• 更新日 : 2023年11月24日

著作権法とは?概要と事業者が注意すべきポイントをわかりやすく解説

音楽や美術、小説、映像等の作品は著作権法によって取り扱い方法等が制度化されています。著作権法に基づく権利を害する形で著作物を利用することは許されず、企業活動においても留意しないと損害賠償請求を受けるおそれがあります。

具体的に何に気をつけるべきなのか、ここでは著作権法の概要から実務上注意すべきことなどを解説します。

著作権法の概要

著作権法とは、著作物を作った者の権利を守り、正しい著作物の利用を促すための法律です。

世の中には著作物があふれており、多種多様な作品があることによって、私たちは文化的に豊かな生活を送れています。その背景には著作物を作った人物がいて、当該人物の苦労や努力の結果として著作物が生まれています。

こうした文化的な暮らしがより発展していくための制度として確立しているのが「著作権法」です。

著作権法の目的

著作権法の目的は、同法第1条にも明記されています。

(目的)
第一条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もつて文化の発展に寄与することを目的とする。

引用:e-Gov法令検索 著作権法第1条

つまり、著作者の権利について定めてこれを保護し、その延長として文化の発展を目的としています。

労力を費やして著作物を生み出した著作者を報いる仕組みになっているのです。端的にいうと「著作物を利用する方は、許可を得るために使用料を支払う」という仕組みを作っています。こうすることで著作者は創作活動を続けられ、今後も新たな著作物を生み出しやすくなります。

著作権法で保護される「著作権」とは

「著作権」には、①財産権としての著作権と②著作者人格権との大きく2つがあります。そして、①と②にはそれぞれさらに次の権利が含まれています。

権利の種類具体例
著作権
(財産権)
複製権写真撮影、印刷等による複写や録音・録画等、著作物を複製する権利。
上演権・演奏権著作物を多くの人に見せたり聴かせたりする権利。
上映権著作物を映画館等で上映する権利。
公衆送信権Web上で著作物にアクセスできる状態にする権利。
公の伝達権テレビやラジオで著作物を伝達する権利。
口述権著作物を朗読して多くの人に伝える権利。
展示権美術品等の著作物を展示する権利。
頒布権映画をDVD等に複製して販売・貸し出す権利。
譲渡権映画以外の著作物を多くの人に提供する権利。
貸与権映画以外の著作物を多くの人に貸し出す権利。
翻訳権・翻案権等著作物を翻訳したり編曲したりして二次的著作物を作る権利。
二次的著作物の利用権著作物から作られた二次的著作物の利用に関して原作者が有する権利。
著作者人格権公表権自分で作った著作物について、公表・非公表を決定する権利。
氏名表示権著作者名の表示・非表示を決める権利。
同一性保持権著作物の内容を勝手に変更されない権利。

このように細かく権利が法定されています。いずれかでも権利を害するような行為は避けなくてはなりません。

著作権が発生する「著作物」とは

「著作物」については、著作権法で次のように定義されています。

思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

引用:e-Gov法令検索 著作権法第2条第1項第1号

これはつまり、「他者の模倣ではなく、自分自身のアイデアや気持ちについて、文字や音楽、言葉、色等で工夫して表現したもの」ということができます。

実用的かどうか、上手かどうか、複雑かどうかなどは関係ありません。同法の定義にあてはまれば、すべて著作物となります。

著作権を取得する「著作者」とは

「著作者」についても同法で定義されています。

著作物を創作する者をいう。

引用:e-Gov法令検索 著作権法第2条第1項第2号

多くの場合、誰が著作者かという点で悩むことはないでしょう。著作物を作り出した人が著作者となります。ただ、複数人で作った場合や仕事として作ったときには誰が著作者になるかをめぐって問題が起こり得ます。

著作者の詳細についてはこちらのページで解説していますので、ご参照いただければと思います。

著作物を事業者が利用したい場合に注意すべきポイント

世の中の「作品」と呼べるものはほぼすべて著作権法で保護されている著作物です。そのため、自社が生み出したもの以外を活用するときは、同法に準拠し、以下の事柄に十分注意しないといけません。

著作権者から許諾を得ること

何か作品を使うとき、まずは著作権法によって保護されているものかどうかをチェックしましょう。次のいずれかに該当する著作物であって、保護期間内(原則は著作者の死後70年間)のものが保護対象です。

