- 作成日 : 2025年1月31日
譲渡とは? 意味や読み方、売却との違い、必要な手続きや税金などを解説
譲渡とは、権利や財産などを他人に譲り渡すことを意味します。実際に権利や財産などを譲渡する際には、譲渡のための契約や税金の納付が発生する場合があり、状況に応じて適切な手続きを踏むことが必要です。
この記事では、譲渡の意味や売却との違い、実際に権利や財産を譲渡する際の手続きなどについて解説します。
目次
譲渡とは
譲渡とは、有償か無償かを問わず権利や財産などを他人に譲り渡す行為をいいます。
会社や不動産を相手方に譲り渡す場合など、ビジネスの場面でもよく用いられ、私たちの身近な場面では、店舗で金銭を払い商品を受け取る場合や、家族や知人から車を譲ってもらう場合なども譲渡の1つとされます。
譲渡の意味
譲渡(じょうと)とは権利や財産などを他人に譲り渡すことを意味します。単に物を譲り渡す場合の他、著作権などの知的財産の譲渡や、会社を譲渡する場合の事業譲渡など、幅広い意味で用いられる言葉です。
譲渡と売却の違い
譲渡とよく似た言葉に「売却」がありますが、譲渡とは有償であるか無償であるかを問わないのに対し、売却は有償で行われる譲渡のことを指します。
売却も譲渡の一種ですが、金銭の受け渡しを伴うかどうかによって言葉が使い分けられています。
なお、売却の他に贈与や相続という言葉があり、これらはいずれも無償で行われることが一般的であり、贈与も相続も譲渡のうちの1つです。
譲渡は有償・無償を問わない
譲渡は有償か無償かは問われません。売却のように有償で行われる譲渡もあれば、贈与や相続のように無償で行われる譲渡もあり、これらを広い範囲で譲渡と呼びます。
また、売却のように金銭の受け渡しを伴う譲渡を「有償譲渡」、贈与や相続など金銭の受け渡しを伴わないものを「無償譲渡」という言葉で区別することもあります。
譲渡は無償か有償かを問いませんが、譲渡の内容によっては課税対象とされることもあるため、注意が必要です。
譲渡の種類
譲渡は私たちの身近な場面において行われることがありますが、ビジネスの場で行われることも珍しくありません。
具体的にどのような種類の譲渡があるのか解説します。
不動産の譲渡
土地や建物の所有権を他人に譲り渡す行為は不動産の譲渡に該当します。通常、不動産の譲渡は有償で行われます。金銭の受け渡しを条件に不動産を譲り渡すことになるため、不動産の譲渡は売却を意味するといえるでしょう。
なお、個人間で不動産を譲り渡す場合に無償で譲渡する場合は、「贈与」や「相続」と呼ばれ、意味合いが異なるため、注意が必要です。
知的財産権の譲渡
知的財産権とは、知的活動によって生み出されたアイデアや創作物が創作者の権利として保護される権利のことです。
主な知的財産権には、特許権や著作権などが挙げられ、これらの知的財産権についても他人に譲渡されることがあります。
知的財産権の譲渡を受けると、譲受人は譲渡された知的財産を管理することとなり、知的財産を活用して収益化の機会が得られる他、多くのビジネスチャンスにつなげられます。
株式の譲渡
株式譲渡とは、株主が保有する株式を他社に売却することで、会社の経営権を移転することです。株式譲渡により株式を譲り受けた譲受人は、会社の事業内容や資産などを継承することとなります。
また、企業間の譲渡だけではなく親族など個人間での譲渡が行われることもあります。
一般的に株式の譲渡は売却の方法が採られることが多いですが、親族間の譲渡の場合は「贈与」や「相続」といった無償での譲渡が行われることも珍しくありません。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の事業のすべてまたは一部を他の会社に譲り渡す行為のことで、その手続き方法は会社法により定められています。
