- 更新日 : 2022年3月30日
利用規約とは?作成にあたっての留意点を解説!

Webやアプリなどでサービスを提供する際、サービス利用開始前に利用規約を画面に表示して利用者に同意を求めるのが一般的です。利用規約は、サービス内容に関するサービス提供者の権利義務や、サービスを利用するにあたって利用者が遵守しなければならない内容などを定めたものです。今回は利用規約の作成方法、利用規約が無効になるケース、利用規約の必須事項など利用規約作成にあたっての留意点について解説します。
目次
利用規約とは?
利用規約とは、サービス提供者が、サービス内容に関するサービス提供者の権利義務や、サービス利用者がサービスを利用するうえで遵守しなければならないと考える内容をまとめたものです。利用規約は、不特定多数の利用者に対して同一内容のサービスを提供する場合に、個別に契約書を作成し契約を締結すると作業が煩雑になるため、利用規約として画一化してサービス提供者と利用者間の契約関係を規律するために作成されます。
2020年4月施行の民法の改正によって定型約款に関するルールが整備されたため、利用規約についても基本的に定款約款のルールに沿った運用が必要になります。改正民法の施行日前に制定された利用規約についても、定型約款に関する新たなルールが適用されることとなっているため、場合によっては改定が必要になることがあります。
ここからは利用規約はなぜ必要なのか、利用規約に強制力はあるのか、について説明します。
利用規約はなぜ必要なのか?
法律上、サービス提供者に利用規約を作成する義務はありません。ただし、利用規約を作成しなければ、サービス提供者は利用者に対して、サービス提供者・利用者間での権利義務関係や利用者に遵守してもらいたいと考える内容を個別に交渉しなければならなくなります。提供するサービスの具体的な内容、サービス利用方法や解約の方法、利用停止の条件などを契約として明確にしておかないと、後でトラブルになる可能性があるからです。利用規約として明文化しておくことで、トラブルの多くは回避できます。
特に不特定多数の利用者を対象にサービスを提供する場合、利用者ごとに個別で契約交渉を行うのは現実的ではありません。利用規約はサービス提供者が作成するものですが、利用者にとってもサービス内容を知る上で重要なものといえます。したがって、利用規約を定めておく必要性は極めて高いといえます。
利用規約を作成せず個別契約も締結しなければ、民法の規定にしたがってサービス提供者・利用者間の権利義務は処理されることになります。
利用規約に拘束力はあるのか?
利用規約は利用者との交渉過程を経て作成されるものではなく、サービスを提供する側が一方的に作成するものです。サービスを提供する側が一方的に作成する利用規約にも、拘束力はあるのでしょうか。
2020年4月施行の民法改正によって、定型約款についての規定が追加されました。
①不特定多数の者を相手方として行う取引
②取引の内容の全部または一部が画一的であることが双方にとって合理的なものであること
この条件を満たす取引は「定型取引」といわれ、定型取引において契約の内容とすることを目的にサービス提供者が準備した条項の総体は「定型約款」に該当し、サービス利用開始前に利用規約を画面に表示して利用者の同意を得ることで、利用者が定型約款の個別の条項を認識していなくても、個別の条項に合意したものとみなされます(「みなし合意」)。ただし、利用者の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、かつ、信義則に反して利用者の利益を一方的に害すると認められるものについては「不当条項」として、利用者が合意をしなかったものとみなされるので、不当条項に強制力はありません。たとえば、利用者に予見し難い義務を加重する条項が置かれている場合には、不意打ち的な不当条項として利用者の合意があったとは認められません。
利用規約の作成時の留意点について
利用規約を作成する場合、どのような項目を記載する必要があるのでしょうか。利用規約の雛形は参考になりますが、記載すべき内容はサービスによって大きく異なるため、多くの部分はオリジナルで作成することになります。
