- 作成日 : 2025年1月31日
ステルスマーケティングとは?ステマ規制や違法となる事例もわかりやすく解説
ステルスマーケティングとは、企業や個人が特定のサービスや商品について広告と気づかれないような表示をして、商品やサービスを宣伝することです。消費者による自主的・合理的選定を妨げるものとして規制の対象となっています。
この記事では、ステルスマーケティングが違法である理由や違反した場合の罰則などを、事例を交えながら詳しく解説します。
目次
ステルスマーケティングとは
ステルスマーケティング(ステマ)とは、広告ではないように見せかけて商品やサービスの宣伝をすることをいいます。
ステルスマーケティングという言葉は、英語の「隠れる」「こっそりする」などを意味する「stealth」に由来し、2011年頃からステマと呼ばれて使用されるようになりました。SNSやブログなどインターネット上で情報が簡単に手に入る現在、事業者が一般消費者のふりをして口コミの投稿などを行う行為は、消費者の誤解を招くため問題とされています。
ステルスマーケティングは2023年10月から景品表示法違反に
これまで、問題とされてきたステルスマーケティングについて、2023年10月より景品表示法違反の対象とされ、事業者は広告の表示について規制を受けるようになりました。
ステルスマーケティング(ステマ)には、大きく分けて「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」と呼ばれる2種類に分類されます。いずれも法律上の分類ではありませんが、ステマ規制の対象となり、違反した場合には罰則が適用されます。
なりすまし型
なりすまし型とは、会社など事業の運営に関わる人間が、第三者のふりをして口コミや商品の紹介などをすることです。例えば、会社の社員が自社の取り扱う商品について、第三者を装いSNSや商品の口コミサイトなどで投稿する行為などが挙げられます。
利益提供秘匿型
利益提供秘匿型とは、実際には企業から金銭などの利益を得ているにもかかわらず、それを隠してあたかも自身の感想であるかのような投稿をすることをいいます。
例としては、有名なインフルエンサーが企業から金銭などの報酬を受けているのに、それを明示せず、「おすすめ商品」などとして商品を紹介する行為です。
ステルスマーケティングに該当する事例
実際にステルスマーケティングに該当する事例は、私たちが普段利用するSNSなどの他、Webサイトの広告や口コミサイトの投稿などさまざまです。
ここでは、実際にステルスマーケティングの具体例を紹介します。
芸能人やインフルエンサーのSNS
芸能人や有名なインフルエンサーが自身のSNSに商品やサービスの紹介をする際に、報酬を受け取っているにもかかわらずそれを隠して商品を紹介する行為は、利益提供秘匿型のステルスマーケティングの1つです。
実際の事例としては、有名芸能人が某オークションサイトでサイト運営者から報酬を受け取り、自身のSNSで「格安で落札できるオークションサイト」などと発信した例がありました。他にも、人気美容室で無償のサービスを受ける代わりに、SNSで情報を発信する行為もあり問題となりました。
SNS上で商品の感想やレビューを投稿する行為自体は、違法ではありません。ただし、報酬を受け取った上で商品やサービスを過大に宣伝し、広告やPRである旨の表示がない場合はステマ規制の対象となります。
アフィリエイト広告
アフィリエイト広告とは、ブログやSNSなどに広告を貼り、その広告を経由して商品やサービスの購入があったり広告がクリックされたりした場合に報酬が支払われる仕組みのことです。
ブログやSNSで情報を得る時に、一見して広告とわかれば消費者はある程度誇張した表現であることが認識できます。しかし広告とわからない場合は、商品やサービスが実際にどの程度優れているのか判断できず、誤認につながるおそれがあります。
2023年10月からステマ規制が開始されたことに伴い、ブログやSNSに広告を表示する際には、それらが広告であることがわかるような表示が必要となりました。
アフィリエイトサイトに「広告」「PR」「本ページはアフィリエイト広告を利用しています」などと表示し、ブログの記事内に広告が含まれていることを消費者にわかりやすく表示する必要があります。
口コミサイト
口コミサイトの投稿も、場合によってはステマ規制の対象となることがあります。
