- 更新日 : 2024年8月29日
土地売買契約書とは?雛形から注意すべきポイントまで解説
土地の売買は取引金額が比較的大きいため、トラブルを防ぐためにも契約書を交わして契約を締結する必要があります。ただし、書面で契約を交わせば絶対に安全ということではなく、契約書に盛り込む条項を適切なものに設定することが大切です。
この記事では「土地売買契約書」について解説し、その雛形を紹介、そしてチェックすべきポイントについて説明します。
目次
土地売買契約書とは?
「土地売買契約書」とは、土地を売買の目的物とする取引で交わされる契約書のことです。
土地の売買に限らず、契約書はさまざまな取引で作成されます。約束した内容を明記し、その内容に従った取引を実行させること、また後で「約束したはずだ」「これは約束していない」といったトラブルを防ぐためにも契約書は重要な役割を果たします。
特に土地などの不動産を売買する場合は1件あたりの取引金額が大きいため、トラブルを予防する必要性がより高くなります。
そこで「土地売買契約書」を作成し取引のルール、具体的には売買代金や支払方法、権利が移転する時期、費用の負担者の定めなどを明記します。
土地売買契約書の雛形
契約書の作成にあたっては、各取引の実態に即した個別具体的な事例に最適な内容となるよう条項を置くべきです。しかし多くの場合、同じ契約類型に属するのであれば基本的な条項は共通します。もちろん、具体的な金額など細かい点は変わりますが、流用できる箇所も多くあります。
そのため、契約書を作成する際は雛形を参考にすると効率的です。以下に土地売買契約書の雛形を示しますので、一度内容を確認しておくとよいでしょう。
〇〇(以下、「売主」という。)と〇〇(以下、「買主」という。)は、以下の通り土地売買契約(以下、「本契約」という。)を締結する。
(売買物件)
第1条 売主は、買主に対し、売主が所有する下記の土地(以下、「本件土地」という。)を売り渡すことを約し、買主は〇〇の目的でこれを買い受ける。
記
(本件土地の表示)
所在 :〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目
地番 :〇〇番
地目 :〇〇
地積 :〇〇㎡
(売買代金)
第2条 本件土地の売買代金は、1㎡につき金〇〇円の割合で実測面積(登記簿上の表示による)に基づいて算出した金〇〇円とする。
(支払方法)
第3条 買主は、売主に対し、本契約の締結と同時に、手付金として、金〇〇円を、以下の口座に振り込む方法により支払う。なお、振込手数料は買主の負担とする。
金融機関 : 〇〇銀行
支店 : 〇〇支店
種別 : 普通預金
口座番号 : 〇〇
口座名義 : 〇〇
カナ : 〇〇
2 買主は、売主に対し、手付金額を差し引いた残額金〇〇円を、20〇〇年〇〇月〇〇日までに上記同様に支払う。
(所有権の移転時期)
第4条 本件土地の所有権は、売主が買主から第2条に定める売買代金の全額の支払いを受けた時に、売主から買主へ移転する。
(引渡し)
第5条 売主は、買主に対し、第2条に定める売買代金の全額の支払いを受けるのと引き換えに、本件土地を20〇〇年〇〇月〇〇日に引き渡す。
2 売主は、前項の引渡しに至るまで、本件土地を善良な管理者の注意をもって管理しなければならない。
3 売主は、買主に対し、第2条に定める売買代金の全額の支払いを受けるのと引き換えに、本件土地について買主が所有権移転登記手続を行うのに必要になる一切の書類を引き渡す。
4 売主は、本件土地に係る登記手続に協力をする。
(費用の負担)
第6条 本件土地の所有権移転登記完了までに発生する諸費用のうち、登録免許税及び登記申請費用は買主の負担とし、それ以外の諸費用は売主の負担とする。
2 本契約書に貼付する印紙の費用は、売主と買主それぞれが平等に負担する。
(反社会的勢力の排除)
第7条 売主及び買主は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
- 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して、「反社会的勢力」という。)ではないこと。
- 自らの役員(取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
- 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
- 自ら又は第三者を利用して、この契約に関して次の行為をしないこと。
- 相手方に対する脅迫的な言動や暴力を用いる行為
- 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 売主及び買主は、相手方が次の各号のいずれかに該当した場合には本契約を何らの催告を要することなく、直ちに解除することができる。
前項第1号又は第2号の確約に反する表明をしたことが判明した場合
前項第3号の確約に反し契約をしたことが判明した場合
前項第4号の確約に反した行為をした場合
3 前項の規定により、本契約が解除された場合には、解除された者は、その相手方に対し、相手方の被った損害を賠償する。
4 第2項の規定により本契約が解除された場合には、解除された者は、解除により生じた損害について、その相手方に対し一切の請求を行わない。
(協議解決)
第8条 本契約に定めのない事項及び本契約の内容の解釈に疑義が生じた事項については、両当事者間で誠実に協議の上、これを解決するものとする。
(専属的合意管轄)
第9条 本契約に関する一切の紛争については、本件土地の所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
以上、本契約締結を証するため、本書2通を作成し、各自署名又は記名及び押印のうえ、各1通を保有する。
〇〇年〇〇月〇〇日
売主 〇〇(住所)
〇〇 印
買主 〇〇(住所)
〇〇 印
以上
土地売買契約書テンプレートは、下記のページよりダウンロードできます。
土地売買契約書は誰が作る?
