• 作成日 : 2023年10月27日

信義則(信義誠実の原則)とは?定義や具体例、民法の判例について解説

信義則(信義誠実の原則)とは?定義や具体例、民法の判例について解説

信義則とは「信義誠実の原則」のことで、お互いに相手の信頼を裏切らないように行動しましょう、というルールです。用語自体、難しいという印象を抱くかもしれませんが、ビジネスを行う上、あるいは日常生活を送る上では信義則の考え方は非常に重要となります。

この記事では信義則の意味や重要性、違反した場合に負い得る代償についてご説明します。

信義則(信義誠実の原則)とは?

信義則は「信義誠実の原則」を略した言葉です。信義とは「約束を守り自分の務めを果たすこと」、誠実とは「まじめで真心があること」という意味の言葉です。つまり、信義則とは、「お互いに相手方の信頼を裏切らないように行動しましょう」というルールのことを指します。

信義則については民法第1条2項に定められており、我々はこれに従って日々の生活や業務に向き合う必要があります。

(基本原則)

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

引用:民法|e-Gov法令検索

また、民事訴訟法第2条にも信義則について規定されています。

(裁判所及び当事者の責務)

第二条 裁判所は、民事訴訟が公正かつ迅速に行われるように努め、当事者は、信義に従い誠実に民事訴訟を追行しなければならない。

引用:民事訴訟法|e-Gov法令検索

当事者が裁判を起こす際、あるいは裁判所が事件を審議する際には、信義則に基づいて進める必要があります。

信義則の文章・例文

日常生活あるいは日頃業務を行うにあたって信義則(信義誠実の原則)という言葉を耳にする機会はあまりないかもしれません。ここでは信義則という言葉がどのように使われるのか、例文を見ていきましょう。

  • ビジネスは信義誠実の原則に従って行わなければならない
  • 我が社は信義則に基づいて事業を行うことを約束します
  • あなたの会社は信義則を守れていますか?
  • この企業は信義誠実の原則に反している
  • 信義則にのっとって業務を行っています
  • 信義誠実の原則に反しているため告訴を行いました

企業や人が自分の姿勢を表明するとき、あるいは自分以外の企業や人の姿勢を問うときに、信義則あるいは信義誠実の原則という言葉が使われるケースが一般的です。

信義則がビジネスにおいて重要な理由

私たちは法律に基づいて日常生活を送り、日々業務を行っています。また、その行いが正しいかどうかは過去の裁判などの前例に基づいて判断することも可能です。その一方で、世の中には法律に規定されていない事象、判例では判断できない事象も数多く発生します。

法律や判例がないからと、企業や人が好き勝手に振る舞えば、不利益を被る企業や人が出て、社会の秩序が失われかねません。そこで、誰もが、いかなるときにも「倫理的に正しい行い、誠実な行いをしましょう」ということで、信義則が定められました。

また、「人を裏切らない」「正しい行動をする」という考え方や姿勢は、人と人とが行うビジネスでは非常に重要です。誠実に、まじめにビジネスを行えば、顧客からの信頼も得られ、売上や利益の向上にもつながります。

信義則が適用された判例

裁判では法律や過去の判例はもちろん、信義則に基づいて総合的な判断がなされます。ここからは過去の事例をいくつか見ていきましょう。

契約の締結時に信義則上の説明義務を満たさなかったと判断された事例

金融機関Aは債務超過状態でした。監督官庁から破綻認定を受ける危険性があったにもかかわらず、複数の企業、個人(以下、顧客Bらとする)に対して、その旨を説明しないまま融資するよう勧誘し、顧客Bらは金融機関Aに対して出資を行いました。しかし、金融機関Aは後に経営が破綻し、顧客Bらは出資の持ち分の払い戻しを受けられず、顧客Bらは金融機関Aに対して出資相当額と遅延損害金を求め訴訟を起こしました。

