- 作成日 : 2024年12月3日
契約締結とは?締結日の決め方や契約書作成日・効力発生日との違いも解説
契約締結とは、法的に利害関係をもつ契約内容に対して当事者が合意することを指します。紙での契約はもちろん、電子契約でも締結可能です。
本記事は契約締結とは何かを解説し、締結方法や注意点を解説します。あわせて、契約締結日、作成日、効力発生日それぞれの違いや、契約締結日と効力発生日の決定方法についても解説します。
目次
契約締結とは?
契約締結とは、法的な関係を結ぶ契約の内容に対して当事者が合意することです。例として、サービス提供や業務提携、売買など、契約により権利や義務、法律的な効力が発生する契約が挙げられます。
紙で発行した契約書はもちろん、電子契約でも締結可能です。契約締結日は、各当事者が契約書に署名押印を行い、契約に対して合意した日となります。
契約締結では、契約書への署名押印により全当事者の同意を得なければなりません。確実に同意を得るには、契約の締結日や開始日、効力発生日を明確にしておく必要があります。複数の当事者が署名押印を行う実務では、契約締結日となるタイミングが複数考えられます。どのタイミングで契約締結とするのか、事前に当事者間で話し合っておきましょう。契約締結日だけでなく、契約開始日や効力発生日についても、明確に決めておきます。
契約締結の方法は?
契約締結の方法として、書面契約と電子契約が挙げられます。近年は、書面での契約から電子契約に移行する企業が増加しています。
それぞれのやり方を詳しく見ていきましょう。
書面で契約締結する方法
書面で契約締結する方法は、以前から広く用いられてきました。紙で発行された契約書に両当事者が署名押印することにより、契約が締結されます。
書面での契約締結で一般的に使用されるのは契約書ですが、双方の合意があれば「覚書」や「合意書」でも締結できます。
また、発注者が署名押印した「発注書」を発行し、内容に問題がないことを確認の上、受注者が署名押印した「発注請書」を発行して発注者に渡す方法でも、契約書と同じように締結可能です。
書面契約は、現在でも多く使われています。ただし、遠方の当事者と契約締結する場合に郵送費用や時間がかかることや、印紙税や保管といったコストがかかることが課題です。
電子契約で契約締結する方法
電子契約で契約締結する場合、インターネット上で契約書のファイルを相手方に開示し、双方が電子署名を行うことで成立します。電子署名は、従来の署名や捺印と同等の法的効力をもつ方式です。
電子契約での契約締結は、契約書の検索や新規作成が容易になるだけでなく、セキュリティ面でも安全です。
その他、以下のメリットがあります。
- 印紙税や経費の削減
- 事務労力の削減
- 契約締結までの時間短縮
- 保管・管理の効率化
電子契約では、契約締結までの時間を短縮しつつコストも削減可能ですが、下請事業者や消費者の立場に配慮が必要な一部の契約書は、相手の同意がなければ電子化できません。
また、電子契約システムの導入にもコストが必要な場合があることには留意する必要があります。
契約締結日とは?
契約締結日とは、契約の効力が発生する初日です。通常はすべての当事者が署名押印を終えた日となります。契約締結日と混同しがちな言葉として、作成日と効力発生日が挙げられます。
ここからは、それぞれの違いを解説します。
契約締結日と作成日の違い
契約締結日は、すべての当事者が合意の上で署名押印を完了した日です。
一方作成日は、契約書が完成した日を指します。郵送や電子署名の場合、受け取った側が署名押印を完了した日が契約締結日です。作成日は送付した側が契約書を作成した日となるため、作成日と締結日が異なるケースが発生します。
契約締結日と作成日は、その役割にも違いがあります。契約締結日は、契約の効力に直接関係する日です。
作成日は、契約の効力には直接影響を与えません。主に、契約書の作成経緯を示すために使われます。
契約締結日と効力発生日の違い
契約は、締結しただけでは効力が発生しません。契約の効力を発生させるには、契約締結日とは別に「効力発生日」を定める必要があります。
ほとんどの場合、効力発生日は契約締結日と同日となります。法律上、契約締結日や効力発生日に関する規定はなく、当事者間で合意していれば、それぞれ違う日付にしても構いません。
契約締結日を決める方法は?
