- 作成日 : 2024年5月31日
著作財産権とは?認められる権利や契約時に注意すべき点を解説
著作権(著作財産権)とは、著作物を創作した著作者に認められる著作権法上の権利です。思考や感情を作品として表現したものを、さまざまな場面で保護しています。企業活動では著作権に関わることも多く、著作権についての正しい理解が必要です。
本記事では、著作権の概要を説明し、権利の種類について具体例と合わせて解説します。
目次
著作権(著作財産権)とは
著作権(著作財産権)とは、著作物を保護する権利です。著作物とは、思想または感情を創作的に表現したものを指します。著作権法で規定されている権利は複数あり、それらを総称して著作権と呼んでいます。
著作権は創作と同時に発生する権利で、権利の発生のために何らかの手続きをする必要はありません。著作権を持つ著作者は著作物を独占的に利用でき、第三者が無断で利用していれば、それを排除できます。
著作権の主な目的は、著作者の権利保護を図るとともに、著作物が正しく利用されることを目指し、文化の発展に寄与することです。
著作権は著作物が創作された時点で自動的に発生し、原則として著作者の死後70年間は保護されます。
著作権法については、以下の記事で詳しく解説しています。
著作権(著作財産権)と著作人格権の違い
著作権は、財産権としての著作権と著作者人格権の2つに分けられます。単に著作権というときは、財産権としての著作権を指すのが一般的です。
財産権としての著作権は著作者の財産的な利益を保護するのに対し、著作者人格権は著作者が作品に対して持つ名誉権などの人格的利益を保護します。公表権や氏名表示権、同一性保持権で構成されています。
著作物の利用で著作者の名誉や社会的な評価を傷つける行為がある場合、著作者人格権の侵害になる可能性があるため、利用する際は注意が必要です。
著作者人格権については、次の記事が参考になります。
著作権(著作財産権)の種類
著作権(著作財産権)には、次の権利が含まれます。
権利の名称 | 著作物に関する権利 |
---|---|
複製権 | 印刷、写真、複写などの方法で再製する権利 |
上演権・演奏権 | 著作物を公に上演・演奏する権利 |
上映権 | 公にスクリーンやディスプレイに映写する権利 |
公衆送信権・公の伝達権 | インターネットなどを通じ、公に送信する権利 |
口述権 | 公に口述する(読み聞かせる)権利 |
展示権 | 美術の著作物・未発行の著作物を、オリジナルによって公に展示する権利 |
頒布権 | 映画の著作物を複製物によって頒布する権利 |
譲渡権 | 映画以外の著作物の原作品または複製物を譲渡する権利 |
貸与権 | 映画以外の著作物のコピーを貸与する権利 |
翻訳権・翻案権など | 翻訳・編曲・脚色など、二次的著作物を創作する権利 |
二次的著作物の利用権 | 著作物をもとに創作された二次的著作物について、原著作者が保有する権利 |
それぞれの権利について、さらに詳しくみていきましょう。
複製権
複製権は、著作物のコピーを作る権利です。方法は問わず、印刷や複写、録音、録画など、幅広く対象になります。パソコンのハードディスクへのダウンロードや、手書きの複製も該当します。
ただし、複製権には例外規定が設けられており、個人的に家庭などの限られた場所で使用する場合は私的使用の複製にあたり、著作権侵害にはなりません。このほか、自分の著作物に他人の著作物を引用したり、学校などの教育機関でコピーしたりする場合も、条件に該当すれば許容される場合があります。
上演権・演奏権
上演権・演奏権は、著作物を公に上演・演奏する権利です。上演とは脚本や漫画の原作を舞台化することが挙げられます。演奏は、楽曲をライブハウスやコンサートで演奏したり、歌ったりするような場合です。また、CDやDVDなどの録音物・録画物から音楽や演劇等を再生することも、上演権・演奏権に含まれます。
そのため、飲食店で市販の音楽CDを流したり、有料のイベントで楽曲を演奏したりする場合、著作者の許可を得ていなければ著作権侵害になる可能性があるでしょう。
ただし、営利を目的とせず、入場料が無料で、出演者に金銭などの報酬が支払われない場合には例外的に上演・演奏が許されています。
上映権
上映権とは、著作物を公に上映する権利です。映写機などの機器を使って公衆の前で上映することなどが挙げられます。例えば、著作物である資料をプロジェクターで映したり、市販のDVDをカフェなどで流したりすることは、上映権の侵害になる可能性があるでしょう。
上映権も上演権・演奏権と同じく、非営利・入場料無料・出演者の報酬なしの場合は例外的に著作物の利用が可能です。
公衆送信権・公の伝達権
公衆送信権とは、放送、有線放送、インターネットを通じて著作物を公に送信する権利です。公衆向けであれば、無線・有線を問わず、あらゆる送信形態が対象となります。また、インターネットでホームページ、ブログなどに著作物(画像や動画など)をアップロードする「送信可能化」も公衆送信権に含まれます。
