• 更新日 : 2024年10月9日

電子契約のメリット・デメリットは?導入が進まない理由や関連する法律もわかりやすく解説

電子契約には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも把握しておく必要があります。デメリットを理解していないと、導入の途中で問題が発生した場合に対処できなかったり、紙の契約からの変更に不満を持つ関係者を説得できなかったりと、トラブルが発生する可能性があるからです。

そこで今回は、電子契約のメリット・デメリットについて解説します。電子契約の導入が進まない理由や関連する法律もわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

そもそも電子契約とは

電子契約とは、紙の契約書に代わり、契約に関する当事者間の合意を電子的に行うことを指します。具体的には、電子契約システムなどを利用して契約書を交付し、相手が署名することで電子契約を成立させることが可能です。

近年では、企業における業務効率化やコスト削減、ペーパーレス化の流れを受けて、電子契約に注目が集まっています。また、電子帳簿保存法などの法改正も普及の要因となっています。

紙の契約と電子契約の違い

従来の紙の契約では、契約書を印刷・郵送し、相手が署名・押印して返送する必要がありました。

一方、電子契約では、電子ファイルを送信し、相手がオンライン上で署名することで契約締結が完了します。紙の契約書を印刷・郵送する必要はありません。契約書の内容をすぐに確認できるため、契約締結までの時間も大幅に短縮できます。

電子契約のやり方は立会人型と当事者型の2種類

電子契約のやり方には、立会人型と当事者型の2種類があります。

立会人型は、電子契約サービスを提供する事業者が契約締結を証明する方式で、高い法的効力があります。具体的には、タイムスタンプや電子署名などにより契約内容の改ざんを防ぎます。

一方、当事者型は、当事者間で直接電子契約を締結する方式です。立会人型と比較して低コストで運用できるというメリットがありますが、法的効力の面では立会人型に劣るとされています。したがって、契約内容や相手との関係に応じて適切な方式を選択することが大切です。

電子契約の詳細は、以下の記事をご参照ください。

電子契約のメリット

電子契約には、従来の紙の契約と比較して多くのメリットがあります。

契約業務を効率化できる

電子契約なら、契約業務に必要な作業を大幅に効率化できます。紙の契約では、印刷・押印・郵送・保管などの作業に多くの手間と時間がかかりますが、電子契約ではすべての作業をオンライン上で完結できるため、業務効率が大幅に向上します。

また、紙の契約書では「相手が契約書の到着に気づかない」「担当者や承認者が不在で対応が遅延する」といった問題が発生しやすいという課題があります。一方、電子契約ならステータスを可視化できるため、作業の遅延や抜け漏れが発生しにくくなります。

印紙税などのコストを削減できる

紙の契約では契約金額に応じて収入印紙を貼付する必要がありますが、電子契約では収入印紙が不要となります。これにより、契約ごとに発生する印紙税のコストを削減できます。また、印刷費や郵送費も削減できるため、契約業務にかかるコストを大きく削減できます。これにより、収入印紙の購入や管理の手間も省けるため、業務効率の向上にもつながります。

契約書の保管が容易になる

電子契約では、契約書を電子データとして保管するため、物理的な保管スペースが不要になります。また、検索機能を使って必要な契約書をすぐに探し出すことができるため、契約書の管理が容易になります。アクセス権限を設定することで、情報漏洩のリスクを最小限に抑えることも可能です。紙の契約書のように、紛失や破損のリスクを心配する必要もありません。

コンプライアンスを強化できる

紙の契約書の管理がずさんになると、社外の人や他部署の人に契約書を見られてしまうリスクが高くなります。最悪の場合は書類の改ざんや契約書の破損・紛失が起こり、会社に甚大なダメージを与えてしまいます。

電子契約を導入すれば閲覧権限を細かく設定できるため、コンプライアンスの強化に役立ちます。また、バックアップを取っておけば、万が一契約書データを削除してしまっても復旧が可能です。タイムスタンプによる改ざんの検知や、契約書のバージョン管理もできるようになります。

契約更新・解約漏れを防げる

電子契約サービスには、契約更新日や解約日を事前に通知する機能が搭載されている場合が多く、契約更新・解約漏れを防ぐことができます。また、契約期限が近づくと自動的に担当者に通知が届くため、契約更新手続きをスムーズに進められます。

