• 更新日 : 2024年4月12日

諾成契約とは?法的な定義や成立要件、事業者が注意すべき点を解説

諾成契約とは?法的な定義や成立要件、事業者が注意すべき点を解説

諾成契約とは、当事者同士が合意の意思表示をすることで成立する契約です。物の引き渡しのような給付があって成立する要物契約とは違って、意思表示のみで契約が成立します。本記事では、企業の法務担当者に向けて、諾成契約とは何かや法的な定義、具体例、民法改正による影響などについて解説します。

諾成契約とは

諾成契約(だくせいけいやく)とは、当事者間の合意という意思表示がされることで成立する契約です。民法の私的自治の法則に従って、当事者の意思に基づき法律行為が行われるため、諾成契約が成立します。一方で、諾成契約ではない契約は要物契約と呼ばれます。諾成契約との違いは、給付が必要となる点です。

本項では、諾成契約の法的な定義や具体例、要物契約との違いについて解説します。

諾成契約の法的な定義

諾成契約とは、契約が成立するためには当事者間の合意による意思表示が必要とされる契約形態を指します。民法522条1項で規定されている私的自治の原則により、法律行為は基本的に当事者の意思に基づいて行われます。

したがって、契約書が締結された時点など、合意が成立した瞬間から、当事者は契約に基づく義務を負わなければなりません。実際に、企業法務の現場で取り扱われる契約の多くが諾成契約に該当しています。

諾成契約にあたる契約の具体例

諾成契約の一例として、顧客が商品を注文し、その注文を店側が了承した場合の売買契約が挙げられます。この場合、注文が了承された時点で契約が成立します。
また、自分の財産を特定の相手に無償で渡す贈与契約も諾成契約の一つです。

さらに、一方の当事者が仕事の完成を約束し、もう一方がその仕事の結果に対して報酬を支払う約束をする請負契約も、同様に諾成契約に該当します。
重要な点として、諾成契約は合意が成立した時点で効力を発揮します。したがって、契約書を作成しなくても、当事者間に合意があれば契約は成立するのです。

諾成契約ではない契約とは?

諾成契約ではない契約は、要物契約と言われるものです。要物契約とは、当事者間の合意だけでなく、物品の引き渡し等の給付が必要となる契約形態を指します。つまり、当事者間の合意に加えて何らかの給付が伴わなければならない契約です。

具体的な例として、消費貸借契約があります。消費貸借契約とは、品質や数量が同じ物の返還を約束し、金銭などを受け取る契約です。消費貸借契約は、基本的には口頭で約束しただけではなく、実際にお金などの物の授受が行われた場合に成立します。ただし、消費貸借契約を書面で行った場合には、物の授受が行われていなくても契約が成立したものとして扱われます(民法587条の2)。

参考: e-Gov法令検索 民法

諾成契約が成立する法的な要件

民法の522条1項で諾成契約の要件が定められています。契約が成立するためには、一方からの契約締結の申し入れ(申込み)が相手方によって承諾されることが必要です。
また、民法522条2項によれば、契約書などの書面の作成が必須ではありません。

だし、例外として、法律が定める形式を必要とする諾成契約(要式契約)については、その形式に従った締結が求められます。

諾成契約を結ぶ際に事業者が注意すべき点

諾成契約を結ぶ際には、以下の点に注意してください。

  • 契約書を作成する
  • 契約書の日付を確認する

要式契約を除く諾成契約では、契約書やそのほかの書面の作成は法的には必須ではありません。しかし、将来のトラブルを避ける観点から、契約書の作成を推奨します。契約書を作成することで、合意内容を明確にでき、自社の権利を主張するための有力な証拠となるでしょう。他方で、契約書がない場合、予期しない損害を被る可能性があります。

また、契約締結日と実行日や開始日との日付の差異にも注意が必要です。契約上の義務が発生する「契約締結日」と、物の引き渡しや業務が実際に行われる「実行日」「開始日」が異なるケースがあります。

そのため、契約書には「契約締結後・実行前(開始前)」と「実行後(開始後)」の2段階に分けて、具体的な業務フローやルールを明記することが重要です。

諾成契約に関する直近の法改正

2020年4月1日に改正民法が施行され、さまざまな内容が変更されました。以下の契約は、要物契約から諾成契約に変更されています。

  • 代物弁済契約
  • 消費貸借契約
  • 使用貸借契約
  • 寄託契約

代物弁済契約(民法482条)は、債務の返済の代わりに、別の給付を行う契約です。例えば、借金を返す代わりに、ジュエリーや指輪などを譲渡するケースが該当します。これまで代物弁済は弁済の一種であるとして実際に代物弁済が行われた場合に弁済の効力が生じるとされてきましたが、改正民法では、代物弁済を「代物弁済の契約をする」点と「代物弁済の給付をする」点が分けられ、前者を諾成契約と見なされるようになりました。

消費貸借契約(民法587条の2)は、貸した物を一度消費した後、同等の物を返却するという契約です。書面で契約が行われる場合に、消費貸借契約が諾成契約に当たるようになりました。

使用貸借契約は、物を無償で貸し出し、後で返却してもらう契約です。物を受け取る行為がなくても「約する」という意思表示をすることで使用貸借契約が成立するようになりました。

寄託契約(民法657条)は、一方の当事者が物の保管を相手に委託し、相手がそれを承諾する契約です。物を預けるという性質から要物契約だと解釈されていましたが、物の保管を依頼する意思表示と相手方の承諾によって契約が成立すると変更されました。

ここで挙げた契約は、企業において関わる機会があるため、要物契約から諾成契約に変更された契約をしっかりと把握しておきましょう。

諾成契約を理解して、契約業務を効率的に進めよう

諾成契約とは、当事者の合意という意思表示のみで成立する契約です。顧客が注文をしてお店が了承し、契約が成立した場合などに適用されます。諾成契約を結ぶ際には、書面の作成は必須ではありませんが、要式契約に該当する諾成契約については、法律の要件に従う必要があります。諾成契約の法改正も確認しながら、契約業務を進めるようにしてください。


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