• 作成日 : 2024年12月3日

借用書に収入印紙を貼る必要はある?金額や貼り方、割印についても解説

借用書とは、主に個人間で金銭や物品の貸し借りを行った事実を証明し、返済の意思を確認するための文書です。借主が金額や借入期間などを記載して作成し、署名押印の上、貸主に提出します。

本記事では、借用書がないとどうなるか、2通発行した際に収入印紙は誰が貼るのか、収入印紙はどう貼るのかといった、借用書と収入印紙の関係を解説します。

そもそも借用書とは?

「借用書」とは、金銭や物品の貸し借りを行った事実を証明するための文書です。物品や金銭を借りた際に、返済を約束する意味で交わされます。借用書は借主が作成し署名押印しますが、保管するのは貸主です。

借用書の大きな目的は、貸し借りの内容を明確にし、トラブルが発生した場合の証拠とすることです。なお、本記事では、主に物品ではなくお金の貸し借りを行った際に発行する借用書について解説します。

借用書の法的効力

借用書に法的効力をもたせるには、以下の内容が必要です。

  • 表題
  • 借用書の作成日
  • 貸主の氏名・会社名
  • 借入額
  • 借入日
  • 返済期日
  • 返済方法
  • 借主の氏名(会社名)・住所

借用書の内容をより明確にするため、以下の事項も記載しましょう。

  • 利息の年利
  • 遅延損害金とその年利
  • 期限の利益を喪失する際の条件
  • 裁判となった際の管轄裁判所

借用書に法的効力をもたせるには、借主の自筆による署名も忘れてはいけません。自筆による署名により、借主が借用書の内容を認めたことが証明されるからです。

ただし、たとえ自筆の署名であっても、詐欺や強迫により作成された借用書は取り消しの主張が可能になる(民法96条1項)ため、取り消しが認められた場合には無効となります。

個人間のお金の貸し借りでも借用書が必要

個人間でのお金の貸し借りにおいても、借用書は必要です。借用書は、お金の貸し借りを行った証拠として、借用書が発行されます。言い換えると、借用書がなければ金銭貸借の証拠もありません。借用書による貸し借りの証拠がなければ、貸主に借金を否定されたときに、返済請求ができなくなります。

家族に対して借用書を作成せずお金を貸した場合は、さらに別の問題が発生します。借用書がないことで贈与と判断され、贈与税が加算されるかもしれません。

借用書と金銭消費貸借契約書の違い

借用書と金銭消費貸借契約書は、いずれも金銭の貸し借りに関する文書です。では、2つの文書は何が違うのでしょうか。

両者の大きな違いは、作成者と署名者です。 借用書は借主が作成し、借主のみが署名します。一方、金銭消費貸借契約書は、貸主と借主の双方が協議の上作成し、双方が署名押印する書類です。

借用書は、借主が作成した書面を貸主が1通保管しておけば問題ありません。金銭消費貸借契約書を作成したときは、借主と貸主が署名および捺印を行い、それぞれが保管します。

借用書には収入印紙が必要?

金銭貸借の借用書は、印紙税法に定められた課税文書の「第1号文書」に該当します。課税文書は、収入印紙の貼り付けが必須です。借用額が1万円以上の借用書は、収入印紙の貼り付けが必須となります。1万円未満の場合は、収入印紙は不要です。

借用書は、収入印紙の有無により法的効力は変わりません。しかし、借用書は課税文書であるため、収入印紙を故意に貼らなかったり貼り忘れたりすると、過怠税が課せられます。収入印紙を貼り忘れてしまい、後から自己申告した場合も、過怠税の対象です。

では、誰が借用書に収入印紙を貼る義務を負い、誰が印紙代を負担するのでしょうか。ここからは、収入印紙を貼るべき人は誰か、印紙代は誰が負担するのかを解説します。

借用書の収入印紙は誰が貼る?

借用書に収入印紙を貼るのは、借用書を作成した借主です。

借用書は印紙税法の課税文書となるため、収入印紙を購入して書類に貼ることで印紙税を納めます。印紙税法によると、印紙税の納税義務者は、課税文書の作成者です。つまり、収入印紙を貼る義務があるのは、借用書を作成した借主となります。

借用書の収入印紙代はどっちが負担する?

借用書の収入印紙代をどちらが負担すべきかについては、明確な規定はありません。一般的には、印紙税の納税義務者である、借用書の作成者=借主が負担するとされています。

ただし、借主と貸主双方の合意があれば、「貸主が印紙代を負担する」「印紙代は双方で折半する」など、独自の規定を定めることも可能です。

借用書に貼る収入印紙の金額は?

借用書に貼る収入印紙は、借用額により変わります。借用書に貼る収入印紙額は、国税庁により以下のように決められています。

記載された借用額印紙額
1万円未満非課税
1万円以上10万円以下200円
10万円を超え50万円以下400円
50万円を超え100万円以下1千円
100万円を超え500万円以下2千円
500万円を超え1千万円以下1万円
1千万円を超え5千万円以下2万円
5千万円を超え1億円以下6万円
1億円を超え5億円以下10万円
5億円を超え10億円以下20万円
10億円を超え50億円以下40万円
50億円を超えるもの60万円
契約金額の記載のないもの200円

参照:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

契約金額の記載がない借用書の収入印紙は、一律200円です。

借用した額が1万円未満のときは非課税となるため、収入印紙はいりません。

借用書の収入印紙の貼り方は?