  • 日本人が作った
  • 国内で最初に発行されている
  • 条約により日本が保護義務を負う

著作権法で保護されている場合は、著作権者を調べて許諾を得ないといけません。

※特定分野の著作物については、利用相談や許諾を得ることについて円滑に進められるよう、「〇〇協会」「〇〇連盟」「〇〇センター」といった名称のさまざまな団体が窓口を設けています。

著作者人格権を侵害しない・権利の不行使を求める

著作権(財産権)については譲渡することが可能ですが、著作者人格権については譲渡ができません。そこで著作者人格権については分けて考える必要があり、誤って当該権利を侵害することのないように注意すべきです。

例えば、未発表の小説を勝手に公表してしまうと「公表権」の侵害になります。カメラマンが撮影した写真を、撮影者の氏名を表示せず公表すると「氏名表示権」の侵害、イラストを勝手に改変すると「同一性保持権」を侵害してしまいます。

著作者人格権については譲渡ができませんので、契約で「著作者人格権を行使しない」旨の約束をしてもらうといった対策が考えられます。

著作権法に違反した場合のペナルティ

著作者から許諾を受けることなく勝手に著作物を利用した場合、著作者から損害賠償請求を受ける可能性があります。

また、著作権法上のペナルティが適用されることもあります。

例えば、著作物を複製して無断で販売する行為は犯罪です。最大10年の懲役刑または1,000万円以下の罰金に処される可能性があります。会社に対しては懲役刑の適用が観念できないため、罰金の上限額が3億円に設定されています。

海賊版の販売や、販売目的での輸入、著作者の社会的評価を毀損する方法で著作物を利用する行為等も著作権を侵害したとみなされ、ペナルティが適用されることがあります。

著作権を侵害された際に取るべき対応

自社が著作物を創作した場合、他社・他人によって著作権を侵害されることがあります。このような場合、取るべき対応としては大きく3つあります。

  • 侵害行為に対して差止請求を行う
  • 損害を補填してもらうため損害賠償請求を行う
  • 犯罪行為を法的に裁いてもらうため刑事告訴を行う

上記2点については民事上の問題となるため、被害者が証拠を押さえ、訴訟を提起するなど、能動的に動いていかなくてはなりません。とはいえ、当事者間でのやり取りで相手方が応じてくれれば裁判所を利用する必要はありませんので、まずは内容証明郵便で請求内容を相手方に伝えるとよいでしょう。緊急の場合は裁判所に対して仮処分の申立ても行います。

相手方が任意に応じてくれない場合は訴訟を提起して裁判上で争うことになります。企業としては裁判してまで請求に応じてもらう必要があるのかどうか、費用対効果も加味して検討する必要があるでしょう。

3点目の刑事告訴に関しては、基本的に警察官や検察官が手続きを進行してくれるものの、最初は被害者による告訴が必要です。犯罪の中には、捜査機関が自発的に動けるものもあれば、被害者からの告訴が必要になるものがあり、著作権侵害に関しては後者の「親告罪」に該当します。そのため、刑罰を求める場合は、警察署で手続きを進めましょう。

2024年施行予定の改正著作権法の要点

著作権をめぐっては、社会情勢の変化の影響を大きく受けるため、法改正も行われています。直近だと2023年5月に公布されており、2024年1月1日および公布から3年以内に施行予定の改正法があります。

改正点概要
立法・行政での内部利用の円滑化
(2023年1月1日施行)
立法や行政の目的のためであって、内部資料として必要であるなら、その利用者間に限り、著作物をクラウド等のサービスを使って閲覧等がさせられるようになる。
海賊版被害についての
損害賠償額の算定方法見直し
(2023年1月1日施行)
近年、海賊版サイト等による被害が多発しているという現状を受け、より実効的な救済を図るため、損害賠償額の計算方法が具体化された。
著作物等利用についての
新裁定制度
(公布日から3年以内の施行)
  • 著作権者の意思を確認する措置を取ったものの確認ができないときは、文化庁長官の裁定を受けて、一定期間未管理公表著作物等を利用できるようにする。
  • 著作物の利用を円滑にするため、新裁定制度についての窓口を民間機関ができるようにする。

改正の詳細については文化庁のホームページも参照するとよいでしょう。

著作権法に注意して作品を利用しよう

アート、映像作品、書籍、その他さまざまなものが著作権法による保護の対象です。著作権の侵害には、損害賠償請求、刑罰の適用、そして社会的評価を落としてしまうというリスクを伴います。

他人が作ったものには他人に権利があることを念頭に、十分注意して取り扱う必要があるでしょう。また、自社が創作したものについては、他人による不正利用がないかどうかをチェックすることも重要になります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事