• 作成日 : 2025年1月17日

申込書にも電子契約を利用できる?電子化のメリットや電子帳簿保存法の対応も解説

電子契約は、契約書だけでなく申込書にも利用可能です。 申込書を電子化することで、迅速かつ正確な情報収集が可能となり、業務プロセスの効率化に大きく役立つでしょう。

本記事では、申込書と契約書や注文書の違いを整理したうえで、申込書の電子化によるメリットや注意点、電子帳簿保存法への対応について解説します。

そもそも申込書とは

申込書とは、契約を締結する前の段階で、商品やサービスの利用について希望する意思を示す書類です。申込書の特徴として、作成者は申込者または提供者のいずれかであり、署名・押印は原則として申込者のみが行います。

主な目的は、申込者の情報や希望条件を明確にし、提供者が契約締結の可否を判断するための材料とすることです。また、申込の事実を記録し、後のキャンセルなどに関するトラブルを防止する役割も担います。

以下では、申込書と混同しやすい契約書、注文書との違いについて解説します。

申込書と契約書の違い

申込書と契約書は、どちらも取引に関する書類ですが、その法的拘束力に大きな違いがあります。申込書は、あくまで商品やサービスの提供を希望する意思表示であり、それだけでは、原則として契約は成立しません。

一方、契約書は、当事者間の合意内容を明確にし、法的拘束力を持たせるための書類です。契約書には、提供される商品やサービスの内容、対価・支払い条件・契約期間など、具体的な取引条件が記載されます。

つまり、申込書が提出された後、提供者側がその内容を承諾することではじめて契約が成立します。

申込書と注文書の違い

申込書と注文書は、いずれも相手への意思表示を示す書類ですが、利用される場面が異なります。申込書は、会員登録やセミナー参加など、サービス提供や契約締結を申し込む際に使われる書類です。一方、注文書は主に企業間取引において、商品やサービスの購入を依頼する際に用いられます。

これらの書類は、契約成立の要素となる「申込み」の意思表示を示すものですが、原則として申込みだけでは、契約は成立しません。ただし、注文書に対して相手方が注文請書を発行した場合は、契約が成立したとみなされます。

なお「申込書」や「注文書」という名称であっても、その内容が実質的に契約成立を証明するものであれば、印紙税法上「契約書」として扱われる場合があるため注意が必要です。

申込書など契約書以外で電子契約を利用できる書類

契約書以外で電子契約を利用できる書類は、主に以下のものが挙げられます。

ここでは、それぞれについて解説します。

申込書

申込書を電子化することで、紙の保管スペースが不要になり、検索機能による管理の効率化が図れます。また、個人情報を含む申込書の電子化においては、情報流出を防ぐための安全管理措置が不可欠です。

電子化は、パスワード設定やアクセス権限の付与といったセキュリティ強化策を講じやすく、個人情報保護の面でも有効です。

注文書

注文書や注文請書を電子契約で管理することで、印刷・郵送コストを削減できます。また、書類のデジタル化による一元管理は、情報検索・更新の迅速化にもつながり業務効率が向上します。

さらに、電子契約は収入印紙が不要なため、税コストの削減が可能です。セキュリティ面においても、暗号化やアクセス制御により、紛失・改ざんリスクを低減できます。

見積書

見積書を電子化することで、検索性が向上し、必要な情報を迅速に見つけられるようになります。また、電子データは共有が容易で、関係者間の情報共有がスムーズに進むという利点もあります。

見積書は、取引に関する重要な情報が含まれている書類です。電子化の際は第三者による改ざんを防ぐために、PDFなど修正が困難なフォーマットを採用するようにしましょう。

発注書

「発注書」は、前述の「注文書」と同様、取引先への発注意思を示す書類であり、基本的な役割や内容、法的性質に違いはありません。また、どちらも電子契約を利用した管理が可能です。

一部の企業では、要望に応じた加工品や高額な取引には「発注書」を、加工不要の商品には「注文書」を使用するなど、用途に応じて使い分けている場合があります。

同意書

同意書とは、契約や合意事項に関して当事者間で合意が成立したことを証明するための文書です。医療行為への同意、データ利用、個人情報の収集・利用など、特定の内容に関して異議がないことを示す際に作成されます。記載事項は、合意内容や条件、署名、日付などです。

同意書を電子化することにより、やり取りのスピードが向上し、業務効率やコスト面での効果が期待できます。さらに、セキュリティ性が向上するため、情報の安全な管理や共有が可能となり、取引先や顧客との関係においても大きな利点をもたらすでしょう。

誓約書

誓約書は、企業が従業員に特定の義務や責任を明示するためなどを目的とする文書で、主に守秘義務や競業避止義務の確認に利用されます。一方当事者(誓約する側)のみが署名捺印する文書であることが多いです。従業員の守秘義務や競業避止義務の確認の際には、従業員が誓約書に署名することで、内容に同意した証となり、法的拘束力を持たせられます。

電子化することで、誓約書のフォーマットを一斉に配信できるため、配布や回収の手間を削減可能です。また、書類の保管や更新が効率化し、業務全体の負担軽減にもつながります。

申込書を電子化するメリット

申込書を電子化することには、コスト削減や業務効率化、紙の紛失防止など、多くのメリットがあります。これらのメリットは、企業規模に関わらず、さまざまなビジネスシーンで効果を発揮します。

