• 作成日 : 2024年2月22日

通知条項とは?契約書の記載例や義務が発生した時の通知方法を解説

契約書における通知条項とは、取引の継続や会社の信用に関わる事由など、契約内容に影響を及ぼす重大な事由が発生した際、取引の相手方にその旨を通知することを義務付ける条項です。通知条項は、公平かつ適切な取引のために重要な役割を担います。今回は、通知条項が必要な理由や記載する事由の例、契約書レビュー時のチェックポイントなどを解説します。

通知条項とは?

契約書における通知条項とは、契約内容に影響を及ぼすような事態が発生した際、相手に対してその旨を通知することを義務付ける条項のことです。

取引中に、相手方が他社に会社を譲渡したり、倒産したりする可能性はゼロではありません。取引に影響を与える事態が発生した際に、その旨を相手方から知らされなければ、自社が不利益を被る可能性があります。こうしたリスクに備え、信頼関係を保ちながらスムーズに取引を続けるためには、通知条項を定めることが大切です。

契約書に通知条項を定める目的

契約で通知条項を定める目的の1つは、どちらかが不利益を被る事態を避けるためです。

契約に影響を及ぼすような事由が発生した際、その旨を相手方に速やかに伝えなければ、相手が不利になってしまいます。一方が事由の発生に気づかないまま取引を進め、損失を受けるリスクを防ぐためには、通知義務を定めることが必要です。

また、契約解除や損害賠償請求ができるようにするという目的もあります。表明保証違反や遵守事項違反など、相手方に大きな損害を与える事態が発覚した際、その旨を隠蔽しようとするケースは少なくありません。隠蔽に気づかないまま相手が取引を進めた結果、大きな損害が発生するリスクがあります。隠蔽により相手が不利益を被るリスクを防ぐためには、通知条項を定めることが重要です。

さらに、当事者間での情報共有を促し、協力してトラブルに対応できるようにする目的もあります。たとえば、取引について第三者からクレームが寄せられた際は、双方で協力して問題解決に努めることが大切です。迅速な対応や改善のためには、通知条項に基づく適切な情報共有が求められます。

一般条項との違い

契約書には、一般条項としての通知条項も存在します。

一般条項としての通知条項は、契約に関して通知を行う手段や連絡先、通知の効力発生時点などを定める条項です。契約の種類を問わず、さまざまな契約書に記載されることが多い標準的な条項です。

今回は、一般条項としての通知条項ではなく、特定の事由が発生した際の通知義務を定める通知条項について解説します。

契約書で通知条項を定めるケース

通知条項は一般条項としての通知条項とは異なるため、すべての契約書に記載するものではありません。

通知条項を定める契約の例としては、以下が挙げられます。

  • 取引基本契約
  • 金銭消費貸借契約
  • 業務提携契約
  • M&Aに関する契約
  • 合弁契約 など

大規模な取引や継続的な取引については、何らかの事由によって取引が妨げられるのを防げるよう、契約書に通知条項を含めることが多いです。

契約書に記載する通知条項の例文

通知条項の例文は以下のとおりです。契約書に通知条項を盛り込む際の参考にしてください。

例)

本契約の当事者は、次の各号のいずれか1つに該当する事由が発生、または発生するおそれが生じたことを認識したときは、相手方に対して速やかにその旨を通知しなければならない。

  1. 会社支配権の変動
  2. 合併や解散、株式移転株式交換会社分割などの組織再編行為や、事業譲渡や事業の譲受けなどの組織変更行為がなされたとき
  3. 資本金または資本準備金の額の減少が発生したとき
  4. 破産、民事再生などの倒産手続の申立てがなされたとき
  5. 業務停止や公租公課の滞納処分などの行政処分を受けたとき
  6. 第〇条に定める取引実行前提条件を充足していなかった事実が発生したとき
  7. 第〇条に定める表明保証に係る事項が虚偽であった、または不正確であった事実が発生したとき
  8. 本契約に基づく取引に関して第三者からのクレームが発生したとき
  9. その他信用の悪化と認められる事実が発生したとき

