渡契約」とは、ウェブサイトを譲渡するときの契約です。「サイト売買契約」「Webサイト譲渡契約」など表現方法は様々ですが、いずれもウェブサイトそのものとそれに係る事業、附随する権利義務関係を他人に譲渡する契約締結において取り交わされます。

ウェブサイトを使った事業はマネタイズの手法としてもよく採用されるため、サイト譲渡契約は①個人-個人②個人-企業③企業-企業、などと当事者関係にも色んなパターンがあります。ウェブサイトを使った事業の内容も多種多様で、オンラインショップを運営しているサイトもあれば、情報誌として広告収入を得ているサイトなどもあります。

M&Aなどと並んで紹介されるときの一般的な事業譲渡ほどではないにしろ、サイト譲渡契約でも大きな金銭が動くことが多いです。小規模で収益性がそれほど高くないウェブサイトでも数十万円以上、安定的な収益が得られるウェブサイトであれば中程度の規模でも数百万円以上は対価として必要になります。

大きな契約であるため、簡易な方法で約束を取り交わすわけにはいきません。さらにはウェブサイトに附随する権利義務関係も複雑に絡み合ってきます。そこで通常、サイト譲渡契約書を作成し、慎重に手続を進めていきます。

ウェブサイト売買の譲渡の対象は?

ウェブサイトを売買するとき、当然ウェブサイトが譲渡の対象となりますが、これは具体的に何を指しているのでしょうか。動産や不動産のような目に見えるものではないため、契約書においても譲渡対象を明確化しておく必要があります。

URLを指定してどのウェブサイトであるかを明確にしたうえで、当該サイトに関するすべての「プログラム」「デザイン」「パスワード」などの情報が譲渡対象であることは示す必要があるでしょう。

どこまでを譲渡対象とするかは当事者が自由に決められますが、譲り受けた後で不自由なく運営を続けられるようにするには広範な権利義務、情報を譲渡対象にする必要があります。そこで、さらに当該サイトに関するすべての「取引情報」「知的財産権」「契約上の地位」も譲渡するのが一般的です。

サイト譲渡契約書のひな形(無料テンプレート)

サイト譲渡契約書を自身で作成する場合は、テンプレートを利用すると効率的です。マネーフォワードではサイト譲渡契約書(ホームページ譲渡契約書)のワード形式テンプレートを無料で配布しているので、下記リンクからダウンロードしてお使いください。

テンプレートは一般的な項目で作成されているため、自身の取引に応じて項目を調整して活用ください。

サイト譲渡契約書に記載する主な条項

契約書の表題はどのように付けてもかまいませんが、何の契約について記したものか一目でわかるように設定しましょう。また、前文にて当事者や契約内容を明記しておくと読み進めやすくなります。

さらにその際、「甲」「乙」「対象サイト」「本件事業」などの定義もしておくと条文がすっきりして見やすくなります。定義すべき事項が多い場合は冒頭の条文にて定義事項を列挙してもよいでしょう。

以下ではこのサイト譲渡契約書に記載すべき主な条項について、いくつか紹介していきます。

譲渡対象

最初に譲渡対象となるサイトを分かりやすく記載しておきましょう。サイトタイトルとURL(「https://www.○○.com/」などの形式で記載)を示し、これを「○○年○○月○○日に譲渡する」と示しておきます。

そのうえで、具体的な譲渡対象となる資産・契約上の地位を列挙していきます。後に争点となる危険性の大きな事項ですので、できる限り具体的かつ明確に記載していきましょう。

「対象資産」としては、プログラム等の情報、ドメインの使用に関する権利、知的財産権、その他一切の取引情報などを挙げるケースが多いです。

「契約上の地位」としては、ドメインやサーバーに関する契約、対象サイトにアクセスしてくるユーザーとの契約、広告を掲載しているときは広告主との契約などを具体的に挙げて、これら契約上の地位を移転する旨記載します。
ただし各契約にて別途移転が禁止されているものもあるため、その契約に基づく地位については別の取り扱いによることも記載しておきましょう。

譲受人側としては譲渡対象が広く定められている方が有利にも思えますが、予期せず債務を引き継ぐ可能性もあるため要注意です。契約で明示していない債務は承継しないと契約書にて強調しておいた方が安全です。

譲渡対価

「いくら渡すのか」「いくら受け取れるのか」は当事者双方にとって重大な関心事です。この譲渡対価については「〇〇万円」と固定の金額を定めることが多く、計算方法を具体的に定めるというやり方もあります。

