• 更新日 : 2024年8月30日

公演契約書とは?ひな形をもとに記載項目やレビューポイントを解説

演劇や音楽などの公演を行う際は、主催者と出演を依頼された演者側で「公演契約」という契約を締結します。

この記事ではひな形を交えながら公演契約書に必要な項目をわかりやすく説明します。ぜひ参考にして公演契約書を作成してみましょう。

公演契約書とは

公演契約とは演劇や音楽、舞踊、バレエなどの公演の主催者と、それに出演する演者(俳優や演奏家、芸能人、アーティスト)側が締結する契約です。詳しい項目は後述しますが、公演の概要や出演日時、報酬などの取り決めが記載されています。「出演依頼契約」「出演契約」とも呼ばれ、出演の依頼が確定した後に契約を締結します。

演者がマネジメント会社やプロダクションに所属している場合は、主催者と演者の所属会社が公演契約を締結し、演者は別途会社とマネジメント契約を締結するのが一般的です。演者がフリーランスである場合は主催者と演者本人が契約を締結します。

公演契約書のひな形・テンプレート

公演契約書を締結する際は、ひな形もとに契約書を作成すると効率的です。下記ページより、公演契約書のワード形式のひな形を無料でダウンロードできるので、ぜひご活用ください。契約者名や公演の概要、日時などを必要に応じて書き換えて、公演契約書を作成ください。

公演契約書に記載する主な項目

ここからは実際に公演契約書に盛り込むべき項目と記載内容をご説明します。ひな形をもとに解説しますので、より理解を深めたい方は、ひな形もダウンロードして参照しながら以下の記事を読み進めていただければと思います。

契約者名

まずは誰と誰が契約を締結するのか、を記載します。出演を依頼する主催者名と、それを請けるマネジメント会社名もしくは演者の氏名を記載します。演者側を「甲」、主催者を「乙」というように置き換えることで、この先正式名称を記載する手間が省けます。

公演の概要

次に公演の名称や出演概要(役柄など)、会場名などの公演に関する情報を簡潔に記載します。やはり公演の名称を「本公演」と記載することで、契約書の作成にかかる手間を省くことができます。

出演とリハーサルの日時

出演がある日と時間とリハーサルの日時を正確に記載します。

報酬

報酬の金額と支払い方法について記載します。特に金額については「◯◯円」と明確にしておきましょう。分割払いの場合は、支払いのタイミングごとの支払金額も記載します。また、リハーサル代や移動日拘束料を含めるか含めないかについても明らかにしておくことが重要です。

権利

主催者が公演のチラシやパンフレット、CM、Web動画や音声などに演者の氏名や写真、肖像画、経歴などを掲載する際のルールについて定めます。

著作権の譲渡

公演に際して演者側が有する著作権を主催者側に譲渡する旨と著作権譲渡の対価について定めます。

契約期間

契約の効力が発生する時期と契約が終了する時期を記載します。公演契約では一般的に締結日から報酬の支払い完了までを契約期間とすることが多いようです。

契約解除

契約期間中に契約が解除できる条件を記載します。一般的には相手方が契約違反行為をした場合に解除できるという条件を設けます。

損害賠償

相手方の行為によって損害を被った際に、その相手方に損害賠償が請求できる旨を記載します。

反社会的勢力の排除

両当事者が暴力団やそのフロント企業、総会屋などの関係者でないことを確約する条項です。また、相手方が反社会的勢力の関係者であったことが発覚した際の対処法についても記載します。

協議

契約書に従って解決できないなんらかの問題が発生した場合は、双方が話し合って解決を目指す旨を記載します。

合意管轄

話し合いでは解決できないようなトラブルが発生した際に裁判を起こす裁判所名を明記します。

公演契約書の必要性

公演契約を含め、実は契約は契約書がなくても締結することができます。たとえば対面や電話で主催者側が「今度の舞台に出てよ」「またよろしく」というように口頭で演者側に伝え、演者側がそれに同意した時点で公演契約が成立します。特にツーカーの仲だとこうした口約束だけになりがちです。

しかし、後々報酬の額や公演の内容、演者による無断キャンセルや主催者都合による公演の中止といった相手方の不誠実な対応など、さまざまな問題が発生するおそれがあります。その際に契約書がないと主催者側と演者側が「言った・言わない」のトラブルにも発展しかねません。

しっかりと契約書で契約内容とそれに相手方が同意した旨を証拠として残しておくことで、スムーズな問題の解決につながります。

公演契約書をチェックする際のポイント

以上で公演契約書の基本的な書き方をご紹介しました。最後に公演契約を締結する際に主催者側、演者側が意識しておくべきポイントについて見ていきましょう。

業務範囲と報酬金額を明確にする

まずは業務の範囲と報酬の金額を明確にしておきましょう。いつ、どのような公演に出演するのか?リハーサルや練習、会場への移動も報酬の支払い対象になるのか?どのような役柄を演じるのか?報酬額はいくらになるのか?を双方でしっかりとすりあわせ、内容に納得したうえで契約書に署名・押印しましょう。

著作権の取り扱い

公演は主催者が企画・運営しますが、著作権は出演者である演者側に帰属するのが一般的です。そのため、演者側から著作権を譲渡してもらわないと主催者は公演の映像や音声を無断で使うことができません。

主催者がビデオやCDなどを販売したりネットで配信したりする場合は著作権の譲渡やそれに伴い演者側に支払う対価についても契約に盛り込みましょう。また、演者側は著作権を譲渡してもよいかどうか、しっかりと検討しておくことが大切です。

未成年者の場合は保護者の同意が必要

満18歳以下の人が契約を締結する際には親権者(親など)の同意が必要です。たとえば未成年のアイドルや子役に出演を依頼する場合、必ず本人だけではなく保護者の意向も確認し、契約書には親権者の署名・押印欄も設けて同意を得ましょう。

相手方が反社会的勢力の関係者でないかを確認する

近年芸能人が暴力団などの反社会的勢力と交際している事実が発覚するケースが相次いでいます。演者側と反社会的勢力が関係を持っていることが明らかになった場合、大きなスキャンダルとなり主催者側にも多大な影響が及ぶ場合があります。契約書にはしっかりと反社会勢力の排除を盛り込み、演者側の素性をしっかりと確認しておきましょう。

また、逆に反社会的勢力とつながりがある主催者の公演に出演して演者側が影響を受けてしまうケースも考えられます。演者側も主催者がどのような会社・団体なのかをしっかりと確認しておくことが大切です。

収入印紙を貼付する

契約書などの課税文書を作成する際には印紙税を納めて収入印紙を貼付する必要があります。公演契約書は「請負に関する契約書」に該当し、記載された報酬額に応じて収入印紙を購入し、契約書に貼付しなければなりません。報酬額が1万円未満であれば非課税ですが、1万円超え100万円以下の場合は200円、100万円超え200万円の場合は400円の収入印紙を購入します。印紙税額は国税庁のホームページに記載されているので、そちらを参照しましょう。

参考: No.7102 請負に関する契約書|国税庁

なお、電子契約の場合は印紙税を支払う義務はありません。

口約束ではなく、内容をしっかりと詰めて公演契約書で契約を締結しよう

契約は口約束でも成立しますが、証拠が残らないため後々「言った・言わない」のトラブルになった際には泥沼化するリスクがあります。

公演依頼をする際、依頼を請ける際には、しっかりと詳細まで内容を詰めて公演契約書を作成し、書面や電子契約で契約を締結しましょう。


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