• 更新日 : 2024年3月18日

完全合意条項とは?定めるケースや文例、メリットとリスクを解説

完全合意条項とは?定めるケースや文例、メリットとリスクを解説

完全合意条項とは、合意の内容を契約書に書いてある事項だけに限定する条項です。完全合意条項を定めれば契約内容がより明確化される一方で、いっそう慎重な契約書のレビューが求められます。本記事では完全合意条項について、文例・メリット・リスクなどを解説します。

完全合意条項とは?

完全合意条項(かんぜんごういじょうこう)とは、契約当事者間における合意の内容を、契約書に記載されている事項だけに限定する条項をいいます。英米法のEntire Agreement Clauseに由来しており、近年では日本国内の企業間取引に関する契約書にも完全合意条項が設けられることがあります。

日本法の下では、契約は口頭でも成立します。したがって、契約書に書かれていない内容であっても、合意が成立した事項は当事者を拘束します。

しかし完全合意条項が定められている場合には、契約書外での口頭などによる合意は排除されますので、契約内容を明確化できます。

完全合意条項を盛り込むことが多い契約

完全合意条項は、条項を詳細に定めるべき契約書や、海外企業が当事者となる契約書に定められることが多いです。例えば以下の契約書には、完全合意条項を定める例がよく見られます。

  1. M&A契約
  2. 国際商取引契約
  3. ライセンス契約

M&A契約

M&A契約は、企業の合併・買収(=M&A)に関する契約です。

M&Aは大規模な取引であるため、条件を契約書において詳細に定めなければなりません。そのためM&A契約書には、完全合意条項を定めるケースが多いです。

国際商取引契約

日本企業と海外企業の間で行う取引の契約は、「国際商取引契約」と呼ばれます。国際商取引に関する契約書では、海外企業側の法文化に配慮して、完全合意条項を定めるケースが多いです。

ライセンス契約

ライセンス契約は、特許権や著作権などの知的財産権の実施・利用等を、権利者が他人に対して許諾する契約です。

ライセンス契約には、許諾の範囲や許諾料などをはじめとして、ライセンスの条件に関する事項を詳細に定めなければなりません。そのためライセンス契約書には、完全合意条項を定める例がよく見られます。

完全合意条項の文例

完全合意条項の文例を紹介します。

第〇条(完全合意)
本契約は、本契約に関する当事者間の完全な合意及び了解を構成するものであり、書面によるか口頭によるかを問わず、当事者間の本契約締結前の全ての合意及び了解に優先する。

Article○ (Entire Agreement)
This Agreement constitutes the entire agreement and understanding between the parties with respect to this Agreement and supersedes all prior agreements and understandings between the parties, whether written or oral.

完全合意条項を定めるメリット

完全合意条項を定めると、契約書外での合意が排除されるため、契約内容が明確になります。

例えば、契約当事者間で「言った言わない」のトラブルが発生するケースはよくあります。完全合意条項が定められていれば「契約書に書かれた内容が全て」なので、「言った言わない」のトラブルを防ぐことができます。

契約トラブルが裁判所に持ち込まれた際にも、完全合意条項の存在が考慮され、契約内容の認定は契約書に記載された事項に限定されるのが一般的です。その結果、当事者にとって訴訟の結果が予測しやすくなるメリットもあります。

完全合意条項を定めた場合のリスク

完全合意条項を定めると、契約書に書かれていない事項は契約内容を構成しないことになります。

つまり、ある事項について「合意したはずだ」と主張しても、契約書に書かれていなければ認められません。そのため、完全合意条項を定める契約書については、その他の契約書に比べていっそう慎重なレビューが求められます。

また、完全合意条項が無効と判断されてしまうケースもあります。特に、契約当事者が取引経験に乏しい個人である場合などには、完全合意条項の意味を理解できなかったと評価され、完全合意条項が無効と判断されることもあり得るので注意が必要です。

完全合意条項が有効と判断された裁判例

東京地裁平成7年12月13日判決の事案では、株式の売買契約に関して、契約書には書かれていなかった買い戻し特約(=売主が買主から株式を買い戻すことができる特約)の存否が争われました。同契約には完全合意条項が定められていました。

東京地裁は以下のように判示し、完全合意条項の有効性を認定したうえで、契約書に記載されていない買い戻し特約の存在を否定しました。

契約の締結に関与した者はいずれも会社の役員や弁護士であり、右のような事務に関しては十分な経験を有し、契約書に定められた個々の条項の意味内容についても十分理解し得る能力を有していたというべきであるから、本件においては、右条項にその文言どおりの効力を認めるべきである

同判示は、当事者が契約条項の内容を十分理解できたことを理由に、完全合意条項の有効性を認めています。

これを反対に解釈すれば、当事者において契約条項の内容を理解する能力が不十分である場合には、完全合意条項が無効と判断される可能性があります。例えば契約当事者が個人の場合や、法人であっても取引の経験に乏しい場合などには、完全合意条項が無効となることがあり得るので注意しましょう。

完全合意条項と分離可能性条項の違い

完全合意条項と同じく、日本企業が海外企業との間で締結する契約書に定められることが多い条項として「分離可能性条項」が挙げられます。

分離可能性条項とは、契約内容の一部が無効になったとしても、その他の条項は引き続き有効に存続する旨を定めた契約条項です。

国際取引においては、契約に適用される法のルールが不明確または複雑になりやすいため、同一国籍の企業の間で行われる取引に比べて、契約条項の一部が無効となってしまうリスクが高いと考えられます。

そこで、契約の一部が無効になったとしても、その影響を最小限に抑えられるように分離可能性条項を定めるのが一般的です。

例)本契約のいずれかの条項が違法、無効または執行不可能と司法当局に判断されても、本契約のその他の条項または規定の適法性、有効性または執行可能性には何ら影響を及ぼさない。

If any provision of this Agreement is determined by any judicial authority to be unlawful, void or unenforceable, this shall not in any way affect the legality, validity or enforceability of any other terms or provisions of this Agreement.

分離可能性条項についての詳細は、以下の記事を併せてご参照ください。

完全合意条項の特徴を踏まえて契約書をレビューしましょう

完全合意条項を定めると、契約内容を明確化できるメリットがあります。その反面、契約書以外の方法による合意が排除されるため、契約書のレビューをいっそう慎重に行わなければなりません。

このような完全合意条項の特徴を踏まえたうえで、取引の内容やルールが適切に表現されているか、自社にとって不当に不利益な条項が含まれていないかなど、契約書における重要なポイントを漏れなく確認しましょう。


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