• 更新日 : 2024年11月7日

事業譲渡契約書に印紙は必要?金額や負担者、株式譲渡との違いを解説

事業譲渡契約とは会社の事業を第三者に譲る際に締結する契約です。契約書は収入印紙を貼らなければいけないというイメージがあるかもしれませんが、事業譲渡契約書の場合はどうなるのでしょうか。

この記事では事業譲渡契約書に収入印紙が必要かどうか、必要であればその額はいくらになるのか、誰が負担すべきなのかについてご説明します。

事業譲渡契約書に印紙は必要?

結論からいうと事業譲渡契約書は収入印紙の貼付が必要となります。事業譲渡契約書は、印紙税法上では不動産、鉱業権、無体財産権、船舶もしくは航空機または営業の譲渡に関する契約書、いわゆる第1号文書に分類され、課税の対象となりえます。

事業譲渡契約書に印紙が不要となるケース

例えば第3号文書や第17号文書は金額の記載のないものについては印紙税が非課税となります。しかし、第1号文書は具体的な契約金額の記載がなくても印紙税が必要です。したがって、事業譲渡契約書を作成する際には、まず収入印紙を貼付しなければならないと認識したほうがベターといえます。

なお、事業を譲渡する手段として株式の譲渡という手段もあります。この方法をとる場合、株式譲渡契約を締結することになりますが、これに関しては基本的に課税文書に該当しないため、印紙税は不要です。

印紙が必要となる契約書の種類については、以下の記事でさらに詳しくご紹介しています。

株式譲渡契約書の場合

事業譲渡とは事業を、株式譲渡契約は株式を売却することです。事業譲渡は事業そのものや、資産、権利義務を会社から切り離して譲渡します。株式譲渡は株式つまり会社の経営権を譲渡することになります。

事業の一部あるいは全部を会社から切り離して売却する場合は事業譲渡契約、会社そのものを売却する場合は株式譲渡契約を締結します。

契約書の変更や作り直しの場合

契約を締結した後でその内容を変更する場合、変更契約を締結します。変更契約書に収入印紙が必要になるかどうかは契約書に「重要な事項」が含まれるかどうかが鍵となります。

例えば目的物の内容、目的物の引き渡し方法または引き渡し期日、契約金額、契約期間、債務不履行の場合の損害賠償の方法などを変更する場合、これらは重要な事項に該当するため、変更契約書に印紙が必要となります。

どのような内容が重要な事項に該当するのかは、国税庁のホームページに記載されています。

参考:別表第2 重要な事項の一覧表|国税庁

事業譲渡契約書に印紙税が必要な場合の金額表

前述の通り、事業譲渡契約書は第1号文書に該当し、印紙税の課税対象となります。印紙税額は契約書に記載されている金額に応じて、以下のように変動します。

記載の契約金額(1通また1冊につき)印紙税
10万円以下200円
10万円超 50万円以下400円
50万円超 100万円以下1,000円
100万円超 500万円以下2,000円
500万円超 1,000万円以下10,000円
1,000万円超 5,000万円以下20,000円
5,000万円超 1億円以下60,000円
1億円超 5億円以下100,000円
5億円超 10億円以下200,000円
10億円超 50億円以下400,000円
50億円超600,000円
契約金額の記載なし200円

事業譲渡契約書に貼る印紙税はどちらが負担する?

収入印紙税については契約書を作成した者に対して納税義務が発生します。例えば事業を譲渡する側が事業譲渡契約書を作成した場合、譲渡者が譲渡側、譲受側それぞれが保有する契約書に関して印紙税を納税して収入印紙を貼らなければならないということになります。

しかし、実際には不公平感が出ないように、印紙代を両当事者が折半するケースが一般的です。また、契約書をコピーした場合は収入印紙の貼付は不要です。どちらか一方が原本を保有し、もう一方がコピーを保有するという方法で印紙代を1通分のみで済まし、節約することもできます。

事業譲渡契約書の印紙の貼り方、消印の押し方

収入印紙を貼る位置は特に法律で定められているわけではありません。契約書の表紙に貼るケースもあれば、末尾に貼る場合もあります。

契約書の印紙の貼り方、左上 消印の押し方

 

契約書の表題の左側に貼付することで、印紙税を納めていることがひと目でわかります。収入印紙を貼付した後は、印紙と契約書がまたがるように消印を押しましょう。実印はもちろん、認め印あるいはサインも消印として利用できます。

事業譲渡契約書の印紙の貼り方、消印の押し方

契約書の末尾に収入印紙を貼る場合は、署名押印欄の右隣がおすすめです。やはり、印紙を貼った後は消印を押しましょう。

事業譲渡契約書に印紙がないとどうなる?

