- 作成日 : 2022年8月5日
血判状とは?法的効力が認められる可能性がある理由は?
血判状とは、血液を指に付けて拇印を押した証書のことです。時代劇などで見られ、血液を使用することから、決意の固さや契約の重さなどを感じるかもしれません。血判状は、現代でも法的効力があるのでしょうか。この記事では、血判状の概要と現代での有効性、歴史上で発見された血判状の例をご紹介します。
血判状とは
血判状とは、血液を指に付けて拇印を押した証書のことです。朱肉やインク、墨ではなく血液を使用することから特別なものというイメージがある一方で、現実味に欠けるという印象もあるかもしれません。
2013年に、坂本龍馬が血判を押した誓約書が発見されたというニュースがありました。これは坂本龍馬が25歳の時に土佐藩の西洋流砲術家・徳弘孝蔵のもとに入門した際のもので、「学んだことを一切口外しない」ことを誓う内容でした。他には坂本龍馬の血判は見つかっておらず、その希少性で話題になりました。
この事例からもわかるように、血判状は誓約や契約など、重い約束を交わす際に作成されていました。では、現代において血判状が作られた場合、法的効力はあるのでしょうか。
血判状に法的効力が認められる可能性がある理由
結論からいうと、血判状は現在でも法的効力を持つ可能性があります。通常の捺印・拇印と同じように、契約や約束事において本人の意思を示す手段になり得るからです。
血判状は指で押すため、指紋を読み取ることができます。この点は、朱肉を使用した拇印と同じです。それに加えて血判はDNA鑑定も可能であるため、ほぼ間違いなく本人のものであることを確認できます。印鑑証明制度がなかった坂本龍馬の時代と違い、現代では印鑑による捺印が主流ですが、血判も本人の意思を示す手段として有効となる可能性は十分あります。
現代では芸能人やスポーツ選手、政治家などがアピールを兼ねて血判状(のようなもの)を作成することがあるようですが、道徳的観点でも、実際に自身の血液を使った血判状で契約が交わされるケースは稀でしょう。それでも、裁判で血判状が有効な証明・証拠の資料となり得ることを考えると、血判状のイメージが少し変わるかもしれません。
血判状が使用された例
実際に血判状が作られたのは、坂本龍馬の件だけではありません。印鑑証明制度がなかった時代は、重要な契約や誓約を交わす際に血判状が交わされることがあったようです。ここでは、血判状が使われた出来事の中から、歴史的資料が残っているものを2つご紹介します。
農民の一揆で使われた例
日本の歴史では、たびたび「一揆」とよばれる集団クーデターが発生しました。これは、農民・信徒などが団結し、代官や守護からの圧政に対して要求・反対のために立ち上がる、武力行使を含む運動です。一揆が起こった時にも、血判状が作られました。
例えば生駒市には、慶応4年(1868年)の正月に起きた「矢野騒動」「生駒一揆」と呼ばれる一揆において作成された傘形連判状が資料として残っています。また、岐阜県郡上市白鳥町にある白山文化博物館には、宝暦6年(1756年)に起きた一揆の際に作成された傘形連判状があります。
傘形連判状は傘のように円形に名前を書き、1人ずつ血判を押したもので、決して仲間から抜けないという誓いを表すと同時に、誰が一揆の指導者であるかをわからなくする意味もありました。
「本能寺の変」の前に書かれた誓詞血判状
「本能寺の変」の時に血判状が交わされたことがわかる資料が見つかっています。
加賀藩(現在の石川県と富山県の一部)の兵学者が、本能寺の変の87年後に「乙夜之書物(いつやのかきもの)」という書物を作成し、本能寺襲撃に参加した明智光秀の家臣から聞いた情報を記しています。
その書物には、光秀の重臣だった斎藤利三の三男である斎藤利宗が、加賀藩士で甥の井上清左衛門に語った内容が書かれています。
当時、明智光秀は中国地方で毛利勢と戦う羽柴秀吉への援軍という名目で、自軍の兵を亀山城へ集めていました。光秀が謀反の決意を重臣である齋藤利三に告げ、その後志を同じくする武将たちが誓詞血判状を書いたそうです。その後光秀は軍を率い、日暮れ前に亀山城を出発し、織田信長のいる本能寺へ向かいました。
「乙夜之書物」の上巻・奥書(書き入れ)には、「他人に見せることを禁じる」という記述が見つかっているため、読まれるための書物ではないことがわかります。血判状自体が見つかったわけではありませんが、情報源が具体的に記されていることから、信憑性の高い情報として扱われているそうです。
血判状には強い思いが込められている
血判状は、通常の捺印・拇印と同じく法的効力を持ち得ます。固い決意を表す証書として使われてきた歴史を知ると、血判状が単なるアピールではなく、強い思いが込められていることがわかるでしょう。
現代において実際に血液を使って血判状が作られることはほとんどありませんが、普段の生活や業務の中で行われる捺印にも一つひとつに意味があります。
デジタル化が進み、捺印する機会が減りましたが、デジタルで捺印する場合でも捺印の意味は変わりません。血判状と聞くと少し重いかもしれませんが、その歴史を知ると日々の捺印にも意味があることがわかるのではないでしょうか。
よくある質問
血判状とは何ですか?
血判状とは血液を使って拇印を押した証書のことで、通常の捺印・拇印と同じ法的効力を持つ可能性があります。歴史上ではクーデターや一揆、文武を学ぶ門徒となる際に血判状が交わされていました。詳しくはこちらをご覧ください。
血判状に法的効力が認められる可能性がある理由は何ですか?
血判状は血液を使って押された拇印ですが、朱肉やインク、墨を使用した捺印・拇印と同じく、本人の意思を表す手段になり得ます。また血液からDNA鑑定ができるため、本人のものと判別することも可能です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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