- 更新日 : 2024年11月28日
CLM(契約ライフサイクル管理)とは?目的や課題、ツールを紹介
CLMとは「契約ライフサイクルマネジメント(Contract Lifecycle Management)」の略称で、契約の準備・締結・運用・更新のプロセスをシステムを通じて体系的に管理することを意味します。
本記事では、法務において重要となるCLMの概要や、CLMツールの活用方法・選定のポイントなどを解説します。
目次
CLM(契約ライフサイクル管理)とは
CLMとは「契約ライフサイクルマネジメント(Contract Lifecycle Management)」の略称で、契約締結の準備段階、実際の締結、締結後の運用および更新に至るまで、契約に関する一連のプロセスをシステムによって管理することをいいます。
米国で生まれた言葉ですが、近年では契約書の重要性に関する認識が広まった日本においても、法務の領域を中心に用いられるようになりました。
契約の「一生」を管理するという意味で「契約ライフサイクルマネジメント」と呼ばれています。
CLMの目的
CLMの目的は、契約管理の効率を高めてコストを削減するとともに、契約管理上のミスを減らすことです。
契約の締結に当たっては、社内外における多くの利害関係者が関与します。CLMツールを活用することで、複数の人が関わる契約書の管理を効率化するのです。
CLMの全体像
CLMでは、契約管理の効率化やリスクの軽減、コンプライアンスの向上を目的とし、契約に関わる一連の業務を5つ程度の工程に分けてシステム上で管理・運用します。
以下で各工程と必要な作業について詳しく見ていきましょう。
契約書の作成
契約締結時には契約の内容に基づき契約書の草稿を作成しなければなりません。
一般的にはすでにあるテンプレートを使う、過去の類似案件の契約書をアレンジして使う、取引相手が作成するという3パターンで契約書を作成します。
自社・取引先ともに契約書のデータがない場合は、契約の内容が正確であること、必要な条項が盛り込まれていることを確認しながら草稿を作成していく必要があります。
契約書の作成については以下の記事で解説しています。
契約内容の審査・レビュー
契約書を作成したら契約書の内容が適切であるかを法務部などの担当部署が審査・レビューをします。
法律や社内規則に準拠しているか、リスクが適切に管理されているか、自社に不利益となる内容が含まれていないかなどの点を細かくチェックすることで、問題の早期発見が可能となり、トラブルを未然に防ぐことにつながります。
審査後、契約内容に問題がなければ、次に契約内容の交渉工程に移ります。
契約の審査に関しては以下の記事で解説しているので合わせて読んでみてください。
契約内容の交渉
契約内容の審査後、必要があれば取引先との話し合いをします。条件や条項の調整を行い、双方が納得できる契約内容にするためのステップです。
双方納得して締結するまで、修正と審査を繰り返すことになります。
契約締結までに何度か修正を重ねるのは一般的で、修正や再交渉の履歴は今後同様の契約を締結する際に役立つため、消さずに残しておきましょう。
社内稟議による承認→契約締結
交渉が完了し契約内容が確定した契約書は社内の稟議プロセスを経て承認されます。
稟議プロセスは会社によって異なりますが、一般的には以下の工程で進められます。
- 起案者が稟議書を作成する
- 稟議書を関係者が回覧する
- 稟議書の内容を確認し問題がなければ承認する
- 決裁権の保有者が決裁を行う
稟議が完了したら取引先と正式に契約を締結します。
紙の契約書の場合は双方の署名・捺印を行い、電子契約の場合は電子署名・電子契約サービスを用いてオンライン上で電子署名を行います。
契約(契約書)の管理
契約締結後は契約書を適切に管理する必要があります。
契約の履行状況を確認し、新たに必要な契約があれば追記し、不要なものがあれば削除するといったブラッシュアップを行います。
CLMはこれらの工程を明確に分類・標準化することで、ヒューマンエラーのリスクを抑えて業務効率化をサポートするために用いられます。
CLMを行うのは誰?
