• 更新日 : 2023年9月8日

反社チェックとは?必要なタイミングやチェック方法を解説

反社チェックとは?必要なタイミングやチェック方法を解説

他社や個人事業主と取引を行う際は、「反社チェック」を実施するべきです。チェックしなければ取引のリスクが高まりますし、自社の社会的信用が失墜するおそれもあるからです。そこで、当記事では反社チェックの概要をはじめ、その必要性や方法について解説します。現在何ら対策ができていない場合は、ここで解説する内容を参考にしてマニュアルを設けるなどの対応を行いましょう。

反社チェックとは

「反社」とは「反社会的勢力」のことで、暴力や威力を用いて経済的利益を得る団体や個人を指します。その手段として詐欺を用いることもあり、行為の類型に定義はありません。

「反社チェック」とは、取引等の相手方が反社会的勢力かどうかを確認する作業のことであり、自社が反社と関係を持たないために行われます。

反社会的勢力の定義

反社会的勢力(反社)とは、「暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団もしくは個人」と定義されることが一般的です。「反社」と聞くと、集団的かつ常習的・暴力的に不法行為などを行う団体である「暴力団」をイメージする方が多いと思いますが、暴力団以外にもさまざまな反社があります。

たとえば、次の集団もしくは個人は反社とされることがあります。

  • 暴力団、暴力団員、暴力団準構成員
  • 暴力団関連企業
  • 総会屋、社会運動など標榜ゴロ(社会運動などを仮装して不正な利益を求めて不法行為をおこなう者、あるいはその恐れがある者)
  • 特殊知能暴力集団など
  • 暴力団や暴力団員を不当に利用している者や関与している者
  • 市民社会の秩序や安全に脅威を及ぼす集団もしくは個人

暴力団排除条例で求められている対応

暴力団排除条例とは、暴力団や暴力団員・関係者を自治体の事業や住民活動から排除するための措置を規定する条例です。47すべての都道府県と各自治体で制定されています。

暴力団排除条例では、次の対応が求められています。

  • インターネットによる調査やデータベースを活用し、暴力団関係者でないことを確認する
  • 契約書類に特約条項として暴力団排除条項を定める
  • 暴力団関係と疑われるときは、警察や公的な相談センターなどに相談する
  • セミナー受講などを通し、企業などの団体内で暴力団排除に対する意識を高める
  • 暴力団関係者と判明したときは、契約解除・契約解除の理由公表・国や自治体への通知を実施する

反社チェックの必要性

ここでは反社チェックの必要性や、反社会的勢力と関わった場合のリスクについて解説します。

企業のコンプライアンスおよび社会的責任のため

反社チェックの実施は、企業のコンプライアンス徹底のために重要です。不法行為を繰り返す反社と関係を持っていては、法令遵守は徹底できません。健全な経営を維持するためには、反社チェックが欠かせないのです。

反社チェックは自社の統制のみならず、社会的な責任を果たす上でも重要です。政府や各自治体も反社との関係遮断を目指し、指針を公表したり条例を出したりしています。また、企業に対して反社チェックの実施を求めていますし、契約書には暴力団排除条項を設けることや、暴力団関係者への利益供与の禁止も求めています。

社会全体で反社会的勢力を排除しようという動きがあるため、反社チェックを行わないと社会的責任を果たしていない企業とみなされるリスクがあります。

企業価値の維持のため

コンプライアンスと社会的責任は、いずれも企業価値に関わる事柄です。以前よりもコンプライアンスの徹底が求められるようになっており、企業の利益のみならず社会的意義のある活動を行うことで企業の評価は高まります。

反社会的勢力とのつながりが世間に知られると、企業の信用は失墜してしまうでしょう。一般消費者からの評価が下がるだけでなく、取引先企業もいなくなってしまいます。そうなると、自社の業績悪化は避けられません。

反社会的勢力への資金源遮断ため

反社チェックを実施して反社会的勢力と関係を持たないようにすれば、反社会的勢力の資金源を遮断することになります。すべての企業が適切に反社チェックを実施して資金が回らないようにすれば、反社組織は活動ができなくなり、世の中から消滅するでしょう。