事業譲渡契約書に印紙がないと、ペナルティーを受けることになってしまう可能性もあります。ここからは収入印紙を貼らなかったために起こり得るリスクについて見ていきましょう。

契約の効力に影響はない

まず収入印紙を貼っていなかったとしても契約が無効になってしまうことはありません。契約は両当事者の合意があれば成立し、それに収入印紙の有無は関係ないからです。ただし、印紙税法上のリスクが生じるため注意が必要です。

過怠税が課されるリスク

収入印紙を貼っていない、つまり印紙税を支払っていない状態で税務調査が実施された場合、最大で支払うべきだった印紙税の3倍もの過怠税が課せられる可能性があります。特に契約金額が大きくなりがちな事業譲渡契約においては、大きな代償を支払うことにもなりかねません。

なお、収入印紙を貼っていないことに気づいて国税にその旨を申告した場合、本来支払うべき印紙税額の1.1倍の過怠税が課せられます。

消印のし忘れにも注意

前述の通り、収入印紙を貼付した場合、消印を押さなければなりません。そもそも消印は収入印紙の再利用を防止する目的があり、消印がないとその収入印紙が印紙税を支払ったうえで貼付されたものなのか、使い回されたものなのかが判断できなくなってしまいます。そのため、収入印紙に消印がない状態の場合、本来支払うべき印紙税額を支払わなければなりません。

なお、収入印紙を貼付しない場合のリスクについては、以下の記事でさらに詳しくご説明しています。

事業譲渡契約書の割印の押し方

契約後に内容の改ざんや差し替えを防ぐために契約書に割印を押すケースがあります。これは法律で義務付けられているわけではありませんが、事業譲渡契約書の証拠能力を高めるために、そしてご自身が不利な状況にならないために、極力割印を押しましょう。

割印として認められる方法

割印は2枚の契約書をまたぐようにして、両当事者が印鑑を押します。これによって契約書が差し替えられていないかどうかを判断することができます。

割印として認められる方法

 

契約書の上端や下端、左端、右端など割印を押す場所はいずれでも問題ありません。印鑑は実印のほか、認め印も可です。

割印として認められる方法

また、上図のように契約書を重ねるのではなく見開きにしてまたぐようにして割印を押すという方法でも構いません。

割印として認められない方法

割印は契約書が差し替えられていない、改ざんされていないことを示すために押します。そのため、書類をまたいでいない状態で押しても意味がありません。また、どちらか一方のみが割印をした場合、その当事者が契約書の差し替えや改ざんをできることになってしまいます。必ず両当事者が割印を押すようにしましょう。

事業譲渡契約書の無料ひな形・テンプレート

事業譲渡契約書を一から作成するのは非常に大変です。内容や表現方法によってはどちらか一方が不利になってしまったり、トラブルに発展したりするおそれもあります。そこで、当サイトでは事業譲渡契約書のテンプレートを交えて書き方を解説していますので、ぜひ参考にしてください。

電子契約なら事業譲渡契約書の印紙は不要に

事業譲渡契約書を作成して締結する際には印紙税を収めたうえで収入印紙を貼付しなければなりません。事業を譲渡するとなると契約金額も多額になり、印紙税だけでも相当な負担となります。

電子契約であれば印紙税は不要になります。そもそも印紙税は文書を印刷して相手方に交付してはじめて課せられます。電子データのまま契約を締結するのは課税文書の作成にはあたりません。これは印紙税のルールをつかさどる国税庁や国会が公式に見解を示しています。電子契約で印紙税が不要になる理由や根拠を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

印紙税の負担を軽減するのであれば、電子契約を導入して賢く節税されることをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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