- 更新日 : 2022年2月7日
電子署名法とは?概要と認証業務について解説!
電子契約を導入するにあたっては、その法的根拠を理解する必要があります。それは電子署名法および各種の関係法令です。今回は電子署名法の概要や、電子署名の「真正性」を担保する認証業務の仕組みについて解説します。
目次
電子署名法とは?
電子署名法(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)は、以下の表のとおり全6章・47条および附則で構成される法律で、2001年4月1日に施行されました。
章 | 条 |
---|---|
第1章:総則 | 第1条~2条 |
第2章:電磁的記録の真正な成立の推定 | 第3条 |
第3章:特定認証業務の認定等 | 第4条~16条 |
第4章:指定調査期間等 | 第17条~32条 |
第5章:雑則 | 第33条~40条 |
第6章:罰則 | 第41条~47条 |
電子署名法では、最初に電子署名の定義と認証業務の内容を明確に定めています。まずは、この2点について解説します。
そもそも電子署名とは?電子署名法との関わりから
電子署名法第2条では、電子署名を以下のように定義しています。
この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
引用:「平成十二年法律第百二号 電子署名及び認証業務に関する法律」|e-Gov 法令検索
つまり、インターネットの場において、メールや各種アプリケーションを利用した形で本人が行った署名を電子署名といいます。「電子印鑑」や「電子サイン」といった用語もありますが、電子署名は電子署名そのものを含む仕組み全体を指す言葉であり、これらの類似用語よりも広い意味で使われます。
電子署名の詳細については、以下の記事を参照してください。
電子契約において重要な「認証業務」
電子署名が有効となるためには本人によって行われ、改ざんされたものではないことを証明する必要があり、そのために一定の手続きが求められます。証明は、関連する契約や業務とは関わりのない第三者によって行われなければなりません。これが「認証業務」です。
電子署名法第2条第2項では、認証業務について以下のように説明しています。
2 この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
3 この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。
これは定義にすぎず、認証業務の具体的な内容は書かれていません。どのように認証業務を行い、認証業務を行う事業者をどのように国が認めるかについては、公益社団法人 商事法務研究会が以下のように説明しています。
電子署名の確からしさを担保する技術に「公開鍵」と「秘密鍵」があります。
「公開鍵暗号方式」では公開鍵によって通信内容を暗号化し、受信者が暗号内容を秘密鍵によって復号化します。公開鍵は全世界に公開されていますが、その対となる秘密鍵は秘匿されているため、通信を傍受することはできません。これによって、通信内容が当事者間でやり取りされたものであることを証明するのです。
ある公開鍵が特定の事業者だけで使われているユニークなものであることも証明しないと、暗号化されていても通信の安全性を保証することはできません。
公開鍵がユニークであることを証明するのが、認定事業者です。電子署名法の枠組みでは、通信を実施する各事業者が本人確認などを行った上で、公開鍵を認証事業者に登録します。認証事業者は、その事業者が登録した公開鍵を審査した上で、間違いなく登録者が所有者であることを証明するための電子証明書を発行します。
認定業務のうち、電子署名法の詳細について定めた電子署名法施行規則第2条に規定された数学的基準をクリアしたものだけが「特定認証業務」とされます。さらに電子署名法や施行規則の設けた業務や設備の基準をクリアして、主務大臣(この場合は法務大臣、総務大臣および経済産業大臣)の認定を受けたものは「認定認証業務」とされます。
認定認証業務は毎年指定調査機関による審査を受けて、認定を更新する必要があります。
電子署名法のポイント
電子署名の定義について触れた際、電子署名法の第2条を引用しました。定義に加えて、実務上で重要になるのが電子署名の法的効力です。
特定の条件を満たしていれば、電子署名であったとしても書面への署名押印と同じような法的効力および有効性を有します。電子署名法は、このことを明記した点で画期的な法律です。
ここでは、電子署名の法的効力について言及した第3条を取り上げつつ、押印と電子署名の法的効力の違いについて解説します。
押印の法的効力と電子署名の法的効力の違い
押印の法的効力については、民事訴訟法第228条4項で以下のように定められています。
私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
この「真正に成立したものと推定する」の部分に基づいて、押印の持つ法的効力のことを「推定効」と呼びます。本人または代理人の署名なり押印があれば、それが本人によってなされたものであることを推定するわけです。推定効を持つ文書は、万が一訴訟になった際に本人が作成し契約を取り交わした証拠と認められることになります。
電子署名については、電子署名法第3条で以下のように定められています。
電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。
間違いなく本人による電子署名が行われていれば、押印がなされた文書と同じように「真正に成立したものと推定する」、すなわち「推定効」を持つとされます。
民事訴訟法第228条も電子署名法第3条も、推定効の有無を判断する対象となる文書と、推定効を持つに至る条件を定めています。両者を比較してみましょう。
民事訴訟法第228条(押印) | 電子署名法第3条(電子署名) | |
---|---|---|
対象文書 | 私文書 | 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く) |
条件 | 本人又はその代理人の署名又は押印があるとき | 当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る |
結論 | 真正に成立したものと推定する | 真正に成立したものと推定する |
民事訴訟法第228条に記載された「私文書」は公務員ではない私人によって作成された書類、特に権利や義務、事実証明のために作成された書類を指します。「公務員が職務上作成したものを除く」とされた電子署名法第3条が規定する電子文書も私文書と同等の電子データであり、両者が規定する対象はほぼ同一であるといえます。
押印が推定効を持つ条件は「本人ないし代理人の署名または押印」であり、単純明快です。
一方で電子署名は、本人によってなされたものであることを証明するための技術的要件が複雑であるため、前述の認証事業者が認証業務を担当します。具体的な技術的要件は、電子署名法の施行規則第2条で定められています。3条署名として有効になるためには、本人性と非改ざん性に加えて「固有性(他人が容易に同一のものを作成できないこと)」の要件も満たさなければなりません。
電子契約の導入前に電子署名法についても確認しておこう!
電子署名法では、電子契約の前提となる電子署名の真正性を担保する仕組みについて定めています。弁護士や司法書士などの士業だけでなく、一般企業の経営者や法務担当者も、電子署名の技術を可能とする法的根拠を理解する必要があります。
電子署名法の解釈は政府によって随時発表されており、変更されることもあります。技術の進展やニーズの変化などに応じて、今後も改正される可能性があります。電子署名の定義や技術的要件、認証業務の仕組みについては基本的な概要だけでなく、最新のニュースもキャッチアップすることをおすすめします。
よくある質問
電子署名法とはなんですか?
電子署名の法的効果や推定効を持つための条件を定めた法律です。有効な電子署名となるための要件や推定効を持つための条件を定めています。電子文書に対して本人性や非改ざん性、固有性の要件を満たす電子署名が行われている場合は、推定効も認められます。詳しくはこちらをご覧ください。
電子契約において重要な「認証業務」とはなんですか?
電子署名が特定の個人・法人によってなされていることを、電子署名のなされた文書の作成者や相手方の求めに応じて認証する業務を指します。有効な電子署名を行うためには、認証局の認証を受ける必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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