在宅勤務・リモートワークに対応できる

電子契約は、インターネット環境があればいつでもどこでも契約業務を進められるため、在宅勤務やリモートワークに最適です。これにより、従業員の柔軟な働き方を支援し、業務効率の向上に貢献します。また、自然災害などの緊急時にも業務を継続できます。

電子契約のデメリット・導入が進まない理由

電子契約は多くのメリットを持つ一方、デメリットも存在します。以下では、電子契約のデメリットと導入が進まない理由を詳しく解説します。

業務フローの変更や社内調整が必要

電子契約を導入するには、既存の業務フローを見直し、変更する必要があります。紙の契約書でのやり取りに慣れている従業員にとっては、新たなシステムの使い方を習得する必要があるため、抵抗を感じる場合もあるでしょう。

また、関連部署との調整や社内システムとの連携など、導入の手間や時間がかかることもデメリットといえます。場合によっては、電子契約システム導入のための費用対効果を明確にし、経営層や関係部署を説得する必要も出てきます。

取引先からの同意が必要

電子契約を導入するには、取引先からの同意も必要です。

しかし、取引先の規模や業種によっては、同意を得るのが難しい場合もあります。その場合、従来の紙の契約を継続せざるを得ないケースもあるでしょう。

一部の契約では電子契約が利用できない

法改正により、不動産売買に関する契約書や重要事項説明書も電子契約が利用可能となりましたが、一部の契約では現在も電子契約の利用が認められていません。これらの例外的なケースに対応するため、電子契約と紙の契約を使い分ける必要があり、業務が複雑になります。

電子契約書と紙の契約書が混在する

取引先からの同意が得られない契約や、電子契約が利用できない契約がある場合は、電子契約書と紙の契約書が混在することとなります。これにより、契約書の保管場所が複数に分かれたり、検索がしにくくなったりと、かえって業務効率が低下する可能性もあります。契約管理システムなどの導入により、電子契約書と紙の契約書を一元管理できる体制を構築することが大切です。

電子契約を導入する上での注意点

そんな電子契約を導入する上で、注意すべき点を2つ紹介します。

電子契約のメリット・デメリットを正しく理解する

まずは、電子契約のメリットとデメリットを正しく理解することが大切です。

例えば、メリットとして挙げられるコスト削減効果も、電子契約システムの導入費用や運用費用を考慮すると、すべての企業にとってプラスになるとは限りません。

自社の業務内容や契約形態に電子契約が適しているのか、導入によってどのような効果が期待できるのか、どのような課題が生じる可能性があるのかを事前にしっかりと確認しましょう。

電子契約に関連する法律を定期的に確認する

電子契約を取り巻く法律は日々変化しています。電子帳簿保存法や電子署名法など、電子契約に関連する法律を定期的に確認し、適切な対応を心がけましょう。

法改正への対応が遅れると、法律の違反やコンプライアンスの問題につながる可能性があります。また、業界特有の規制やガイドラインが存在する場合もありますので、注意が必要です。

電子契約に関連する法律

電子契約に関連する主な法律には、電子帳簿保存法、電子署名法、e-文書法があります。それぞれの法律ではどのようなルールが設けられているのか、以下で簡単に紹介します。

電子帳簿保存法

電子帳簿保存法(正式名称:電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)は、その名のとおり国税関係帳簿書類の保存に関する特例を規定している法律です。

同法の趣旨は、第1条でもこのように示されています。

第一条 この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。

引用:e-Gov法令検索 電子帳簿保存法第1条

同条からわかるように、国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減することが目的ではありますが、“適正な納税義務の履行” も確保しなければなりません。

そこで同法では単にデータとして帳簿や請求書領収書などの保存すべてを認めるのではなく、一定の要件を満たした上で保存することを求めています。

例えば、取引先から受領した紙の請求書であってもスキャンして保存(スキャナ保存)することも可能ですが、その際にはタイムスタンプの付与が必要です。その他、保存方法に応じて満たすべき要件が同法で定められていますので、一定水準以上の環境が整備されていなければなりません。