公の伝達権は、公衆送信される著作物を、テレビなどの受信装置を使って公衆に見せたり、聞かせたりする権利です。店舗でテレビの映像を流す行為が該当します。ただし、営利を目的とせず、聴衆または観衆から料金を受けとらない場合や、通常の家庭用受信装置を用いる場合は権利侵害にあたりません。
例えば、飲食店の店内に家庭用のテレビ受信装置を置いて番組を流すことは問題ありません。しかし、スポーツバーなどでスポーツ番組が店内で放送されていることを宣伝し、大型スクリーンで上映するといったケースでは、著作権者の許可が必要です。
口述権
口述権とは、言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利です。言語の著作物で口述権が問題となるのは、小説や詩、論文などです。また、口述の録音物を再生することも含まれます。
一例として、詩や小説をイベントで朗読することが挙げられます。口述権も、非営利・入場料無料・出演者の報酬なしの場合は著作権侵害に該当しません。
展示権
展示権とは、「美術の著作物と未発行の写真の著作物の原作品」を対象とした、公に展示する権利です。
美術品(絵画や彫刻)は創作された作品そのものを指し、写真はプリントアウトした未発表の作品が原作品となります。
ただし、美術品や写真の原作品を購入などで譲り受けた所有者は、これらの著作物を公に展示できるという例外規定があります。著作物の所有者の同意を得た場合も同様です。
頒布権
頒布権とは、映画の著作物の複製物を頒布する権利です。映画の著作物に限り、「譲渡」と「貸与」の両方を対象とする頒布権が設けられています。一例として、映画のブルーレイディスクを販売する行為が該当します。
特定少数への譲渡・貸与でも、公衆向けの上映を目的として行われる場合には権利が及び、許可のない譲渡・貸与はできません。
このあとに説明する「譲渡権」では、一度適法に譲渡されたものについては譲渡権が消尽します。しかし、頒布権の場合は、適法に譲渡されたあとの再譲渡にも権利が及ぶことに注意しなければなりません。
譲渡権
譲渡権とは、映画以外の著作物そのものと著作物を所有する権利の両者を移転する権利です。例えば、CDや本などの著作物を販売するといった行為が該当します。譲渡権侵害となるのは、他人の著作物を公衆に譲渡する場合です。家族や友人などに譲渡しても譲渡権侵害にはなりません。
また、一度適法に譲渡されたものについては譲渡権が消尽します。例えば、中古のCDや漫画本などを販売することは譲渡権侵害にあたらず、適法に譲渡できます。
貸与権
貸与権とは、映画以外の著作物の所有権を著作者に残したまま、著作物を貸与する権利です。音楽CDレンタル業の発達に伴い、これらを対象とする目的で設けられた権利です。音楽CDや映画のDVDなどをレンタルする行為が該当します。
なお、非営利・無料の貸与には例外規定があり、非営利・無料で貸出しをしていれば、著作権の許諾は不要です。図書館などで書籍等を貸し出す貸与については、権利侵害にあたりません。
翻訳権・翻案権など
翻訳権や翻案権とは、もとの著作物(原作)を翻訳・編曲・変形・脚色・映画化などにより、二次的著作物を創作する権利です。
例えば、小説や漫画の映画化、英語の著作物を日本語に翻訳するといった行為が該当します。これらの行為は著作権者以外が許可なく行うことはできず、二次的著作物を創作する場合は原作の著作者に了解を得なければなりません。
二次的著作物の利用権
二次的著作物の利用権とは、原著作物をもとに創作された二次的著作物につき、原著作者が持つ権利です。例えば、A氏が創作した作品をその承諾を得てB氏が翻訳し、 この翻訳物(二次的著作物)をC氏が複製する場合、翻訳物の著作者はB氏であり、C氏が複製する際はB氏の許諾が必要です。
一方、原作者であるA氏は原著作者として二次的著作物の利用に関する権利を持つため、C氏はA氏の了解も得なければなりません。
契約時に 著作権(著作財産権)について気をつけるべき点
ビジネスでは、多くの場面で著作権に関わります。例えば、会社のロゴデザインやイラストの制作、システムの開発などを委託する場合、著作権に関する契約が必要です。著作権に関わる契約書を作ることは、著作物の利用に関する権利・義務を明確化し、トラブルを予防するために欠かせません。
また、自社が生み出したもの以外の著作物を利用する際は、著作権法によって保護されているものかどうかをチェックし、保護されている場合は著作権者を調べて許諾を得る必要があります。
著作権(著作財産権)について理解を深めよう
著作権(著作財産権)は、著作物を創作した著作者に認められる著作権法上の権利です。著作権法では11の権利について規定され、さまざまな場面で著作権者の権利が守られています。
取引や契約の場面でも著作権が問題になることは多く、自社が創出したもの以外を利用したり、創作を委託したりする際は、関わる著作権について慎重に検討しましょう。e-Gov法令検索などで著作権法もチェックしながら、著作権について理解を深めてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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