実際の事例としては、大手グルメサイトにおいて飲食店側が業者に報酬を支払い、一般の消費者に見せかけ高評価の口コミを投稿する行為が発覚し話題となりました。
このような行為はステルスマーケティングのなりすまし型に該当し、口コミサイトの信頼を失うばかりか規制の対象ともなり得ます。
ステマ規制に違反した場合のペナルティ
2023年10月から、ステルスマーケティングは景品表示法違反として規制の対象とされました。
これにより、違反した事業者にはペナルティが課されることとなります。
ステマ規制に違反した場合
ステマ規制に違反した場合は、再発防止のための措置命令や事業者名の公表が行われます。
これは、ステルスマーケティングが「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」として景品表示法の規制を受けるようになったためです。
これまで、景品表示法では不当表示に該当する広告について規制がされていました。2023年10月からは、ステルスマーケティングも不当表示に含まれることとなりました。違反した場合は、措置命令や事業者名の公表が行われます。
措置命令に従わない場合
措置命令を受けた事業者が命令に従わない場合、2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金のいずれか又は両方が科されます。措置命令や事業者名の公表よりもさらに重い罰則のため、事業者にとっては大きな痛手となります。
このようなペナルティを受けると、事業者は経済的なダメージだけではなく、企業イメージの低下や信頼の失墜になりかねないため、ステマ規制による罰則には注意が必要です。
ステルスマーケティングに関して企業が注意すべきこと
ステルスマーケティングが景品表示法違反となったことにより、事業者は違反しないための対策を講じなければなりません。具体的にはどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
広告であることがわかるように表示する
ステマ対策として最も有効な方法は、広告であることをはっきりと表示することです。
例として、SNSで商品やサービスを紹介する場合にハッシュタグを用い#PRなどと表示する方法があります。また、ブログやウェブサイトの場合は記事内に広告が含まれることを明示する方法もあります。
いずれの場合でも注意しなくてはならないのは、広告であることが「わかりやすく」表示されているかという点です。広告と表示した場合でも、広告であることがわかりにくく判断できないような場合は、ステマ規制の対象となることがあります。広告であることを表示する場所や、文字の大きさには注意しましょう。
過去の投稿についても確認する
ステマ規制の対象は過去に投稿したものも対象になるため確認が必要です。規制が始まったのは2023年10月からですが、それ以前の投稿でも適切な対応をしていないと、ステルスマーケティングとして規制を受けることがあります。
過去の投稿に広告と受け取れる内容を掲載しており、それがステルスマーケティングと判断されそうな場合は、広告である旨の表示をするなど、適宜修正や削除などの対応が必要です。
社内でSNS運用のルールを定め研修で周知させる
社内の広告担当者が、ステマ規制についての認識が十分でないと規制を受ける可能性があります。そのため、あらかじめ社内でSNSを利用する際のルールを定めておくと良いでしょう。具体的にどのような行為がステルスマーケティングに当たるのかなどをわかりやすく定めておくと効果的です。
ただし、ルールを定めてもそれが社内で周知されていなければ意味がありません。研修などを通じて従業員に内容をよく周知するようにしましょう。
2023年10月の法改正でステルスマーケティングが規制対象に
事業者にとって、SNSの運用やウェブサイトでのマーケティングは今や必要不可欠です。
しかし、広告の掲載やSNSでの投稿などが適切でないとステマ規制の対象となり、場合によってはペナルティを受けることもあり、大きな損失となります。法改正された2023年10月より前に公開された投稿も、適切に対応していなければ規制の対象となるため注意が必要です。
広告の掲載や商品のプロモーションは、ステルスマーケティングの対策をした上で行うようにしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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