• 作成日 : 2024年9月27日

過払金返還請求書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説

過払金返還請求書とは、貸金業者などに対して払い過ぎた利息の返還を求める請求書です。利息制限法の規定に照らして利息を払い過ぎた場合は、債権者に対して過払金返還請求書を送付しましょう。本記事では、過払金返還請求書の書き方やレビュー時のポイントなどを、文言の具体例を示しながら解説します。

過払金返還請求とは

過払金返還請求書とは、利息制限法の上限を超えて払い過ぎた利息の返還を求める請求書です。

利息制限法では、元本の額に応じて貸付利息の上限利率が、以下の通り定められています。

元本の額上限利率
10万円未満年20%
10万円以上100万円未満年18%
100万円以上年15%

上記の上限利率を超える利息の支払いは、その超過部分について無効です(利息制限法1条)。

払い過ぎた利息は「過払金(過払い金)」と呼ばれ、債権者に対して返還を請求できます。その際に債権者へ送付するのが「過払金返還請求書」です。

過払金返還請求書を作成するケース

過払金返還請求書を作成するのは、貸金業者などに対して、利息制限法の上限を超える貸付利息を支払った場合です。

近年では、上限利率を超える貸付けは、違法業者を除いてほとんど行われていません。しかし、貸金業法などの改正法が施行された2010年6月18日より前の借り入れについては、過払金が発生している可能性があります。

なお「利息」という名目でなくても、借主が貸主に対して支払う元本以外の金銭(礼金・割引金・手数料・調査料など)の額を合算すると上限利率を超過する場合は、過払い金が発生する点にご留意ください(利息制限法3条)。

過払金返還請求書のひな形

過払金返還請求書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に過払金返還請求書を作成する際の参考としてください。


※ひな形の文例と本記事で紹介する文例は、異なる場合があります。

過払金返還請求書に記載すべき内容

過払金返還請求書には、主に以下の事項を記載します。

  1. 借り入れに関する情報
  2. 実際に支払った利息と上限利息の比較
  3. 過払金の返還を請求する旨

借り入れに関する情報

(例)

私は貴社との間で、令和〇年〇月〇日付で、以下の条件による金銭消費貸借契約を締結し、同日付で当該金員を貴社から借り入れました。

借入金額:○○円

利息:年〇%

支払期日:令和〇年〇月〇日

契約日や借り入れの条件などを記載し、過払金返還請求の対象とする借り入れを特定しましょう。借り入れの条件としては、借入金額・利息・支払期日などを記載します。

実際に支払った利息と上限利息の比較

(例)

私は貴社に対して、令和△年△月△日までに、当該借り入れの返済として元本○円と利息×円を支払いましたところ、利息制限法所定の上限利率に従って計算しますと、当該利息については□円の過払いが生じているものと思われます(当該計算の結果につきましては、別便で計算書をご送付いたします)。

債権者に対して実際に支払った利息と、利息制限法の規定に従った上限利息を比較し、過払金の額を提示しましょう。

過払金の計算根拠については、引き直し計算書を送付するのが一般的です。通常の郵便であれば同封となりますが、内容証明郵便の場合は内容文書以外の文書を添付できないので、別送となります。

過払金の返還を請求する旨

(例)

したがって当該利息のうち、過払金に当たる金○○円を、本書面到達後〇日以内にご返還くださいますよう、本書をもって請求いたします。

計算結果を踏まえた金額につき、過払金の返還を請求する旨を明記します。支払われなければ訴訟の提起を検討する旨や、振込先口座などを記載するケースもあります。

過払金返還請求書を作成する際の注意点

過払金返還請求書を作成する際には、過払金の計算根拠を明確に示すことが大切です。

利息制限法の規定に従って正確に引き直し計算を行い、適正額の過払金を請求しましょう。計算根拠が曖昧な場合や不正確な場合は、その点を突かれて過払金の減額を求められるおそれがあるのでご注意ください。

過払金返還請求権の時効

過払金返還請求権は、以下の期間が経過すると時効によって消滅します。

借り入れの時期時効期間
2020年3月31日以前最後の取引日から10年
2020年4月1日以降最後の取引日から5年

過払金返還請求権の時効完成が迫っている場合には、早急に内容証明郵便の送付や訴訟の提起などを行い、時効完成を阻止しましょう。

なお、借り入れと完済を繰り返している場合でも、取引全体が一連の貸付取引と評価できるときは、すべての借り入れに係る過払金返還請求権の時効期間が最終の完済時点から進行すると解されています。

