- 更新日 : 2024年11月14日
電子契約の立会人型とは?当事者型との違いや法的効力、選び方を解説
電子契約には、電子署名の方法によって立会人型と当事者型の2つの方法があります。企業の法務担当者であれば、それぞれの違いをしっかりと理解しておきたいところです。
本記事では、立会人型と当事者型の違いやそれぞれのメリット・デメリット、選び方について解説します。
目次
電子契約の立会人型とは?
電子契約における立会人型とは、電子署名を行うのが契約を交わす当事者ではなく、当事者の指示のもと電子契約事業者が行う契約方法です。立会人型では、一般的にメール認証で本人確認を行います。
電子署名が代理で行われているけど大丈夫なの?と心配になるかもしれませんが、代理の電子署名であっても、当事者が署名したことと同等の扱いになるため、問題ありません。
たとえば、A社とB社が契約を交わすとき、第三者(C社)の立会人が電子署名を付与して、契約に効力を持たせる流れです。
なお、電子署名の方法には、当事者型もあります。デジタル庁「電子契約の普及状況等について」によると、電子契約システム導入済み企業における立会人型のシェアは、65%を占めるため、一般的に普及しているのは立会人型といえるでしょう。
なお、自社の契約において相手に利用を求める電子契約システムに限定したものであるため、注意しましょう。
立会人型での電子契約の流れ
立会人型における電子契約の流れは、次の通りです。
- 当事者:契約内容を電子契約サービスに入力する
- 契約内容の確認依頼メールが相手方へ送信される
- 相手方:内容を確認して、承諾の意思表示を行う
- 電子契約サービス事業者(立会人):電子署名を付与
- 契約が成立し、両者に契約書(PDF)が送付される
立会人型では、契約当事者自身ではなく、電子契約サービス事業者が電子署名を行います。それにより、契約当事者が電子証明書の取得などの作業が不要になり、契約をスムーズに締結できる点がメリットといえます。
立会人型での署名の法的効力
立会人型では、本人確認を主にメール認証を用いて実施します。具体的な流れは、次のような手順です。
- 契約当事者のメールアドレスに認証用URLが送信される
- 当事者がURLをクリックし、専用ページにアクセスする
- 認証が完了したら、契約内容の確認や承諾が可能になる
メール認証では、セキュリティ面での懸念もあります。そのため、多くの電子契約サービスでは、二要素認証や生体認証などの追加的なセキュリティ対策を実施しています。
メール認証だけでなく、複数の認証方法を組み合わせることによって、高いセキュリティ対策が確保可能です。
電子契約の当事者型との違い
前述したように、電子署名の方法には立会人型以外に当事者型も存在します。当事者型とは、契約当事者が電子認証局から電子証明書の発行を受けて、本人性が担保された電子署名を使用する方法です。
ただし、電子証明書の発行手続きを行う必要があるため、身元確認書類の準備など手間とコストが発生する点には注意しましょう。
ここでは、立会人型と当事者型の違いを紹介します。
電子契約の流れの違い
立会人型と当事者型の電子契約では、契約締結の流れも異なります。両者の大まかな流れは、次の通りです。
立会人型 | 当事者型 |
---|---|
契約書の作成 | 各当事者で電子証明書を取得 |
相手方へ確認依頼 | 契約書の作成 |
相手方による内容確認・承諾 | 一方の当事者による電子署名付与 |
電子契約サービス事業者による電子署名の付与 | 相手方への送付と確認依頼 |
契約成立と両者への契約書PDFの送付 | 相手方による内容確認と電子署名付与 |
契約の成立 |
電子証明書の取得が不要な立会人型では、電子契約サービス事業者が署名プロセスを代行するため、契約締結までの時間が短くなるのが特徴です。また、両者が同じ電子契約システムを使用している必要もありません。
当事者型は、電子証明書の取得、双方による電子署名の付与など、多くの手順が必要です。ただし、当事者同士が直接的に署名を行うため、より高い信頼性を担保できます。
一概にどちらが適しているとはいえないため、契約の種類や取引先との関係性などによって判断するようにしましょう。
署名の法的効力の違い
前述したように、立会人型と当事者型の電子契約では、電子署名の付与方法も異なります。この違いは、契約の法的効力にも影響を与える可能性があるため注意しましょう。
当事者型は当事者双方が直接的に署名するため、より強い法的効力を持つと考えられていました。しかし、2020年の政府見解によって、立会人型でも適切な手順を踏めば電子署名法の要件を満たすことが明確になっています。
電子契約サービスの利用者の中には、こういった事情を把握していない方もいるかもしれません。正しい知識を身につけて、相手方にしっかりと説明できるようになっておきましょう。
電子契約の立会人型のメリット・デメリット
立会人型には様々なメリットとデメリットがあります。ここからは、立会人型の電子契約における、メリットやデメリットを紹介します。
立会人型のメリット
