- 更新日 : 2025年5月13日
金銭消費貸借契約書とは?無料テンプレート・雛形をもとにわかりやすく解説
金銭消費貸借契約とは、金銭を消費貸借の対象とする契約のことです。借入を行う人は、受け取ったお金を消費し、同等のお金を返還する約束を交わします。元本とともに利息を支払うのが一般的ですが、「いくらをいつまでに」「どのように支払うのか」といったことで争いが生じないよう、このような事項を契約書に記載することが大切です。
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目次
金銭消費貸借契約とは
「金銭消費貸借契約」とは、金銭を消費貸借の対象とする契約のことです。
「消費貸借」とは受け取った物を消費し、これと同じ種類・品質・数量の物を返すことです。民法第587条では、以下のように規定されています。
第五百八十七条 消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
平たく言えば、お金の貸し借りが金銭消費貸借にあたりますが、受け取ったお金を使い切ってしまった場合、受け取ったお金そのものは返すことができないため、その点は賃貸借と異なります。
「ローン契約」や「金消契約」などと呼ばれることもありますが、これらはいずれも金銭消費貸借契約です。金銭消費貸借は比較的身近な契約類型であり、企業のみならず個人と金融機関の間で締結されることもあります。
金銭消費貸借契約の要件
民法第587条にあるように、原則として消費貸借契約は(返還の約束を前提に)物を受け取ることによって成立します。そのため、金銭消費貸借では「金銭の受け取り」が要件となります。
ただし同法第587条の2第1項では、「書面によって契約をした」場合は物の受け取りがなくても消費貸借契約が成立するとしています。
前条の規定にかかわらず、書面でする消費貸借は、当事者の一方が金銭その他の物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。
引用:民法|e-Gov法令検索
これは、近年の民法改正によって定められた規定です。
同条には、電磁的記録によってなされた消費貸借契約でも、書面によってなされたものとみなすと規定されており、紙の契約書を作成することは必須ではありません。
金銭消費貸借契約の効果
金銭消費貸借契約を締結する際は、一般的に契約書を作成します。その場合は、お金を支払う前の段階で契約が成立し、貸付人は借入人に対して「お金を支払う義務」が生じます。
貸付日が到来しても義務を履行しない場合、借入人は貸付の実行を請求でき、裁判を起こして強制執行を行ったり、損害が生じた場合は損害賠償を請求したりすることもできます。
書面で契約した借入人は、お金を受け取るまでの間なら契約を解除できる旨が民法に規定されています。
同規定は強行規定と考えられているため、契約書に金銭授受前の解除権行使ができない旨が定められていても無効になる可能性があります。
金銭を受け取った後の借入人には「返還の義務」が生じますし、受け取る前の契約解除であっても、そのことにより貸付人に損害が生じた場合は損害賠償を請求されることがあるので注意が必要です。
金銭消費貸借契約が必要な場面
金銭消費貸借契約は、お金の貸し借りを行う際に当事者間の権利義務を明確にするために使用されるものです。以下では、金銭消費貸借契約が特に必要となる代表的な場面について解説します。
住宅ローンを組むとき
住宅ローンを組む際には、金銭消費貸借契約の締結が不可欠です。
住宅ローンとは、住宅購入資金を金融機関から借り入れることであり、一般的に高額な借入となります。そのため、借入金額や返済期間、金利条件、返済方法といった重要な事項を、金銭消費貸借契約で明確に定めておく必要があるのです。
住宅ローンにおける金銭消費貸借契約は、ローン審査に通過した後に、抵当権設定契約や補償委託契約などと合わせて締結されます。これらの手続きを経て、ようやく融資が実行されることになります。
金銭消費貸借契約は、住宅ローンの返済計画の基盤となる重要な契約です。
金融機関から融資を受けるとき
事業資金の調達や自動車ローンなどで利用する金融機関からの融資は、金銭消費貸借契約に基づいて実行されます。