電子帳簿保存法に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。

電子署名法

電子署名法(正式名称:電子署名及び認証業務に関する法律)には、電磁的記録に対する真正な成立の推定と、特定認証業務に関することが規定されています。

同法第1条でも、以下のとおり目的を掲げています。

(目的)
第一条 この法律は、電子署名に関し、電磁的記録の真正な成立の推定、特定認証業務に関する認定の制度その他必要な事項を定めることにより、電子署名の円滑な利用の確保による情報の電磁的方式による流通及び情報処理の促進を図り、もって国民生活の向上及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

引用:e-Gov法令検索 電子署名法

多くの企業にとって重要なのは、「電磁的記録の真正な成立の推定」に関する規定です。同規定により、“本人による一定の電子署名が付されているのなら、その電子文書等は真正に成立したものと推定”できます。

民事訴訟法では「署名または押印がある私文書は真正に成立したものと推定する」との規定が置かれているのですが、これは紙を前提とした規定です。電子文書にこの規定をそのまま適用することはできません。そこで、電子署名法により類似の仕組みが導入されたのです。

電子署名法に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。

e-文書法

e-文書法は、文書の電子化・電子保存に関して包括的なルールを規定している法律です。文書の電子保存についての共通事項を定めた通則法と、電子管理を行うための手続きなどを定めた整備法で構成されています。

特定の種類の文書のみを対象としているわけではないため、電子帳簿保存法の適用を受ける文書の他、電子帳簿保存法では規律されていない稟議書や人事関連資料、有価証券報告書などの文書の保存についても対象としています。

e-文書法では、①見読性、②完全性、③機密性、④検索性の4つを電子文書が満たすべき要件としており、電子帳簿保存法などで別途要件が課されていない文書に関してもこの4つは満たすように環境を整備することが大切です。

e-文書法に関しては、以下の記事で詳しく紹介しています。

電子契約の導入に成功した企業事例

最後に、電子契約の導入に成功した企業事例を3つご紹介します。

送信料無料の電子契約サービスでコスト削減に成功した事例

株式会社M&A総研ホールディングスでは、紙の契約書ならではのアナログな作業や、保管コスト・紛失リスクを課題に感じていました。また、以前使用していた電子契約サービスでは、1通につき200円が課金される仕組みだったため、契約件数に比例してコストが増加していました。

そこで、送信料無料のマネーフォワード クラウド契約を導入したところ、契約業務にかかるコストを1/10に削減。自社のCRMシステムともAPI連携することで、稟議の申請から契約締結・管理までシームレスな運用を実現しました。

電子帳簿保存法対応を見据えた契約管理体制を構築した事例

株式会社日本オープンシステムズでは、紙の契約業務に多くの手間がかかっており、締結が完了するまでに1週間程度の時間を要していました。また、紙の契約書をPDF化して保管していたものの、データとしては活用できておらず、電子帳簿保存法の改正に伴い管理体制を整える必要性を感じていました。

そこで、電子帳簿保存法に対応しているマネーフォワード クラウド契約を導入したところ、出社が必要な面倒な作業が不要になり、業務の効率化とスピードの向上を実現。また、ワークフロー機能を活用することでステータスが明確になり、承認依頼も見逃さないようになりました。

紙文化の根強い建設・不動産業のペーパーレス化に成功した事例

株式会社第一住建ホールディングスでは、紙でのやりとりが多い建設・不動産業界で、どのように業務を効率化するかを課題に感じていました。そのため、インターネット環境があればいつでもどこでも契約業務ができるワークフローの構築を目指していました。

そこで、契約書の作成から申請・承認・締結・保存・管理までクラウド上で完結するマネーフォワード クラウド契約を導入したところ、契約業務全体のペーパーレス化が実現。また、1件の売買につき数十万円かかっていた収入印紙も不要になり、大幅なコスト削減につながりました。

よくある質問

電子契約のメリットは何ですか?

業務効率化やコスト削減、契約書管理の容易さ、管理体制の強化、更新・解約漏れの防止などが考えられます。詳しくはこちらをご覧ください。

電子契約のデメリットは何ですか?

電子データならではの社員のリテラシーへの配慮が必要になることと、電子契約未対応書類の存在によって電子契約と紙の契約書が混在することがデメリットといえます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事