契約締結日は、署名押印が完了したタイミングによって変わるため、当事者間で締結日の決め方を話し合っておくことが欠かせません。
ここからは、一般的な契約締結日の決め方を解説します。
契約期間の初日を契約締結日とする方法
契約期間の初日を契約締結日とする方法では、締結日と契約開始日が同じです。契約開始日を把握しやすくなることから、多くの契約で採用されています。
契約期間の初日を契約締結日にすると、双方の署名押印が完了してから契約を開始できるため、当事者間の合意を得やすい方法です。
当事者が最初に署名・押印した日を契約締結日とする方法
当事者のいずれかが最初に署名・押印を行った日を契約締結日とする方法は、押印のタイミングによりメリットとデメリットが分かれます。先に押印した側にとっては、相手方による日付の改ざんを防げる点がメリットです。後に押印する側としては、自社で確認をする前に、先に押印した側のタイミングで契約が締結されてしまう点が不安材料となります。
当事者が最後に署名・押印した日を契約締結日とする方法
当事者が最後に署名・押印が完了した日を契約締結日とする方法を取った場合、先に押印した側が、契約締結日を空白にして後から押印した側に送ります。日付を記入するのは、後から押印する側です。
先に押印した側としては、本来の締結日とは違う日付を記入される危険性があります。または後から受け取った側が記入を忘れて日付が空欄となってしまうことにより、トラブルとなる可能性もあります。
双方が基本的な契約条件に合意した日を契約締結日とする方法
契約締結日を双方が基本的な契約条件に合意した日に設定する方法では、契約書が完成していなくても、当事者が条件に合意した段階で契約が成立したとみなされます。契約書の作成を待たずにスピーディーに契約を締結できる点がメリットです。
反面、合意後に契約書が作成されるため、契約書に記載された内容と合意時の認識が食い違う可能性もあります。
すべての当事者の承認が完了した日を契約締結日とする方法
契約締結日をすべての当事者が承認を完了した日とする方法を採用すると、誤解やトラブルを防ぎ、契約内容の透明性を保ちやすくなります。
社内で承認を依頼する対象が複数いる場合、全員の合意がそろうまでに時間がかかる場合もあります。そのため、承認完了日をどのように確認するかを、双方ですり合わせておかなければいけません。
契約締結日と効力発生日を変える方法は?
多くの契約では、効力発生日は契約締結日と同日ですが、別の日にすることも可能です。本項目では、契約締結日と効力発生日を変える方法を解説します。
効力発生日を過去の日付にする方法
すでに取引が始まっていて契約書の作成が遅れた場合は、効力の発生をさかのぼって適用する旨の条項を追加することで、効力発生日を過去の日付に変更可能です。
例えば、本来の効力発生日が2024年3月1日で、実際は2024年4月1日に契約を締結した場合は、契約書に「本契約の効力発生日は2024年3月1日とする」と過去の効力発生日を記載することで、契約締結日からさかのぼって契約内容が適用されます。
効力発生日を未来の日付にする方法
効力発生日を未来の日付に設定する際は、効力を発生させたい将来の日付を契約書に記載します。業務委託契約や秘密保持契約など、実際のプロジェクトや取引開始前に契約を締結する場合に利用される方法です。
2024年4月1日に契約を締結した後に効力を発生させたい場合は「本契約は、2024年5月1日から効力を生じるものとする」「本契約の有効期間は、2024年5月1日から1年間とする」といった条項を契約書に加えます。
契約締結における注意点は?
