• 作成日 : 2022年6月17日

雛型付き – 事業譲渡契約書の書き方と注意点

【雛型付き】事業譲渡契約書の書き方と注意点

契約はどれも大切なものですが、自社の今後を左右する事業譲渡契約は経営者のみならず、従業員の行く末にも大きく関わる重要事項です。それだけに、事業譲渡契約書に記載する内容は慎重に検討しなければなりません。

ここでは事業譲渡契約書の意義や記載内容、作成時の注意点などについて詳しく解説します。

   

事業譲渡契約とは

事業譲渡とは、文字どおり自社の事業を第三者に譲り渡すことです。その際に交わすのが事業譲渡契約ですが、譲渡に至る事情はさまざまであり、契約書も各事情に沿ったものとなります。まずは、事業譲渡およびそれにかかる契約について確認しておきましょう。

作成する目的

事業譲渡では、会社が行っているすべての事業を譲渡することも、一部の事業を切り分けて譲渡することも、当事者間の協議で自由に決められます。譲受側は譲渡会社と旧知の間柄である場合もありますが、近年は専門業者の仲介によるM&Aも盛んに行われています。

会社経営における分岐点になり得る重要な行為ですが、事業譲渡自体は会社が所有する有形無形の財産をある程度まとめて第三者に金銭で譲り渡すという会社(法人)主体の取引行為、すなわち売買契約(民法第555条)といえます。

とはいえ、事業譲渡の事情はさまざまです。
例えば、「業績が順調で今後の展望も明るいが後継者がいない」という理由で行う事業譲渡と、「全事業のうち売上が芳しくない事業だけを切り離して現金化したい」という事業譲渡では当事者間の立場を始め、事情が大きく異なります。
事業譲渡では、個別事情に応じて会社の事業をどれだけ、どのような形で譲渡するか、また事業譲渡に付随する項目(取引先や従業員など)をどうするかなどについて、細かく協議し決定する必要があります。
その契約内容をまとめたものが、事業譲渡契約書です。

事業譲渡契約書は、各当事者の意思を漏れなく記して互いが納得したうえで、それを実現するための重要な書類といえます。

株式譲渡と事業譲渡の違い

株式譲渡とは、自身が所有する会社の株式を第三者に譲り渡すことです。経営者が100%を所有している自社発行株式をすべて譲渡すれば、会社の経営権は譲受側に移転します。また、一部の株式を譲渡することもできます。

一方で事業譲渡は、譲受人が取得するのは会社の事業(の一部)であり、経営権ではありません。株式譲渡は経営者が個人として行う行為ですが、事業譲渡は会社が主体となって行う取引行為です。
したがって、事業譲渡の対象になっていない事業に関する経営について、相手方に経営権も譲渡する場合は、別途株式譲渡契約も交わす必要があります。

事業譲渡契約書を作成する際の注意点

事業譲渡契約書を作成する際の具体的な注意点を、項目ごとに見ていきましょう。

譲渡対象の範囲

前述のとおり、当事者は譲渡する事業を自由に決められるため、譲渡対象となる事業の範囲を「当社における○○事業に関する資産と債権債務」というように特定しなければなりません。
事業をすべて譲渡する場合でも、負債も譲り渡すのか、契約時までに発生した利益はどう処理するかといった付随事項が多くあるため、「全事業を譲渡する」の一言だけでは不十分です。

従業員の転籍

譲渡する事業とともに従業員も譲受側に承継させるのか、従業員は譲渡側に残るのかについても定めなければなりません。
これについては、契約当事者のみで決めることはできません。従業員が譲受側に移る場合、該当する従業員にとって会社が変わるのは重要な問題であるため、個別に合意を得て譲渡先と労働契約を結ぶことが法令上求められています(民法第625条1項)。したがって、従業員を転籍させる際は、あらかじめ合意を得たうえで契約書に記載するか、譲渡会社に残るのか、退職するのかなどを明らかにしましょう。

