• 作成日 : 2023年9月15日

広告審査とは?具体的な業務フローや関連する法律を解説

企業が広告を掲出する際には、表現や内容が適切かどうかについて広告審査を行う必要があります。景品表示法・消費者契約法・薬機法・健康増進法・金融商品取引法など、適用される法律の内容を踏まえて広告審査を行いましょう。広告審査の業務フローや関連する法律、注意点などを解説します。

広告審査とは

広告審査とは、企業が掲出する予定の広告につき、表現や内容が適切かどうか、社内で事前に審査することを指します。

広告については景品表示法をはじめ、さまざまな法律が適用されます。誇大広告などは違法であり、掲出した企業は行政処分や刑事罰を受ける可能性があります。そのため、法律に従って適切に広告審査を行うことが大切です。

広告審査の対象・必要なタイミング

広告審査は、顧客を誘引するために行う広告すべてについて実施するべきです。広告審査の対象としては、主に以下の例が挙げられます。

    • テレビCM
    • 動画広告
    • 新聞広告
    • アフィリエイト広告
    • 商品パッケージ など

広告審査を行うタイミングは、実際に広告を掲出する前です。不適切な広告表現が世に出てしまわないように、必ず掲出前に広告審査を行いましょう。

広告審査の業務フロー

広告審査は、以下の流れで行います。

  1. 広告審査の受付所管部門から広告審査を受付します。申請書をフォーマット化し、受付窓口を一本化すると、審査業務の効率化につながります。
  2. 広告内容のチェック掲出予定の広告内容を、景品表示法等の法令に違反していないか、ユーザーに誤ったメッセージが伝わらないかなどの観点からチェックします。
  3. 広告内容の修正・確定広告内容に問題がある場合は、所管部門に修正を求めます。修正を経て審査を通過した広告は確定とし、掲出に向けて準備を進めましょう。
  4. 広告の掲出確定した広告を実際に掲出します。念のため、その前に広告審査における修正点が正しく反映されていることを確認しましょう。

広告表現に関する主な法律

広告表現については、主に以下の法律が適用されます。適用される法律のポイントを踏まえて、広告審査を適切に行いましょう。

  1. 景品表示法
  2. 消費者契約法
  3. 薬機法
  4. 健康増進法
  5. 金融商品取引法

景品表示法

不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)は、事業者が一般消費者向けに行う広告に適用されます。

景品表示法では、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他の不当表示」が禁止されています(景品表示法第5条)。

  1. 優良誤認表示商品・サービスの品質や規格などの内容につき、事実に反して実際のものまたは競合他社のものよりも著しく優良であると示す不当表示
  2. 有利誤認表示商品・サービスの価格などの取引条件につき、事実に反して実際のものまたは競合他社のものよりも著しく有利であると示す不当表示
  3. その他の不当表示以下の表示
    • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
    • 商品の原産国に関する不当な表示
    • 消費者信用の融資費用に関する不当な表示
    • 不動産のおとり広告に関する表示
    • おとり広告に関する表示
    • 有料老人ホームに関する不当な表示

※2023年10月から「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(いわゆるステルスマーケティング)が追加

消費者契約法

消費者契約法は、事業者が消費者に対して行う、契約締結に向けた具体的な勧誘行為に適用されます。

事業者によって以下の勧誘行為がなされた場合、消費者は締結した契約を取り消すことができます(消費者契約法第4条)。

  • 契約上の重要な事項について、事実と異なる説明をした
  • 不確実な事項を「確実である」と説明した
  • 消費者に不利益な情報を告げなかった
  • 消費者が退去を求めたのに、消費者の自宅や勤務先などに居座った
  • 退去しようとする消費者を強引に引き留めた
  • 勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行して勧誘した
  • 威迫的な言動を用いて、他人に相談しようとする消費者を妨害した
  • 社会経験不足に付け込み、将来の不安を煽るような方法で勧誘した
  • 恋愛感情など、好意の感情を不当に利用して勧誘した(デート商法)
  • 判断能力の低下に付け込み、不安を煽るような方法で勧誘した
  • 霊感など合理的に実証困難な知見に基づいて、不安を煽るような方法で勧誘した(霊感商法)
  • 契約締結前にサービスを提供し、締結を拒否しようとする消費者に損失補償を要求した
  • 消費者のニーズと比較して、あまりにも多すぎる量や回数の契約をさせた(過量契約)

薬機法

医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品(以下「医薬品等」と総称します)の広告に適用されます。

医薬品等については、以下の広告が禁止されています。

  1. 虚偽または誇大な広告(薬機法第66条第1項)
  2. 医師などが効能・効果・性能を保証したと誤解されるおそれがある広告(同条第2項)
  3. 堕胎を暗示し、またはわいせつにわたる広告(同条第3項)
  4. 承認前の医薬品・医療機器・再生医療等製品に関する広告(同法第68条)

健康増進法

健康増進法は、食品の広告に適用されます。

食品については、以下の事項について著しく事実と異なる広告、または著しく人を誤認させるような広告が禁止されています(健康増進法65条1項、健康増進法に規定する特別用途表示の許可等に関する内閣府令19条)。

  1. 健康の保持増進の効果
  2. 含有する食品または成分の量
  3. 特定の食品または成分を含有する旨
  4. 熱量
  5. 人の体を美化し、魅力を増し、容ぼうを変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つことに資する効果

金融商品取引法

金融商品取引法は、金融商品取引業者(証券会社など)が行う広告に適用されます。

金融商品取引業者の広告には、商号・登録番号・損失リスクなど法定事項の表示が義務付けられています(金融商品取引法第37条第1項)。

また、取引による利益の見込みなどにつき、著しく事実と相違する表示や、著しく人を誤認させる表示は禁止されています(同条第2項)。

広告審査時に気をつけるべきポイント

広告審査は、以下のポイントに留意して行いましょう。

  1. 適用される法令を漏れなく把握する
  2. 法律に加えて、所轄官庁のガイドラインを確認する
  3. 保守的に審査を行い、少しでも疑義のある広告表現は差し替える
  4. 複数の担当者が審査を行い、違反表現のチェック漏れがないようにする

法令・ガイドラインに従った適切な広告審査を

法令違反の表現が含まれた広告を掲出した事業者は、行政処分や刑事罰の対象となる可能性があります。適用される法令のルールを正しく理解した上で、掲出予定の広告に違反表現が含まれていないかどうか、広告審査を慎重に行いましょう。


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