• 更新日 : 2024年12月3日

重要事項説明書の記載事項とは?確認用チェックリストと保管方法を解説

重要事項説明書とは、一般的に宅建業者が介在する不動産取引において作成される、契約上の重要事項が取りまとめられた文書のことです。土地の売買など重大な契約においてより的確な判断ができるように交付されるものですが、それでも見方に戸惑うこともあるでしょう。

そんな方に向けて、各記載事項の説明、チェックしておきたいポイントなどをまとめました。

重要事項説明書とは?

重要事項説明書とは、不動産の売買や賃貸における契約締結の判断を助けるため、特に重要な情報をまとめた文書のことです。

不動産に関しては取引金額も大きい傾向にあり、ちょっとした判断ミスでも大きな損失へとつながってしまいます。しかし専門的な知識を持ち合わせていないと調査は難しいですし、買主や借主が適切な判断を下すのも容易ではありません。

このような事情を踏まえ、宅地建物取引業法では宅建業者による媒介・代理が入る取引では宅建業者が重要事項について説明をするものと定めており、その際重要事項説明書が交付されます。

契約書との違い

重要事項説明書には契約内容も記載されますが、契約書と同じではありません。

まず、契約書は「売主と買主(または貸主と借主)双方の合意により作成する」ものであって、「契約内容を明確化して当事者間の権利義務を客観的にも示せるようにすることが目的」の文書です。

他方で重要事項説明書は「宅地建物取引士が作成する」ものであって、「買主(または借主)が契約に関する判断をするための基礎となる、重要な情報を提供することが目的」の文書です。

また、契約書は契約締結時に作成するものですが、重要事項説明書は契約締結前に作成されます。

重要事項説明書の記載事項

重要事項説明書に記載する情報は、大きく3つに分けることができます。

  1. 取引する宅地・建物に関する事項
  2. 取引条件に関する事項
  3. その他の重要事項

それぞれの記載事項に該当する重要な情報について以下で説明していきます。

取引する宅地・建物に関する事項

まずは取引する宅地や建物そのものに関する情報について紹介します。

取引の対象となる物件に直接関係する事項
不動産の表示土地の場合、所在や地番、地目、地積、土地の売買対象面積(登記簿面積によるのか、実測面積によるのか、についても)、そして権利の種類(所有権、借地権など)が記される。
建物の場合、所在や家屋番号、種類、構造、床面積(登記簿上のものか、現況か、についても)、そして建築時期なども記される。
売主の表示売主の氏名および住所。また、これらの情報が登記簿記載と同じなのか、異なるのか。

売買契約締結時において第三者による占有があるのかどうかについても記載。

法令に基づく制限不動産についてはその建築や利用に関して制限をかける法律も多数あり、都市計画法に基づき「市街化調整区域」と定められていたり、建築基準法に基づき建築できる建物の種類が制限されていたり、その他都市計画法や土地区画整理法に基づいて制限がかかっているケースもある。
私道に関する負担前面の道路が私道である時、使用制限について確認すべき。
ライフライン設備の状況飲用水、電気、ガス、排水に関する設備の状況、今後の整備予定やその時の負担金が記載される。
宅地造成・建物建築の工事完了時における形状・構造等物件が未完成または新規物件の時に記載される。
建物状況調査の結果の概要「建物状況調査」が行われた時に記載される。
書類の保存状況建物の建築、維持保全の状況などに関する各種書類について、保存の有無が記載される。
建築確認済証等について建築確認済証の発行年月日や番号が記載される。
住宅性能評価について住宅性能評価を受けた新築住宅に該当する場合に記載される。
災害等に係る情報アスベストの使用の有無や、当該宅地建物が造成宅地防災区域内・土砂災害警戒区域内・津波災害警戒区域内かどうか。また、水害ハザードマップにおける当該宅地建物の所在地について記載される。

また、マンション(区分所有建物)の場合であれば、共有部分の範囲や使用方法、専有部分の用途、修繕積立金や管理費に関する規定の定めなども記載されます。

取引条件に関する事項

次に、物件自体ではなく、当該物件に係る取引についての記載事項を紹介します。

取引条件に関する事項
売買代金等以外の金銭について売買代金以外にかかる金銭には、固定資産税や都市計画税の精算金、マンション管理費、修繕積立金の精算金、手付金などがある。