商号続用時の免責登記

例えば、ある会社が自社の飲食店チェーン事業のみを他社に譲渡し、譲受会社が従前の飲食店の商号を継続して使用する場合は、会社法で「その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う」と規定されています(会社法(以下同)第22条1項)。飲食店事業の債権者は、譲渡側、譲受側のどちらが債務の弁済責任を負うかを知らないため、債権者保護のため譲渡会社だけでなく譲受会社「も」責任を負うとしているのです。
ただし、「譲受会社が承継するのは飲食店「事業」のみで、譲渡会社の債務の弁済責任は負わない」という契約であれば、その旨を登記することで免責されます(同第22条2項)。
登記により、従前の債権者は登記簿を見て債務者を正確に把握できるからです。
免責登記には譲渡会社の承諾が必要になるため、その旨を契約書に必ず記載しましょう。また、別途免責登記承諾書を作成する方法もあります。

公租公課の負担

譲渡する事業に関連する税金や保険料等の公租公課の支払い義務について、いつ譲受会社に移転するかを定めて記載します。

競業避止義務に関する記載

譲渡会社は、譲受会社と同一の区域内(市町村及びその隣接地)において、譲渡日から20年間譲渡事業と同一の事業を行うことはできません(同第21条)。これを競業避止義務といいます。ただし、競業避止義務の区域の範囲は当事者間の協議で自由に決められます。また、当事者の合意があれば禁止期間を30年にすることもできます(同第21条2項)し、免除も可能です。したがって、法律の規定と違う形の競業禁止を行う場合はその内容を記載します。

収入印紙

事業譲渡契約書には、譲渡額に応じてかかる印紙税分の収入印紙を貼付します。例えば、譲渡額が1,000万円を超え5,000万円以下なら2万円、1億円を超え5億円以下なら10万円分の収入印紙が必要です。

事業譲渡契約書の雛型・テンプレート

ここで紹介するのは、株式会社同士で事業の一部を譲渡する場合の事業譲渡契約書のテンプレートです。
上記の注意点以外に、一般的な売買契約で記載する売買価額(譲渡額)や支払日、支払方法、商品(譲渡財産)の移転と、それに必要な手続きなどについても記載します。

事業譲渡契約書のテンプレートはこちらからダウンロードできます

事業譲渡契約書は個別事情を漏れなく反映させた内容で作成を

事業譲渡契約にはさまざまな形があり、譲渡する理由や何をどう譲渡するかで契約内容は大きく変わります。また、従業員や取引先など関係者も多いため、彼らに不利益や誤解を生じさせないよう、契約書はすべての事情を漏れなく反映したものでなくてはなりません。作成時には必要に応じて専門家のアドバイスを求め、慎重に仕上げることを心がけましょう。

参考:民法|e-Gov法令検索

参考:会社法|e-Gov法令検索

よくある質問

事業譲渡契約とは?

自社の事業の全部、または一部を第三者に譲り渡す際に交わす契約のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

事業譲渡契約書を作成する目的は?

事業譲渡は取引相手や従業員など関係者が多く、譲渡事業の特定も必要であるため、事業のどの部分をどのような条件で譲渡するのかなどを協議し、明らかにしておくために作成します。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:福谷陽子(元弁護士、法律ライター)

弁護士時代は契約書作成やレビュー、不動産取引や債権回収、破産倒産、一般民事、家事事件など多種多様な事件を取り扱っていた。今はその経験を活かし、専門的な法律知識を一般ユーザーへわかりやすく解説する法律記事の作成に積極的に取り組んでいる。
各種サイトで法律記事を執筆監修。実績は年間1000件以上。ブログやYou Tubeなどによる情報発信にも熱心に取り組んでおりチャンネルを運営中。
元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog
世捨て人mimi
元弁護士の世捨て猫🌟ぴりか(mimi)法律ライター

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