- 更新日 : 2024年8月15日
フリーランス新法とは?対象や事業者が取るべき対応、違反時の罰則について解説
フリーランスに業務を委託している事業者もいらっしゃるかと思いますが、今後はフリーランス新法(フリーランス法、フリーランス保護新法)に則って業務を依頼する必要が出てきます。
この記事ではフリーランス新法の概要や企業が求められる対応について、わかりやすくご説明します。
目次
フリーランス新法の概要
フリーランス新法の正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」といいます。
フリーランス法、フリーランス保護新法とも呼ばれますが、当記事では「フリーランス新法」という呼称で統一します。2023年4月28日に国会で成立しました。
新法で定められた義務や制限
フリーランス新法ではフリーランスの人々が不当に不利益を被らないよう委託をする企業側が環境を整える必要があります。
具体的には
- 契約条件の書面による明示
- 60日以内の報酬の支払い
- 不特定多数に対する募集情報の正確性の確保
が求められ、その他フリーランスの労働環境の整備を行うとともに、フリーランスに対する不当な扱いを禁止しています。
フリーランス新法の目的
今、フリーランス(個人事業主)という働き方を選択する人が増えてきています。働く時間も場所も自由で、自分のペースで仕事ができるのが大きな魅力です。また、企業にとっても必要な業務を必要なタイミングで発注できるため、フリーランス人材の需要は高まってきています。
一方で、フリーランスは労働者ではないため、労働基準法の適用外となってしまい、権利が十分に保護されてこなかったことが問題視されてきました。フリーランスは個人であり、なおかつ受注者という立場であるため、どうしても企業とは力関係が生じてしまいます。不利な条件で契約をさせられたり不当な扱いをされたりしても、クライアント企業からの仕事を請けたいがために泣き寝入りするケースも少なくありません。
今後もフリーランスとして働く人が増えることが予見される中、フリーランスの人たちの権利を守るフリーランス新法の成立は急務でした。
2024年11月1日より施行
前述の通りフリーランス新法は2023年4月28日に成立しました。同年5月12日に公布され、2024年11月1日より施行されます。
フリーランス新法の対象
どのような相手とどのような取引をした場合に、フリーランス新法の対象となるのでしょうか。ここからはフリーランス新法上のフリーランスの定義や対象取引について見ていきましょう。
フリーランス新法におけるフリーランスの定義
「特定受託事業者」、いわゆるフリーランスとはどのような事業者を指すのかに関してはフリーランス新法第2条に定義されています。
第二条 この法律において「特定受託事業者」とは、業務委託の相手方である事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用しないもの
二 法人であって、一の代表者以外に他の役員(理事、取締役、執行役、業務を執行する社員、監事若しくは監査役又はこれらに準ずる者をいう。第六項第二号において同じ。)がなく、かつ、従業員を使用しないもの
2 この法律において「特定受託業務従事者」とは、特定受託事業者である前項第一号に掲げる個人及び特定受託事業者である同項第二号に掲げる法人の代表者をいう。
3 この法律において「業務委託」とは、次に掲げる行為をいう。
一 事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造(加工を含む。)又は情報成果物の作成を委託すること。
二 事業者がその事業のために他の事業者に役務の提供を委託すること(他の事業者をして自らに役務の提供をさせることを含む。)。
4 前項第一号の「情報成果物」とは、次に掲げるものをいう。
一 プログラム(電子計算機に対する指令であって、一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。)
二 映画、放送番組その他影像又は音声その他の音響により構成されるもの
三 文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの
四 前三号に掲げるもののほか、これらに類するもので政令で定めるもの
5 この法律において「業務委託事業者」とは、特定受託事業者に業務委託をする事業者をいう。
6 この法律において「特定業務委託事業者」とは、業務委託事業者であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 個人であって、従業員を使用するもの
二 法人であって、二以上の役員があり、又は従業員を使用するもの
7 この法律において「報酬」とは、業務委託事業者が業務委託をした場合に特定受託事業者の給付(第三項第二号に該当する業務委託をした場合にあっては、当該役務の提供をすること。第五条第一項第一号及び第三号並びに第八条第三項及び第四項を除き、以下同じ。)に対し支払うべき代金をいう。
特定受託事業者とは業務委託の相手方となる事業者であって、従業員を雇用していない者を指します。一人で仕事をしている個人事業主のほか、法人でも従業員を雇っていないいわゆる一人社長の場合は、フリーランス新法の保護対象となります。
業種は問いません。フリーライターやカメラマン、デザイナー、コンサルタント、ジムのインストラクター、出前サービスの配達員など、フリーランスであれば誰もが保護対象になります。
フリーランス新法の対象となる取引
