• 作成日 : 2025年1月31日

商標登録とは?メリットや出願のやり方、区分、費用、有効期間などを解説

商標登録は、自社の商標(マークやロゴなど)について独占権を得る手続です。特許庁に申請をして商標登録を行うことにより、他社からの模倣や不正使用を防ぎ、企業のブランド力を強化できます。

今回は、商標登録の概要や区分を説明した上で、登録をするメリットや登録申請を行うための条件、費用や登録までのやり方を解説していきます。

商標登録とは

商標登録とは、事業者が自社の商品やサービスを他社のものと区別するために使用する商標(マーク、ネーミング、またはロゴなど)を特許庁に登録する制度です。商標登録をすることで、商標法によって保護された独占権である商標権を獲得します。

日本の商標制度は、明治初期から商標制度を必要とする動きが活発になったことから、1884年に商標条例が制定されて開始されました。経済情勢や国際条約への加入により改正が重ねられ、1960年の大規模な改正により施行したものが現行の基礎となる商標法です。その後も、社会情勢などに合わせて新たな制度の導入や保護対象の追加など、幾度もの改正を経ています。

商標登録をするためには、特許庁に商標登録出願を提出し、審査に通過する必要があります。その後、登録料を納付することで商標登録が完了します。

商標登録のメリット

商標登録は、自社の商品を保護するための手段です。商標に対する権利をもつことで、事業の成長や安定につながります。

商標登録をするメリットとして、下記のようなものが挙げられます。

商標を独占的に使用できる

商標登録を行うことで、その商標を独占的に使用する権利(商標権)が得られます。具体的には、登録した商標そのものについて専有する権利と、登録商標と類似の商標について他者に使用を禁止する権利を有することになります。これにより、他の事業者が同じまたは類似した商標を使用することを法的に防げます。

商標権をもつことで、市場において「自社の商品である」ことを認識してもらえる識別力が高まり、消費者に対して一貫したイメージを提供できます。また、独自性を確保して認知度や識別力を高めることで、企業のブランド力自体を高める効果も期待できます。

商標を他社に使用されるリスクを回避できる

商標登録は、他社による自社商標の不正使用や模倣品の販売を防ぐ重要な手段です。商標登録していない場合、商標に対する独占権がないため、第三者による不正使用や模倣されるリスクが存在することになります。

他社に同一、または類似の商品の販売や利用をされることで、自社の商品と混同されたり、消費者の信頼を損なったりする恐れがあります。

商標登録を行うことで、他社に対する行動に制限をかけ、不当な利用があった場合に法的措置を取ることが可能になります。このように商標登録は、他社の利用を回避して企業のブランドイメージを守るために有効です。

商標登録できるもの

商標登録は、特定の条件と種類に基づいて行われます。以下で、商標登録の条件と種類について解説します。

商標登録の条件

商標登録をするためには、下記の条件を満たした商標である必要があります。

事業者が自己の業務に係る商品・サービスに使用するマークであること

商標登録の申請をする際は、その商標を使用している、または使用を予定している商品・役務を指定し、その商品・役務が属する区分で申請をしなければなりません。

指定した商品・役務は、商標とともに権利の範囲を定めるものであるため、その内容および範囲は明確であることが必要です。

自己の商品・サービスと、他者の商品・サービスとを区別できること

商標登録をするためには、他者の商品やサービスとの違いが認識できる識別力があることや、同一または類似品ではないという非類似性が必要です。

商標登録の種類

商標登録の種類は下記の通りです。

  • 文字商標:文字のみからなる商標
  • 図形商標:図形のみからなる商標
  • 記号商標:のれん記号、文字を図案化し組み合わせた記号、記号的な紋章などからなる商標
  • 立体商標:立体的形状からなる商標
  • 結合商標:異なる意味合いをもつ文字と文字を組み合わせた商標や、文字、図形、記号、立体的形状の2つ以上を組み合わせた商標
  • 動き商標:文字や図形等が時間の経過に伴って変化する商標
  • ホログラム商標:文字や図形等がホログラフィーその他の方法により変化する商標
  • 音商標:特定の音やメロディからなる商標
  • 色彩商標:色彩の組み合わせのみからなる商標
  • 位置商標:図形等を商品等に付す位置が特定される商標