株式譲渡と同じく企業の吸収合併(M&A)の手法の1つとして事業譲渡はよく用いられます。株式譲渡は会社の経営そのものを譲渡するのに対し、事業譲渡は必ずしも事業のすべてではなく一部のみ譲渡することも可能である点に違いがあります。
債権譲渡
債権譲渡とは、自己の保有する債権を契約により移転させることです。
債権譲渡は、一般的に企業が債務の弁済が困難になったときなどに行われます。譲渡人は債務を解消できたり、債権の売却を行ったりできるメリットがあります。一方、譲受人は債権を回収できる可能性が高くなり、債権を担保にすることも可能です。
債権の譲渡についての規定は民法に定められています。原則として債権の譲渡は法律上可能ですが、慰謝料請求権など、一部譲渡できない債権もあるため注意が必要です。
譲渡に必要な手続き
譲渡を行う場合は譲渡契約を締結するのが一般的です。ここでは、譲渡に必要な手続きの流れについて解説します。
譲渡に関する契約を締結する
譲渡を実行する際は、まず譲受人と譲渡人の間で、譲渡契約書を作成します。個人間で株式の無償譲渡を行う場合などは、法律上必ずしも譲渡契約書の作成が必要とされているわけではありません。しかし、個人間の無償譲渡の場合でもトラブル防止の点から譲渡契約書の作成がおすすめです。
譲渡契約書には、目的物、対価や譲渡の条件などを必要に応じて記載します。この際に、どのような対価を支払い、どのような権利を譲渡するのかなど、非常に重要な項目に関する記載内容は十分に確認をしましょう。
事業譲渡の場合は株主総会での特別議決や従業員への通知が必要です。これら必要な手順を踏んだ上で譲渡契約を締結するようにしましょう。
また、事業譲渡や株式譲渡など法人としての譲渡契約に関する契約書は、法律上、一定の期間保存が義務付けられているため、適切に管理する必要があります。
株式譲渡契約書を含む利用頻度の高い契約書のテンプレートは以下ページからダウンロードできるため、ご活用してください。
譲渡を実行する
契約書を作成し譲渡契約を締結したら、契約書に定めた日付に従って譲渡を実行します。
有償での譲渡の場合は、譲渡の実行、つまり権利や物品の引渡日に対価を支払い、目的物に関する書類の引き渡しも同時に行います。
この譲渡の実行の流れを一般的にクロージングといい、譲渡の内容によってそれぞれ必要な手続きがあります。
例えば、株式譲渡の場合は株式名簿の書き換えにより譲渡が完了します。また、事業譲渡の場合は株券の引き渡しや、代表者印の引き渡しが必要で、これらの手続きを踏むことによって経営権が移転し譲渡が完了するのです。
名義変更を行う
譲渡の実行が完了したら、各種名義変更や関係機関への届出が必要です。
例えば、個人間で自動車を譲渡した場合は、車庫証明や印鑑登録証明などの必要書類を準備して所轄の運輸局に提出します。
事業譲渡の場合は、土地や預金など譲渡に伴う資産の名義変更や、従業員の雇用関係の引き継ぎ手続きも必要です。その他、譲渡された事業で許認可が必要な業種の場合は、新たに自治体等に対する許認可の申請が必要になります。
これら名義変更や申請などが適切に行われていない場合は、事業の運営に支障をきたすことになります。名義変更の手続きはすみやかに行いましょう。
譲渡にかかる税金
物品や権利を譲渡した場合は、譲渡契約の内容により所得税などの税金がかかります。
譲渡人、譲受人それぞれに対して課税される場合もあります。
譲渡人にかかる税金
譲渡人が個人の場合は所得税と住民税、法人の場合は法人税がそれぞれ課されます。
これは、あくまで譲渡により譲受人が利益を得た場合であり、株式や自動車を個人間において無償で譲渡した場合などは、譲渡人は利益を得ていないため税金はかかりません。
ただし税金がかからないのは個人間における無償譲渡の場合です。無償譲渡だったとしても相手が法人の場合は課税される場合があります。
例えば、個人が無償で事業譲渡を行う場合は、譲受先が個人か法人かによって扱いが異なります。個人間の事業譲渡は所得税の課税対象となりませんが、個人が法人に事業を譲渡する場合は、みなし譲渡所得税という形で所得税の課税対象です。