裁判所は、①金融機関Aが顧客Bらに経営破綻の危険があることを説明しないまま出資を勧誘したことは信義則上の説明義務に反する。②説明義務は本件出資契約締結前の段階に生じたものであるが、当事者が契約関係に入った以上は、契約上の信義則は契約締結前の段階までさかのぼるべきであり、出資契約上の付随した義務違反としてAによる債務不履行が成立すると判断しました。

17年前に引き渡した物件に関して不動産の売主、仲介業者に対して説明義務違反があったとした事例

買主Aは宅建業者Bから仲介会社Cを通して中古住宅を購入しました。しかし、その当該物件は接道義務を満たしておらず、買主Aが引き渡し15年後を売却しようとしたところ、「敷地が接道義務を満たしておらず、建て替えができないので、買い取りができない」と不動産業者から買い取りを断られてしまいました。

裁判所は、敷地の接道関係は建て替えの可否や転売の可否、条件に大きく影響しました。さらに、不動産取引を生業とする宅建業者Bと仲介会社Cは、本件の売買契約の付随義務として、本件の接道状況に関して買主Aに説明すべきであったとして、引き渡しをした。17年後に宅建業者Bと、不法行為があった仲介業者Cに対し、損害賠償の支払いを命じました。

一方的に商品を受け取らず、売主に対して売買契約解除と損害賠償を求めた被告の訴えを退けた事例

売主Aは買主Bと大豆粕の取引に関する契約を締結し、売主Aが買主Bに倉庫で大豆粕の引き渡しを行う約束をしました。売主Aは倉庫にて引き渡しの準備を行っていましたが、買主Bは場所がわからないことを理由にして倉庫に行かなかった結果、取引ができず、売主Aに対して契約の解除と損害賠償を求め訴訟を起こしました。

裁判所は買主Bが売主Aに倉庫の場所を問い合わせるべきであったという信義則に基づき、買主Bの訴えを棄却。売主Aに対する代金の支払義務があると判断しました。

信義則に違反したらどうなる?

相手方から訴訟をされた、あるいは自身が訴訟を起こしたときに、自身に信義則に反する行いがあったと認められた場合は、裁判が不利になる可能性があります。

例えば、ある権利を行使した場合、行使者による信義則違反があれば、権利の行使が認められないことがあります。

また、信義則に反する行為をすることで、社会的な信用が失墜し、ビジネスに大きな悪影響が与えることもあるでしょう。

信義則の派生原則

冒頭のとおり、信義則とは「お互いの信頼を裏切らないようにする」という原則ですが、どういった行為が「信頼を裏切る行為」に当たるのかは曖昧です。そこで、信義則から派生した以下のような原則が用いられています。

クリーンハンズの原則

クリーンハンズとは「きれいな手」という意味です。法律違反やモラルに反した行動によって手に入れた権利は行使できない、権利を主張して法律の保護を受けるためには自身が潔白でなければならないという考え方です。

民法第708条「不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない」という不法原因給付はクリーンハンズの考え方がベースとなっています。

禁反言(きんはんげん)の原則

自分の言動と矛盾した言動をとってはならないという考え方です。「A」と言っていたのにまったく真逆の「B」という行動をする、「B」という行動をしたのにもかかわらず「A」という主張をするといった行為が該当します。

例えば、時効の後に一旦は債務を受け入れたのにもかかわらず、時効を理由に債務の消滅を求める行為などが挙げられます。

事情変更の原則

契約締結当時に社会情勢の変化など、予想できなかった事情が生じ契約の遂行が困難な状況に陥った場合に、契約内容の変更や解除できるという考え方です。

信義則(信義誠実の原則)は社会の基本ルールです

信義則は私たちが社会で生きていく上での基本的な考え方です。たとえ権利を主張しても、信義則に反する行為をした場合は、行使が認められない可能性があります。

普段生きていくなかで、あるいはビジネスを行うなかで、相手を裏切るようなことがないよう、今一度しっかりと気を引き締めましょう。


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