融資における金銭消費貸借契約は、融資金額、資金使途、返済期日、金利条件などを決めることで、貸主と借主の権利と義務を明確にして、将来的なトラブルを未然に防ぐ役割を果たします。
さらに、融資の際は融資枠契約(限度付金銭消費貸借契約)が交わされることが多くあります。融資枠契約は、あらかじめ定められた期間と限度額の範囲内であれば、借主は追加審査なしに複数回の融資を受けられるものです。これにより、安心して事業運営をすることが可能となります。
個人間でお金の貸し借りをするとき
友人や家族間でのお金の貸し借りであっても、金額が高額であったり、期間が長期にわたる場合には金銭消費貸借契約書を作成することが望ましいです。口約束だけでは、金額の認識違いや、貸付が贈与と誤解されるなど、トラブルに発展する可能性があります。
契約書に、借りた金額・返済の期日・利息の有無などを明記することで、認識の食い違いを防ぎ、後々のトラブルを避けられます。
個人間での金銭トラブルは、その後の信頼関係にも悪影響となる可能性があります。良好な関係を維持して、円滑な金銭のやり取りをするためにも、金銭消費貸借契約を交わすことが必要です。
民法改正による金銭消費貸借契約の変更点
2020年4月に施行された民法改正により、金銭消費貸借契約に関する規定にもいくつかの重要な変更がありました。ここからは、民法改正による主な変更点について解説します。
書面での契約があれば締結時点で契約が成立
改正前の民法における金銭消費貸借契約では、お金などの目的物が実際に借主に交付されなければ契約は成立しないとされていました。
しかし、民法改正後は、書面による契約を交わした時点で、実際にお金が借主に渡されていなくても契約が成立することになりました。
これにより、契約を交わした時点で、貸主には「決められた日までに借主に金銭を交付する義務」が発生します。ここでいう書面とは、メールなどの電磁的記録による合意であっても、契約とみなされて効力が発生します。
協議合意による時効の完成猶予
民法改正で規定された「協議を行う旨の合意による時効の完成猶予」では、債権者と債務者が合意することにより最長で5年間、時効の完成が猶予できることになりました。改正前は、たとえ貸主と借主の協議中であっても、時効完成が近づいた場合、債権者(貸主)は時効を中断させるためには訴訟提起をする必要がありました。
この改正により、金銭消費貸借契約においても、返済滞納時に書面で協議合意を交わすことで、訴訟提起をすることなく、柔軟な返済交渉が可能となりました。
借主による一方的な契約解除
改正民法では、金銭消費貸借契約において借主が金銭を受け取る前であれば一方的に契約解除できることが明文化されました。これは、契約締結から実際の金銭交付までに期間がある場合に、借入の必要性がなくなったにもかかわらず利息付きで借り受けなければならない不合理を解消する規定です。
貸主保護の観点から、解除により損害を被った場合の賠償請求権も定められています。しかし金銭貸借では別の借主を見つけることで同等の利益を確保できるため、賠償請求のハードルは高いとされています。
期限前弁済
改正民法では、「借主は、返還の時期の定めの有無にかかわらず、いつでも返還をすることができる」という期限前弁済の規定も新設されています。
金銭消費貸借においても、契約内容にかかわらず借主が借入金の返済をできることになります。一方で、貸主保護の観点から、期限前弁済により貸主に生じた損害について損害賠償請求を認める規定も設けられていますが、前述の契約解除と同様に、貸主が損害を立証して賠償請求をすることはハードルが高いとされています。
事業資金借入時の保証人設定時の取り扱い
金銭消費貸借契約では、一般的に保証人を設定するケースが多くあります。事業資金を借り入れる際の契約で保証契約を合わせて行う場合、民法改正により以下の要件を満たすことが必要となりました。
- 保証契約締結日の前に、公正証書によって保証債務を履行する意思を表示する
※保証人が法人である場合、または借主が法人でその役員等が保証人になる場合は除外される - 保証契約を依頼する際に、借主は保証人に対して、自身の財産や収支の状況などに関する情報を提供する