契約締結においては、契約書に契約締結日を必ず記入します。あわせて、契約締結日を実際の日付よりも前にしてはいけません。それぞれどうすべきか、具体的に解説します。
契約書に契約締結日を必ず記入する
契約書には、契約締結日の記載が必須です。記入漏れにより本来の締結日より前の日付を書き加えられ、不利益を被る危険性があるからです。さらに、契約締結日の記載がないと契約成立日がわからないため、契約の成立時期に関するトラブルの原因ともなってしまいます。
契約締結日を正しく記入することで、契約開始日が明確になりトラブルを未然に防げます。特に契約の履行に関する争いが生じた際には、契約履行義務の発生タイミングを証明しやすくなります。
契約締結日を実際の日付よりも前の日付にしない
契約締結日を実際の日付よりも前に設定する「バックデート」は行ってはいけません。バックデートを行うと、契約書に事実と異なる記載をしたとみなされる恐れがあります。契約の有効性は、効力発生日を過去の日付にすることで担保されるため、あえてバックデートを行う必要はありません。トラブルを回避する意味でも、契約締結日に過去の日付を記入するバックデートは極力避けましょう。
契約締結日を空欄にしない
契約締結日の欄を空欄のまま署名押印することのないようにしましょう。
契約書の作成後、当事者の署名押印を進める際、記載漏れのまま相手方に送付してしまうことがあります。あるいは、署名押印するタイミングなどの配慮からあえて空欄にするケースもあるかもしれません。
契約締結日は、契約の効力開始や、契約に関する締結の経緯を確認する重要な日付です。トラブルを未然に防ぐためにも必ず記載しましょう。
書面契約と電子契約で締結日に違いはある?
書面契約と電子契約では、契約締結日の基準が異なります。書面契約では、両者が契約書に署名押印を完了した日を契約締結日とするのが一般的です。一方、電子契約では、電子署名を行った際にタイムスタンプが付与され、署名が完了した日時が自動的に記録されます。
郵送や書類の確認などに時間がかかると、契約書に記載された契約締結日よりも実際の契約締結が遅くなるケースも多くあります。この場合、書面契約、電子契約とも、バックデートには該当しません。
契約締結日や効力発生日を明確にしてスムーズに契約締結を
契約締結とは、当事者が契約内容について合意することです。書面はもちろん、電子契約でも締結できます。ほとんどの場合、契約締結日が効力発生日となりますが、当事者間の合意があれば、同じ日付にしなくても問題ありません。あわせて、契約書には契約締結日を必ず記載します。締結日の変更は可能ですが、本来の締結日より前に設定することは避けましょう。
締結日や効力発生日が決められていない状態での契約締結はトラブルの元となります。契約締結時には契約締結日や効力発生日を明確に記載し、スムーズに契約に関する日付を確認できるようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
期間満了後の土地使用継続に対する異議通知書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
期間満了後の土地使用継続に対する異議通知書とは、一般的に借地権の契約満了後に更新しないことを借主に通知する書面のことです。借地権契約は、借主の権利を保護するために期間満了であったとしても正当事由がないと契約更新を拒否できません。 この記事で…
詳しくみる不動産死因贈与契約書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
不動産死因贈与契約書とは、贈与者の死亡により不動産贈与の効力が生じる契約書のことです。口約束でも贈与契約は成立しますが、トラブルを回避するためにも契約書を作成しておくほうがよいでしょう。不動産死因贈与契約書の具体例や書き方のポイント、死因贈…
詳しくみる特定契約・接続契約モデル契約書とは?ひな形をもとに記載項目を解説
特定契約・接続契約モデル契約書は、経済産業省が公表している特定契約・接続契約のひな形です。固定価格買取制度を使って再生可能エネルギー事業者が売電する際は、電力会社と特定契約・接続契約を締結します。その際のベースとなるのがモデル契約書です。今…
詳しくみる共同出願契約とは?雛形をもとにメリットや注意点を紹介
複数の企業や個人、研究機関や教育機関が共同で発明をした場合、共同で特許を出願することができます。この際に発明者同士は「共同出願契約」を締結するのが一般的です。 今回は共同出願契約の概要や契約書の条項、メリット・デメリットや注意点についてご説…
詳しくみる農地売買契約書とは?雛形をもとに内容や注意点を解説
高齢を理由に、家業の農業を引退することを考えている人は少なくないでしょう。子どもが別の職業に就いていて親族に後継者がいない場合は、農地を売却することを検討する必要があります。 しかし一般の土地とは異なり、農地は日本の農業政策に深く関わってい…
詳しくみる退職勧奨同意書とは?作成するケースや書き方、注意点を解説
退職勧奨同意書とは、従業員と会社間で退職を合意する際に、退職の条件などを記した書面です。退職勧奨は従業員に自主退職を促す行為ですが、同意書を取り交わすことで円満な退職が実現できます。 この記事では、退職勧奨同意書の目的や、発行が必要となるケ…
詳しくみる