そこで、利用規約はWeb上で他社が公開しているものもあるので、他社が提供している類似サービスに関する利用規約も見てみるとよいでしょう。具体的なサービスに即した留意点を把握できる可能性があります。ただし、同業でもサービス内容は異なるため、あくまで参考にとどめ、サービスを通じて会社が何をしたいのか、また、利用者にどのようなことを遵守してもらいたいのかを考えていく必要があります。
以下で、利用規約を作成する際の留意点を詳しく見ていきましょう。
① 利用規約への同意
定型約款に該当する利用規約の場合には、サービス提供前にWebやアプリ上で利用規約を契約の内容とする旨を記載したページを表示することで、利用者が個別の条項を認識していなくても、利用者は利用規約の個別条項に合意をしたものとみなされ個別条項に拘束されることになります。しかし、利用者から「利用規約に同意していない」と主張されてトラブルになることが想定されるため、サービス利用の条件として利用規約全文を読み内容に同意をすることを定めたうえで、Webやアプリ上でも利用規約に同意しないとサービスが利用できないように設計するべきです。利用者から明示的な同意を取得することで、トラブルが発生した場合でもスムーズに解決できる可能性が高まるでしょう。
➁ 使用する用語に関する定義
利用規約で使用される用語が複数の意味に解釈できる場合は、利用規約記載の条項について解釈が異なってくる可能性があります。用語の定義が曖昧であったためにトラブルが発生しては、利用規約を作成する意味がありません。そのため、用語の定義は必ず条項として規定しておきましょう。
③ サービス内容の詳細と範囲
利用規約には、必ずサービスの内容を記載する必要があります。利用者から「十分なサービスを受けられなかった」といったクレームを受けたとしても、利用規約にサービス内容やその範囲を明記し、利用規約のとおりにサービスを提供している場合にはクレームに対抗できます。サービス内容を抽象的に規定すると、利用者が求めるサービスが提供されるサービス内容に含まれるかどうか判断できずクレームを受けた場合に対抗できなくなるため、できるだけ具体的に規定しましょう。
④ 利用規約が変わる際の手続き方法
世の中の状況が変わった場合や法律が変わった場合、サービス内容に変更があった場合は、利用規約を変更しなければならないことがあります。利用規約が変更された場合には改めて同意を得るという方法でも構いませんが、利用者からの同意取得が困難な場合、定型約款に該当する利用規約については定型約款の変更について定める民法548条の4の要件を満たす必要があります。
(定型約款の変更)
民法548条の4
定型約款準備者は、次に掲げる場合には、定型約款の変更をすることにより、変更後の定型約款の条項について合意があったものとみなし、個別に相手方と合意をすることなく契約の内容を変更することができる。
一 定型約款の変更が、相手方の一般の利益に適合するとき。
二 定型約款の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、この条の規定により定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。
引用:民法|e-Gov法令検索
⑤ 料金と支払い方法
有料サービスの場合は、料金と支払い方法を明確に定めておく必要があります。最近流行しているサブスクリプションの場合は定期的に支払いが発生するため、口座振替やクレジットカードによる支払いができるかどうかも定めておくとよいでしょう。
⑥ サービス利用に関する権利の帰属先
自社でサービスを提供する場合、提供サービスに関する画像などが利用者に無使用されるおそれもあるため、コンテンツなどに関する知的財産権が自社に帰属する旨及びコンテンツの利用者による無断使用を禁止する旨を記載しておく必要があります。
利用者参加型サービスの場合は、利用者が投稿またはアップロードしたデータの権利の帰属先を定めておく必要があります。利用者に権利を残したままサービス提供者に利用許諾を与える場合と、利用者からサービス提供者に権利を譲渡する場合があります。いずれにせよ、その内容を利用規約に定めておきましょう。
⑦ 自社サービスの利用における禁止事項
サービスを悪用した詐欺行為などの犯罪行為をされないようにするため、利用規約に法令に違反する行為を禁止することを定めておきましょう。また、画像を盗用するなどサービス提供者や他の利用者の著作権を侵害するような行為を禁止することも定めておく必要があります。
