- 更新日 : 2024年8月30日
交通事故示談書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
交通事故示談書は、交通事故が発生した際に、損害額や賠償請求額などについて被害者と加害者双方が合意した示談の内容を記載する重要な書類です。
この記事では、交通事故示談書についての基本的な知識や書き方について解説します。すぐに使える示談書のひな形や、作成時に注意すべきポイントについても解説しますので、参考にしてください。
目次
交通事故示談とは
交通事故の示談とは、交通事故の被害者が受けた損害に対して被害者と加害者が交渉し、「加害者が損害賠償金をいくら支払うか」「いつまでに支払うか」などを話し合って決めることです。
交通事故が発生すると、被害者はけがをして職場や学校に行けなくなったり、治療費が発生したりといった損害を被ります。原則的に、こうした損害については加害者が示談金を支払うことで償いとします。
したがって、交通事故の示談は、被害者が被った損害に対して加害者がどのような償いをするかを決めるために行う必要があるのです。
交通事故の示談では、損害賠償金を「示談金」と呼びます。また、交通事故で発生した損害について、加害者と被害者それぞれにどれくらい責任があるかを示したものを「過失割合」と言います。主にこの2つについて話し合い、双方が合意すれば示談成立です。
加害者が任意保険に加入している場合、および、被害者が弁護士に依頼している場合は、加害者側の保険会社と被害者側の弁護士との間で示談交渉が行われます。もっとも、示談の内容を最終的に決定するのは被害者と加害者本人である点は変わりません。
交通事故示談書を作成するケース
交通事故示談書は、示談で取り決めた内容を確認するために作成する書面です。損害賠償の額や支払方法などを確定する意味をもつ、非常に重要な法律文書です。
示談書を作成した方がよいケースとしては、主に3つのケースが挙げられます。
当事者双方に過失がある場合
交通事故示談書を作成する最も一般的なケースは、加害者だけでなく被害者にも何らかの落ち度がある場合です。被害者と加害者双方の過失割合に応じて、損害賠償を分担しあうことになります。
後になって「この過失割合では納得できない」「示談金を減額したい」などともめるケースも珍しくないため、示談書を作成しておいた方がよいでしょう。
示談成立後に予期せぬ不測の後遺障害が生じうる場合
原則として、一度成立した示談を後からやり直すことはできません。ただし、示談の時には予測できなかった後遺症などが生じた場合は、別の損害が発生したとして後から新たな示談を行うことができます。
後遺症は継続的な治療や生活補償が必要となることが多いため、しっかりと示談書を作成しておきましょう。
示談成立前に損害金の一部の支払いを受ける場合
被害者が治療費などに充てるため、早期に賠償金の一部を受け取る場合などにも示談書は必要になります。残りいくらの賠償金を支払えばよいかを明確にしておくためにも、示談書を作成しておいた方がよいでしょう。
交通事故示談書のひな形
交通事故示談書をどのように書けばわからないという方のために、交通事故示談書のひな形を紹介します。
以下のページから無料でダウンロードできるので、ぜひご活用ください。
交通事故示談書に記載すべき内容
交通事故示談書に記載すべき内容を、前章で紹介したひな形をもとに紹介します。示談書では、被害者と加害者の当該事故に関する債権債務関係が明確にわかるよう記載することが大切です。
事実関係(第1条)
第1条では、交通事故の事実関係を確認します。誰が、誰に、いつ、どこで、どのような状況で事故を起こし、その結果どのような損害が生じたかを記載します。
記載する項目は「事故発生日時」「事故発生場所(住所)」「事故の状況」「事故後の経過」です。
事故後の経過では、病院でどのような診断をされたか、死亡の場合は年月日と時間を記載し、それらが交通事故に基づくものであることを明記します。
支払義務(第2条)
第2条では、加害者が被害者に対していくら賠償金を支払う義務があるか、いつまでにどのような方法で支払うかを確認します。
賠償金の内訳は、治療費や慰謝料などです。物的損害(自動車の故障など)がある場合は、修理費用などを含めます。分割払いの場合は月々の振込日や銀行口座なども記載しましょう。
遅延損害金(第3条)
示談金の支払いについて期日を決めていても、さまざまな理由で遅れる可能性があります。そのため、あらかじめ支払いが遅れた場合の損害金について定めておきましょう。
損害金の額については「支払期日の翌日から支払い済みまで1日につき金〇〇円の割合」などのように決めます。
守秘義務(第4条)
被害者と加害者は、話し合いを重ねるうちに段々と感情的になり、話がこじれてもめたりするケースもあります。また、損害額や示談金の額を第三者に明かすこともトラブルの原因になるため避けるべきです。
したがって、示談書には双方に危害を加えないことや、示談書の内容について第三者に漏らさないことを義務付ける条項を入れておきましょう。
清算条項(第5条、第6条)
本示談書の内容が、あくまで当該交通事故に関する示談であることを確認する条項です。「本合意書に定めるほか、本件に関し、甲乙間には何らの債権債務のないことを相互に確認する」など、当該交通事故について、双方がやらなければならないことは、この示談書で決められたこと以外にはない旨を記載します。
また、後になって示談書に定めがない事項について話し合う必要が生じた場合は、別途協議して解決を図る旨を記載します。
管轄裁判所(第7条)
基本的に、示談は裁判所を通すことなく当事者だけで行う解決手段です。しかし、万が一当事者だけでは解決できない紛争が生じた場合、裁判所に訴え出ることもあるかもしれません。その際の管轄裁判所(「〇〇地方裁判所」など)を記載することもできます。
交通事故示談書の作成ポイント
交通事故では、被害者と加害者の双方が示談の内容にしっかりと納得する必要があります。したがって、示談書の内容も記載漏れや誤りがあってはなりません。ミスが生じないよう、示談書を作成する際は以下のポイントに気を付けましょう。
損害額が確定してから作成する
示談書は、必ず治療費や後遺障害、物損などの損害額が確定してから作成しましょう。損害の内容が明確でないまま示談書を作成すると、後になって新たな損害が見つかった場合にトラブルに発展する可能性があるからです。
一般的には、被害者の治療が終わり治療費が確定してから賠償額を決めることが多いです。
ケースによっては公正証書とする
物損事故で賠償金が高額に上る場合や、保険未加入の相手に多額の治療費・慰謝料を請求する場合など、確実に支払ってくれるか不安を覚える場合は、公正証書で作成しましょう。公正証書は、私人から嘱託された公証人が権限に基づいて作成する公文書です。
公正証書であれば、万が一相手が示談金を支払わない場合でもすぐに強制執行が可能です。
交通事故の専門家にチェックしてもらう
必要事項の記載漏れや誤りがないかなど、できれば専門家である弁護士などにチェックしてもらいましょう。一度合意した示談書の内容を後で覆すのは困難です。後から賠償額にミスや納得のいかない点が見つかって泣き寝入りすることのないよう、専門家にしっかり確認してもらうとよいでしょう。
交通事故示談書の作成は専門家を交えて慎重に
交通事故示談書は、後々のトラブルを避けるためにも、損害金の額や示談金の支払時期などについて、被害者と加害者双方がしっかりと納得した上で作成する必要があります。
いったん示談書の内容について合意した場合、記載内容以外の請求をすることは原則できません。したがって、賠償額は適切か、記載に誤りはないかをしっかり確認しながら慎重に作成しましょう。
示談書の作成に自信がない場合や、事案が複雑で適切な賠償金の額が算出できない場合など、少しでも不安があれば交通事故専門の弁護士に相談することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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