• 作成日 : 2024年9月3日

消費寄託契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

消費寄託契約書とは、消費寄託を行う際に締結する契約書です。消費寄託とは、預かった物を消費できるものとする寄託契約(=物を預ける契約)のことをいいます。本記事では、消費寄託契約書の書き方やレビュー時のポイントを、条文の具体例を示しながら解説します。

消費寄託契約書とは

消費寄託契約書とは、物を預け、または預かる際に締結する契約書です。預ける側を「寄託者」、預かる側を「受寄者」といいます。

消費寄託の特徴は、受寄者が預かった物を消費できるとされている点です。

通常の寄託では、受寄者は預かった物をそのまま保管しなければなりませんが、消費寄託の受寄者は預かった物を自分で使ったり、売却して手放したりできます。返還時期が到来したら、受寄者は寄託者に対して、預かった物と同種・同等・同量の物を返還すれば足ります。

消費寄託契約書を作成するケース

消費寄託契約書は、市場で調達することが容易な物を、その消費を許すことを前提として預ける(または預かる)際に締結します。

例えば、金融機関と締結する預貯金契約は消費寄託契約に当たります。また、製品の原材料や部品を他社のために融通したり、反対に他社から一時的に提供してもらったりする際にも、消費寄託契約書を締結することが選択肢となるでしょう。

消費寄託契約書のひな形

消費寄託契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に消費寄託契約書を作成する際の参考にしてください。

消費寄託契約書に記載すべき内容

消費寄託契約書には、主に以下の事項を記載します。

①消費寄託の合意|寄託物・消費できる旨

②寄託物の返還

③寄託料

④再寄託

⑤契約の解除

⑥契約の期間

⑦その他

消費寄託の合意|寄託物・消費できる旨

(消費寄託の合意)

第1条 甲は、乙に対し、以下の物品(以下「寄託物」という。)を寄託し、乙はこれを保管することを約して受領する。

(1) 物品名:〇〇

(2) 数 量:〇〇

2 乙は、寄託物を消費することができる。

寄託物を、物品名や数量などによって特定します。また、受寄者が寄託物を消費できる旨(=消費寄託である旨)を明示しましょう。

寄託物の返還

(寄託物の返還)

第2条 本物品の返還時期は、〇〇年〇月〇日とする。

2 前項の返還時期が来る前でも、甲は乙に対して、寄託物の返還を求めることができる。ただし、返還時期の前に返還を請求したことによって乙が損害を受けたときは、甲は乙に生じた損害を賠償しなければならない。

3 第1項の返還時期が来るまで、乙はやむを得ない事由がない限り、寄託物を返還することができないものとする。

4 乙は、甲に対し、第1項の返還時期に、甲の指定する場所において、寄託物と同種、同等、同一数量の物品を返還しなければならない。

寄託物の返還時期を定めます。

返還時期の定めがある場合でも、寄託者はいつでも寄託物の返還を請求できます(民法662条1項)。ただし、返還時期が到来する前に返還を請求したことにより、受寄者が損害を被る場合には、受寄者は寄託者に対して損害賠償を請求できます(同条2項)。

これに対して、受寄者はやむを得ない事由がない限り、返還時期の前に寄託物を返還できません(民法663条2項)。ただし、預金または貯金としての金銭の消費寄託については、金融機関側がいつでも寄託者(顧客)に金銭を返還できるものとされています(民法666条3項、591条2項・3項)。

返還時期が到来したら、受寄者は寄託者に対して、寄託物と種類・品質・数量の同じ物を返還しなければなりません(民法666条1項)。

上記の民法における各ルールを踏まえて、寄託物の返還に関するルールを消費寄託契約書に明記しましょう。

寄託料

(寄託料)

第3条 本契約に基づく寄託料(以下「寄託料」という。)は、月額〇〇円とする。

2 甲は、乙に対し、当月の寄託料を、前月末日までに乙が指定する金融機関に振り込む方法にて支払う。振込手数料は、甲の負担とする。

3 甲が寄託料を前項に定める期日までに支払わなかったときは、乙に対し、当該期日の翌日から支払完了に至るまで年〇%による遅延損害金を支払う。

寄託者が受寄者に対して支払う寄託料について、金額・支払方法・不払い時の遅延損害金などを定めましょう。

再寄託

(再寄託)