フリーランス新法の対象となるのは特定委託事業者(特定受託事業者に業務を発注する者)が特定委託事業者(フリーランス)に業務委託した場合です。業務委託とは、事業者がその事業のために他の事業者に物品の製造、情報成果物の作成または役務の提供を委託することを指します。
なお、特定委託事業者は従業員を雇っている個人事業主や法人が該当します。例えば、フリーランスが別のフリーランスに業務委託をした場合、あるいは一般消費者がフリーランスに業務を委託した場合は、フリーランス新法の対象外となります。
発注側に求められる対応
ここからは具体的に、フリーランスに発注する企業が行うべき事柄について見ていきましょう。
書面の作成
契約は原則として口約束でも成立します。フリーランスに「前と同じようにお願いします」「これやっておいて」というように口頭で発注していた企業の方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、フリーランス新法施行後は、企業がフリーランスに書面で委託する業務や成果物の内容、報酬、支払期日などを明確にしたうえで発注しなければなりません。なお、書面はメールや電子契約書などでも代用可能です。
書面・契約内容の見直し
現在書面によってフリーランスと契約を締結している場合は、契約書や発注書の内容がフリーランス新法に対応しているかどうかを見直し、不備がある場合はフォーマットやひな形を改善し、必要に応じて契約を締結しなおしましょう。
支払い方法の変更
フリーランス新法では報酬の支払期日は納品があってから原則60日以内となります。例えば、「月末締め翌々月末支払い」の場合、納品から60日以上経過してしまうこともあり得ます。その場合、支払いサイトを短くするなどして対応しましょう。
正確な募集情報を掲載する
求人サイトやクラウドソーシングなど不特定多数が閲覧できる媒体でフリーランス人材を募集する場合、募集情報を正確に表示することが求められます。虚偽の情報はもちろん、誤解を招くような表現や誇張も認められません。
禁止事項を遵守する
フリーランス新法では、以下の行為が禁止されています。
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく受領を拒否すること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
- 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
- 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
- 正当な理由なく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
また、以下の行為によってフリーランスの利益を不当に害してはなりません。
6. 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
7. 特定受託事業者の責めに帰すべき事由なく内容を変更させ、又はやり直させること
参考:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)説明資料|内閣官房新しい資本主義実現本部事務局 公正取引委員会 中小企業庁 厚生労働省
フリーランスが働きやすい環境整備(努力義務)
その他、フリーランスに対しても自社の従業員と同様に働きやすい環境整備に努める必要があります。例えば、ハラスメント相談窓口を設ける、妊娠・出産・育児・介護など家庭の事情を考慮して発注を行うなどが挙げられます。
公正取引委員会のガイドライン
フリーランス新法が施行されるにともない、事業者あるいは仲介事業者はさまざまな事項を遵守しなければならなくなります。特に、事業者・仲介事業者が自己の優越的地位を乱用した行為については厳しく規制されることになります。
しかし、どういった行為がそれに該当するかは判断が難しいでしょう。また、そもそもフリーランスと契約していたとしても、業務の内容や働き方によってはその事業者が雇っている「労働者」とみなされる場合があります。
そこで、内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省は連名で『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』を発行し、フリーランスと取引を行う事業者・仲介事業者が遵守すべき事項、現行法上「雇用」に該当する場合の判断基準について解説されています。
フリーランスと契約を締結している、あるいはこれから業務を依頼する予定がある事業者・仲介事業者はぜひ一度目を通してみましょう。
違反に対する罰則はあるのか?
フリーランス新法違反が発覚した場合、公正取引委員会、中⼩企業庁⻑官、厚⽣労働⼤⾂が違反事業者に対して助⾔、指導、報告徴収・⽴⼊検査、勧告、公表、命令という行政指導を行います。
また、命令違反や検査拒否などがあった場合、50万円以下の罰金に処されるおそれがあり、企業の場合は行為者と法人両方が処罰の対象となります。
フリーランスに業務を依頼する際にはフリーランス新法も要チェック
必要なときに必要な業務を依頼できるフリーランス人材。企業にとっても活用するメリットは大いにあります。しかし、ともすると発注者と受注者の力関係が生じがちです。
フリーランスの方に安心して働いてスキルを発揮してもらい、お互いが気持ちよく取引するためにも、フリーランス新法に対する理解を深め、しっかりとルールを守りましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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