商標登録できないもの

商標登録は、特定の商品やサービスに対する商標の独占的な権利を取得する方法ですが、すべての商標が登録できるわけではありません。

以下のケースに該当する場合は、商標登録ができません。

  • 自己と他人の商品・役務(サービス)とを区別することができないもの
    例:商品の説明語や一般的な名称、慣用されている名称、極めて簡単でありふれた標章のみからなる商標など
  • 他人の登録商標や周知・著名商標等とまぎらわしいもの
    例:他人の使用する商標、他人の氏名・名称等とまぎらわしい商標、他人の業務に係る商品または役務と混同を生ずる恐れのある商標など
  • 公共の機関の標章とまぎらわしい等公益性に反するもの
    例:公益的(国や地方公共団体など)に使用されている標識と類似した商標、公の秩序を害するおそれがある商標、商品の品質または役務の質の誤認を与える恐れのある商標など

商標登録のやり方

商標登録をするためには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下に、商標登録を完了させるまでの各ステップのやり方を説明します。

商標となるロゴマークや名前を考える

商標登録の最初のステップは、商標となるロゴマークや名前を決定することです。ロゴマークや名前は、自社の商品やサービスを他と明確に区別できるような独自のデザインや名称にすることが重要です。

登録をする商標に使用できるのは、文字、図形、音声など多様ですが、商標は自他商品の識別力を備える必要があります。登録を拒否されるような要素が含まれている場合、商標登録までに時間がかかることになるので注意が必要です。前述した商標登録の条件を元に商標を設計することで、滞りなく商標登録を進められるでしょう。

商標登録する商品・サービス区分を指定する

商標登録する際に、商標を使用する商品やサービス(役務)の区分を指定します。指定された商品、役務を「指定商品」「指定役務」と呼びます。

特許庁では、商標登録をする際に指定する商品や役務を45の区分に分類しています。この区分を正確に特定することは、滞りなく商標登録を進めるために必要です。

商標登録が行われると、指定商品・指定役務に対して登録した商標を使用する独占的な権利をもつことができます。

指定する区分は、特許庁の「商品・役務名検索ツール」で検索が可能です。

商標検索で類似する商標がないか調べる

商標登録を行う際は、すでに登録されている商標と類似していないもので申請をする必要があります。登録された商標と類似していると判断された場合、登録申請が拒否される可能性があるためです。

特許庁の商標検索システムである「特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)」を使用することで、類似の商標を調査できます。類似する商標が存在する場合は、登録が拒否されるリスクや、商標権をもっている会社に法的措置を取られるなどのリスクを伴うため、別の商標を考えるか、弁理士など専門家に相談することをおすすめします。

特許庁に商標を出願する

商標出願には、インターネットを用いた電子出願と紙面での紙出願の二種類があります。それぞれの方法のステップは、下記の通りです。

  • 電子出願の場合
    1. 電子証明書の準備
    2. 出願ソフトのインストール
    3. 申請人の利用登録
    4. 申請書類の作成
    5. 電子出願
      電子申請は、すべての手順をオンライン上で行うことが可能です。
  • 紙面出願の場合
    1. 商標登録願の作成
      商標登録願の様式をダウンロードして印刷し、商標登録願を作成します。
    2. 特許印紙を購入して指定箇所に貼り付け
      ※特許庁に直接提出する場合は、特許庁内で購入することもできます。
    3. 特許庁に提出
      • 受付窓口へ直接持参 、または郵送により提出
    4. 電子化手数料を納付

特許庁の商標の審査を受ける

商標出願後、特許庁にて審査が行われます。この審査では、商標が登録を受けるための要件を満たしているかが確認されます。

審査の着手状況は、特許庁のホームページにある「商標審査着手状況」で申請時期ごとの審査時期を確認できます。審査着手のタイミングは申請する商標の区分により異なりますが、おおよそ7カ月から10カ月後です。

