• 作成日 : 2024年12月2日

飲食店の店舗譲渡は事業譲渡契約書を作成する?重要性や注意点を解説

飲食店を第三者に譲渡する際には事業譲渡契約を締結します。この記事では事業譲渡契約を締結するケースや契約書を用いて締結する必要性、契約締結時の注意点についてご説明します。すぐに使えるテンプレートも用意していますので、ぜひそちらも参考に契約書を作成してみましょう。

▼飲食店向け事業譲渡契約書のテンプレートは以下よりダウンロードいただけます。

飲食店の事業譲渡とは

飲食店の事業譲渡とは飲食店事業そのものを第三者に譲ることを指します。譲渡者(譲渡する側。飲食店のオーナー)は自身の店舗を譲渡することで対価が得られ、経営を新しい経営者に引き継ぐことが可能です。

一方、譲受側(譲渡を受ける側。新しく飲食店のオーナーとなる人)は店舗物件や設備などの資産を入手でき、飲食店の経営ができるようになります。

店舗を譲渡する方法としては「造作譲渡」「事業譲渡」「株式譲渡」という3つの方法があり、今回のテーマとなっている事業譲渡では店舗や設備、住居などの有形資産、知的財産権やノウハウ、顧客リストなどの無形資産などを譲渡します。

造作譲渡との違い

造作譲渡とは店舗およびその内装や設備などを次のテナントの入居者に譲渡することです。

賃貸物件を用いて飲食店を経営する場合、退去する際には設備や内装を全て撤去するスケルトン工事を行って明け渡さなければなりません。この負担を軽減するために造作譲渡が行われることがあります。

事業譲渡では無形資産も譲渡の対象となりますが、造作譲渡ではあくまで有形資産のみが対象となります。

株式譲渡との違い

株式譲渡とはその名の通り株式を譲渡して会社の経営権を譲渡することです。事業譲渡との違いは会社を丸ごと譲る点です。

例えば飲食店と小売店を運営している会社を経営しているとして、飲食事業のみを第三者に譲渡したい場合は事業譲渡を行います。

これによって飲食事業のみが譲渡者の手から離れますが、会社と小売事業は残ります。株式譲渡は会社自体を譲渡することになるため、会社の経営権も、事業も、全て譲受側に移ります。

飲食店が事業譲渡を行うケース

まず挙げられるのが経営改善策の一環として行われる場合です。業績が悪化していて飲食店事業から撤退したい場合、事業を売却してその収益で経営を立て直したい場合に、事業譲渡を行うケースがあります。

飲食店経営に長けた経営者が経営を引き継ぐことで、お店が継続でき、従業員の雇用を守ることも可能です。また、逆に業績が好調な店舗を売却して利益を得る、いわゆるバイアウト目的で事業譲渡を行うケースもあります。

最近では少子高齢化によって後継者不足に悩まれている経営者の方、飲食店オーナーの方もいらっしゃいます。親族や従業員にお店を継がせる代わりに、事業譲渡によって第三者に経営を託すことも可能です。

飲食店の事業譲渡契約書とは

飲食店の事業譲渡契約書はその名の通り事業譲渡を行う際に取り交わす契約書のことを指します。

まず譲渡者と譲受者は譲渡金額や譲渡時期などの条件を交渉し、譲渡側は譲受側が経営をしっかり引き継いでくれるかを検討し、譲受側は対象となる飲食店の経営状況や資産価値を見極めるデューデリジェンスを実施します。

その結果、譲受する意思が固まったら、事業譲渡契約を締結し、店舗の資産が譲受側に移り、飲食店の運営もバトンタッチとなります。

飲食店が事業譲渡契約書を作成する重要性

なぜ書面をもって契約を締結しなければならないのでしょうか。ここからは飲食店が事業譲渡契約書を作成する重要性について考えていきましょう。

トラブル回避

契約を締結する方法は書面に限られません。極端にいえば口約束であっても契約は成立します。しかし、口頭で契約を締結した場合は証拠が残らず、後で「言った・言わない」のトラブルに発展するリスクも高くなります。

