• 更新日 : 2025年1月31日

建築設計業務委託契約書に印紙は必要?金額や不要なケースを解説

建築設計業務委託契約書には、原則として収入印紙の貼付が必要です。収入印紙なしで建築設計業務委託契約書を締結すると、税務調査で発見された際に追徴課税を受ける恐れがあるのでご注意ください。本記事では建築設計業務委託契約書に貼るべき収入印紙の金額、貼る場所、消印(割印)の押し方、当事者どちらが負担するかなどを解説します。

建築設計業務委託契約書に印紙は必要?不要?

建築設計業務委託契約書を書面(紙)で締結する場合は、原則として収入印紙を貼付しなければなりません。

建築設計業務委託契約書は、印紙税法上の第2号文書(請負に関する契約書)に当たります。したがって、建築設計業務委託契約書を締結する際には、原則として所定の金額の収入印紙の貼付が必要です。

印紙が必要な契約書の種類については、以下のページをご参照ください。

建築設計業務委託契約書に印紙税が必要な場合の金額

建築設計業務委託契約書に貼付すべき収入印紙の金額は、下表の通り契約書記載の契約金額に応じて異なります。なお、建設工事請負契約に適用される印紙税の軽減措置は、設計に関する契約には適用されません。

契約金額貼付すべき収入印紙の額
1万円未満非課税
1万円以上100万円以下200円
100万円を超え200万円以下400円
200万円を超え300万円以下1,000円
300万円を超え500万円以下2,000円
500万円を超え1,000万円以下1万円
1,000万円を超え5,000万円以下2万円
5,000万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

設計業務と監理業務が同時に委託される場合(=建築設計業務・監理業務委託契約書)は、監理業務に対応する額は上記の契約金額に算入しません。監理業務は請負ではなく委任であるため、印紙税の課税対象外とされているからです。

消費税および地方消費税の額(=消費税額等)を区分して記載している場合、または税込価格や税抜価格の記載によって消費税額等が明らかである場合には、税抜価格が契約金額となります。

これに対して、消費税額等が契約書上の記載から不明である場合は、税込価格が契約金額となります。

建築設計業務委託契約書の原本を2通作成する場合は、それぞれの原本に上記の額の収入印紙を貼付しなければなりません。これに対して、原本を1通しか作成せず、相手方当事者の保管用に原本の写しを作成する場合は、原本1通だけに収入印紙を貼れば足ります。

建築設計業務委託契約書の印紙税はどちらが負担するか

建設設計業務契約書にかかる印紙税は、どちらの当事者が負担しても問題ありません。契約書の中で、印紙税の負担者がどちらかを明記しておきましょう。

 建築設計業務委託契約書の印紙の貼り方

建設設計業務契約書において、収入印紙を貼る場所はどこでもよいですが、契約書の表紙や冒頭に貼付するのが一般的です。税務調査時に提示することを想定すると、収入印紙がどこにあるかすぐわかる場所に貼るのが望ましいでしょう。

貼付した収入印紙は、以下のいずれかの方法によって消すことが義務付けられています(印紙税法第8条2項、印紙税法施行令第5条)。

  • 消印

自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の印章を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に押します。用いる印章の種類は何でも構いません。

  • 署名

自己またはその代理人(法人の代表者を含む)、使用人その他の従業者の署名を、契約書と印紙の彩紋にかけて判明に記載します。

割印

収入印紙への消印や署名は、再利用を防ぐために必要とされています。収入印紙の外に印鑑が押されている場合や、署名ではない文字(「印」など)を記載している場合には、印紙税法違反を指摘される恐れがあるのでご注意ください。

建築設計業務委託契約書の割印の押し方

建築設計業務委託契約書の原本と写しを作成する場合は、割印を押すケースが多いようです(原本を2通以上作成する場合も、割印を押すことがあります)。割印には、2つの文書が同一であることや、関連していることを示す意味があります。

割印を押す際には、契約書の原本と写しを少しずらして重ね合わせます。そして、重なった部分にまたがる形で印章を押します。正しく割印を押せていれば、両方の文書に押された印影を合わせると1つの印鑑になります。

割印の押し方

割印にはどの印章を用いても構いません。特別な事情がなければ、契約書の調印と同じ印章を用いるのがよいでしょう。

建築設計業務委託契約書に貼るべき印紙を貼らないとどうなる?

建築設計業務委託契約書に貼るべき収入印紙を貼らないと、契約自体は無効にならないものの、過怠税や刑事罰のリスクを負うことになります。

契約書に収入印紙を貼らなかった場合のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しているのでご参照ください。

契約内容は無効にならない

課税文書である契約書に収入印紙を貼らないことは印紙税法違反に当たりますが、契約の有効性には影響をおよぼしません。収入印紙の有無に関わらず、契約書の締結によって当事者間で合意が成立すると考えられるためです。

したがって、収入印紙が貼られていない建築設計業務委託契約書も、他に無効事由や取消事由がない限りは有効です。

過怠税や刑事罰のリスクがある

建築設計業務委託契約書に収入印紙を貼らなかった場合、または収入印紙への消印(もしくは署名)を怠った場合には、本税とは別に以下の金額の過怠税が課されます(印紙税法第20条)。

①賦課決定を予知せず、自ら印紙税の不納付を申し出た場合

→本税額の10%

②①を除き、課税文書の作成時までに印紙税を納付しなかった場合

→本税額の2倍

③収入印紙への消印(または署名)を怠った場合

→本税額と同額

※過怠税の合計額が1,000円に満たないときは、1,000円の過怠税が課されます。

また、建築設計業務委託契約書に収入印紙を貼付しない行為や、収入印紙への消印(または署名)をしない行為は、いずれも刑事罰の対象とされています(印紙税法第21~23条)。悪質な脱税と判断されると「3年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科され、または懲役と罰金が併科されるので十分ご注意ください。

電子契約なら建築設計業務委託契約書の印紙は不要に

建築設計業務委託契約書を書面(紙)で作成するときは、契約金額が1万円未満の場合を除いて、収入印紙の貼付が必要です。しかし電子契約で締結する場合は、建築設計業務委託契約書への収入印紙の貼付は不要となります。

契約書に関わる印紙税の納税義務は、その契約書を「作成」したとき、すなわち契約書(紙)を相手方に交付したときに発生します(印紙税法第3条)。

電子契約を締結しても、相手方に対して書面(紙)を交付することはないため、課税文書の「作成」に当たらず印紙税の納付を要しないものと解されています。

よって、建築設計業務委託契約書を電子契約で締結すれば、印紙税を節約できます。特に設計業務の対価が高額である場合、印紙税を節約できるメリットは大きいでしょう。

建築設計業務委託契約書に限らず、その他の課税文書(不動産売買契約書・請負契約書・業務委託基本契約書など)も、電子契約で締結すれば印紙税を節約できます。収入印紙の購入費用を節約したいなら、電子契約の導入をご検討ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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