審査結果として、登録査定(登録が認められる場合)や拒絶理由通知(登録が認められない場合)が送付されます。問題なく審査が完了した場合、登録料の納付が求められ、登録料を納付すると商標権が発生します。

商標の区分とは

商標の区分とは、商標を使用する商品やサービス(役務)を分類するための枠組みのことです。これは、商標がどのような商品や役務のために登録されているのかを明確にします。

商標権は、商標と、その商標を使用する商品や役務との組み合わせで構成されるため、申請の際は商標だけでなく商品や役務の区分を明確にする必要があります。

現在の日本では、「ニース分類」という国際的な区分が使用されており、第1類から第45類までの区分に分かれています。具体的な区分は下記の通りです。

商標の区分一覧

商標の区分は第1類から第45類まであり、大きく以下の3つのカテゴリに分類できます。

第1類から第34類が商品に対する区分、第35類から第45類がサービスに対する区分です。

化学・工業製品と機械類(第1類-12類)

化学品、塗料、工業用油、機械、医療用機器など、科学や工業用途の製品が該当します。製造業や製品開発に関連する商品です。

日用品と生活関連商品(第13類-34類)

宝飾品、楽器、家具、被服、食品、飲料など、日常生活で使用される商品が該当します。消費者向けに流通する商品が主な対象です。

サービス業務(第35類-45類)

