- 更新日 : 2024年11月14日
金銭消費貸借契約書は電子契約にできる?電子化するメリットや注意点も解説
金銭消費貸借契約書は金銭の貸し借りの約束をする際に作成する書類です。事業などで使う資金を個人間、あるいは企業間で貸し借りする際は電子契約が可能なのでしょうか。今回は金銭消費貸借契約書や電子契約について詳しく解説します。
目次
金銭消費貸借契約書は電子契約にできる?
金銭消費貸借契約書は電子契約を用いて締結できます。契約当事者の合意を得る必要はありますが、法律的にも金銭消費貸借契約書の電子化は禁じられていません。根拠となる法律は後ほどご紹介いたします。
従来の紙ベースの金銭消費貸借契約書と比較すると、印紙代が不要となり、郵送費も削減できるといったメリットがあります。また、契約内容を電子データとして保存するため、後から確認や管理が容易で、セキュリティ面も向上するといった利点もあります。
電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。
そもそも金銭消費貸借契約書とは?
金銭消費貸借契約書とは貸主が借主に対して一定の金銭を貸し付け、借主がその金銭を返済する義務を負うことを明確にする契約書です。
具体的には、ローンや借入れに関する借入額と返済方法、返済期間、利息の詳細などが記載されており、契約の内容を証拠として残すために作成されます。
この契約書は貸借関係を明確にし、トラブルを未然に防ぐための重要な文書であり、個人・法人問わず利用されています。
民法第587条の2では、書面で交わす消費貸借契約について以下のように定めています。
第五百八十七条の二 前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
2 書面でする消費貸借の借主は、貸主から金銭その他の物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、貸主は、その契約の解除によって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を請求することができる。
3 書面でする消費貸借は、借主が貸主から金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始の決定を受けたときは、その効力を失う。
4 消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
引用元:民法 | e-Gov 法令検索
今回重要なのは、4の「消費貸借がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その消費貸借は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する」という部分です。
電磁的記録、つまり電子契約でも書面と同等に扱われるため電子契約ツールやPDFなどのデータを使っても法的にはなんら問題ありません。
金銭消費貸借契約書を電子化するメリットは?
金銭消費貸借契約書を電子化することで、契約の締結や管理といった各工程が効率化されます。ここからは郵送や印紙税のコスト削減、セキュリティの向上といったメリットについて詳しく解説していきます。
印刷や郵送の手間がかからない
電子化された金銭消費貸借契約書は書類の印刷や郵送の必要がありません。従来の紙ベースの契約では印刷作業や郵送の手続きが発生し、契約締結まで時間やコストがかかります。契約内容によっては直接会いに行かなければならないというケースもありました。
電子契約を導入するとオンラインでの契約が可能となり、書類のやり取りを大幅に効率化できます。遠方の取引先との契約締結も迅速に行えるため、契約業務のスピードが大幅に短縮されます。
印紙税のコストを削減できる
電子契約では契約書が電子データとして保存されるため、紙の契約書にかかる印紙税が不要です。
印紙税法では印紙が必要な課税文書の対象を「用紙への記載」と定義されているため、データでやり取りする電子契約は印紙税法の対象外となり非課税となるのです。
紙の契約書では契約金額に応じて200円~60万円の印紙税が必要となります。事業における金銭消費貸借契約では扱う金額が大きくなるので、印紙税もまとまった金額が発生することもしばしばあります。印紙税が非課税になることで、事業主の金銭的負担も軽減できます。
セキュリティ対策ができる
電子契約では契約書の改ざん防止や不正アクセス防止のために、電子署名やタイムスタンプといったセキュリティ技術が使用されます。
紙の契約書に比べて安全性が高く、契約内容の改ざんリスクを軽減できます。また、電子契約プラットフォームを利用することで、契約書の保管・管理も一元化され、紛失のリスクが減少します。
さらに、アクセス権限の管理を適切に行うことで、機密情報の漏えいを防止できます。
金銭消費貸借契約書を電子化する場合の注意点は?
