• 作成日 : 2024年12月27日

契約書管理の「できない」をなくすコツは?効率化の方法や契約書管理システムの選び方を解説

契約書管理を適切に行うには、契約期限の管理や情報の一元化など、コツを押さえて業務に取り組むことが大事です。

加えて効率的な業務を実現するには契約書管理システムの導入も検討すべきであり、これによりアクセス権限の設定や運用ルールの整備も進めやすくなるでしょう。ただしシステムの選び方には注意が必要です。

契約書管理の3大ポイントとは

「契約書管理」とは、企業が保有する契約書を適切に保管・整理するとともに、必要な場面で速やかに参照できる状態を維持することを指します。

ただ書類を保管するだけでなく、契約内容の把握や期限の管理、セキュリティの確保など多岐にわたる業務がここに含まれます。

契約書管理が適切に行われているかどうかは、以下の3つの観点から判断することができます。これらのポイントは多くの企業で課題となっている要素でもあります。

契約期限の管理

「契約期限の管理」は、契約書管理における基本かつ重要なポイントです。契約の開始日・終了日の管理はもちろん、更新期限や解約通知期限などの管理もしないといけません。

例えば、賃貸借契約だと解約予告期間が定められていることが一般的です。「3カ月前までに更新しない旨の通知をしなければ自動更新となる」といった条項がある場合、その期限管理を怠ると意図せぬ契約の継続が発生してしまいます。

また、継続的な取引における基本契約と、その下での個別契約の期限管理も重要です。基本契約が終了しているにも関わらず、個別契約だけが継続しているような事態は避けなければなりません。

契約情報の一元化

「契約情報の一元化」とは、契約書の原本管理だけでなく、契約内容や履行状況、変更履歴などの関連情報をまとめて把握できる状態を指します。

実務上、以下のような情報を一元管理することが重要といえます。

  • 契約当事者の基本情報(名称、住所、連絡先など)
  • 契約金額や支払い条件
  • 保管場所(現物の保管場所や電子データの保存先)
  • これまでの契約変更の経緯
  • 担当者の引き継ぎ履歴 など

アクセス権限の設定

契約書には機密情報が含まれることが多いため「アクセス権限の設定」もセキュリティの観点から大事です。

具体的には、以下のような管理が求められます。

  • 閲覧・編集権限の設定
    → 契約書の内容により閲覧できる従業員を制限する必要がある。例えば役員報酬や機密保持契約などにアクセスできる人員は必要最小限に抑えるよう定める。
  • 変更履歴の記録
    → 契約書の内容を変更した場合、誰がいつどのような変更を行ったのか履歴を残す必要がある。不正な変更を防ぐためだけでなく、責任の所在を明確にする意味でも重要。
  • 外部からのアクセス制限
    → リモートワーク環境下など、社外からのアクセスについても安全性を確保しないといけない。VPNの利用やセキュリティポリシーの策定など、技術面・運用面での対策が必要。

「契約書管理ができない」と感じる理由は?

「契約書管理の必要性をわかってはいるが、適切な管理ができていない」と感じている担当者も少なくありません。その要因として考えられる典型例をいくつか紹介します。

契約の終了や更新期日の把握が難しいから

契約書管理がうまくいかない理由の1つは、「契約の期限管理が難しいから」という点にあります。

さらにその背景にあるのは、「契約書によって期限の種類が異なるから」「更新パターンが契約ごとに異なるから」「担当者間の引き継ぎがうまくいっていないから」という事情です。

例えば、賃貸借契約では契約終了日と更新通知期限、機密保持契約では契約終了後の義務存続期間、継続的取引契約では自動更新の判断期限など、契約の種類によって管理すべき期限が異なります。

そして、自動更新する契約もあれば、都度更新の確認が必要な契約もあります。契約締結時の担当者が異動や退職で変更になった際、期限管理の引き継ぎが適切に行われてないケースもあります。

このようにさまざまな要因が重なり合って契約書管理がうまくいっていないのです。

契約の種類により管理部署がバラバラだから

企業の規模が大きいと、契約の種類によって管理部署が異なるケースもあります。例えば人事関連の契約は人事部、取引先との契約は営業部、不動産契約は総務部というように、契約の種類によって管理部署が異なることも珍しくありません。