金銭消費貸借契約書の記載項目
金銭消費貸借契約では、将来のトラブルを防ぐためにも契約書を作成しておくべきです。そこで、契約書に記載する項目で特に重要なものをピックアップして紹介します。
金銭消費貸借の合意とその金額
当事者間の合意は契約成立の基本です。そこで、「金銭消費貸借の合意」を示します。貸付人がお金を貸し付けること、借入人がこれを借り受けることを明記するとともに、具体的な金額も記載しましょう。
貸付実行日も重要な情報なので、「貸付人は借入人に対し、○年○月〇日に金〇円を貸し付け、借入人はこれを借り受ける。」といったように記載しましょう。
返済期日と返済方法
いつまでに返済するのか、どのように返済するのかも明記します。「〇年〇月〇日までに、毎月金〇万円ずつ(合計〇回の分割払い)支払う。」とすることもあれば、「〇年〇月〇日に、元本の全額を一括にて支払う。」とすることもあります。
返済方法に関しては、現金交付または銀行振込とするケースが多いです。
銀行振込の場合は振込手数料の負担者についても定め、「貸付人が指定する口座へ、振込送金する方法により返済するものとする。振込手数料は借入人の負担とする。」といったように記載します。
なお、民法では、借入人は返済期日の定めの有無に関わらず、いつでも返済できる旨が規定されています。しかし、この規定は任意規定と考えられているため、契約書に「借入人は、貸付人の承諾を得た場合に限り、元本の全部または一部を期限前に弁済できる。」と定めることもあります。
貸付人は利息を得ることを前提に貸付を行うため、実務上も期限前弁済に対して承諾を要する旨が記載されるケースが多いです。
連帯保証の定め
借入人の資力がなくなると、貸付人は元本を返済してもらうこともできなくなります。このリスクを減らすために、保証人を付けるケースもあります。
「保証人」と「連帯保証人」は異なります。金銭消費貸借契約では、一般的には連帯保証人の定めが置かれます。単なる保証人の場合、保証人に抗弁権が認められ、貸付人はまず借主に請求しなければならないといった制約が生じます。そのため、貸し付けたお金を回収しやすい連帯保証人を設定するケースが多いのです。
記載するにあたっては、保証に関して「連帯」の文言を明記することが重要です。「保証人は、本契約に基づいて生ずる債務について、連帯して保証する。」といったように記載しましょう。
利息の支払い
「借りたお金と同額を返還すればよい」とする金銭消費貸借契約はまれで、通常は利息が発生します。利息が発生すれば、貸付人にもメリットが生じるからです。
そこで、「元本に対して年〇%の利率を適用する」と明記しましょう。当事者の双方が商人である場合を除いて、この記載がなければ利息を請求することができません。
なお、金銭消費貸借における利息は利息制限法が適用されるため、上限利率を超えないようにしなければなりません。利息制限法で定められている上限利率は、以下のとおりです。
元本の大きさ | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年20% |
10万円以上100万円未満 | 年18% |
100万円以上 | 年15% |
遅延損害金
設定した返済期日までに弁済がない場合を想定して、遅延損害金に関する項目も記載します。
「借入人が、返済期日において、本契約に基づく債務の全部または一部の弁済をしない場合、貸付人に対し、当該弁済日の翌日から完済に至る日までの期間につき、年14.6%の割合による遅延損害金を支払うものとする。」などと定めます。
遅延損害金に関しても、利息制限法が規定する上限利率に注意してください。上限利率の1.46倍を超える場合は無効になります。遅延損害金として請求できるのは、最大でも以下の利率です。
元本の大きさ | 上限利率 |
---|---|
10万円未満 | 年29.2% |
10万円以上100万円未満 | 年26.28% |
100万円以上 | 年21.9%※ |
※貸主が貸金業者の場合は年20%が上限
協議合意による時効の完成猶予について
ある権利に関して協議を行う旨について書面(または電磁的記録)による合意があった場合は、消滅時効が完成するのを一定期間妨げることができます。これは、近年の民法改正で新設された制度です。
