• 更新日 : 2024年11月14日

電子契約の後文・文言の書き方は?ひな形の変更方法や文例を解説

後文(こうぶん)とは、契約書や電子契約の末尾に記載された文章を指します。後文には、契約当事者の情報や契約の成立日、契約締結や保管の方法などが記載されています。電子契約の場合、紙の契約書と同じ後文は使えません。本記事では、紙の契約書の後文を電子契約に適した形に修正する方法について詳しく紹介します。

契約書の後文とは?

契約書の後文(こうぶん)とは、契約書の末尾に記載される文章のことです。契約を結ぶ当事者の情報や成立年月日、契約を締結する方法や、その証となるものの保管方法などを明記します。一般的な紙の契約書の後文を見てみましょう。

本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各自が記名押印または署名捺印の上、それぞれが1通ずつを保有する。

2024年10月1日

甲 住所・会社名・氏名

乙 住所・会社名・氏名

上記の後文は紙の契約書を前提としたものであるため、そのまま電子契約で使うことは避けましょう。電子契約では、書面の発行や直接的な記名や押印などが不要であるため、上記の後文に細かい変更を加える必要があります。

紙の契約を電子契約に変更する書き方、例文

紙の契約書における後文の例を電子契約用に変更すると、以下のようになります。

本契約の成立を証するため、本契約の電磁的記録を作成し、甲乙各自が合意ののち電子署名を施し、それぞれがその電磁的記録を保管する。

2024年10月1日

甲 住所・会社名・氏名・メールアドレス

乙 住所・会社名・氏名・メールアドレス

どこをどのように変更したのか、以下で詳しく解説します。

写しに関する文言(作成通数・保有通数)

電子契約では、「本書2通を作成し」「1通ずつを保有する」といった通数の表記は不要です。電子契約を締結する場合は、改ざんできないデータを複製でき、いくつ複製しても同一のものができます。そのため、通数を記載する必要がありません。

本書・正本・原本などの文言

「本書」「正本」「原本」は、いずれも紙の書面が存在する場合に使われる言葉です。しかし、電子契約ではデータで契約を交わし、書面そのものは存在しないため、前述の表記は使いません。「この契約書」という意味の「本書」は、「本契約の電磁的記録」という表現に変更します。

契約締結の方法

「記名押印または署名捺印」は、紙の書面を前提とするものであるため、電子契約にはそぐわないと考えられます。電子契約では、こうした行為に代わって「電子署名」によって契約締結とみなされるため、後文にもその旨を記載します。「施し」という表現は「措置し」という表現にすることも可能です。

契約締結日

電子契約においても、紙の契約書と同様に契約締結日を記載することが一般的です。ただし、電子契約ではタイムスタンプが付与されることから、契約締結日は不要とする考え方もあります。契約当事者が合意に至った日と、電子署名を施す作業をした日が厳密には異なる場合もあるため、現状ではタイムスタンプの他に契約締結日が記載されることが多いです。

署名・押印の欄

電子契約の場合も、紙の契約書における署名・押印の欄にあたる箇所は空白になっています。契約を交わす当事者それぞれが、この箇所に電子署名を施します。電子契約のデータはメールでやりとりすることが一般的であることから、契約者の住所・会社名・氏名などに加えてメールアドレスも記載しましょう。

電子契約における後文の書き方、例文

電子契約においては、電子契約サービスを利用することが多くあります。以下では、電子契約のパターン別に、後文を作るポイントや例文を見ていきましょう。

なお、電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。

同じ電子契約サービスで締結する場合

契約を交わす当事者が全員同じ電子契約サービスを使う場合は、以下のような後文が適切です。

本契約の成立を証するため、本契約の電磁的記録を作成し、甲乙各自が合意ののち電子署名を施し、それぞれがその電磁的記録を保管する。

2024年10月1日

甲 住所・会社名・氏名・メールアドレス

乙 住所・会社名・氏名・メールアドレス

上記は、電子契約を行う場合の一般的な後文といえます。

他の電子契約サービスと併用する場合

一方が電子契約サービスA、もう一方が電子契約サービスBを利用して契約を締結する場合の後文は、以下のようなものが適切です。

本契約の成立を証するため、本契約の電磁的記録を作成し、甲乙各自が合意ののちAおよびB上において電子署名を施し、それぞれがその電磁的記録を保管する。

2024年10月1日

甲 住所・会社名・氏名・メールアドレス

乙 住所・会社名・氏名・メールアドレス

それぞれがどの電子契約サービスを利用するかを後文に記載し、それぞれのサービス上で同じ内容の契約に同意するという流れで締結します。

紙の契約と電子契約と併用する場合

自社は電子契約を希望するものの、相手が従来の紙の契約書を希望するという場合もあるかもしれません。その場合には、自社は電子契約、相手は書面の契約書によって契約を締結する方法があります。この場合の後文は、以下のようなものにするとよいでしょう。

