- 更新日 : 2025年2月4日
参加同意書とは?効力や書き方・例文をひな形つきで解説
参加同意書とは、イベントやプログラムなどに参加することやその条件について、参加者が同意を表明する書面です。イベントなどを実施する企業は、参加者とのトラブルを防ぐために、参加同意書のひな形を整備しておきましょう。本記事では、参加同意書の書き方やレビュー時のポイントを文言の具体例を示しながら解説します。
目次
参加同意書とは?
参加同意書(さんかどういしょ)とは、イベントやプログラムなどの参加者が、それを実施する企業に対して提出する書類です。参加同意書の提出により、参加者はイベントやプログラムなどに参加することや、その条件に関する同意を表明したことになります。
参加同意書はなぜ必要か
参加同意書の目的は、イベントやプログラムなどに関して、主催企業と参加者の間のトラブルを防ぐこと、および主催企業の責任を限定することです。
イベントやプログラムなどにおいては、参加者が体調を崩したり、参加者同士の間でトラブルが発生したりするリスクがあります。これらのリスクが顕在化した際に、参加者からクレームや損害賠償を受ける恐れを最小限に抑えるために、参加同意書が役立ちます。
参加同意書の提出を受けていれば、参加者がイベントやプログラムへの参加に納得していたことを証明できます。また、主催企業に過失がないトラブルについては、主催企業は責任を負わないことが明確化されます。
参加者とのトラブルのリスクを最小化するため、イベントやプログラムの参加者には、必ず参加同意書を提出してもらいましょう。
同意書と承諾書の間に違いはある?
「承諾書」と「同意書」は実質的に同じで、内容に差はありません。
法令や契約によって「承諾」が必要とされている場合は「承諾書」、「同意」が必要とされている場合は「同意書」を締結するのが通例です。
イベントやプログラムへの参加については、承諾か同意かは特に決まっていないので、「参加同意書」「参加承諾書」のどちらでも構いません。
参加同意書の提出を受けるべきケース
参加同意書の提出を受けるべきなのは、イベントやプログラムなどを主催し、参加者を募る場合です。参加者とのトラブルを防ぐため、イベントやプログラムなどを実施する前に、参加者全員に参加同意書を提出してもらいましょう。
参加同意書のひな形
参加同意書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に参加同意書を作成する際の参考としてください。
※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。
参加同意書に記載すべき内容、例文
参加同意書には、主に以下の事項を記載します。
- 参加することについての同意
- 健康状態に関する表明
- けがなどのリスクに関する同意
- 参加中の注意事項に関する同意
- 免責事項に関する同意
- 中止や変更に関する同意
- 知的財産権に関する同意
- 個人情報の利用目的に関する同意
参加することについての同意
(例)
私は、以下の点について説明を受け、十分に納得したうえで、貴社が行う〇〇(以下「本プログラム」といいます。)に参加することに同意します。
参加するイベントやプログラムの名称などを明記し、注意事項の説明を受けて納得したうえで、参加に同意する旨を明記します。
健康状態に関する表明
(例)
1 本プログラムへの参加に耐え得る、十分な健康状態で参加します。
健康状態に問題がある人がイベントやプログラムに参加すると、事故のリスクが高まります。健康リスクが顕在化した事故の発生を防ぐため、参加同意書において十分な健康状態にあることを表明してもらいましょう。
怪我などのリスクに関する同意
(例)
2 本プログラムの中では、身体に怪我をするおそれがあることを理解したうえで参加します。
身体的なアクティビティを伴うイベントやプログラムでは、参加者が予期せずけがをすることも想定されます。
主催企業側が責任を負い切れないけがが発生する可能性もあるので、参加者にそのことを理解してもらう必要があります。参加同意書において、けがなどのリスクに関する同意を明記しましょう。
参加中の注意事項に関する同意
(例)
3 本プログラムへの参加中は、一切の所持品を自らの責任において保管・管理を行います。
4 本プログラムの運営の妨げとなる行為は一切せず、スタッフの指示に従います。
イベントやプログラムへの参加中に、参加者が注意すべき事項に関する同意を明記します。具体的な注意事項の内容は、イベントやプログラムの内容や性質などに応じて個別にご検討ください。
免責事項に関する同意
(例)
5 本プログラムへの参加中に、貴社の責に帰すべき事由によらず、けがをした場合、他の参加者にけがを負わせた場合、所持品を紛失または毀損した場合、その他の損害を被った場合には、貴社に対し、損害賠償その他一切の請求を行いません。
6 本プログラムへの参加中に発病し、または事故によってけがをした場合は、通院その他の措置についてスタッフの指示に従います。その際、治療費、通院費その他の必要な費用を自ら負担します。
イベントやプログラムへの参加中に何らかの事故が発生した場合には、主催企業側に責任がない限り、損害賠償等の請求を行わない旨を明記しましょう。自己責任で参加することについて、参加者に自覚を促すことができます。
また、イベントやプログラムへの参加中に通院が必要となった場合は、スタッフの指示に従って自らの費用負担で通院する旨も明記しておきましょう。
