- 更新日 : 2024年8月30日
残存条項とは?契約書チェック時の注意点や具体的な文例を紹介
残存条項とは、締結した契約の期間が満了した後も有効に存続する契約条項のことです。代表的な残存条項には、秘密保持の規定などがあります。本記事では残存条項の概要や設定の基準、記載例、代表的な残存条項、注意点などを解説します。
目次
残存条項(存続条項)とは
残存条項とは、締結した契約の期間が満了した後も、有効に存続する契約条項のことです。
原則として、契約条項は有効期間が満了すれば失効します。しかし、秘密保持など一部の条項については、契約終了後も有効性を維持しなければ、その役割を全うできません。
このような条項の有効性を契約終了後も維持するため、契約書において残存条項が定められます。
なお、残存条項の期間は、無期限とする場合と期限を定める場合があります。期限を定める場合は、契約終了後1~3年間程度とするのが一般的です。
契約書における残存条項の具体的な書き方
契約書に定める残存条項の例文を紹介します。
<残存条項をまとめて定める場合>
第〇条(残存条項)
本契約第〇条、第〇条……の規定は、本契約終了後もなお依然としてその効力を有するものとする。ただし、第〇条の規定については、本契約終了後1年間に限る。
<各条項において残存条項を定める場合>
第〇条(……)
- ……
- ……
- 本条の規定は、本契約終了後もなお依然としてその効力を有するものとする。
残存条項を設定する際の基準
契約終了後も効力を残存させるべき条項は、取引の内容に応じて個別に検討すべきですが、「秘密保持に関する規定」と「紛争に関する規定」については、すべての契約に共通して残存条項とすることが推奨されます。
秘密保持に関する規定は、契約終了をもって失効してしまうと、秘密保持の実効性が減殺されてしまいます。そのため、少なくとも契約終了後一定期間は存続させて、秘密保持の実効性を維持するべきです。
紛争に関する規定としては、損害賠償や準拠法・合意管轄に関する規定などが挙げられます。紛争は契約終了後(解除された場合を含む)に発生することが多いため、これらの規定は残存条項とすべきです。
その他にも、取引の内容に応じて契約終了後も効力を維持すべきと考えられる条項については、漏れなく残存条項に指定しましょう。
残存させる代表的な条項
残存条項とされるケースが多い条項としては、以下のものが挙げられます。
- 秘密保持義務
- 競業避止義務
- 知的財産権
- 損害賠償
- 準拠法・合意管轄
- 反社会的勢力の排除
秘密保持義務
秘密保持義務を定める規定は、契約終了後も秘密保持の実効性を維持するため、残存条項とするのが一般的です。
秘密保持義務の残存期間は無期限とすることも多いのですが、主に秘密情報の受領者となることが想定される当事者としては、残存期間を限定することが望ましいです。
競業避止義務
競業避止義務を定める規定の目的は、契約終了後の競業を規制することであるため、残存条項とする必要があります。
ただし、義務者の自由を不当に制約する内容の競業避止義務規定は、公序良俗違反(民法第90条)により無効となる可能性があります。競業避止義務の残存期間を長期間に設定しようとする場合は、特に注意が必要です。
知的財産権
知的財産権の帰属や、知的財産権に関する紛争の取り扱いなどを定めた条項は、残存条項とすべきです。知的財産権は契約終了後も存続するため、紛争解決の基準として機能させるためには残存条項とする必要があります。
知的財産権に関する条項の残存期間は、無期限とするのが一般的です。
損害賠償
損害賠償請求は契約終了後に行われるケースが多いため、損害賠償に関する規定は残存条項としておきましょう。
損害賠償規定の残存期間は、無期限とするのが一般的です。
準拠法・合意管轄
準拠法・合意管轄に関する規定は、紛争が契約終了後に発生するケースを想定して、残存条項とする必要があります。
準拠法・合意管轄の残存期間は、無期限とするのが一般的です。
反社会的勢力の排除
反社会的勢力の排除に関する規定(反社条項・暴排条項)の多くには、違反した場合の損害賠償に関する規定が設けられます。
この場合、損害賠償に関する規定に限って無期限の残存条項とし、その他の反社条項については残存条項としないケースが多いです。
残存条項を設定する際の注意点
契約書に残存条項を定める場合は、以下の点に注意しましょう。
残存させるべき条項を漏らさない
秘密保持に関する規定や紛争に関する規定を中心に、残存させるべき条項を漏れなく列挙しましょう。
自社が過大な義務を負わないようにする
秘密保持義務が無期限である、競業避止義務の期間が長すぎるなど、自社が過大な義務を負う内容については修正を求めましょう。
条項を正しく特定する
条文番号によって、残存条項を正しく特定しましょう。契約交渉の過程で条項を追加・削除した場合は、条ズレが生じることがあるので最終チェックが不可欠です。
残存条項を適切に定めて契約の実効性を確保
契約終了後も効力が維持される残存条項としては、秘密保持に関する規定や紛争に関する規定が挙げられます。
残存条項を適切に定めれば、契約の実効性を確保できます。取引の内容に応じて、残存条項に指定すべき条項を過不足なくリストアップしましょう。
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