譲渡対価が大きな場合、一部手付金として契約時に支払うよう定めることもあります。金額も含め、当事者間でよく話し合って決めるようにしましょう。

なお、譲渡人の側としては、譲渡対価の支払いが適切に履行されなかった場合に備えて遅延損害金の定めを置いておくことが望ましいです。

引渡し

引渡しの方法や、引渡し時における検査、危険負担についてのルールを明示しておきましょう。

引渡しをした後で「正常に動かないところがある」「思っていたものと違う」などと揉める事態を避けるため、検査は必ず実施しましょう。そこで検査の実施について契約書に記載し、いつまでに検査を実施するのか、期日までに実施しないときの対応なども定めておきます。

引渡しが完了する前の滅失・毀損などの損害に対する負担もどちらが負うのか定めておきます。引渡しが完了する前の事案については譲渡人が負担を負うのが一般的ですが、譲受人側の過失が原因であるときはその譲受人の責任となることを明記しておきます。

精算

ウェブサイトを運営するには、ランニングコスト、その他突発的な費用が発生することがあります。契約締結から引渡しまでに費用負担が生じたとき、どちらがその負担を負うのかを定めておくとトラブルを避けやすくなります。

「譲渡日より前の原因に基づく費用なら譲渡人の負担」「譲渡日以降の原因に基づく費用なら譲受人の負担」と定めるのが通常です。ポイントは負担者が変わる基準日です。どのタイミングで区分されるのかを明確にしなければなりません。

知的財産権

ウェブサイトの運営には、知的財産権の問題もついてまわります。これら知的財産権の移転も必要であるところ、特許など特定の権利については登録等の手続が必要とされています。そこでサイトの引渡しに際して、これら権利の移転手続について譲渡人が協力的に実施する旨を定めておくことも検討しましょう。

ただし著作者人格権については譲渡をすることができません。そこで「譲渡する」と定めるのではなく、「今後その権利を行使しない」と約束してもらう必要があります。

※契約にて権利を行使しないことを約しても、際限なく権利不行使が保証されるわけではないため要注意。

競業避止義務

サイト譲渡契約に限らず、事業譲渡を受けるときは、譲渡人に対して競業避止義務を課しておくことが望ましいです。対象サイトのことや対象事業について非常に詳しい譲渡人であれば、対象サイトより優位なサイトを立ち上げることもそれほど難しいことではありません。

そこで譲受人の側としては「対象サイトに類似したサイトの制作及び運営を、直接又は間接的に行わない」などと明記し、競業を禁じておいた方がよいです。

譲渡人としては、競業避止の範囲や期間が広すぎないかを要チェックです。

禁止される事業内容がどれだけ広く設定されているのか、どれだけの期間競業避止義務が課されるのか、当事者間で交渉を進める必要があるでしょう。

サイト譲渡契約書作成のポイント・注意点

サイト譲渡契約書を作成するときの注意点は、次のようにまとめられます。

  • 譲渡対象が具体的に列挙できているか
    • 対象サイトに係る事業運営が適切に実行できるだけの資産・契約上の地位が挙げられているかを要チェック
    • 譲受人としても広ければよいわけではなく債務の承継には注意する
  • 譲渡対価は明示されているか
  • 引渡し時の検査について規定されているか
    • 検査を実施する期限、期限内に実施されなかった場合についての記載がされていることを確認
    • 危険負担についてのルールのチェック
  • 知的財産権の取り扱いについても記載されているか
    • 譲渡対象に含まれていることを要確認
    • 譲渡できない権利の不行使についての規定をチェック
  • 競業避止義務が記載されているか
    • 適切な範囲で義務が設定されていることを要確認

また、書面で作成した場合には収入印紙の貼付が必要なことにも留意しましょう。記載の契約金額の大きさに応じて印紙税の額も定まります。なお電子契約書を作成した場合は印紙税が非課税となりますのでその分コストカットが可能です。

譲渡対象をよく確認してサイト譲渡契約書を作成しよう

サイト譲渡契約は個人間でも交わされることの多い契約ですが、多額の譲渡対価が設定されることもありますし、事業譲渡と捉えて慎重に契約書作成にも取り掛かる必要があります。
そこでサイト譲渡契約書を作成するときは譲渡対象に含まれているものをよく確認し、引渡し時や今後の活動時に支障をきたすことのないよう、双方注意深くチェックすることが大事になります。


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