- 作成日 : 2022年11月11日
住宅ローンも電子契約で完結できる?メリットや手続きの流れも解説
かつては、住宅ローンの手続きは借り手と金融機関職員が対面して金融機関の店頭で行うのが一般的でした。しかし最近では店頭ではなく、オンラインで電子契約による住宅ローンの手続きができる金融機関が増えています。
この記事では、住宅ローンを電子契約で行う場合のメリット、手続きの流れのほか、住宅ローン控除やすまい給付金が電子申請でできるかどうかについても解説していきます。
目次
住宅ローンも電子契約で完結できる?
電子契約とは、これまでのような紙の契約書に印鑑を押印していた方法に代わって、電子文書に電子署名することで締結する契約です。 電子署名された電子文書は、サーバー上などに保管されます。
一定の要件を満たす電子署名が行われた電子文書は、電子署名法によって、真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定されます。民事訴訟法第228条第4項で規定されている紙文書に対する署名や押印と同等の法的効力を与えるものです。
e-Govでの電子申請などの公的な手続の際、認証局という第三者機関が発行した電子証明書により申請者が送信する電子データが原本であること、改変されていないことを証明することがあり、これは書面による手続における実印、印鑑証明書に相当するものとされています。
電子署名法により、要件を満たす電子署名には、紙文書への署名や押印と同様に真正に成立したもの(本人の意思に基づき作成されたもの)と推定される法的な効力が認められているため、住宅ローンもオンラインの電子契約で行うことができるわけです。
以前からインターネットの金融機関では、オンラインの電子契約による住宅ローンはありましたが、現在では店舗型の金融機関でも電子契約の住宅ローン手続きができるところが増えています。
住宅ローンを電子契約で行うメリットとは?
では、住宅ローンを電子契約で行う場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
銀行に来店する必要がなくなる
まず挙げられるのは、金融機関の店舗に足を運ぶ必要がなくなるということです。インターネットで自宅にいながら、都合のよい時間に手続きすることができます。そこで金融機関側でも24時間365日利用可能としているケースが一般的です。
紙による契約では金融機関の窓口に行くだけでなく書類の郵送が必要な場合もあり、書類が届くまでに時間がかかっていました。電子契約では郵送も不要となるため、申請手続きから契約締結、借り入れまでの時間が短縮されます。
ただし、金融機関によっては電子契約を借入人との住宅ローン契約に限定し、担保提供者、連帯保証人との契約については窓口で契約しなければならないところもあります。
また、抵当権設定の登記手続きは、基本的に司法書士との対面による手続きとなります。
署名・捺印が不要になる
本来、直筆の署名・捺印はなりすましや情報の改ざんを防ぐものです。
電子契約では、認証局からの電子証明書によって電子署名が署名・捺印に代わるものとなります。さらにタイムスタンプが併用されることもあります。
タイムスタンプは、それが刻印されている時刻にその電子文書が存在していること(存在証明)、その時刻以降電子文書が改ざんされていないこと(非改ざん証明)を証明するものでです。
印紙代がかからない
紙による契約では、住宅ローンの契約時には住宅ローン契約書を作成します。印紙税法によって第1号文書(金銭消費貸借契約書)に該当するため、所定の印紙代を納めなければなりません。
例えば、契約書に記載された金額が、500万円を超え1,000万円以下の場合は1万円、1,000万円を超え5,000万円以下であれば、2万円が印紙税額となります。
出典:国税庁
しかし電子契約で住宅ローンの手続きをした場合は、収入印紙そのものが不要となり、こうした印紙代がかからなくなります。
浮いた印紙代を新居に必要な家電や家具の購入代金に充てることができるでしょう。
住宅ローンの電子契約手続きの流れは?
住宅ローンの電子契約の手続きは、金融機関によって必ずしも同じではありません。ここでは、一般的な手続きの流れを紹介しておきましょう。
電子契約の利用申込み
まず、住宅ローンの審査を受けるための申込みをすることになります。Web上で申込みができる場合、画面の案内に従って手続きを進めます。入力漏れがあるとその先の手続きに進めることができないため、間違って手続きをしてしまう心配はないでしょう。
不明な点がある場合、担当者にメッセージを送信すれば解決できます。
事前審査
上記の利用申込みの手続きの際に事前審査内容をオンラインで登録するのが一般的です。登録によって住宅ローンの契約または融資の予約が成立するわけではありません。
借入希望額など、審査に必要な情報を入力することで事前審査が行われます。その後、メールで結果が通知されるとともに、その後の手続き等の案内があります。
なお、電子契約の利用申込みの条件として口座開設が必要な金融機関もあります。また、審査通過後に口座開設に進む場合もあります。
ユーザー登録
審査に通った場合、ユーザー登録に進みます。手続きの案内に記載されたQRコード(またはURL)でログイン画面にアクセスした後、発行されている仮ユーザーIDと仮パスワードでログインし、登録をします。
その際、申込み内容の確認と同意、仮パスワードの変更のほか、必要書類をアップロードすることになります。書類は、借り入れする本人によって異なるため、金融機関から案内されます。
ID・パスワードについては、金融機関によっては、本人限定受取郵便で郵送するケースもあります。
借入契約手続き
Web上で電子契約サービスを利用し、電子署名によって借入契約を締結します。
認証局から電子契約用PINコードが送信されたら、電子契約サービスにログインし、契約内容を確認のうえ、電子契約用PINコードを入力して手続きを済ませます。
契約手続きが完了すれば、開設している銀行口座に借入金額が振り込まれます。
住宅ローンの電子契約を行う際の注意点は?