投稿型のサービスの場合は他人を誹謗中傷する、勧誘行為をするといった、他の利用者の迷惑となる行為も禁止しましょう。
⑧ 利用規約に違反した場合のペナルティ
利用規約を定めても、それを守ってもらえなければ意味がありません。利用規約の実効性を担保するためにも、「利用規約に違反した場合にはペナルティを科す」としておくとよいでしょう。
具体的には、「利用規約に違反した場合はサービスの提供を停止する(強制退会)」という措置が考えられます。ただし、場合によっては、一方的に強制退会させるのではなく、まずは利用規約に違反していることを利用者に通知することをおすすめします。利用者が、利用規約に違反していることに気づいていないケースもあるからです。通知しても違反状態が是正されなかったり、違反行為を繰り返す場合には、強制退会などの措置を取るとよいでしょう。
⑨ サービス提供の停止や終了について
サービスの提供を事業として行っている以上、採算が取れなくなった場合はサービスの提供を停止、または終了せざるを得ません。そのような場合を想定して、利用規約にはサービスの提供を停止または終了する場合がある旨を定めておくとよいでしょう。
サービスの提供を停止または終了する場合は、たとえば「2ヵ月以上前に通知する」などと規定したうえで、誠意ある対応を行うことをおすすめします。予告なく一方的にサービスを停止・終了すると、利用者に不利益をもたらすおそれがあり、トラブルにつながるおそれがあるからです。
⑩ 合意管轄裁判所
合意管轄裁判所には法律上さまざまなルールがありますが、利用規約で合意管轄管轄裁判所を決めておくことができます。利用規約はサービス提供者が作成するため、サービス提供者の本店所在地を専属的合意管轄裁判所として規定するのが一般的です。たとえば、東京に本社がある会社の場合には、合意管轄裁判所を「東京地方裁判所」に定めるということです。
利用規約が無効になるケースはある?
利用規約はサービス提供者が作成するものなので、どうしても自社にとって有利な内容になりがちです。しかし、利用者相手方の権利を制限し、または義務を加重する条項であって、かつ、信義則に反して利用者の利益を一方的に害すると認められるものについては「不当条項」として、利用者が合意をしなかったものとみなされます。また、利用者の利益を不当に害する条項は、消費者契約法で無効とされる可能性があります。
利用者の利益を不当に害する契約条項とは、サービス提供者の損害賠償責任を全部免責する条項や、利用者に高額なキャンセル料を課す条項、利用者の解除権を放棄させる条項などです。これらは利用者の利益を侵害しているとみなされるため、無効となります。
利用規約を作成する際には、記載必須の項目を押さえておこう
今回は利用規約の概要や、利用規約を作成する場合の留意点などについて解説しました。最近はWebやアプリでさまざまなサービスが提供されるようになり、それに伴って利用規約の内容も多岐にわたるようになりました。
利用規約はサービスの内容に即して作成する必要があるため、利用規約を作成するうえでの基本的な留意点を押さえた上で、提供するサービスに合った内容にしなければなりません。
この記事で紹介した利用規約の概要と留意点を参考に、サービスに応じた内容を加味して利用規約を作成してみてください。ただし、定型約款に該当する利用規約の場合には、利用者の同意を得ずに利用規約を変更したい場合には、民法548条の4に定める内容の変更しかできないため、必要に応じて弁護士等専門家の意見を聞きながら利用規約を作成することをお薦めします。
よくある質問
利用規約とは何ですか?
利用規約とは、サービス提供者が、サービス内容に関するサービス提供者の権利義務や、サービス利用者がサービスを利用するうえで遵守しなければならないと考える内容をまとめたものです。詳しくはこちらをご覧ください。
利用規約はなぜ必要なのですか?
利用規約でサービスの利用方法や解約の方法、利用停止の条件などを明確にしておかないと、後で利用者とのトラブルになる可能性があるからです。利用規約を作成することで、サービスに関する利用者とのトラブルを回避する可能性が高まります。詳しくはこちらをご覧ください。
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