• 作成日 : 2022年11月11日

知的財産権法とは?著作権法との違いもわかりやすく解説!

知的財産権法とは?著作権法との違いもわかりやすく解説!

人間の創造的活動により生み出されるものや、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報に財産としての権利を与える「知的財産権(知的財産基本法2条参照)」の正しい理解を得ておくことは企業にとって非常に大切です。

この記事では知的財産権の概要や主な知的財産法の内容をわかりやすく紹介します。

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知的財産法とは?

知的財産とは新たな発明や技術、デザイン、築き上げてきたブランドへの信頼、小説や絵画などの文化芸術的な表現活動などの総称をいいます。社会生活が活性化し、豊かになっていくためには産業の発達や文化の発展が欠かせません。そのためにはこれらの知的財産に一定の権利、すなわち知的財産権を与え、保護する必要があります。新たな開発技術や信用などの知的財産は形あるものではない、いわゆる「無体物」です。

私たちの日常生活において「財産権」としてイメージされるものは預貯金や不動産、車や高価な美術品など、目に見える物(有体物)が多いのではないでしょうか。これら有体物とされる財産的権利を分類し、保護するための規定は一般法である民法の第二編「物権」に載っています。

一方、無体物の財産権の代表格の一つは「人に対する権利」である「債権」であり、こちらは民法の第三編で規定されています。

しかしもう一つの代表格である「知的財産権」の規定は民法にありません。そこで知的財産権をその特徴からいくつかに分類し、各財産権の定義や権利、保護などを規定した法律が作られました。知的財産法とはそれら知的財産権に関する法律の総称です。

知的財産法としてよく知られているものは特許法、実用新案法、商標法、意匠法、そして著作権法です。

このうち著作権法以外の四法は産業財産権法(工業所有権法ともいう)と呼ばれ、産業財産権法で保護される権利は産業財産権と呼ばれます。

知的財産権の目的

では知的財産はなぜ権利として保護が必要なのでしょうか。
今までにない発想による新たな性能を持った新製品の製作、既製品より効能の高い薬品の開発を行うために、企業は研究開発に多額の費用を投じます。

しかしその努力と出費によりようやく完成した発明や技術を自由に他者が利用して全く同じ製品を作ったらどうなるでしょう。
また、長年の企業努力で培った信頼や信用の原点ともなるブランド名と同じ名前を他者が使用して粗悪品を自由に製造販売できたとすれば、あるいは苦労して描いた絵画の模倣品がインターネットで販売されていたらどうでしょう。

おそらく大多数の企業は見返りもないのに苦労して開発研究をすることをやめるでしょうし、ブランドを勝手に利用された企業は経済的な打撃を受けるでしょう。つまり産業も経済も衰退してしまうのです。同様に作品の模倣盗用が自由な社会では文化的発展も望めません。

産業や技術を停滞させることなく活性化させ、社会が未来に向け弛みなく発展を続けるためには人間の知恵と努力の賜物である知的財産に価値を与え、保護することが欠かせないのです。そのため、産業財産権に関する各法は法の目的として「産業の発達に寄与すること」を掲げています(各法第1条参照)。

もちろん、法の保護を得るためには各産業財産権としての要件を充たす必要があり、各法に規定があります。好き勝手に知的財産権を主張できるとなると、産業の発展を阻害してしまうことに繋がるからです。

知的財産権の種類

主な知的財産権のうち、産業財産権についてそれぞれ簡単に説明します。

特許権

特許法は一言でいうと「発明を保護する」ための法律です。ただし保護されるのは産業の発達に寄与すると認められた発明のみです。特許法2条では「発明」を「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定義しています。

例えば単に未知の物質を発見しただけではこの定義の「創作」という要件を満たさず発明にはあたりませんが、 天然物から人為的に分離した化学物質は発明にあたります。さらにその発明を特許として登録するためには、産業上利用でき、新規性や進歩性(同業他者が容易に考えつかないこと)といった特許要件を満たす必要があります。特許法は上記の要件を充たした発明を特許として登録することで発明者に独占的権利、すなわち特許権を付与し、発明を保護する一方で、その代償として発明を公開し、発明の保護と利用のバランスを図っているのです。
なお、特許権の存続期間は出願日から原則20年です(特許法67条1項)