特に飲食店の事業譲渡は取引金額も非常に大きく、譲渡側・譲受側双方の今後の事業運営や人生にも大きな影響がおよぶ可能性があります。

双方で認識の違いがないようしっかりとすり合わせをしておき、取り決めを事業譲渡契約書に残しておくことが大切です。

競業避止義務の範囲を定める

事業譲渡契約を締結する際には譲渡側に競業避止義務を課すのが一般的です。例えば譲渡側が飲食店を手放したのにも関わらず、そのお店の近隣でこれまでのノウハウや資産を使って新しく飲食店を開業した場合、譲受側と競合してしまい損害を与える恐れもあります。

こうした事態が発生しないよう、譲渡側は契約書でしっかりと競合する事業を行わないことを表明する必要があります。

譲渡資産を特定する

特に事業譲渡で揉めるのが譲渡資産についてです。「譲渡されるはずの資産が譲渡されなかった」「譲渡する予定のない資産まで引き渡しを求められた」というように、譲渡資産の内容について揉めるケースもしばしばあります。

事業譲渡契約書では譲渡資産の内容や範囲についても明らかにしておくことが重要です。可能であれば譲渡資産の内訳を記載した目録を作成されることをおすすめします。

飲食店が事業譲渡契約を締結する際の注意点

飲食店を事業譲渡する場合、さまざまな事柄に注意しなければなりません。ここからは売り手側(譲渡側)、買い手側(譲受側)に分けて、それぞれ注意点を見ていきましょう。

売り手側のチェックポイント

まずはお店の資産や経営状況に関して正確な情報を譲受側に伝えるようにしましょう。早く譲渡したいからとよい情報ばかりを伝えたい、悪い情報を隠したいという気持ちもあるかと思います。しかし、都合の悪い情報を隠していると、後でそれが発覚した時にトラブルに発展する恐れもあります。

また、相手側がしっかりと経営を引き継いでくれるかどうかも重要です。譲受側が譲受後に経営方針を転換して従業員を解雇してしまったりサービスを停止してしまったりすることもあり得ます。事業譲渡契約書では従業員の雇用やサービスの継続についても盛り込んでおきましょう。

買い手側のチェックポイント

譲受側としてはまず事業を引き継いでも問題ないかどうかを検証することが重要です。前述の通り、経営改善や不採算事業の切り離しを目的に事業譲渡が行われるケースも多くなっています。もちろん、飲食店経営に慣れていて赤字から黒字に転換できる、あるいは事業を譲受することで自社の既存事業とのシナジー効果が得られるなど何らかのメリットが見込まれるのであれば問題ありません。

しかし、儲かっていない飲食店を購入するのはかなりのリスクです。事業譲渡契約を締結する前にデューデリジェンスを行い、しっかりとお店の経営状況や資産状況を把握しましょう。

また、譲渡期間についてもしっかりと確認しておくことが大切です。譲受するタイミングが遅れると、開店もそれだけ遅くなり、本来得られるはずの利益が得られないことになってしまいます。

すでに存在する店舗を買い取ることで、開業までの期間や費用を削減できる可能性もありますが、それでも内装や商品をリニューアルする、広告宣伝を行うなどの準備は必要です。しっかりと計画を立て、適切なタイミングで開店できるよう調整しましょう。

飲食店向け事業譲渡契約書のひな形・テンプレート

当サイトでは飲食店向けの事業譲渡契約書のひな形・テンプレートもご用意しました。自身の状況に合わせて内容を書き換えるだけですぐに使えるので、ぜひご活用ください。

注意点を押さえて飲食店の事業譲渡契約を締結しましょう

譲渡側には経営を第三者に引き継ぐことができる、譲渡益を得られる、譲受側には早期にかつ開業資金を抑えて飲食店を開業できる、飲食店経営のノウハウを手に入れられるなど、飲食店の事業譲渡は双方にとってメリットがあります。

しかし、譲渡・譲受する資産が大きく、双方の今後の事業経営や人生に多大な影響をおよぼす可能性もあるため、トラブルが発生するリスクもあります。事業譲渡を行う際には必ず条件や譲渡資産の範囲、譲渡時期、競業避止義務などを細部まで詰めたうえで、事業譲渡契約書という書面を用いて契約を締結しましょう。


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