- 作成日 : 2024年9月26日
動産贈与契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
動産贈与契約書とは、動産を贈与するときに作成する契約書です。贈与は自身の財産を無償で与えることを示し、相手が受諾することで効力を生じますが、口頭で実施すると言った言わないのトラブルが発生する可能性があるため、契約書を作成するほうが良いでしょう。動産贈与契約書の具体例や、書き方のポイントを解説します。
目次
動産贈与契約とは
動産贈与契約とは、動産を贈与するための契約です。民法では、与える側と受諾する側の意思だけで贈与契約は成立すると定められていますが、口約束では言った言わないのトラブルが生じる可能性があるため、贈与内容を明記した契約書を作成するようにしましょう。
第549条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
出典:民法|e-Gov法令検索
なお、動産とは不動産以外のもののことです。土地およびその定着物を不動産と呼ぶため、動産は土地や建物ではないものを指します。
動産贈与契約を締結するケース
動産贈与契約を締結することで、贈与の事実を文書で示せるようになります。次のようなケースでは、動産贈与契約を締結するほうが良いでしょう。
- 贈与の約束はあるものの、まだ履行されていないとき
- 相続トラブルに発展する可能性があるとき
贈与は口約束でも成立しますが、贈与すると約束した側が「あげるとは言っていない」「そのような約束はしていない」と前言を翻すかもしれません。何をいつどのように贈与するのか書面で証拠を残すためにも、動産贈与契約を締結し、契約書を作成しておきましょう。
また、相続前に贈与を受ける場合も、動産贈与契約を締結しておくほうが望ましいと考えられます。
契約書がないとどのような贈与を受けたのか客観的に示せないため、他の相続人から実際よりも多くの財産を生前贈与で受け取っていると誤解され、遺産分割協議が長引く可能性があります。期限までに相続税申告・納税を完了させるためにも、動産贈与契約書を作成し、贈与財産を明示できるようにしておきましょう。
動産贈与契約を締結するメリット
動産贈与契約を締結することには、次のメリットがあります。
- 遺産分割時に贈与契約の成立を証明できる
- 相続税発生時に計算対象外となる
それぞれのメリットを解説します。
遺産分割時に贈与契約の成立を証明できる
相続発生から7年以内の贈与に関しては、相続の対象となります。動産贈与契約書があれば、どの財産をいつ贈与したかが明確になるため、遺産分割時のトラブルを回避しやすくなるでしょう。
たとえば、贈与者が死亡する5年前に子の1人に2,000万円の現金を贈与したとします。動産贈与契約書がなければ、受贈者が贈与の事実を隠し、本来受け取れる以上の相続財産を受け取るかもしれません。受贈者以外の相続人が不利益を被らないためにも、動産贈与契約書が必要です。
また、周囲が贈与の事実を知っている場合も、動産贈与契約書は役立ちます。受贈者が「2,000万円の財産を受け取った」と主張しても、周囲が「実際はもっと受け取っているのでは?」「意図的に贈与財産を少なく言っているのでは?」と疑うかもしれません。動産贈与契約書があれば、どのような財産をいつ贈与したかが明確になるため、受贈者の主張を裏付ける根拠になります。
相続税発生時に生前贈与の証明となる
相続税対策として、生前贈与を実施する人は少なくありません。しかし、贈与の方法によっては相続税の課税対象となり、節税するどころか、かえって税負担が大きく圧し掛かることもあります。動産贈与契約書を作成しておけば、贈与がいつ誰に実行されたことを証明でき、相続発生時に正確に税計算できます。
たとえば、受贈者の無駄遣いをおそれて、あえて受贈者に財産を渡さず、受贈者名義で口座を開設して贈与額を振り込むケースもあるでしょう。この場合、受贈者は受け取った財産を自由に利用できないため、贈与財産は相続時に提供されたと考えられ、相続税の課税対象となることがあります。
しかし、あらかじめ動産贈与契約書を作成しておくと、口座に振り込まれたお金が名義預金ではなく受贈者が実際に利用できるお金であることが明らかになり、贈与された財産であることを証明することが可能です。
動産贈与契約書のひな形
動産贈与契約書を作成するときは、対象財産や贈与が発生した日、誰から誰への贈与なのかが明確にわかるようにしなくてはいけません。遺産分割時や相続税計算時に証拠書類として活用するためにも、抜け漏れのないように作成することが必要です。