実用新案権

実用新案法は、何らかの工夫により新たなものが生み出されたが、特許ほど高度なものとはいえないとき、その工夫やちょっとした発明(考案)に「実用新案権」を与え保護するための法律です。身近な日用品に工夫を凝らすことでより便利に使いやすいものができた場合などは実用新案といえるでしょう。

実用新案も登録して初めて保護の対象となる点は特許権と同じです。しかし、特許登録されるためには提出された書類が適切かどうかのチェック(方式審査)と審査官による審査(実体審査)があるのに比べ、実用新案権は審査官による実体審査を経ずに登録できるという大きな違いがあります。また権利の存続期間は10年間です(実用新案法15条)。

意匠権

意匠法は、工業的に生産される製品のデザインのうち新規性と創作性を持つものを保護する法律です。インテリアとして楽しめる灯りやお洒落なキッチングッズなどはそのデザインが消費者の購買欲をそそり、製品の売上、ひいては産業経済の発展につながるという考えによるものです。

意匠権も出願し登録を受けることで生まれる権利であり、特許権同様要件についての審査をクリアする必要があります。権利の存続期間は25年です(意匠法21条)。

商標権

商標とは、市場に出回る特定の商品やサービスに付けられた表示のことです。高級ブランドのブランド名、大手企業が手掛けるスマートフォンの名称など、目にするだけでその品質に一定の信頼がおけたり、斬新なネーミングやロゴで新規参入を図ったりと、商標は産業の発展と需要者の利益の保護に重要な役割を果たしています。そこで商標法は、同じ商標を第三者に勝手に使用されないよう、登録することで一定の保護を与えるとしています。

登録には法で規定されたいくつかの要件を充たす必要があります。また、商標権の存続期間は10年ですが、他の権利と違い存続期間の更新が可能です(商標法19条)。

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産業財産権と著作権の違いは?

知的財産権のうち著作権は前項の産業財産権とは立ち位置が異なります。
まず法の目的は「文化」の発展に寄与すること(著作権法1条)です。文化芸術は人々の生活や心を豊かにするものであることから、新たな創作物に一定の保護を与えることで積極的な創作を推奨しているのです。

法の目的の帰結として、著作権は文化庁(文部科学省)の管轄となります。産業財産権は特許庁(経済産業省)の管轄ですからこの点が違います。

また、産業財産権はどれも出願し登録されることで初めて権利が発生しますが、著作権は登録しなくとも著作物が創作された時点で自動的に発生する点が違います(同法17条2項参照)。著作権も登録制度はありますが、登録しなくとも第三者に対しこの著作物は自分の著作物だと主張することが可能です。

著作権は、「著作者人格権」と「著作権」の2つの権利に大別されます。「著作権」は財産的な利益を保護する権利で、他の産業財産権同様譲渡することが可能ですが、「著作者人格権」は人格的な利益を保護する権利(著作者だけが持っている権利)のため、譲渡することはできません。

「著作者人格権」とは、著作者の公表権や氏名を表示する権利、著作物を無断で修正されない権利、名誉を害するような方法で指名を利用されない権利を指し、「著作財産権」は、著作物の利用の許諾や近視ができる権利です。著作物は人の思想感情の創作的表現物(同法2条)であり、著作者の人格と完全に切り離すことができないからです。この点も大きな違いといえるでしょう。

産業の発達には知的財産の保護が欠かせない

人間の創意工夫を財産として保護するための一連の知的財産法は、作者や企業の利益を保護するとともに、権利の存続期間を定めることで産業や文化の発達に繋げることを目的としています。登録要件は権利毎に異なるので出願時には十分に確認してください。

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よくある質問

知的財産権法とは何ですか?

産業や文化の発達に寄与する発明や有用な情報などの知的財産を権利として保護するための一連の法律の総称です。詳しくはこちらをご覧ください。

知的財産権にはどんな種類がありますか?

特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権などです。以上のうち著作権以外の権利は産業財産権(工業所有権)とも呼ばれます。詳しくはこちらをご覧ください。


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