コストを削減できる

申込書を電子化することで、コストを大幅に削減できます。さらに、電子化された申込書は印紙税法の規定により、電磁的記録として扱われるため課税対象外となり、印紙代が不要です。

ただし、紙の申込書をスキャンしてデータ保存する場合、その内容次第では紙の申込書自体に印紙税が適用されることもあるため、注意が必要です。

業務を効率化できる

申込書の電子化は、業務効率の大幅な向上に役立ちます。電子化された申込書は、メールでの迅速なやり取りを可能にし、郵送や返送による手間の削減が可能です。さらに、クラウド上に保存することで、いつでも容易に確認や管理を行えます。

また、申込内容の自動読み取り機能を活用することで転記作業をなくし、入力ミスも防止できるでしょう。特に、Web上で完結する申込書の場合は、申込者自身が直接入力するため、紙の申込書と比較して数字や文字の入力ミスを抑えられます。

紙の紛失を防止できる

申込書を電子化することで、紙媒体特有の紛失リスクを軽減できます。紙の書類は紛失や物理的な盗難、火災や災害による滅失などの危険性が伴います。一方、電子データとして保存することにより、これらのリスクを抑えられるでしょう。

さらに、セキュリティ対策が施されたシステムを導入することで、データの安全性が向上します。適切なバックアップを行うことで、データが失われる可能性を低減でき、万が一の場合でも迅速に復旧可能です。

申込書を電子化する方法

申込書を電子データで保存する方法は、紙の申込書をスキャンする場合と、電子データで作成してもらう場合の2通りがあります。

電子化した申込書は、電子帳簿保存法の対象です。スキャナ保存や電子取引で受け取ったデータは、それぞれ定められた要件を満たすように保存しましょう。

紙の申込書をスキャンする場合

紙の申込書を電子化するには、まずスキャナで読み取りPDFなどで保存します。個人情報保護のため安全管理措置を講じなければなりません。また、スキャナで読み取ったデータは、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があります。

解像度は200dpi以上、カラーは24ビットカラー以上で読み取り、原則タイムスタンプを付与します。ただし、履歴管理システムなどを介して、入力期間内のスキャナ保存を確認できる場合は不要です。さらに、バージョン管理や帳簿との関連性確保、検索してデータを速やかに出力できるなどの要件を満たす必要があります。

電子データで作成してもらう場合

電子データで申込書を作成してもらう場合、主に2つの方法が考えられます。1つ目は店舗の端末で顧客に必要事項を入力してもらう方法、2つ目は顧客に申込書の様式データを送付し、顧客自身の端末で入力後、メールなどで返送してもらう方法です。

申込書の有効性を確保するには、電子署名の付与が重要です。電子署名の付与には、電子契約サービスの利用が適しているといえるでしょう。

受領した申込書のデータは、電子帳簿保存法の要件に従い保存する必要があります。真実性と可視性の要件を満たすよう、タイムスタンプの付与や訂正・削除履歴の管理、検索機能の確保など、適切な措置を講じなければなりません。

申込書を電子化するときの注意点

申込書の電子化には、いくつかの注意点があります。これらを事前に把握し、適切な対策を講じることで、導入と運用を円滑に進められます。それでは、各注意点を確認していきましょう。

取引先の同意が必要になる

申込書を電子化する際は、取引先が電子データでのやり取りに慣れていないケースについても、想定しなければなりません。

従来通りの紙でのやり取りを希望する取引先もいるため、電子申込書を利用する際は、事前に取引先の意向を確認することが重要です。そのうえで、取引先の理解と協力を得ながら、スムーズな電子化への移行を目指しましょう。

電子帳簿保存法の対象となる

電子帳簿保存法の対象となる契約に関する申込書は、国税関係書類に該当し、一般的に「重要書類」として扱われます。これは、契約の成立に直結し、資金や物の流れに直接影響を与えるためです。

申込書を電子データで保存する場合、電子帳簿保存法の要件を満たす必要があり、「紙の申込書をスキャナ保存する場合」と「電子取引データとして保存」する場合とで、それぞれ異なる要件が定められています。

また、電子取引のデータ保存が完全義務化されているため、電子データで申込書を作成または受け取った場合は、電子データとして保存しなければなりません。

紙の業務フローを変更する必要がある

申込書を電子化することは、これまでの紙ベースの業務フローから、電子的な業務フローへと移行することを意味します。そのため、申込書の受付・承認・保管といった一連の業務プロセスを見直し、電子化に対応した新しいフローを構築しなければなりません。

また、従業員への操作研修や、マニュアルの作成なども必要になるでしょう。業務フローの変更は、一時的に現場の混乱を招く可能性もあるため、事前に十分な準備と周知を行うことが重要です。

電子契約を導入し、申込書管理のスマート化を実現しよう

申込書の電子化は、コスト削減、業務効率化、セキュリティ強化など多くのメリットをもたらします。電子帳簿保存法への対応も求められますが、これはむしろ業務の見直しと効率化のよい機会となるでしょう。

取引先の同意を得つつ、電子契約サービスの導入など適切な対策を講じることで、スムーズな移行が可能です。申込書の電子化は、単なるペーパーレス化にとどまらず、ビジネス全体のスマート化につながります。申込書の電子化を通じて、業務改革の一歩を踏み出しましょう。


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