CLMは契約管理業務の一環を構成するため、契約管理に携わる法務担当者が重要な役割を担います。
その一方で、CLMはシステムおよびテクノロジーの活用を本質的要素とするため、エンジニアの関与も必要不可欠です。
また、契約の締結に関して顧客や取引先との折衝を行う現場担当者も、社内におけるCLMの仕組みについて理解しておく必要があります。
契約ライフサイクル管理における課題
契約の準備・締結・運用・更新のプロセスにおいては、さまざまな課題が発生することがあります。
下記の各段階において、CLMツールがどのように課題を解決し得るのかを紹介します。
- 契約書の作成
- 契約書の社内承認
- 契約締結
- 契約書管理
- 契約更新
契約書の作成
契約書の作成に当たっては、ひな形との照合や過去に締結した関連契約の参照が必要になることがあります。
CLMツールを活用すれば、ひな形との比較機能や関連契約のスムーズな閲覧を可能にする機能などを通じて、社内における契約締結業務の一貫性・整合性を確保することができます。
また、相手方が作成した契約書のドラフトについては、自社にとって不当に不利益な条項が含まれていないかどうかをチェックし、必要に応じて修正を求める必要があります。自動レビュー機能が実装されたCLMツールを活用すれば、リスクの高い条項を素早く検知できます。
契約書の社内承認
規模が比較的大きな企業では、契約の締結に当たって、複数の社内担当者の承認を要するルールを採用しているケースが多いのです。このプロセスは、一般に「稟議(りんぎ)」と呼ばれています。
契約書の稟議は、稟議書を回覧して担当者が押印する形で行うのが伝統的な方法ですが、時間がかかるうえに、現在誰が稟議書を保持しているのかが分かりにくいのが難点です。CLMツールを活用すれば、ワークフロー機能を通じてクラウド上で契約書の稟議を行うことができ、スピードと透明性の向上につながります。
契約締結
契約締結のプロセスを効率化するためには、電子契約が便利です。電子契約は、当事者が遠方にいても簡単な操作で締結でき、原本を郵送する手間も省けます。また、電子契約には収入印紙を貼る必要がない点も大きなメリットです。
多くのCLMツールには、電子署名やタイムスタンプなど、電子契約の締結に活用し得る機能が実装されています。CLMツールにおけるこれらの機能を活用すれば、電子契約をスムーズに締結し、かつその改ざんなどを防止することができます。
契約書管理
締結した契約書は、必要なときにスムーズに閲覧できるようにしておく必要があります。
多くのCLMツールには契約書の検索機能が実装されており、短時間で必要な契約書にアクセスできます。また、紙の契約書をスキャンしてクラウド上で保存できるツールも多く、会社が契約したすべての契約書を一元的に管理することが可能です。
また、営業秘密の漏えいなどを防ぐため、契約書にアクセスできる人は最小限の範囲に絞るべきです。CLMツールの閲覧権限機能を活用すれば、個人や部署に対して柔軟に閲覧権限を付与することができます。
契約更新
契約書の有効期限や自動更新に関するルールは、見落としていると予期せず契約が終了したり、反対に予期せず更新されてしまったりするおそれがあります。
CLMツールを活用すれば、契約書の有効期限や自動更新に関するルールを一元的に管理できます。有効期限や自動更新の時期が近づくとアラートが表示されるツールもあり、契約更新に関する対応の見落としを防げます。
CLMを導入するメリット
CLMを導入することで煩雑になりがちな企業間の契約プロセス全体の最適化が期待できます。ここからは具体的な3つのメリットについて詳しくご紹介します。
契約(契約書)の一元管理ができる
CLMを導入することで契約書や関連ドキュメントを一元管理できる環境が整います。
契約書が各部署に散在してしまい、内容確認や検索に多くの時間がかかっているという企業も少なくないでしょう。
特に過去の契約書は部署ごとに保管しておくケースも多く、過去データを探し契約書の草稿を作成するのに多大な手間と時間がかかってしまいがちです。
CLMはシステム上で契約をデジタルデータとして管理するため、検索やアクセスが容易になり、必要な情報へ即座にアクセスできます。
また、契約書のバージョン管理もでき、最新の契約情報から過去の修正履歴などのデータを常に把握可能です。
契約プロセスにおける属人化を解消できる
CLMを活用することで契約プロセスの属人化を防ぐことができます。
契約に関する情報が特定の担当者のみしか把握していない場合、その担当者の不在時には業務が停滞するリスクがありました。
しかし、CLMの導入により契約の進行状況や担当者が可視化され、業務が他のメンバーにスムーズに引き継がれるようになります。これによって、業務の効率化や継続的な運用が実現します。
更新漏れなどのリスク管理ができる
LMでは契約の更新時期や終了タイミングを自動で通知する機能も付属されており、それらを活用することで更新漏れを未然に防ぎます。
更新の有無によっては業務への影響が大きく、契約が終了したままサービス提供を続けてしまうリスクもあります。CLMによってこのようなリスクを管理しトラブルを未然に防ぐことで、企業の信用向上にもつながります。
CLMツールを導入・運用する流れ
CLMツール導入は現状把握からツール選定、導入後の改善まで、段階的に進めましょう。各ステップを通して、はじめてスムーズな運用体制を築くことができます。