個々の完済からカウントすれば時効期間が経過していても、上記の論理に成り立つ場合には、時効が完成していないと主張できます。

過払金返還請求とブラックリストの関係性

借金などの返済が困難となって債務整理をすると、個人信用情報機関のデータベースに事故情報(異動情報)が登録され、新規の借り入れやクレジットカードなどが利用できなくなります。これは俗に「ブラックリスト入り」と呼ばれるものです。

過払金返還請求を行っても、原則としてブラックリスト入りすることはありません。過払金返還請求は、債務の滞納などを伴うものではなく、権利を行使するものに過ぎないからです。

ただし、過払金返還請求をしても元本が完済に至らないときは、債務整理の一種である「任意整理」をしたものと扱われ、ブラックリスト入りとなる可能性があります。過払金返還請求を行う際には、利息制限法の規定に照らした引き直し計算を適切に行い、過払金をもって元本を完済できるかどうかあらかじめ確認しましょう。

なお、ブラックリスト入りを恐れるあまり、過払金返還請求を控えてしまうのは本末転倒となるケースが多いです。元本を完済できない場合でも、ブラックリスト入りのデメリットと過払金返還請求のメリットを総合的に考慮して、どのように対応すべきかを適切に判断しましょう。

過払金返還請求の流れ

過払金返還請求は、大まかに以下の流れで行います。

  1. 取引履歴の開示を請求する
  2. 過払金返還請求書を送付し、債権者と交渉する
  3. 訴訟を提起する
  4. 過払金の返還を受ける

取引履歴の開示を請求する

まずは債権者(貸金業者など)に対して、取引履歴の開示を請求しましょう。これまで支払った利息の金額を集計し、過払金の計算に用いるためです。

取引履歴の開示請求は、債権者が定める窓口に対して行います。通常であれば、2週間から3週間程度で開示書類が送られてきます。

債権者が取引履歴の開示を拒否する場合には、預貯金の出金履歴などから独自に計算するか、または訴訟手続きの中で開示を求めることが考えられます。

過払金返還請求書を送付し、債権者と交渉する

開示された取引履歴に基づいて過払金の額を計算し、その金額を反映した過払金返還請求書を作成します。

過払金返還請求書は、内容証明郵便で送付するのが一般的です。内容証明郵便で請求書を送付すれば、過払金返還請求権の消滅時効の完成を6ヵ月間猶予する(停止させる)ことができます(民法150条1項)。

内容証明郵便には、内容文書である過払金返還請求書以外の文書を添付できません。そのため、過払金の計算書は普通郵便などで別送しましょう。

過払金返還請求書に対して、債権者から返答があったら、過払金の精算に関する交渉を行います。過払金全額の返還を求めることを基本としつつ、早期解決を重視するのであれば、債権者の言い分を聞いてある程度譲歩することも考えられます。

訴訟を提起する

過払金返還請求に関して、債権者との交渉がまとまらないときは、裁判所に訴訟を提起しましょう。訴訟において過払金が発生していることを立証すれば、裁判所は債権者に対して、過払金の支払いを命ずる判決を言い渡します。

第一審判決に対しては控訴、控訴審判決に対しては上告が認められています。控訴・上告の手続きを経て、判決が確定します。また、控訴・上告の期間(=判決書の送達日から2週間以内)が経過した場合も、判決が確定します。

過払金の返還を受ける

債権者との交渉や訴訟によって確定した過払金につき、銀行振込などの方法によって支払いを受けます。元本が残っている場合には、過払金の額を元本に充当した上で、完済に至れば残額の支払いを受け、完済に至らなければ返済を継続します。

訴訟の判決が確定していれば、裁判所に強制執行を申し立てることにより、債権者の財産を差し押さえることが可能です。実際には、強制執行に着手する前に過払金の支払いを受けられるケースが多いと考えられます。

利息を支払い過ぎたら過払金返還請求書を送付しましょう

利息制限法の上限を超えて支払った利息(=過払金)は、債権者に対して返還を請求できます。

過払金返還請求に当たっては、内容証明郵便で過払金返還請求書を送付するのが一般的です。その際には、過払金の計算根拠を明確かつ正確に提示することが求められます。利息制限法の規定を踏まえて適切に引き直し計算を行い、その結果を記載した計算書を債権者に対して別送しましょう。

過払金返還請求は、最終的には訴訟に発展することもあります。自力で対応することに不安がある場合は、弁護士に依頼して代理で対応してもらうこともご検討ください。


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