中止や変更に関する同意
(例)
7 本プログラムは、天候、天災その他の理由により、貴社の判断で中止または変更される場合があることに同意します。
イベントやプログラムは、天候や天災などの不可抗力によって中止または変更せざるを得ないケースがあります。参加者に対してそのことを理解してもらうため、参加同意書において中止や変更に関する同意を明記しましょう。
なお、イベントやプログラムを中止・変更した際の返金対応については、利用規約などの定めに従って行います。
知的財産権に関する同意
(例)
8 本プログラムの実施中に貴社が撮影した写真や映像等について、貴社に対し、肖像権、パブリシティ権、著作権、著作者人格権その他一切の知的財産権を行使しません。
イベントやプログラムの実施中には、主催企業側において写真や映像を撮影することも想定されます。参加者から写真等の掲載差止めや損害賠償などを請求されることを防ぐため、知的財産権を行使しない旨の同意を参加同意書に明記しましょう。
個人情報の利用目的に関する同意
(例)
9 私が貴社に対し提供する個人情報は、貴社のプライバシーポリシーに定める利用目的に従って利用されることに同意します。
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うに当たって利用目的をできる限り特定することが義務付けられています(個人情報保護法第17条第1項)。
また、契約等によって本人から直接個人情報を取得する際には、あらかじめ本人に対してその利用目的を明示しなければなりません(同法第21条第2項)。
上記の個人情報保護法の規定を踏まえて、参加同意書に個人情報の利用目的を明示したうえで、参加者が同意する旨を明記しましょう。
個人情報の利用目的の具体的な内容は、参加同意書において列挙するか、または別途公表しているプライバシーポリシーなどにおいて明示します。
参加同意書の提出を受ける際の注意点
イベントやプログラムを主催する企業が、参加者から参加同意書の提出を受ける際には、以下の各点に注意しましょう。
- 免責事項を記載しても、主催者側が完全に免責されるわけではない
- 同意書の内容は、参加者に対して丁寧に説明する
- 参加者に署名と押印を求める
免責事項を記載しても、主催者側が完全に免責されるわけではない
イベントやプログラムの実施中に発生した事故やトラブルについて、「主催者側は一切責任を負わない」旨を参加同意書に明記するケースがあります。
しかし、このような免責事項を記載しても、主催者側に故意または過失がある事故やトラブルについてまで、主催者側が責任を免れるのは困難です。「免責事項があるから安心」と考えるのではなく、事故等の発生を防げるように最大限の注意を払いましょう。
同意書の内容は、参加者に対して丁寧に説明する
参加同意書には、イベントやプログラムへの参加に関する注意事項について、参加者に十分な理解を促すという目的もあります。読み合わせを行うなどして、参加同意書の内容を参加者に対して丁寧に説明しましょう。
参加者に署名と押印を求める
参加同意書には、参加者に署名と押印をしてもらいましょう。
参加者の署名や、参加者の印章による押印がなされていれば、参加同意書が真正に成立したことが推定されます(民事訴訟法第228条第4項)。もし参加者が偽造や改ざんを主張してきても、その合理的な根拠が示されない限り、参加同意書は有効です。
署名と押印は、どちらか一方でもなされていれば、参加同意書が真正に成立したことを推定させる効果が生じます。署名と押印を両方してもらうことが望ましいですが、参加者の手間を軽減するため、押印については省略することも考えられます。
参加同意書の保管期間・保管方法
イベントやプログラムの参加者から提出を受けた同意書は、参加者とのトラブルが発生することを想定して、きちんと保管しておきましょう。不法行為の時効期間が最長20年間であることを考慮すると、20年間程度は保管しておくことが望ましいでしょう。
また、参加同意書の保管に当たっては、紛失や個人情報の流出などが生じないように注意しなければなりません。
紙の参加同意書は、鍵のかかるキャビネットなどに保管したうえで、鍵を厳重に管理しましょう。電子データの参加同意書は、データにアクセスできる人を必要最小限に絞るため、アクセス権とパスワードを適切に設定しましょう。
参加同意書の電子化は可能?
参加同意書は、電子データで提出を受けることもできます。
その場合は、電子署名を付与してもらうことが望ましいです。パスワードなどを適正に管理することにより、本人が行う電子署名が付されていれば、参加同意書の電子データが真正に成立したことが推定されます(電子署名法第3条)。
紙の参加同意書をスキャンしてデータ化することも考えられますが、原本も破棄することなく保管しておきましょう。
参加同意書には、注意事項や免責事項などを明確に記載しましょう
イベントやプログラムなどを主催する企業は、参加者とのトラブルのリスクを最小限に抑えるため、事前に参加者全員から参加同意書を提出してもらいましょう。
参加同意書には、注意事項や免責事項などを明確に記載することが大切です。また、参加同意書の内容について参加者と認識を共有するため、読み合わせなどを通じて丁寧な説明を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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