現状把握を行う
CLMツール導入の第一歩は自社の契約管理業務の現状を把握することです。
現在の業務フロー、使用しているツール、システム、業務にかかる時間や課題などを確認します。
現状を明確にすることで、どの部分にCLMツールが必要なのか、またどのように業務を改善すべきなのかを見極めやすくなります。
CLMツールに必要な機能を決める
現状を把握した後は業務改善のために必要なCLMツールの機能を洗い出します。
例えば契約書の一元管理機能、契約期限のリマインダー機能、アクセス権限の管理などが挙げられます。
自社の業務に合った機能を明確にすることで、ツール導入後の運用がスムーズに進み、ヒューマンエラーを防ぐことにもつながります。
必要な機能が備わったCLMツールをリストアップする
必要な機能を決定したら、それらを備えたCLMツールをリストアップします。
市場には数多くのCLMツールが存在するため、ホームページを見たり資料請求をしたり、あるいは説明会やセミナーなどに参加するなど情報を収集し、要件を満たすものをピックアップして候補を絞りましょう。
機能以外にも導入コストやサポート体制も考慮することをおすすめします。
実際に比較して導入するCLMツールを選定する
候補となるCLMツールをリストアップしたら各ツールを実際に比較していきましょう。
機能、使いやすさ、コストパフォーマンス、サポートの充実度などを基準に評価します。
デモ版やトライアルを提供しているツールも多いので、それらを活用して実際の操作感も確認し最適なツールを選定することをおすすめします。
導入、運用を開始する
選定したCLMツールを導入し実際の運用を開始します。
導入にあたっては社内関係者への操作説明や利用ガイドラインの設定が必要です。
スムーズな運用開始のために、初期段階でのトレーニングやサポート体制も整えましょう。 導入直後は混乱が発生したり、なかなかツールを使ってくれなかったりなど、さまざまな問題が発生します。
根気よく対応していくことで、徐々に社内に浸透していくはずです。
社内のフィードバックを得て運用を改善する
導入後は定期的に社内のフィードバックを収集し、運用の改善を行いましょう。
CLMツールの操作に対する意見や業務効率がどれくらい改善されたのかといった感想など、現場の声を聞くことでより自社に合った運用体制の最適化につながります。
継続的に運用がうまくいっているかどうかを見直し、ツールの利用価値を最大化していきましょう。
CLMツールを選定する際の比較ポイント
CLMツールを選定する際には、特に以下のポイントに着目するとよいでしょう。
- 契約ライフサイクル全体をカバーしているか
- 自社にとって必要な機能が実装されているか
- セキュリティ面は万全か
契約ライフサイクル全体をカバーしているか
CLMツールは、自社の契約ライフサイクル全体をワンストップでカバーするものが理想的です。契約の準備・締結・運用・更新の一連のプロセスのうち、一部だけでなく全体がカバーされているかどうかを確認しましょう。
自社にとって必要な機能が実装されているか
CLMツールの機能は個々のサービスによって異なります。自社にとって必要な機能が何かを事前に分析したうえで、複数のサービスの機能を比較検討して導入するCLMツールを選定しましょう。
セキュリティ面は万全か
契約管理に当たっては、情報セキュリティに十分配慮する必要があります。各CLMツールのセキュリティポリシーやセキュリティ面に関する機能につき、営業秘密の漏えいなどを防止するために十分な内容であるかどうかをチェックしましょう。
CLMツールのセキュリティ面については、ウェブサイトなどを確認しても十分な情報を得られないケースもあるので、提供会社の担当者にも質問してみるとよいでしょう。
また一般的に、多くのユーザーを獲得しているCLMツールの方が、セキュリティ面の機能が優れているケースが多いことに留意すべきです。
代表的なCLMツール
CLMツールは、CLMにおける一連のプロセスをさまざまな機能によってサポートするツールです。法律に関する業務を技術でサポートする「リーガルテック」の一種に当たります。
CLMツールは「契約管理システム」と呼ばれることもありますが、締結した契約書を管理するだけにとどまらず、契約締結前後や更新のプロセスについてもサポートするのが大きな特徴です。
代表的なCLMツールとしては、以下の例が挙げられます。
- マネーフォワード クラウド契約
- GMOサイン 契約レビューパック
- Docusign CLM
- GVA manage
- ContractS CLM
CLMツールを活用して契約管理業務を効率化しましょう
契約管理業務を効率化する観点から、日本においてもCLMの重要性に関する認識が広まっています。適切にCLMを実施すれば、契約管理に関するコストの削減やミスの減少につながります。
CLMの効果的な実施のためには、自社のニーズに合ったCLMツールを導入することが大切です。CLMツールの機能は個々に異なるので、自社にとって必要な機能は何かを把握したうえで、複数のCLMツールを比較し、どのツールを導入するかを決めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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