• 作成日 : 2024年2月22日

内部通報制度とは?公益通報者保護法の概要や事業者が行うべき対応を解説

内部通報制度とは?公益通報者保護法の概要や事業者が行うべき対応を解説

内部通報制度とは、従業員や役員などが企業内の不正行為を通報できる窓口を設置し、公益通報した者を守ることで、不正行為の通報を促す制度です。公益通報者保護法の改正により、301人以上の会社では制度を設けることが義務化されました。本記事では、内部通報制度の概要や適切に機能させるポイント、求められる対応などを解説します。

内部通報制度とは

内部通報制度とは、企業内の不正行為などの通報を促すために、従業員や役員などが不正行為を通報できる窓口を設置し、公益通報した者を守る制度です。

企業内の不正行為を通報する従業員などを「公益通報者」といいます。また、内部通報制度の対象となるのは、「通報対象者事実」に該当する場合です。それぞれの定義を解説します。

公益通報者の定義は?

公益通報者の定義は、以下のとおりです。

  • 労働者:使用者に関する通報が対象
  • 派遣労働者:派遣先事業者に関する通報が対象
  • 請負契約などを結んだ業務従事者:発注者にあたる事業者に関する通報が対象
  • 役員:役員として所属する事業者に関する通報が対象

なお、労働者・派遣労働者・請負契約などを結んだ業務従事者については、それぞれ退職もしくは業務に従事した後1年以内の者も含めます。

通報対象事実の定義は?

通報対象事実の定義は、以下のとおりです。

  • 犯罪行為
  • 過料対象行為
  • 上記2つにつながる恐れのある行為

犯罪行為とは、公益通報者保護法・政令によってリストアップされた、約460の法律のいずれかに違反するものを指します。また、過料対象行為とは、公益通報者保護法が定めた法令により、過料の対象とされている行為のことです。過料は、法律に違反したペナルティとして支払う金銭です。

参考:e-Gov法令検索 公益通報者保護法

公益通報者に認められる権利

公益通報を促すためには、公益通報者が社内の不正行為を通報したことで、会社から報復を受け、解雇や降格などにあうのを防がなければなりません。会社は、公益通報者に対する、以下のような不利益な取扱いを禁止しています。

  • 労働者の解雇
  • 派遣元事業主との派遣契約の解除
  • 上記以外の、事業者による不利益な取扱い

役員については、公益通報をしたことを理由として解任された場合、会社に対し解任によって発生した損害賠償の請求が可能です。

参考:e-Gov法令検索 公益通報者保護法

事業者や法務担当者に求められる対応

従業員が301人以上の会社の場合、事業者には社内に公益通報制度を整備する義務が課せられます。

従業員が301人以上の会社が、社内に公益通報制度を整備しないまま放置すると、公益通報者保護法違反に該当します。場合によっては行政からの指導、勧告を受け、それにも従わない場合には20万円以下の過料の制裁を受けるなどのペナルティを受ける可能性があることを押さえておきましょう。

社内の内部通報制度を機能させるためには、法務担当者がその重要な役割を担います。法務担当者の主な業務は、以下のとおりです。

  • 内部通報の受付および対応方針の決定
  • 通報対象事実に関する調査
  • 是正措置・再発防止策の実施
  • 関連する社内規程の制定および改定
  • 社外窓口との連絡
  • 社内への周知および教育

参考:e-Gov法令検索 公益通報者保護法

内部通報制度を適切に機能させるためのポイント

内部通報制度を適切に機能させるためのポイントは、主に以下の4点です。

  • 調査における独立性を確保する
  • 利益相反のリスクを避ける
  • 通報者の保護および不利益な取扱いの禁止を徹底する
  • 社内・社外の両方の窓口を設置する

各ポイントを解説します。

調査における独立性を確保する

内部通報制度を適切に機能させるには、調査における独立性を確保することがポイントです。調査は、客観的な立場から実施する必要があり、他の役員や従業員の意向によって対応が左右されることを防がなければなりません。

内部通報の担当者に十分な権限を与えるとともに、情報統制を厳密に行うなどの対応が不可欠です。

利益相反のリスクを避ける

不正行為の疑いがあるとされた当事者を、通報対象事実の調査などの業務に関与させることは避けなければなりません。利益相反による癒着が生まれ、適切な調査結果を得ることは困難になるでしょう。

調査などの業務から外す必要があるのは、当事者だけではありません。上司や同僚などの、近い関係にある者も、調査などに関わることを防ぐ必要があります。

通報者の保護および不利益な取扱いの禁止を徹底する

公益通報者を保護し、不利益な取扱いの禁止を徹底することは、内部通報制度の基本であり、もっとも重視しなければならないポイントです。

特に経営陣などの不正行為については、行為者をかばい公益通報者を暗に責めるような雰囲気になることもあります。法務担当者は、行為者が誰であっても公益通報者の保護を徹底することを周知し、ルールが厳格に運用されるように努めなければなりません。

社内・社外の両方の窓口を設置する

社内窓口のみでは、経営陣からの介入や利益相反の排除を行うことに限界があることも少なくありません。内部通報窓口の独立性を高め、さらに不正行為の抑止力を高めるには、社外窓口もあわせて設置することが有効です。社外窓口は、外部弁護士に依頼して設置する方法が一般的といえるでしょう。

事業者が知っておきたい直近の公益通報者保護法改正

2022年6月1日より、公益通報者保護法が改正され、施行されています。この改正により、常時使用する労働者数が301人以上の事業者は、内部通報に適切に対処するための体制整備が義務化されました。なお、労働者が300人以下の場合は努力義務が課せられています。

同改正ではこのほかにも、内部調査に従事する者の情報の守秘義務や、行政機関や報道機関などへの通報を理由とした解雇を無効とする要件の、緩和などが定められました。

参考:消費者庁 公益通報者保護法と制度の概要
参考:e-Gov法令検索 公益通報者保護法

内部情報制度の概要と必要な対応を理解しよう

内部通報制度とは、企業内の不正行為などの通報を促すことを目的に、従業員や役員が不正行為を通報できる窓口を設置し、通報した者を守る制度です。近年、コンプライアンスへの意識が高まっており、不正行為の早期発見・是正が求められます。

公益通報者保護法の改正によって、従業員301人以上の会社は、社内に公益通報制度を設けることが義務化されました。従業員300人以下の会社であっても、自主的に制度を規定しておくことの意義は大きいと考えられます。本記事を参考に、内部通報制度の概要や必要な対応について、理解を深めましょう。


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