しかし、契約書の管理が部署ごとに分散してしまうことで契約書管理の難易度が高くなってしまいます。

もし、それぞれの部署が独自の方法で管理を行っているのなら、さらに統合的な契約書管理は複雑になってしまうでしょう。
それでも部署間での連携がスムーズだと管理もできるかもしれませんが、コミュニケーションが適切に取れず必要な情報が必要な時に共有されなければ、契約書管理はうまくできません。

アクセス権限の管理が難しいから

アクセス権限の管理の難しさも、契約書管理の課題の1つです。

例えば契約書の種類や重要度によって、閲覧できる範囲は変える必要があります。M&A関連の契約書なら経営層のみ、取引基本契約は関連部署全体で共有、個別発注書は担当者のみ、といった具合です。この権限設定の仕分けと運用が煩雑になりがちなのです。

また、人事異動があると契約書へのアクセス権限の見直しが漏れてしまうことがあります。この課題については、組織の規模が大きくなるほど複雑化する傾向にあります。これらの問題を解決するためには、システムの導入や運用ルールの整備など、組織的な取り組みが必要となるでしょう。

適切な契約書管理ができない場合に発生するリスク

契約書管理が適切でない場合、さまざまな問題を引き起こす可能性が高まります。

具体的には以下のリスクが生じます。

  • 法令違反によるペナルティ
  • 経済的リスク
  • 情報漏洩
  • 業務の非効率化

まずは起こり得る問題について認識し、そして各問題に対処する体制を整えるようにしましょう。

法令違反によるペナルティ

契約書管理の不備が、「法令違反」という重大なリスクをもたらします。商法や会社法では、契約書を含む重要書類の保管期間が定められており、株式会社の場合は10年間保存しないといけません。

また、法人税法においても、取引に関する帳簿書類の7年間の保存が求められています。契約書の紛失や不適切な管理により税務調査への対応ができない場合、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。これらの各種法令に違反することで行政処分を受けるリスクもあるため十分注意しないといけません。

経済的リスク

契約書管理の不備が原因で経済的な損失を被るリスクもあります。典型的なのは、契約の更新期限管理に関するミスで発生する損失です。契約更新をしないまま放置してしまい、取引継続の機会を失うケース。より有利な条件での契約更新の機会を逃してしまうケースなどもあります。

また、組織が大きくなるほど重複契約の問題も起こりやすくなってしまいます。契約情報を全社的に共有できていないと余計なコストも発生してしまいますし、十分注意しないといけません。

情報漏洩

契約書には機密性の高い情報が含まれることも多く、その管理の不備は深刻な情報漏洩の問題をもたらします。特に問題となるのは「退職者によるデータの持ち出し」です。

アクセス権限の管理が不適切な場合、退職した従業員が契約情報にアクセスし続けることが可能となり、競合他社への情報流出につながる可能性があります。

また、不適切な方法による情報共有も大きな問題です。契約書の電子データを適切な管理システムなしでメール添付などにより共有することは、意図しない第三者への情報流出リスクを高めます。

さらに、物理的な契約書の保管が適切でない場合も、紛失や盗難のリスクが増大します。紙の契約書は閲覧時の持ち出しやファイリング時に破損・紛失の危険が伴うため注意しないといけません。

業務の非効率化

契約書管理の不備は「日々の業務の効率を低下させる」という影響ももたらします。必要な契約書を探すのに多大な時間を要することは、業務効率を著しく低下させるでしょう。急を要する場面で契約確認が遅れてしまうと、取引機会の損失にもつながりかねません。

また、同じような契約書を何度も作成したり、既存の契約書の内容を確認できずに新規に作成したりする無駄な作業も発生します。

以上で説明したように、契約書管理の不備はコンプライアンス・情報セキュリティ・業務効率など、企業活動のさまざまな側面からリスクをもたらすといえるでしょう。これらのリスクを最小化するためには、適切な管理体制の構築が不可欠です。

