• 更新日 : 2024年8月29日

新株予約権割当契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

新株予約権割当契約書は、会社による新株予約権の割当てに関する条件等を定めた契約書です。本記事では新株予約権割当契約書について、定めるべき事項(書き方)やレビュー時のポイントなどを、条文の具体例を紹介しながら解説します。

新株予約権割当契約書とは

新株予約権割当契約書は、新株予約権の割当てについて定めた契約書です。
「新株予約権」とは、あらかじめ決められた行使価額を払い込むことで、会社の株式を取得できる権利です。新株予約権を発行する会社と、その割当てを受ける個人または法人の間で新株予約権割当契約書を締結します。

新株予約権割当契約書を締結するケースの一例

インセンティブ報酬として活用されている「ストック・オプション」は、法的には新株予約権に当たります。役員や従業員などに対してストック・オプションを割り当てる際には、会社と割当てを受ける者の間で新株予約権割当契約書を締結します。

ストック・オプションについての詳細は、以下の記事をご参照ください。

新株予約権割当契約書のひな形

新株予約権割当契約書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に新株予約権の割当てを行うに当たって、契約書作成時の参考としてください。

新株予約権割当契約書に記載すべき内容

新株予約権割当契約書には、主に以下の事項を記載します。

①新株予約権を割り当てる目的
②発行要項に従う旨(発行要項を別紙添付)
③割り当てる新株予約権の数
④その他

また、新株予約権割当契約書には、別紙として発行要項を添付するのが一般的です。発行要項には、新株予約権の割当てに関する詳細な条件を定めます。

新株予約権を割り当てる目的

必須ではありませんが、会社と割当てを受ける者の間で認識を共有するため、新株予約権を割り当てる目的を明記するケースが多いです。

(例)
本契約は、甲の業績向上に対する意欲を高めること、及び株価を意識した経営を推進することを目的とし、令和●年●月●日開催の甲臨時株主総会の決議に基づき、甲の取締役、執行役及び従業員に対してストック・オプションの目的で発行される新株予約権(以下「本新株予約権」という。)の割当その他の事項に関して定めることを目的とする。

発行要項に従う旨(発行要項を別紙添付)

新株予約権の割当てに関する詳細な条件は、発行要項において定めます。新株予約権割当契約書の本文においては、発行要項に従って新株予約権を割り当てる旨を簡潔に記載します。

(例)
甲及び乙は、本新株予約権の内容について、本契約に別段の定めがない限り、別紙に記載する本新株予約権発行要項に従うものとする。

割り当てる新株予約権の数

会社が相手方に対して割り当てる新株予約権の数を明記します。

(例)
乙に割り当てられる本新株予約権の数は○個とする。

その他

上記のほか、以下の事項などを定めるのが一般的です。

・新株予約権の譲渡、質入れ等の処分の禁止
・新株予約権の行使手続等に関する細目的事項の取り扱い
・新株予約権の行使等に関する公租公課その他の費用の負担
・株式の発行、移転の遅延が生じた場合における損害等の取り扱い
・法令に抵触することが判明した契約条項の取り扱い
・合意管轄
など

発行要項に定めるべき事項

発行要項では、以下の事項などを定めます。高度に専門的な事項が含まれるので、弁護士などのサポートを受けながら作成しましょう。

・新株予約権の名称
・新株予約権の払込金額の総額
・申込期日
・割当日および払込期日
・募集の方法
・新株予約権の目的である株式の種類および数の算出方法
・新株予約権の総数
・各新株予約権の払込金額
・新株予約権の行使に際して出資される財産の価額またはその算定方法
・行使価額の修正
・行使価額の調整
・新株予約権の行使期間
・その他の新株予約権の行使条件
・新株予約権の取得事由
・新株予約権証券の発行
・新株予約権の行使により株式を発行する場合における増加する資本金および資本準備金
・新株予約権の行使請求の方法
・株券の交付方法
・行使請求受付場所
・払込取扱
場所
・新株予約権の払込金額およびその行使に際して出資される財産の価額の算定理由
・社債、株式等の振替に関する法律の適用等(上場株式の場合)
・振替機関の名称および住所(上場株式の場合)
・その他

新株予約権割当契約書の作成ポイント

新株予約権割当契約書を作成する際には、特に以下の各点に注意しましょう。

①新株予約権の発行条件を事前によく検討する
②発行要項を間違いがないように作成する

新株予約権の発行条件を事前によく検討する

新株予約権を発行する際には、それが行使された場合の影響についてよく検討する必要があります。

新株予約権は、あらかじめ定められた価格によって、会社から株式の発行を受けられる権利です。新株予約権が行使されると、発行済株式数が増えて既存株式の議決権が希釈化されます。また、新株予約権の行使価額が客観的な株式価値を下回る場合は、既存株式の株価下落にもつながります。

これらの影響を踏まえたうえで、誰に対して何個の新株予約権を割り当てるのか、行使価額や行使条件をどのように設定するのかなどを慎重に検討しましょう。

発行要項を間違いがないように作成する

新株予約権割当契約書において最も重要なのは、発行要項です。

発行要項には、新株予約権の詳細な発行条件が定められます。新株予約権者の権利内容や、新株予約権の行使手続きなどは、すべて発行要項の定めに従うことになります。さらに、発行要項の記載内容は、会社の商業登記にも記載されます。

このように、発行要項の重要性は非常に高い一方、発行要項の記載事項は非常に複雑であり、作成に当たっては専門的知見が求められます。新株予約権の割当てを行う際には、金融法務を専門とする弁護士などのサポートを受けることが望ましいです。

新株予約権割当契約書は、発行要項の丁寧な内容検討と作り込みが重要

新株予約権割当契約書は、会社が新株予約権を割り当てる際に、割当てを受ける者との間で締結する契約書です。

新株予約権割当契約書の本文では、割当ての目的や割り当てる新株予約権の数などを定めます。その一方で、新株予約権の詳細な発行条件については、別紙として添付する発行要項で定めることになります。

新株予約権の発行要項は、新株予約権者の具体的な権利内容を定める文書です。発行要項の記載内容は商業登記にも記載されるため、その重要性は非常に高いといえます。
発行要項の内容は高度に専門的かつ複雑で、丁寧に内容を検討した上で作成しなければなりません。発行要項の難解さは、新株予約権の割当てに関するハードルを高くしている要素の一つです。

発行要項を含めた新株予約権割当契約書の作成に当たっては、専門家のサポートを受けるのが安心です。企業法務系の法律事務所に相談して、金融法務に詳しい弁護士のアドバイスを受けるのがよいでしょう。

また、新株予約権発行の登記手続きについては司法書士、税務処理については税理士、株式等の価値評価については公認会計士のアドバイスを受けるなど、事柄に応じて相談先を使い分けることをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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