金銭消費貸借契約書を電子化する際には、法律や契約書の作成方法に関する特定のルールに従う必要があります。ここからは電子契約を導入する際の注意点について具体的にご紹介していきます。
貸主側が金銭消費貸借契約書を作成する
金銭消費貸借契約書を電子化する際には、貸主側が契約書の作成を担当することが多く、契約内容を明確に記載することが求められます。
契約条項が曖昧だと後にトラブルが生じる可能性があるため、内容の精査が重要です。また、電子契約を使用する場合は契約の正当性を担保するために電子署名やタイムスタンプの利用が推奨されます。
貸主としては、契約書の作成時に最新の法的基準を確認することが不可欠です。
電子帳簿保存法への対応が必要
金銭消費貸借契約書を電子化する場合、電子帳簿保存法に則って保管・運用しなければなりません。電子契約書は従来の紙の契約書と異なり、保存方法や改ざん防止措置のために書類データの保存要件が以下のように定められています。
【真実性の確保】
- タイムスタンプの付与
【可視性の確保】
- 関連書類の備え付け(設計書、概要書など)
- 見読性の確保(保存場所にデバイスやソフトなどの操作説明を備え付ける)
- 検索機能の確保(取引年月日、取引先、取引金額などで検索できるようにしておく)
金銭消費貸借契約書を電子化する方法・流れは?
金銭消費貸借契約書を電子化するには、紙の書面をPDFファイルに変換し、その後電子契約システムを利用して契約を管理する必要があります。具体的な流れを項目ごとに解説します。
書面をPDFファイルに変換する
まず、紙の金銭消費貸借契約書を電子化するには、契約書をPDF形式に変換する必要があります。紙の書類をスキャンし、Adobe Acrobatやオフィスソフトなどを使うことでPDFファイルに変換できます。
PDFにすることでデータの管理や保存が容易になり、印刷や郵送の手間が省けます。また、PDFファイルは広く互換性があるため、契約内容を安全に共有できます。
書面を電子契約システムに取り込む
PDF化された金銭消費貸借契約書を電子契約システムに取り込む方法もあります。電子契約専用のシステムを利用すれば、契約書をアップロードすればその後の契約手続きがスムーズに進められます。
電子契約システムはタイムスタンプ機能がついていて、アップロードする際に書面に記載の日付か、任意の日付を指定可能です。ただ、データを取り込むタイプだと、システム上で電子契約ができないソフトも多いので事前にご確認ください。
電子契約システム上で金銭消費貸借契約書を作成する
電子契約システム上では、契約書の作成自体も可能です。電子契約サービスを利用することで、契約内容をオンライン上で設定し、相手方に署名を依頼できます。
専用システムを利用することで契約の内容をデジタル化して保存できるだけでなく、相手方とのやり取りもシステム内で完結でき、契約に関わる手続きや工程が大幅に短縮できます。
サービスによっても扱いが異なりますが、取引先はシステム利用料が不要のものも多いため、先方が電子契約に対応していなくても誘導しやすくなっています。
マネーフォワード クラウド契約なら金銭消費貸借契約書も電子化できる
マネーフォワード クラウド契約はクラウド型の電子契約サービスです。契約書の作成から申請、承認、締結、保存、管理まで全てシステム上で対応可能。最短数分で契約が締結でき、事務作業の負担を大幅に削減可能です。個人は月額900円~、法人は2,980円~でご利用いただけます。
もちろん金銭消費貸借契約書の電子化も可能。コスト削減や業務効率化に大きく貢献できるシステムです。
金銭消費貸借契約書を電子化して効率化しよう
金銭消費貸借契約書は書面で契約を交わして印紙を貼るのが一般的でした。しかし、当事者が合意すれば電子契約でも法的な効力を持ちます。
電子化には書面の取り込みや専用システムの活用など、さまざまな方法がありますが、電子契約システムなら必要な機能が付帯しているので手軽かつ安全に金銭消費貸借契約書の管理・運用ができます。
これから電子契約への移行を検討されている方にとって、今回ご紹介した方法や注意点が参考になれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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