つまり、反社チェックは企業を反社会的勢力から守るだけでなく、反社会的勢力に対する攻撃にもなるのです。
「取引先は暴力団だが、当該取引に関しては適法に行っている」という場合であっても、それが反社の資金源になることには違いありません。個別の取引内容が適法かどうかではなく、取引先が反社会的勢力であるかどうかが重要なのです。

反社チェックを行うタイミング

反社チェックの実施は、早ければ早いほどよいです。契約を締結し、金銭のやり取りをした後では意味がありません。反社の活動資金になるお金をすでに渡してしまっているからです。

契約締結後や、債務の履行前でも手遅れです。金銭のやり取りはありませんが、すでに関係を持ってしまっています。もちろん、契約後に取引先が反社であることが発覚した場合は、その時点からでも対処を行う必要があります。

以上のことから、反社チェックを行うべきタイミングは「契約の前」、つまり金銭のやり取りがなく、権利・義務も生じていない段階です。このタイミングなら契約による拘束がないため、相手方との距離も取りやすいでしょう。

反社チェックの具体的な方法

ここからは、反社会的勢力かどうかをチェックする方法をいくつか紹介します。いずれか一つを選ばなければならないわけではなく、状況に応じて選択することが大切です。

自社調査

反社チェックで重要なのは、まず自社で独自に調査を行う姿勢です。相手方の会社情報を確認する、インターネットで検索する、反社会的勢力データベースを活用するといったことも視野に入れましょう。

会社情報を確認

会社情報を調べるためには、例えば商業登記情報を取得して商号・住所・役員・事業目的の変更履歴などを見ます。登記情報に反社会的勢力であることが記載されているわけではありませんが、これらの情報をヒントに反社かどうかを探っていきます。
他にも、その会社の業績や取引実績は確認するべきです。場合によっては、取扱商品やサービスが手がかりになることもあります。

しかし、自社に反社チェックに長けた人材がいれば別ですが、相手方の会社情報を自社で独自に確認するだけでは、反社会的勢力であることを証明するのは難しいでしょう。

インターネット検索

インターネットで相手方の企業情報を調べるのは、最も簡単な反社チェックの方法です。企業名や役員の名前などで検索すると、反社会的勢力あるいはその関係者であるとの情報が出てくることがあります。

ただし、相手方が大きな組織や重要人物でなければ、そのような情報を見つけるのは難しいでしょう。信憑性を欠く情報である可能性もあり、実際は反社会的勢力と関係がないにもかかわらず、誤認するおそれもあります。反社会的勢力であるとの情報を得たとしたとしてもすぐに判断せず、同じ名称や名前ではないか、正しい情報なのかといったことも精査しなければなりません。

新聞やWeb記事の検索

過去に事件を起こした組織や人物であれば、新聞やWeb記事に記録が残ります。デジタル(電子)新聞であれば文字検索ができるため、すぐに調べられます。

新聞記事の内容も正しいとは限りませんが、誰が運営しているかがわからないWebサイトに比べると一定の信憑性はあります。

反社会的勢力データベースで検索

業界団体の(反社会的勢力)データベースで調べるという方法もあります。信頼性の高い情報が得られますし、すでに反社会的勢力であるとされている組織・人物はすぐにわかります。ただし情報量が限られているため、これだけで十分な反社チェックとするのは早計です。

反社チェックツールを使用する

反社チェックツールを導入して、効率的に反社チェックを実施する方法もあります。反社チェックツールにはノウハウが詰まっているため、スピーディーにチェックを実施できます。反社チェックのノウハウがない企業におすすめです。

コストはかかりますが、反社チェックツールを使えば当該企業のさまざまな情報をもとに、自動でリスクを判断できます。ただしツールによって機能や精度に違いがあるため、信頼できるツールかどうかは導入前にしっかり確認する必要があります。

専門調査機関へ依頼

反社チェックを自社で実施することに不安がある場合は、専門の調査機関への依頼も検討しましょう。こちらもコストがかかりますが、専門知識を持たない自社の担当者が調べる場合よりも、調査の精度は高くなります。
ただし、依頼する専門機関が信頼に足るか否かはしっかり確認するべきです。