立会人型のメリットは、次の3点です。
- メールアドレスがあれば電子契約ができる
- 取引先の手間を軽減できる
- 電子証明書を発行する手間やコストを省略できる
立会人型のメリットは、当事者型と比べて導入のしやすさとコストの低さが挙げられます。立会人型では、取引先と自社が同じ電子契約システムを導入する必要はありません。取引先に必要なのはメールアドレスだけで、契約の締結まで行えます。
また、立会人型では電子証明書を自分で用意する必要がないため、発行にかかる工数を削減できる点もメリットといえます。
立会人型のデメリット
立会人型のデメリットとしては、次のようなものが挙げられます。
- 当事者型と比較すると、セキュリティ面のリスクが上がる
- 契約書の締結レベルでは採用されにくい
立会人型署名のデメリットは、セキュリティ面のリスクが挙げられます。立会型ではメールを利用して本人認証を実施するため、取引先の環境次第によってはなりすましや不正の被害に遭うリスクが高まるでしょう。ただし、二段階認証システムを利用するなどすれば、セキュリティリスクを減らせます。
また、電子契約の法的効力は立会人型においても認められているものの、契約書の締結レベルによっては理解を得られず採用されにくい恐れもあるため注意しましょう。
電子契約の当事者型のメリット・デメリット
当事者型のメリット・デメリットを把握しておくことで、より効果的に電子契約を活用できるでしょう。ここからは、当事者型のメリット・デメリットを紹介します。
当事者型のメリット
当事者型のメリットは、主に以下の2点です。
- なりすましのリスクが低い
- 法的効力を上げられる
当事者型のメリットは、本人性の担保力が強いため、法的効力の高い契約を締結できます。また、公的認証局が発行する電子証明書を用いて契約をするため、なりすましのリスクを下げられます。
当事者型であれば、取引のルールが厳しい企業や初めて契約する企業との契約でも納得感を高められるでしょう。
当事者型のデメリット
当事者型のデメリットは、次の3点です。
- 双方が同じ契約方法を利用しなければならない
- 電子証明書の発行に手間とコストがかかる
- スピード感に欠ける
当事者型の電子契約を行う際には、双方が同じ電子契約サービスを利用していなければなりません。そのため、取引先が同じ電子契約サービスを利用していない場合には、導入してもらう必要があります。
また、それにともない電子証明書の発行も必要です。発行には手間やコストがかかる点もデメリットといえるでしょう。
また、当事者型では双方が署名をする流れのため、どうしても立会人型に比べるとスピード感で劣ります。
電子契約の立会人型と当事者型の選び方、具体例
では、どちらの電子契約サービスを選べばよいのでしょうか?電子契約システムを選ぶ際は、次の4点で選ぶとよいでしょう。
- 法的効力の強さ
- 導入の手軽さ
- 契約締結までのスピード
- 取引先の負担軽減
それぞれ詳しく見ていきましょう。
法的効力→当事者型
電子契約に法的に高い効力を求めるのであれば、当事者型がおすすめです。当事者型では認証局が本人確認する電子証明書を利用するため、なりすましの可能性が低いほか、証拠力が強い点が特徴です。
導入の手軽さ→立会人型
電子契約サービスを手軽に導入したいのであれば、立会人型がおすすめです。立会人型はメールアドレスさえあれば利用できるため、導入の手間とコストを抑えられます。
契約締結までのスピード→立会人型
立会人型のメリットでもある、契約のスピード感を求めるのであれば、立会人型がよいでしょう。電子契約のスピードの速さは、次のような場面で効果を発揮します。
- 緊急の取引・契約が必要な場合
- 短期間で多数の契約を締結しなければならない場合
- 取引先が遠隔地の場合
迅速に契約締結ができれば、ビジネスチャンスの逃失を防げます。また、契約締結遅延によるリスクも低減可能なため、スピード感のあるシステムの導入は企業にとって大きなメリットとなるでしょう。
取引先の負担軽減→立会人型
立会人型ではメールアドレスさえあれば契約が締結できるため、取引先への負担をかけずに済みます。新規取引先や電子契約に不慣れな相手と取引する際には、立会人型が大きな効果を発揮するでしょう。
立会人型の電子契約は導入の手軽さ・スピード感が魅力
立会人型の電子契約サービスは、当事者ではなく当事者の指示のもと電子契約事業者が電子署名を行う契約方法です。当事者型と比べて、システムを手軽に導入できるほか、スピード感を持って契約締結までたどり着ける点などはメリットといえます。
ただし、それぞれにメリット・デメリットがあるため、システムを導入する際には自社が求める特徴を持ったシステムを選ぶことが大切です。導入の手軽さやスピード感、取引先の負担軽減などの観点を重視するのであれば、立会人型の導入をおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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