法的に有効な契約書を作成するためにも、ひな形を活用することがおすすめです。以下から動産贈与契約書のひな形をダウンロードしてご利用ください。なお、ダウンロードは無料です。
動産贈与契約書に記載すべき内容
動産贈与契約書には以下の項目を含めます。
- 贈与の合意
- 引渡し
- 費用負担
- 損害賠償
- 合意管轄
- 協議
それぞれの項目に含める内容を紹介します。
贈与の合意
贈与契約は、贈与者の一方的な意思表示だけでは成立しません。贈与者の意思と、それを受諾する受贈者の意思の合意があってはじめて贈与契約が成立します。動産贈与契約書の冒頭には、以下のように贈与者・受贈者の氏名を記載しておきましょう。
贈与者・受贈者を明確にした後で、贈与対象を記載します。
物品名:
型番:
なお、現金や美術品など型番のないものもあります。贈与する動産に合わせて、必要な情報を記載しておきましょう。
引渡し
引渡しの時期についても動産贈与契約書内で明記します。
現金なら「乙の口座(銀行口座情報)への振込みをもって引き渡す」など、贈与する財産によって適切な引渡し方法を指定します。
費用負担
贈与に費用が発生する場合は、どちらが費用を負担するのかについても明記します。例えば、現金なら振込手数料、美術品や楽器などなら送料が発生することもあります。
損害賠償
贈与関連でトラブルが起こった場合に備え、損害賠償についても決めておきます。
贈与対象が自動車や機械などの場合、使用したことでトラブルが発生することもあります。例えば、贈与によって受け取った自動車を運転し、交通事故を引き起こすかもしれません。贈与する財産によっては、以下のように使用中に生じたトラブルについてもあらかじめ責任の範囲を決めておくようにしましょう。
合意管轄
贈与により、訴訟の必要が生じる可能性もあります。万が一に備えて、裁判所についても決めておきましょう。贈与者の居住地を管轄する裁判所なら、訴訟時もアクセスしやすく、移動の負担を軽減できます。
協議
トラブルの内容によっては、訴訟ではなく協議が必要になることもあります。万が一に備えて、協議時の原則も定めておきましょう。
動産贈与契約書を作成する際の注意点
動産贈与契約書を作成するときは、次の2点に注意が必要です。
- 契約内容を細部まで確認する
- 印紙税が必要か確認する
通常、贈与は親しい間柄で実施されます。しかし、親しいからといってトラブルが発生しないわけではありません。対象財産や贈与する日、贈与方法などが正確に契約書に記載されているか、細かく確認しておきましょう。
また、現金や自動車などの贈与では印紙税は不要ですが、船舶や航空機などを贈与するときには印紙税が必要です。契約書に正確な金額の収入印紙を貼付してください。なお、贈与は無償契約のため、贈与財産の価値に関わらず印紙税額は200円です。
動産贈与契約書を作成する流れ
動産贈与契約書は、以下の流れに沿って作成します。
- 贈与財産について贈与者・受贈者が合意する
- 贈与する日やその他の契約内容に合意する
- 動産贈与契約書を2通作成する
- 贈与者・受贈者の双方が動産贈与契約書を保管する
贈与は、贈与者の意思と受贈者の意思によって成立するため、双方の認識を確認しておくことが大切です。贈与対象となる財産を正確に理解し、贈与者が「贈与したい」と考えている財産を受贈者が「受け取りたい」と思っているのか確認しておきましょう。
贈与・受贈の意思に相違がないことを確認した後で、動産贈与契約書を作成します。動産贈与契約書は2通作成し、それぞれが対であることを示すため、割印をしてください。その後、双方が保管しますが、紛失のリスクが気になるときは公正証書として作成する方法も検討しましょう。
トラブル回避のためにも動産贈与契約書を作成しよう
贈与自体は無償で実施される行為ですが、贈与税や相続税の課税対象になる可能性もあり、受贈者に予想外の負担をかけることにもなりかねません。トラブルなく動産の贈与を実行するためにも、動産贈与契約書を作成し、贈与者・受贈者の意思や贈与内容を確認しておくことが大切です。
動産贈与契約書を作成するときは、贈与対象や贈与方法などを網羅した契約書になるようにひな形を使うようにしましょう。紹介したひな形をベースにすると、抜け漏れのない動産贈与契約書を作成しやすくなります。ぜひ無料ダウンロードをご活用ください。
なお、贈与や相続に関する法的ルールは頻繁に変わります。以下の国税庁のサイトを参考に、常に最新の情報を入手するようにしてください。
参考:相続税・贈与税|国税庁
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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