コストや調査内容は、調査機関によって変わります。関係機関や対象者の周辺人物への聞き込み取材、独自に構築されたデータベース照会、官公庁やメディア情報の調査など、どのような調査が実施されるのか事前に確認しておきましょう。

行政機関へ照会

行政機関を活用する方法もあります。
各都道府県には、法律に基づいて「暴力追放運動推進センター(暴追センター)」が設置されています。暴追センターでは暴力団に関する相談を広く受け付けており、反社チェックの際にも役立ちます。ただし情報開示のハードルが高く、容易に相手方の情報を知ることができないという難点があります。

個人事業主への反社チェック

反社は団体であるとは限りません。暴力団構成員が、個人事業主として活動している可能性もあります。
そのため、取引先が個人事業主であったとしても反社チェックを怠ってなりません。

チェック方法は、ここまでで説明したものと基本的に同じです。相手方が法人かどうかに関わらず、自社調査をはじめ専門機関や行政機関も利用しながら反社チェックを実施しましょう。

反社チェック方法の選び方

反社チェックの方法は多種多様ですが、リスクを回避するためにはできるだけ多くの方法を用いて厳重にチェックを行うべきです。しかし、そうすると手間もコストもかかり、円滑な企業活動に支障が出るおそれがあります。

そのため、時間や費用をかけてチェックを行うことのデメリットを考慮しつつ、バランスを取りながら反社チェックを実施しましょう。

規模が大きい企業では取引内容が同じでもリスクは大きくなるため、より厳重なチェックが求められます。単にインターネットで検索するだけでは不十分です。反社チェック導入するなどして、別途調査を実施することをおすすめします。

小規模企業で利害関係があまりなかったとしても、契約内容が重大である場合はリスクが大きくなるので、やはり厳重にチェックするべきです。

反社会的勢力への対応方法

反社チェックの結果、相手方が反社会的勢力であることが発覚するかもしれません。その場合に備えて、発覚後の対応についても体制を整えておく必要があります。

反社チェックによって反社の可能性があるとなれば、まずは上司や取締役などに相談し、その上で弁護士にも相談するとよいでしょう。

注意が必要なのは、発覚後の相手方とのやり取りです。「調査の結果、御社は反社である可能性があるため、今後は取引を行いません」などと伝えるはむしろ逆効果です。トラブルの原因になりますし、クレームをつけられ、その後の企業活動に悪影響を及ぼすおそれがあるからです。

穏便に関係を絶つ方法について社内の人に相談しつつ、反社対応の実績がある弁護士にアドバイスをもらいましょう。

暴力団排除条項を契約書に記載する重要性

反社チェックで反社会勢力か見抜けないリスク、また、契約後に相手が反社会勢力に加わるリスクを回避するためにも、契約書には以下のような「暴力団排除条項(反社条項、暴排条項)」を加えておきましょう。

自社のリスクマネジメントとしても、また、事業者として社会的責任を果たすためにも、暴力団排除条項を加えることは大切なポイントです。

第〇条(反社会勢力の排除)
1.本契約の当事者は、本契約の締結日において、自らが次のいずれかに該当しないことを表明し、なおかつ将来的にも該当しないことを確約する。

  • 暴力団員
  • 暴力団員でなくなったときから5年を経過しない者
  • 暴力団準構成員
  • 暴力団関連企業の役員・社員
  • 総会屋
  • 特殊知能暴力集団
  • その他、社会に対して不安を与える活動をする者

反社会勢力から会社を守るために反社チェックは重要

契約を締結する前に反社チェックを実施することで、自社が反社会的勢力とのつながりを持つことを防げるため、トラブルや信用失墜の原因を排除できます。チェックの方法に決まりはないので、まずは自社ができることから始めましょう。

よくある質問

反社チェックとは?

取引の相手方が、暴力団などの反社会的勢力かどうかを調べる行為です。詳しくはこちらをご覧ください。

反社チェックはどうやってする?

インターネット検索といった簡易な方法から、専用ツールの導入や調査機関への依頼、行政機関での照会まで、さまざまな方法があります。詳しくはこちらをご覧ください。


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