メリットの大きい住宅ローンの電子契約ですが、注意点もあります。
契約する環境はあるか
インターネットを利用するシステムであるため、インターネット接続できる環境が不可欠です。もちろん、パソコン、タブレット端末、スマートフォンなどのデバイスも必要になります。
金融機関の利用にあたっての推奨環境を確認しておきましょう。
資金用途は大丈夫か
電子契約に限らず、住宅ローンの用途に制限を設けているケースもあります。
基本的に新築物件(マンション・戸建)の購入、中古物件(マンション・戸建)の購入、住宅の新築、増改築(リフォーム)、ほかの金融機関から借り入れ中の住宅ローンの借り換えなどの使途は認められますが、融資を受ける本人が住むことが条件とされています。
また、車庫、カーポート、太陽光発電の工事費については、金融機関によって借り入れの対象としないこともあります。
住宅ローン控除やすまい給付金も電子申請できる?
住宅ローンだけでなく、関連する行政手続きも電子申請で行うことができます。
住宅ローンを利用して住宅を購入した人が、所得税の税額負担の軽減を受けられる制度に「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」があります。
会社員が年末調整で住宅ローン控除を受けたい場合、住宅借入金等特別控除申告書を提出することで控除を受けることができます。
従来、税務署から送付されてきた申告書に本人が手書きで記入し、勤務先の担当者に渡す方法で提出していました。
しかし、2020年10月以降、電子データで会社に提出できるようになりました。
住宅ローンについては下記記事もご覧ください。
また、消費増税の負担を軽減させるために2014年に新設された制度に「すまい給付金」という補助金があります。なお、すまい給付金制度は、消費税率の引上げられる平成26年4月以降に引渡された住宅から、令和3年12月31日までに引渡され入居が完了した住宅を対象に実施しています。ただし、一定の期間内に契約した場合は、令和4年12月31日までに引渡され入居が完了した住宅が対象です。
収入などの条件により、最大で50万円まで支給を受けることができるものです。
住宅ローンで電子契約を利用している場合も利用できます。
しかし、残念ながら、インターネットでの申請はできません。すまい給付金申請の窓口に提出あるいは郵送する必要があります。
すまい給付金については下記記事もご覧ください。
住宅ローンも電子契約で完結できることを知っておこう!
会社員の場合、住宅ローンの契約締結のために、何度も金融機関の窓口に出向き、そのたびに有給休暇を取らなければならないこともあります。
しかし、電子契約であれば自宅で24時間いつでもでき、さらに印紙代もかかりません。これは大きなメリットです。
これから住宅ローンの利用を考えている方は、電子契約の利用を検討する価値は十分にあるでしょう。
よくある質問
住宅ローンも電子契約で完結できる?
電子契約で締結できます。詳しくはこちらをご覧ください。
住宅ローンの電子契約手続きの流れは?
一般的には、①電子契約の利用申込み、②事前審査、③ユーザー登録、④借入契約手続き、という流れになります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
電子契約の導入が自治体で加速!?地方自治法施行規則の改正とは
令和3年1月、地方自治体(地方公共団体)の電子契約締結に際して要求される措置を定める地方自治法施行規則が改正され、電子証明書が不要になりました。電子証明書が障害となり、印紙を付した契約書を取り交わしていた民間企業は、クラウド型電子署名等だけ…
詳しくみる電子契約とは?仕組みやサービス導入のメリット、比較ポイントを解説
電子契約とは、電子的に作成した契約条項について、電子署名等を施して締結する契約のことです。電子データのやり取りのみで契約を締結できることが特徴で、電子契約サービスを活用することで契約業務の効率化も見込める一方で、一部電子化が認められていない…
詳しくみる電子化できる契約書とできない契約書一覧 – 関連する法律から紹介!
近年はさまざまな分野でデジタル社会に向けた取り組みが行われており、契約書についても電子化の流れが進んでいます。ただし、すべての契約書を電子化できるわけではなく、電子化が可能な契約書とそうでない契約書があります。 この記事では、電子化できる契…
詳しくみる個人事業主はどの電子契約サービスを使うべき?選び方を解説
リモートで取引を行う機会が増えたり副業が認められたり、個人で仕事を請けやすい環境が徐々に整ってきています。クラウドサービスの普及も進んでおり、その1つに電子契約サービスがあります。 ここでは電子契約サービスを利用することで個人事業主の方はど…
詳しくみる消費者契約法とは?契約の取消権が有効なケースや最新の改正を簡単に解説
消費者契約法とは消費者と事業者間の情報量や交渉力の格差を是正し、消費者の利益を守るための法律です。一般消費者を相手方にサービスを展開している企業の方は、消費者契約法を正確に把握しておく必要があります。悪意がなくても、営業方法によっては契約が…
詳しくみる電子契約の要件とは?各種法律をもとに解説
電子契約を行う場合、さまざまな法律の要件を満たす必要があります。ここでは、電子契約に関連が深い3つの法律、「電子署名法」「e-文書法」「電子帳簿保存法」からその要件を解説するとともに、電子契約の注意点を紹介します。 電子契約の要件に関わる法…
詳しくみる