本契約の成立を証するため、本契約の書面および電磁的記録を作成し、甲乙各自が合意ののち記名押印および電子署名を施し、甲は書面を、乙は電磁的記録をそれぞれ保管する。

2024年10月1日

甲 住所・会社名・氏名・メールアドレス

乙 住所・会社名・氏名・メールアドレス

それぞれがどのような形式で契約を行い、その証明となるものを保管するのかを明確に記載する必要があります。

電子契約の後文を作成する際のポイント

電子契約の後文では、以下のような表現を入れないようにしましょう。

  • 書面
  • 本書
  • 記名押印
  • 署名捺印

書面そのものを使わない電子契約においては、書面があることを前提とする上記のような表現は適しません。書面がないにもかかわらずこうした表現を使うと、相手から契約の不成立や無効を主張されることも考えられます。細かい点ではありますが、トラブルのリスクをなくすためにも使用する表現に気をつかいましょう。

紙から電子契約に移行する際の注意点

紙による契約書から電子契約に移行する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 取引先から合意を得る
  • 契約書のひな形・テンプレートを変更する
  • 電子契約はデータとして保存する
  • 契約に関わるワークフローを見直す

それぞれ以下で詳しく説明します。

取引先から合意を得る

電子契約を行う場合は、事前に取引先に連絡して合意を得てからにしましょう。電子契約を行う手順や利用するサービスなど、しっかりと相手に説明して理解してもらっておく必要があります。説明不足のまま電子契約を進めてしまうと、トラブルにつながる恐れがあります。

契約書のひな形・テンプレートを変更する

契約書の作成にひな形やテンプレートを使う場合は、後文を忘れずに変更しましょう。紙の契約書のままでは、表現や文言のそぐわない箇所が多くあります。書面ではなく電磁的記録や電子データによって契約を交わす内容に修正が必要です。

電子契約はデータとして保存する

電子契約のデータは紙に出力せず、データのまま保存しましょう。電子帳簿保存法の改正により、2024年1月からは、メールやオンライン上で電磁的に受け取ったデータは、データのままで保存することが義務付けられています。

加えて、電子帳簿保存法の「データ保存」の要件を満たすことも必要です。真実性や可視性、検索性などについて、一定の要件を満たさなければなりません。

契約に関わるワークフローを見直す

電子契約は、締結の方法や保管方法など、書面による契約と異なる点が多くあります。取引先だけでなく社内の従業員にも、電子契約について周知しておきましょう。契約に関するワークフローを見直し、電子契約のメリットを活かしてより効率的に契約を進められるような体制にすることが必要です。

電子契約システムの選び方

電子契約を行うなら、電子契約システムを導入するとスムーズです。電子契約システムを使うことで、電子契約の作成から締結、保存までの一連の作業をシステム上で行えます。電子契約の数によって料金が変動しないものを選ぶと、より安心して活用できるでしょう。さまざまなケースに対応できるよう、ひな形の文章や文言を変更できるものを選ぶことも大切です。

マネーフォワード クラウド契約では、契約書の内容を変更することはもちろん、後文の変更も可能です。契約の数が増えることによる課金も不要であるため、安心して利用できます。紙の契約書から電子契約に移行したい方は、ぜひ無料のトライアルをお試しください。

契約書のテンプレート・ひな形一覧

契約書を作成するには、既存のテンプレートやひな形を使うと便利です。以下では、権利や雇用、業務委託や利用規約など、さまざまな契約書のテンプレートをダウンロードできます。内容の一部を自社に応用に変更して活用することも可能です。ぜひ有効に活用して、契約書の作成に役立ててください。

紙の契約書から電子契約に移行するなら後文の見直しが必須

紙の契約書と電子契約では、後文を別に準備する必要があります。電子契約においては、紙の書類を前提とした「書面」「本書」などの文言は使いません。「記名押印」「署名捺印」などの表現も、トラブルの原因となりうるため避けましょう。契約当事者の住所や氏名の欄にメールアドレスを追加することも必要です。

加えて、事前に取引先に電子契約を行う旨を伝えて合意を得ておくことや、社内のワークフローの見直し・周知も欠かせません。紙の契約書から電子契約へスムーズに移行できるよう、細心の注意を払いましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事