• 作成日 : 2023年9月21日

フリーランス保護新法の対象は?概要や業務への影響を解説

フリーランス保護新法の対象は?概要や業務への影響を解説

フリーランスに業務を委託している事業者もいらっしゃるかと思いますが、今後は「フリーランス保護新法」に則って業務を依頼する必要が出てきます。

この記事ではフリーランス保護新法の概要や企業が求められる対応について、わかりやすくご説明します。

フリーランス保護新法の概要

フリーランス保護新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律案」で、2023年4月28日に国会で成立しました。

新法で定められた義務や制限

フリーランス保護新法ではフリーランスの人々が不当に不利益を被らないよう委託をする企業側が環境を整える必要があります。具体的には契約条件の書面による明示、60日以内の報酬の支払い、不特定多数に対する募集情報の正確性の確保が求められ、その他フリーランスの労働環境の整備を行うとともに、フリーランスに対する不当な扱いを禁止しています。

フリーランス保護新法の目的

今、フリーランス(個人事業主)という働き方を選択する人が増えてきています。働く時間も場所も自由で、自分のペースで仕事ができるのが大きな魅力です。また、企業にとっても必要な業務を必要なタイミングで発注できるため、フリーランス人材の需要は高まってきています。

一方で、フリーランスは労働者ではないため、労働基準法の適用外となってしまい、権利が十分に保護されてこなかったことが問題視されてきました。フリーランスは個人であり、なおかつ受注者という立場であるため、どうしても企業とは力関係が生じてしまいます。不利な条件で契約をさせられたり不当な扱いをされたりしても、クライアント企業からの仕事を請けたいがために泣き寝入りするケースも少なくありません。

今後もフリーランスとして働く人が増えることが予見される中、フリーランスの人たちの権利を守るフリーランス保護新法の成立は急務でした。

施行日は未定

前述のとおりフリーランス保護新法は2023年4月28日に成立しました。施行日は今のところ未定ですが、法案の施行期日は公布の日から1年6ヶ月以内と定められているため、2024年秋頃までには施行されると考えられます。

フリーランス保護新法の対象

どのような相手とどのような取引をした場合に、フリーランス保護新法の対象となるのでしょうか。ここからはフリーランス保護新法上のフリーランスの定義や対象取引について見ていきましょう。

新法におけるフリーランスの定義

フリーランス保護新法ではフリーランスのことを「特定受託事業者」と呼称しています。特定受託事業者とは業務委託の相手方となる事業者であって、従業員を雇用していない者を指します。一人で仕事をしている個人事業主のほか、法人でも従業員を雇っていないいわゆる一人社長の場合はフリーランス保護新法の保護対象となります。

業種は問いません。フリーライターやカメラマン、デザイナー、コンサルタント、ジムのインストラクター、出前サービスの配達員など、フリーランスであれば誰もが保護対象になります。

対象となる取引

フリーランス保護新法の対象となるのは特定委託事業者(特定受託事業者に業務を発注する者)が特定委託事業者(フリーランス)に業務委託した場合です。業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成または役務の提供を委託することを指します。

なお、特定委託事業者は従業員を雇っている個人事業主や法人が該当します。例えば、フリーランスが別のフリーランスに業務委託をした場合、あるいは一般消費者がフリーランスに業務を委託した場合は、フリーランス保護新法の対象外となります。

発注側に求められる対応

ここからは具体的に、フリーランスに発注する企業が行うべき事柄について見ていきましょう。

書面の作成

契約は原則として口約束でも成立します。フリーランスに「前と同じようにお願いします」「これやっておいて」というように口頭で発注していた企業の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、フリーランス保護新法施行後は、企業がフリーランスに書面で委託する業務や成果物の内容、報酬、支払期日などを明確にした上で発注しなければなりません。なお、書面はメールや電子契約書などでも代用可能です。

支払い方法の変更

フリーランス保護新法では報酬の支払期日は納品があってから原則60日以内となります。例えば、「月末締め翌々月末支払い」の場合、納品から60日以上経過してしまうこともあり得ます。その場合、支払いサイトを短くするなどして対応しましょう。

正確な募集情報を掲載する

求人サイトやクラウドソーシングなど不特定多数が閲覧できる媒体でフリーランス人材を募集する場合、募集情報を正確に表示することが求められます。虚偽の情報はもちろん、誤解を招くような表現や誇張も認められません。

禁止事項を遵守する

フリーランス保護新法では、以下の行為が禁止されています。

  1. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
  2. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  3. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  4. 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  5. 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること

また、以下の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはなりません。

  1. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  2. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること

参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料|内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁  厚生労働省

フリーランスが働きやすい環境整備(努力義務)

その他、フリーランスに対しても自社の従業員と同様に働きやすい環境整備に努める必要があります。例えば、ハラスメント相談窓口を設ける、妊娠・出産・育児・介護など家庭の事情を考慮して発注を行うなどが挙げられます。

違反に対する罰則は?

フリーランス保護新法違反が発覚した場合、公正取引委員会、中⼩企業庁⻑官、厚⽣労働⼤⾂が違反事業者に対して助⾔、指導、報告徴収・⽴⼊検査、勧告、公表、命令という行政指導を行います。また、命令違反や検査拒否などがあった場合、50万円以下の罰金に処されるおそれがあり、企業の場合は行為者と法人両方が処罰の対象となります。

フリーランスに業務を依頼する際にはフリーランス保護新法も要チェック

必要なときに必要な業務を依頼できるフリーランス人材。企業にとっても活用するメリットは大いにあります。しかし、ともすると発注者と受注者の力関係が生じがちです。

フリーランスの方に安心して働いてスキルを発揮してもらい、お互いが気持ちよく取引するためにも、フリーランス保護新法に対する理解を深め、しっかりとルールを守りましょう。


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