「合意から1年」「当事者が1年未満の協議期間を定めたときはその期間が経過するまで」「当事者の一方が書面で協議を拒絶する旨の通知をしたときはその通知から6ヵ月」のいずれか早い時期が到来するまでは、時効期間の進行を止められるのです。
同制度があるため、時効を止めるためだけに裁判上の請求などを行う必要はありません。ただし、書面または電磁的記録によって協議を行う旨の合意がなされなければなりません。そのため、協議解決に関して「協議を行う場合、当該協議を行う旨の合意を書面または電磁的記録にて行うものとする。」などと記載しましょう。
なお、協議解決の条項を契約書に定めなくても同制度の適用は受けられます。例えば、メールのやりとりで協議の申し入れから受諾の意思表示まで行えば、電磁的記録による協議を行う旨の合意が成立したとみなされます。
金銭消費貸借契約書の無料テンプレート・雛形
金銭消費貸借契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
要点のみを記載したものなので、契約時はそのまま流用せず、自社に適した形に調整する必要があります。
金銭消費貸借契約を締結するときの注意点
金銭消費貸借契約を適切に結ぶためには、法的効力や権利義務関係を双方で認識し、将来のトラブル防止のために必要なポイントを押さえておく必要があります。ここからは、契約を結ぶ際の注意点を説明します。
契約書の作成と内容確認
金銭消費貸借契約では、口頭での合意だけでなく書面による契約書を作成することが重要です。契約書に貸付金額、返済方法、返済期限、利息の有無とその利率、遅延損害金などの条件を明記しておくことで、貸主と借主で認識の相違なく返済の手順を踏むことができます。
契約に関するトラブルを防ぐためには、このように契約書で権利義務関係や条件の内容を明らかにしておくことが非常に重要です。
契約を締結する前に、貸主と借主との間で内容を確認し、認識の食い違いがないようにして契約を進めましょう。
担保や保証人の設定
高額または長期間の貸付では、金銭の返還を保全するために担保の設定や保証人の設定をすることが一般的であり、重要です。
担保として不動産や動産を設定する場合は、抵当権設定や質権設定の登記・登録が必要になります。保証人については、前述した通り連帯保証人と一般保証人では責任の範囲が異なるため、その違いを理解しておくことも重要です。
また、担保や保証人を設定するためには、借り入れをする金銭以外に、別途費用が必要になります。
利息の設定
金銭消費貸借契約を行う際は利息の設定を行うことが一般的ですが、契約時の合意がなければ利息を請求することができません。そのため、契約の締結時に利息に関する合意をした上で、契約書に明記しておくことが重要です。
設定する利息には、前述した通り法律による上限が設けられています。
利息の上限は強行規定であるため、合意をしたとしても法定の利率を超えることはできません。上限を超える利息を設定した場合、超過部分は無効となります。
金銭消費貸借契約書を正しく作成しましょう
金銭消費貸借契約では、多額の金銭の授受が発生したり、返済期間が長期化することが多くあります。そのような場合には特に契約書を作成すべきであり、後々問題になりそうな事柄に関してはあらかじめ契約書内に記載して、合意を取っておくことをおすすめします。
金銭消費貸借契約書を作成する際は、法律に基づいて正しく作成することが必要です。貸主・借主双方の権利と義務を明確にし、健全な金銭取引の基盤となります。民法改正による新たな規定も踏まえ、状況に応じた適切な契約書を作成することで、安心して金銭の貸し借りを行いましょう。
高額な貸付、担保や保証人の設定を伴う場合、または複雑な返済条件を設ける場合などは、行政書士や弁護士など専門家のアドバイスを受けることで、将来のリスクを最小限に抑え、安心して契約を締結することができるはずです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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