通知を義務付ける事由については、契約の内容に応じて柔軟に変更しましょう。

通知条項に定める事項の決め方

通知条項には、通知が必要な事由を具体的に提示することが必要です。

通知条項に定める事由としては、主に以下の3つが挙げられます。

  • 会社の支配権に関わる事由
  • 取引の継続に関わる事由
  • 会社の信用に関わるリスクがある事由

事由はなるべく具体的に記載することで、当事者間で認識のずれが生じることを防げます。

なお、契約によって適宜必要な事由を付け加えることも可能です。事前に当事者間で協議し、必要な事項を盛り込みましょう。

会社の支配権に関わる恐れがある時

会社の支配権に関わる恐れがある事由については、通知を義務付けましょう。会社の支配権が他社に渡ることで、経営方針が大きく変わる可能性があります。その結果、従来どおりに契約が進まなくなるリスクがあるためです。

具体的には、株式譲渡や事業譲渡、会社分割、合併など、組織や株主構成の変更に関わる事由が挙げられます。

取引関係の継続に影響がある時

取引関係の継続に影響があるような事由についても、通知すべき事由として定めるケースが多いです。

具体的には、表明保証が虚偽または不正確であった、契約書で別途規定する遵守事項に違反した、取引について第三者からクレームを受けた、などが挙げられます。

なお、取引関係の継続に影響があるものの、当事者でコントロールできないような事由については注意が必要です。たとえば、自然災害や戦争、ストライキ、法改正といった事由が挙げられます。このような事由については、通知義務を定めたうえで、不可抗力として「本契約の違反とせず、その責を負わないものとする」と記載するケースが通常です。

会社の信用に関わるリスクがある時

そのほか、会社の信用に大きく関わるようなリスクについても通知を義務付けましょう。信用に影響を与える事由が原因で、取引が突然停止になったり、当事者として大きな損害を被ったりする恐れがあるためです。

具体的には、契約期間中にどちらかが行政処分を受けた、破産した、倒産手続の申立てを開始した、資本金を大きく減少させた、などの事由が挙げられます。

通知義務が発生した時の通知方法

通知義務が発生した時の通知方法は、通知条項で自由に定められます。

通知したという事実や内容を客観的に証明できるよう、記録が残る方法を定めましょう。内容証明郵便のように、証拠力の高い方法で通知することが大切です。

記載例は以下のとおりです。

例)

本契約に関連するすべての通知やその伝達は、書面によるものでなければならない。

通知方法は、具体的に定めるようにしましょう。具体的な方法を記載しておかなければ、通知した側である当事者が通知の存在を立証しなければならなくなるためです。

なお、通知方法や通知先、通知の効力発生時点といった情報は、通知方法を定めるための条項である一般条項としての通知条項に記載するのが通常です。

通知条項をレビューする際のチェックポイント

通知条項をレビューする際は、特に以下の3点をチェックしましょう。

  • 取引の成立に影響を与える事由が問題なくカバーされているか
  • 相手方の信用に関する事由が網羅的にカバーされているか
  • 通知条項違反時に、契約解除や損害賠償請求が可能か

レビュー時は、通知条項に記載された「通知しなければならない事由」を重点的に確認することが大切です。自社が不利益を受けることがないよう、取引の成立に影響を与える事由や相手方の信用に関する事由が、抜け漏れなく明記されているかをチェックしましょう。

また、取引の内容に応じて項目を変更・追加し、さまざまなリスクに対応できるようにすることも大切です。

さらに、相手が通知条項に違反した際、契約解除や損害賠償請求が可能かも確認しましょう。具体的には、解除条項や表明保証、遵守事項などを確認してください。

通知条項に定めた通知義務に違反した場合

一方が通知条項に定めた通知義務に違反した場合は、相手方が契約を解除できるケースがほとんどです。また、契約解除等により相手に損害を与えた場合、違反側がその損害を賠償する義務を負うと定めるのが一般的です。

不利益を被るリスクから自社を守るためには、相手方が通知義務違反を犯した際の対応や罰則について、契約解除条項や損害賠償条項等に定めておきましょう。

公平かつ適切な取引のため通知条項を記載しよう

通知条項とは、契約内容に影響を及ぼすような重大な事由が発生した際、その旨を相手方に速やかに通知することを義務付ける条項です。取引中に、組織再編や倒産、表明保証違反や遵守事項違反など、重大な事態が発生する可能性も十分にあります。相手からその事実を知らされなければ、契約を進めてしまい大きな損害を受けるリスクがあります。

公平かつ適切な取引のためには、契約書に通知条項を記載することが大切です。通知条項には、通知義務が発生する事由を具体的に定めましょう。


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