土地売買契約書は、誰が作成するのでしょうか。
当事者の一方が事前に話し合った内容に沿って文書を作成するケースが多いです。そして、できあがった契約書を他方当事者が確認し、署名または記名押印等を行うことによって契約が締結されます。
ただし、上記の流れは取引に不動産仲介業者が介入するかどうかによって変わることがあります。
不動産仲介業者が作る場合
不動産会社が取引に介入する場合は、土地売買契約書の作成も不動産会社が行うのが一般的です。
不動産や契約に関して専門的な知識を持たない個人や企業が当事者である場合は、専門知識を持つ不動産会社に契約書の作成を任せられる点がメリットといえます。どのような条項を盛り込むべきか悩む必要がなく、契約書の作成にあたってのミスも防ぎやすくなるでしょう。
ただし、よく確認をしないと自己にとって不利な内容のまま契約を締結してしまうおそれがあります。そのため、作成を任せる場合でも、一つひとつの条項にしっかり目を通さなくてはなりません。
個人が作る場合
不動産会社を挟まず個人間で取引を行う場合、当事者のいずれかが契約書の原案を作成しなければなりません。「売主が作成しなければならない」「買主が作成しなければならない」といったルールはなく、当事者間で話し合って決めます。
自分が原案を作成する場合は、比較的自由に条項を盛り込むことができる点や、自己に有利な内容にしやすい点がメリットです。
ただしミスが生じやすく、内容によっては無効になってしまうおそれもあります。慣れていなければ、手間も時間もかかってしまう点もデメリットといえるでしょう。
そのため、個人で作成する場合でも、弁護士などの専門家に依頼して契約書を作成するとよいでしょう。
土地売買契約書でチェックしておきたい項目
反社会的勢力の排除や協議解決、専属的合意管轄などの条項は、土地売買契約書以外でもさまざまな契約類型で盛り込むことになるルールです。
これに対して、雛形にもある「売買代金」や「支払方法」の定めや、「所有権の移転時期」「引渡し」「費用の負担」に関することなどは、土地売買契約書で特に盛り込むべきルールです。
以下で、特に土地売買契約書でチェックしておきたい項目をピックアップして紹介します。
金額の算出方法
土地売買契約書において、まずチェックしておきたい項目は「金額の算出方法」です。
売主と買主のいずれも、取引金額は最も関心が高いポイントでしょう。後で金額に関するトラブルが生じないように、あらかじめ算出方法を明確に定めておかなくてはなりません。
特に土地においては面積が重要な指標となりますので、単に「○○万円」と金額だけを定めるのではなく、「1㎡につき金〇〇円の割合で実測面積(登記簿上の表示による)に基づいて算出した金〇〇円とする」といったように計算方法を明示するケースも多々あります。
支払条件
「支払条件」も、土地売買契約書においてチェックしておきたい項目です。
以下の点に着目しましょう。
- いつまでに支払わなければならないのか
- どうやって支払うのか
- 手数料はどちらが負担するのか
支払期日については、具体的な日付がわかるように記載するべきです。支払方法が銀行振込の場合は、「金融機関」「支店」「種別」「口座番号」「口座名義」に関する情報を明記し、振込手数料の負担者も定めましょう。
また、所有権を移すまでにかかる費用や、所有権移転登記に要する登録免許税等の負担者についても定めておくべきです。所有権移転登記に要する登録免許税に関しては、買主が負担するケースが多いです。
所有権移転のタイミング
不動産取引においては、「所有権移転のタイミング」もチェックしておきたい項目です。
よくあるのは、「買主が売買代金の全額を支払ったタイミング」で所有権が移転するとの定めです。このタイミングは、土地の引渡しにおいても重要な時期となります。トラブルを避けるためにも、特段の事情がないのであれば全額の支払いに先立って所有権を移転するのではなく、全額の支払いと引換えに所有権が移転するように設定すべきです。
印紙
売買契約において、民法では原則として費用は当事者双方が等しい割合で負担すると定めています(民法558条)。
第五百五十八条 売買契約に関する費用は、当事者双方が等しい割合で負担する。
引用:民法|e-Gov法令検索
印紙に関してもこの規定の適用を受けると考えられていますので、折半して負担するとの定めを置くとよいでしょう。契約書の原本を2通作成する場合は、それぞれに印紙を貼る必要があります。一般的には、自分が保有する契約書に貼り付ける分の印紙代を自分が負担する形で折半します。
印紙に関しては、こちらで詳しく解説しております。
土地売買契約書を作成して安全な取引をしよう
土地売買契約の場合、盛り込む項目を適切なものにしなければ、大きな損失を被るリスクがあります。特に取引金額や支払条件、所有権の移転時期に関しては十分注意を払い、必要に応じて弁護士などの専門家のサポートも受けることも大切です。
よくある質問
土地売買契約書とは何ですか?
土地の売買する際のルールや代金など、当事者の合意内容をまとめて当事者が署名押印(記名捺印)した文書のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
土地売買契約書で注意すべきポイントはありますか?
売買代金の設定方法や支払いの条件、所有権が移転するタイミングについて定めた条項が適切なものになっているかどうかをよく確認しましょう。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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