また個人が土地の無償譲渡をした場合、譲渡した相手方が法人であれば譲渡所得税や住民税の課税対象となることがあります。
譲受人にかかる税金
譲受人は、たとえ個人間で無償の譲渡を受けた場合であっても、贈与税という形で税金が発生します。
法人が土地の譲渡を受けた場合は、法人税や不動産取得税などがかかります。
さらに、事業を譲渡した場合は、これらの税金の他に固定資産(土地以外)や棚卸資産に対する消費税や、不動産の登記変更手続きのための登録免許税がかかります。また、各種許認可の取得の際にも登録免許金が必要です。
譲渡を受けたあとに、思いのほか税金がかかったということのないように、譲渡契約を締結する際にはどのような税金がいくらかかるかを把握しておくとよいでしょう。
譲渡に関する注意点
権利や財産の譲渡をする際にはいくつか注意すべきポイントがあります。これらの注意点を知らないと後々トラブルになることもあるため十分に注意しましょう。
自動車の譲渡には譲渡証明書が必要
中古の自動車を購入する場合や個人間で車を譲渡する際には、軽自動車の場合を除き、譲渡証明書という書類が必要となります。譲渡証明書とは車の所有権が元の所有者から新たな所有者に譲渡されたことを証明する書類で、譲渡される車の名義変更の際に必要です。
譲渡証明書は、国土交通省のホームページからダウンロードできます。車の型式や旧所有者の氏名、譲渡の日付などを記入し、旧所有者の実印を押します。
譲渡証明書の作成を含めた車の所有権の移転手続きは、譲渡から15日以内です。譲渡証明書の他、車検証や車庫証明などの書類も必要です。
手続き期限が短く、揃える書類もたくさんあるため、事前に準備できるものはあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
譲渡禁止条項に注意する
譲渡禁止条項とは、一定の権利や義務を譲渡することを禁止する契約条項のことです。
譲渡禁止条項で定められた項目は、相手方の承諾なしに権利や義務を譲渡できません。
譲渡禁止条項の対象となるのは、主に債権や契約上の地位などです。債権の譲渡は、民法上、自由に譲渡が認められていますが、譲渡禁止条項として債権の譲渡が禁止される特約が定められていた場合は、債務の履行を拒否できます。
譲渡契約を締結する際には、譲渡禁止条項に関する特約が定められていないか確認しましょう。
債権の譲渡で迷った場合は専門家に相談することをおすすめします。
著作権の一部など譲渡ができないものもある
著作権も譲渡が可能な権利の1つですが、著作者の名誉や作品に対する思い入れを保護する著作者人格権については譲渡が認められていません。
譲渡契約の中に「著作権のすべてを譲渡する」とした契約を締結していた場合であってもその規定は無効になります。
また、翻訳権・翻案権などと、二次的著作物の利用に関する原著作者の権利については、これらの権利譲渡のことも明確に示した上で契約が締結(特掲)されていないと、原著作者に権利が保留されると規定されています(著作権法61条2項)。これらの権利を譲渡するには、譲渡契約の内容にその旨記載が必要です。
権利や物品の譲渡では、付随する手続きや税金に注意
権利や財産などの譲渡は、譲渡人、譲受人それぞれにとってメリットがありますが、押さえておかなければならない手続きや注意点などもあります。譲渡契約を締結する際には、これらの手続きについてもよく確認しておきましょう。
譲渡契約を締結後、実際に譲渡を実行したあとには、名義変更や各種届出の他、税金の納付も必要です。事前に手続きの流れを把握しておくことをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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