一般的には、借用書は借主が作成し収入印紙を貼った上で、保管します。借主・貸主双方の合意により2通以上作成しても構いません。双方で協議した結果、原本の他に写し(コピー)を作成するケースもあります。

借用書を2通以上作成した場合と原本と写し(コピー)を作成した場合、収入印紙はどのように貼るのでしょうか。ケースごとに収入印紙の貼り方を解説します。

借用書を2通以上作成した場合

借用書を2通以上作成した場合、原則としてすべての原本に収入印紙を貼らなければなりません。借主と貸主が原本を1通ずつ所有し保管する場合、各原本に収入印紙を1枚ずつ貼付します。

収入印紙は、原本の数だけ必要です。高額の貸し借りだと印紙代も高額になるため、印紙の購入が負担となってしまいます。印紙代を削減するために、貸主は原本を保管し、借主は印紙を貼らなくてもいい形式の写し(コピー)を作成し、写しを保管する形にしてもいいでしょう。

借用書の原本と写し(コピー)を作成した場合

借用書の原本には収入印紙の貼り付けが必須です。一方、写し(コピー)を作成した際は貼付しなくてもいい場合があります。

借用書は、消費貸借契約を成立させる目的で使用される契約書であることから、印紙税の課税対象です。一方の写し(コピー)は、借主が契約内容を確認する書類で印紙税の課税対象とはならないため、原則として収入印紙は必須ではありません。ただし、当事者のどちらかが署名捺印した写し(コピー)を当事者が保管する場合は、収入印紙を貼る必要があります。

借用書の収入印紙を貼り忘れるとどうなる?

収入印紙は、印紙税法により貼付が義務づけられています。税務調査などで収入印紙の貼り忘れが発覚すると、印紙税額の3倍に相当する過怠税が課せられます。本来貼るべき収入印紙よりも少額で貼付した場合も同様です。わざと貼付しなかったり少額の印紙を貼付したりするといった悪質な不正行為の場合、印紙税額の3倍相当となる過怠税が課せられます。

しかし、過失による貼り付け忘れや金額不足による過怠税は、印紙税額の10%分です。

収入印紙の貼り漏れが悪質かそうでないかを判断する基準は、「後から自己申告したかどうか」です。過失に気づいたにもかかわらず隠そうとした場合は、故意の不正行為とみなされます。万一貼り付け忘れや金額不足があった場合は、速やかに申告し、修正しましょう。

借用書の収入印紙には割印が必要?

借用書を複数作成した際に、各部の内容を証明するために割印をすることがあります。しかし、借用書の割印は必須ではありません。

また、割印と似た言葉として「消印」が挙げられます。借用書の作成においては、収入印紙の消印は必須です。

以下では、割印の概要と、割印と消印の違いについて解説します。

割印とは

割印は、複数の文書にまたがって印影が残るよう押印する方法です。押印された複数の文書が同じ内容であることを証明し、改ざんを防ぐ役割を果たします。

通常、借用書は借主が1通作成し、貸主が保管します。このように借用書が1通だけの場合は、割印を押す必要がありません。しかし、借主と貸主が協議の上、原本を1通ずつ持つ場合、借用書の発行数は2通です。2通ある借用書が同じ内容であることを証明するため、割印を押す場合があります。

割印と消印の違い

消印は、収入印紙が使用済みであることを示すために押される印です。収入印紙の再利用を防ぐ目的があります。借用書に貼付した収入印紙には、消印を押さなければなりません。消印がない場合、印紙税額の3倍が過怠税として課されます。

消印が必須である根拠は、印紙税法8条2項と、印紙税法施行令5条です。印紙税法8条2項によると、収入印紙は「当該課税文書と印紙の彩紋とにかけ、判明に印紙を消さなければならない」と定められています。収入印紙を消す方法について規定されているのが、印紙税法施行令5条です。同条では「印紙を消す場合には、自己又はその代理人(法人の代表者を含む。)、使用人その他の従業者の印章又は署名で消さなければならない」と定められています。

電子契約なら借用書の収入印紙や割印が不要に!

紙の借用書は収入印紙の貼り付けが必要となりますが、電子契約であれば不要です。印紙税は、紙の文書に対して課されます。紙ではない電子契約は印紙税の対象外となり、収入印紙の貼付も不要です。

借用書を電子契約にするには、電子契約サービスの導入が必要です。

電子契約サービス「マネーフォワード クラウド契約」では、クラウド上に借用書を保存します。多くの借用書があっても一元管理できるため、借用書の内容をすぐに検索可能です。紙の借用書もまとめて管理するだけでなく電子化もできます。電子印鑑を導入しているため、実際に印鑑を押した場合と同様の効力も担保されるため安心です。

借用書を電子契約にすると収入印紙不要で発行できる

借用書は、金銭貸借の事実や法的効力を証明し、借主の返済義務を明確にするために作成されます。原則として、借主が作成し貸主が保管しておく書面です。

借用書には収入印紙を貼らなければなりません。収入印紙を購入して貼る義務は、印紙税の納税義務者である借主にあります。借用書の原本にはすべて収入印紙を貼りますが、写し(コピー)への貼付は不要です。故意に収入印紙を貼らなかった場合、印紙額の3倍相当にあたる過怠税が課せられます。

借用書を電子契約にすると、収入印紙の貼付や割印が不要になります。借用書の発行や管理を煩雑に感じている場合は、電子契約への移行がおすすめです。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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