契約書管理を効率化する方法

契約書管理を効率的に遂行する方法はいくつか考えられます。有効なアプローチをいくつか紹介していきます。

契約書管理システムの導入

契約書管理の効率化において最も効果的な方法が、専用の管理システムの導入です。

契約書の保管から期限管理、アクセス権限の設定まで包括的な機能を提供する契約書管理システムを導入すると、業務効率は大きく向上することでしょう。

クラウド型のツールなら場所を問わずアクセスが可能で、リモートワーク環境下でも効率的な運用が可能ですので業務効率の観点からは特におすすめといえます。

Excelなど管理ソフトによる台帳作成

専用システムの導入が難しい場合でも、ExcelやAccessなどの既存のソフトウェアを活用して契約書を管理することは可能です。

台帳となるファイルを作成し、契約の基本情報、期限情報、保管場所などを記録。ソフトで標準に搭載されている検索機能や並べ替え機能を駆使すればある程度管理機能を備えることができるでしょう。

ただし、この方法が適しているのはごく小規模の事業者、あるいは取り扱う契約書の数が極端に少ない事業者の場合です。「はじめExcelなどで管理をしていたものの、契約書管理業務が増えてきたため専用のシステムに移行したい」といったニーズのある方は、Excelなどの取り込みができるシステムを探すとよいでしょう。

契約書管理マニュアルの作成と運用

システムやツールの導入だけでなく、運用面での整備も重要です。

契約書管理マニュアルを作成し、組織として統一的な管理方法を定めることで担当者の属人的な管理を防ぎ、効率的な運用を実現することができるでしょう。

マニュアルには、契約書の保管方法、命名規則、更新時の手順、アクセス権限の設定基準など、具体的な実務手順を明記します。特に重要なのは、契約期限の管理方法や更新判断の基準、担当者が変更になった際の引き継ぎ手順です。これらを明確に定めることで、担当者の負担を軽減し、ミスを防ぐことができます。

このように、契約書管理の効率化を図る方法にもいろいろあります。契約書管理システムの導入、運用ルールの整備など複数のアプローチを組み合わせてよりよい体制を整えるようにしましょう。

契約書管理システムを選定するポイント

契約書管理の「できない」をなくすには、契約書管理システムの導入が効果的です。ただし導入するシステムの選定にあたっては、いくつか着目しておくべき大事なポイントがあります。

サポートが整っているか

システムの選定において、ベンダーのサポート体制の有無や内容はとても重要な要素です。導入時には既存の契約書データの移行、社内の運用ルールの整備など、多くの課題に直面するでしょう。この時、ベンダーから適切なサポートを受けられるかどうかが、スムーズな導入の鍵となります。

また、初期導入時の操作方法についてどれだけ手厚くサポートが受けられるかも要チェックです。システムの基本的な操作方法に加え、効率的な運用方法、トラブル発生時の対処方法なども含めて包括的な助言が受けられることが望ましいでしょう。

また、導入後の問い合わせ対応や、定期的なメンテナンス体制も確認しておきましょう。

紙の契約書の管理にも対応しているか

完全なペーパーレス化を実現できない企業も多く、紙の契約書と電子契約書が混在する環境は当面続くと考えられます。そのため、紙で契約書を受け取ることも想定した管理システムであることが望ましいでしょう。

具体的には、紙の契約書をスキャンしてデータ化する機能、原本の貸出・返却を記録する機能などに着目します。OCR機能を備え、スキャンした書面から自動的に重要情報を抽出できるシステムであれば、さらに効率的な運用が可能となります。

外部サービスと連携できるか

企業が導入する業務用のシステムは契約書管理システムに限りません。さまざまなツールを複合的に駆使して効率的な業務を遂行している企業も多いようです。

そこで重要になるのが「外部サービスとの連携」です。

一つ一つは効果的であっても、システム間をまたいで作業を行う際に面倒な作業が発生したのでは良くありません。例えば別のシステム内にあるデータをシームレスに契約書管理システムに移行できること、その反対に契約書管理システムから別システムにデータを移行できることも重要なポイントです。

契約書管理は「できる」へと変えられる

契約書管理の「できない」という状況は、適切な対策により「できる」状態へと改善することが可能です。重要なのは、自社の状況に合った管理方法を選択することです。

ごく小規模な組織であれば、Excelによる台帳管理と明確な運用ルールの整備から始めることができるかもしれません。しかし契約件数が多くなってくると徐々に効率の低さやできないことの多さを感じることになるでしょう。特に複数部署があり一元管理の必要性が高い企業なら専用の管理システムの導入を検討すべきです。

またシステム選定の際は、サポート体制や紙の契約書への対応、他システムとの連携などを十分に確認することが大事です。


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