第5条 乙は、甲の事前の書面による承諾を得た場合でなければ、本契約から生じる寄託業務を第三者に再委託することができない。

民法上、受寄者による寄託物の再寄託は、寄託者の承諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときでなければ認められないものとされています(民法658条2項)。

ただし、契約によって別段の定めをすることは可能です。再寄託を認める場合には、その旨を消費寄託契約書に明記しましょう。

なお消費寄託の場合、寄託物を消費することは当然に認められます。

契約の解除

(契約解除および期限の利益の喪失)

第6条 甲及び乙は、次にかかげる事由の1つに該当する事由が相手方に生じたときは、なんらの催告を要することなく本契約の全部又は一部を解除することができる。

① 支払停止又は支払不能の状態に陥ったとき

② 手形又は小切手が不渡りとなったとき

③ 差押え、仮差押え、仮処分、又は競売の申立があったとき

④ 破産、民事再生の手続開始の申立を自ら行ったとき、又は申し立てられたとき

⑤ 営業の取消し、又は停止処分を受けたとき

⑥ その他本契約に定める条項に違反し、かつ相手方からの書面による催告を受領した後4週間以内に是正されないとき

2 甲及び乙は、前項にかかげる事由の1つに該当する事由が生じたときは、本契約から生じるすべての債務について期限の利益を喪失し、直ちにその債務を履行しなければならない。

寄託者または受寄者が、消費寄託契約を解除できる事由を定めます。契約違反については、直ちに契約解除事由とすることもできますが、上記の条文例のように治癒期間(=是正がなされれば解除事由に該当しない期間)を設けることも考えられます。

契約が解除された場合は、消費寄託契約に関するすべての債務について期限の利益を喪失し、相手方に対して直ちに履行しなければならない旨を明記しましょう。具体的には、受寄者は寄託物を直ちに返還しなければならず、寄託者は未払いの寄託料を一括で支払う必要があります。

契約の期間

(契約の期間)

第7条 本契約の有効期間は、第2条で定める返還時期までとする。ただし、期間終了の1ヶ月前までに甲乙いずれからも本契約終了の申入れがない場合には、本契約は同一の条件で1年間延長され、以後も同様とする。

2 本条、第8条、第9条及び第10条の各規定は、本契約終了後も有効に存続するものとする。

消費寄託契約の期間を定めます。上記の条文例のように、自動更新を定めることも考えられます。

また、契約の期間・損害賠償・合意管轄などの規定については、契約終了後も有効に存続する旨を明記しておきましょう。

その他

上記のほか、消費寄託契約書には損害賠償・合意管轄・誠実協議などの条項を定めることがあります。

消費寄託契約書を作成する際の注意点

消費寄託契約書を締結する際には、民法における寄託の規定を踏まえて条文をチェックすることが大切です。

消費寄託契約において明示的に排除されていない場合は、民法の寄託の規定が適用されます。また、契約によって異なる定めがなされていても、民法の規定が強制的に適用される場合もあるので注意が必要です。

把握していない民法の規定が適用されると、当事者にとって予期せぬ結果が生じてしまいかねません。民法においてどのようなルールが定められているのか、契約を締結する前に必ず確認しましょう。

また、寄託者と受寄者の間のトラブルを避けるには、消費寄託の条件を明確な文言で定めることが大切です。曖昧な部分を残さないように、締結前の段階で契約書全体を慎重にチェックしましょう。

消費寄託契約書は民法のルールに要注意|照合しながら作成しましょう

消費寄託契約書は、市場で調達することが容易な物を融通し合う際に締結されることが多い契約書です。例えば製品の原材料や部品を融通し合う際には、消費寄託契約書を締結することが考えられます。

消費寄託契約書を作成する際には、民法における寄託の規定が適用される点に注意が必要です。予期せぬ形で民法のルールが適用されて、慌てることがないようにしましょう。

消費寄託契約書の条文を作成するに当たっては、民法のルールと照合しながら内容を検討しつつ、明確な文言で疑義のない記載を心がけましょう。必要に応じて専門家のリーガルチェックを受け、適切な内容で消費寄託契約書を作成してください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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