広告業、金融サービス、電気通信、教育娯楽、医療など、各種サービス業に関連する役務が該当します。

第1類 工業用、科学用又は農業用の化学品

第2類 塗料、着色料及び腐食の防止用の調製品

第3類 洗浄剤及び化粧品

第4類 工業用油、工業用油脂、燃料及び光剤

第5類 薬剤

第6類 卑金属及びその製品

第7類 加工機械、原動機(陸上の乗物用のものを除く。)その他の機械

第8類 手動工具

第9類 科学用、航海用、測量用、写真用、音響用、映像用、計量用、信号用、検査用、救

命用、教育用、計算用又は情報処理用の機械器具、光学式の機械器具及び電気の伝

導用、電気回路の開閉用、変圧用、蓄電用、電圧調整用又は電気制御用の機械器具

第10類 医療用機械器具及び医療用品

第11類 照明用、加熱用、蒸気発生用、調理用、冷却用、乾燥用、換気用、給水用又は衛生

用の装置

第12類 乗物その他移動用の装置

第13類 火器及び火工品

第14類 貴金属、貴金属製品であって他の類に属しないもの、宝飾品及び時計

第15類 楽器

第16類 紙、紙製品及び事務用品

第17類 電気絶縁用、断熱用又は防音用の材料及び材料用のプラスチック

第18類 革及びその模造品、旅行用品並びに馬具

第19類 金属製でない建築材料

第20類 家具及びプラスチック製品であって他の類に属しないもの

第21類 家庭用又は台所用の手動式の器具、化粧用具、ガラス製品及び磁器製品

第22類 ロープ製品、帆布製品、詰物用の材料及び織物用の原料繊維

第23類 織物用の糸

第24類 織物及び家庭用の織物製カバー

第25類 被服及び履物

第26類 裁縫用品

第27類 床敷物及び織物製でない壁掛け

第28類 がん具、遊戯用具及び運動用具

第29類 動物性の食品及び加工した野菜その他の食用園芸作物

第30類 加工した植物性の食品(他の類に属するものを除く。)及び調味料

第31類 加工していない陸産物、生きている動植物及び飼料

第32類 アルコールを含有しない飲料及びビール

第33類 ビールを除くアルコール飲料

第34類 たばこ、喫煙用具及びマッチ

2.役務の区分解説

第35類 広告、事業の管理又は運営、事務処理及び小売又は卸売の業務において行われる顧

客に対する便益の提供

第36類 金融、保険及び不動産の取引

第37類 建設、設置工事及び修理

第38類 電気通信

第39類 輸送、こん包及び保管並びに旅行の手配

第40類 物品の加工その他の処理

第41類 教育、訓練、娯楽、スポーツ及び文化活動

第42類 科学技術又は産業に関する調査研究及び設計並びに電子計算機又はソフトウェアの

設計及び開発

第43類 飲食物の提供及び宿泊施設の提供

第44類 医療、動物の治療、人又は動物に関する衛生及び美容並びに農業、園芸又は林業に

係る役務

第45類 冠婚葬祭に係る役務その他の個人の需要に応じて提供する役務(他の類に属するも

のを除く。)、警備及び法律事務

商標登録にかかる費用

商標登録にかかる費用には、登録のために必須となる費用と、場合によっては必要となる費用の2種類があります。

必須の費用

商標登録の費用として必ず発生するのが「出願料」と「商標登録料」です。

出願料は商標を申請する際にかかる費用です。金額は「3,400円+(区分数×8,600円)」となっており、申請区分数によって金額が変動します。

商標登録料は、一度受理された後、商標を正式に登録する際に必要な費用です。金額は「区分数×32,900円」となっており、こちらも区分数によって金額が変動します。

任意の費用

一方で、任意の費用として挙げられるのが手続を専門家に依頼する際の手数料です。

類似商標の調査や出願書類の作成などを弁理士や特許事務所に依頼することで、手続を手間なくスムーズに行えますが、その分の報酬が発生します。

この代行費用は、依頼する事務所によって異なります。

商標登録の有効期間

商標登録の有効期間は、登録日から10年間となります。この期間中は、登録された商標に対して独占的な使用権が付与され、他者からの模倣や不正使用を防げます。

期間満了の前に更新手続を行うことで、引き続き10年間の延長が可能です。更新手続は何度でも行えるため、事実上、商標権を永続的に保有することもできます。

ただし、特許庁などから期限切れの通知はされないため、自身で管理をしなければなりません。

更新をする際は「商標権存続期間更新登録申請書」によって申請を行い、更新登録料の納付が必要です。

商標登録における注意点

商標登録を行う際には次のような注意点を押さえておく必要があります。

適切な商標の選定

商標として登録するためには、他の登録済みの商標との違いが明らかであることが求められます。類似の登録商標がないかどうかの調査を必ず行い、識別力のある商標を決定しましょう。類似の商標がある場合、商標登録が拒絶されるだけではなく、すでに登録されている商標の権利者から法的な措置を取られる恐れもあるため、不必要なトラブルを避けるためにも注意が必要です。

適切な区分の選定

商標登録を行う際は商標を使用する商品や役務の区分を指定します。申請する商標がどの区分に属する商品やサービスを対象としているのかを明確にすることが重要です。

事業として使用している、または使用する予定のある区分として認められない場合、登録の拒絶理由にもなるため注意が必要です。

現在の事業内容のみならず、将来的な事業展開を見越して区分を選定することも可能です。将来取り扱う可能性のある商品やサービスの区分もあらかじめカバーしておくことで、将来の手続を簡略化できます。

拒絶理由通知は最終結果ではない

審査の際に登録できない理由が発見された場合、拒絶理由通知書が送付されます。そのまま何も対応しないと、拒絶査定が送付され登録ができません。

拒絶理由通知が届いた時は、内容を理解して期限内に対応をすることが重要です。通知の内容を踏まえて意見書の提出をしたり、指定商品・指定役務を修正したりすることが必要になります。拒絶理由を解消できれば、商標登録が可能になります。

商標登録の成功は区分も正確に指定するのがポイント

商標登録は特許庁への出願と審査を経て行われ、出願や登録には費用がかかります。登録する際は商標を届け出るだけではなく、どの商品やサービスに使用するものであるかの区分も正確に指定する必要があります。

申請をするために必要な条件や、登録までのステップを理解して出願の準備を行うことで、滞りなく登録まで進められるでしょう。


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