※第三者へ支払う仲介手数料や登記費用などは記載されない。

契約の解除について契約を締結したあとでも解除ができる条件について記載される。
損害賠償額の違約金等について契約違反等を理由に損害を被った場合の賠償額について記される。
預り金等の保全措置について宅建業者が受領する金銭について、保全措置を講じるかどうかについて記載。講じる場合は保全措置を講じる機関などを記す。
契約不適合責任について契約不適合責任の履行に関して、保険契約など何かしらの措置を講じるかどうかが記載。

また、借地権付建物や定期借地権付建物については契約不適合による修補請求についても記載される。

割賦販売について割賦販売の有無が記載される。

その他の重要事項

基本的には物件の情報や取引に関する情報が重要事項説明書に取りまとめられます。

ほかにも相手方に伝えるべき重要事項がある時は、トラブル防止の観点から記載がなされることもあります。例えば重大な事件に基づく心理的な瑕疵であったり、近隣の建築計画のことであったり、ほかにも隣地との紛争のことや町内会での取り決めなど、重要と考えられる事項も別途記載されます。

重要事項説明書の売買・賃借の記載事項の違い

うえに示した内容は不動産の“売買”を行う場合の重要事項説明書についてです。“賃貸”を行う場合でも多くの項目は共通していますが、相違点もあります。

例えば、建物の「住宅性能評価」に関しては建物の売買だと記載事項とされていますが、建物の賃貸であれば必須ではありません。その他にも土地や建物の賃貸において記載が不要とされる事項に以下のものが挙げられます。

  • 手付金等の保全措置の概要
  • ローンの斡旋に関する事項
  • 契約不適合責任の履行に関する事項
  • 割賦販売に係る事項

一方で、賃貸の場合に記載が必要となる事項もあります。

  • 宅地の賃貸では記載が必要な事項
    • 定期借地権について
    • 契約終了時の建物の取り壊しについて
  • 建物の賃貸では記載が必要な事項
    • 台所や浴室、便所等の整備状況について
    • 定期建物賃貸借である場合はその旨

また、「契約期間や契約更新」に関する事項や、敷金など契約終了時の金銭のことなども賃貸を行う時の重要事項説明書に記載されることとなります。

重要事項説明書の記載事項のチェックポイント

記載内容のチェック漏れなどが原因で後々トラブルに発展する可能性もありますので、特に以下の点についてはよく確認しておくようにしてください。

チェック項目意識するポイント
物件の確認登記簿謄本と照らし合わせて、地番、家屋番号、床面積などが正しいかを確認する。
売主の確認売主と登記記録上の名義人が同一人物であるかを確認。

売主と名義人が異なる場合は、売主が現在の所有者であることを確認。

抵当権の有無抵当権が設定されている場合、債権者、債権額、抵当権抹消の時期を確認。
法令上の制限市街化調整区域に該当していないか、都市計画道路による制限がないか、用途地域が定められていないか、などを確認。

それぞれ、開発行為の制限や増改築等の制限、建築できる建物の種別や用途が制限されることがある。

その他隣地との境界、私道の負担、水道や排水設備の状況などの確認や、付帯設備(エアコン、照明器具など)の有無や物件の現状(雨漏り、シロアリ被害など)を確認しておく。

ほかにも重要事項説明の内容について不明な点があるなら解消してから契約に進むことが大切です。

重要事項説明書が不要なケース

重要事項説明書はあらゆる不動産取引で交付されるものではありません。

例えば「仲介を入れず直接不動産の売買や賃貸借を行うケース」では宅建業者が介在していないため重要事項の説明も重要事項説明書もありません。

また、「宅建業者自身が不動産の賃貸人となるケース」でも重要事項説明書の交付義務は課されていません。交付が求められるのは宅建業者が取引を媒介したり代理したりする場面だからです。

重要事項説明書の保管、電子保管のポイント

不動産取引により重要事項説明書を受け取った時は、一定期間大事に保管します。書面で受け取った場合、保管方法に決まりはありませんが、不動産の賃貸借を行うなど税務関連書類として保管をする時は契約書とともに当該契約に係る最後の税務申告の期限から10年間は保存しておきましょう。

なお、重要事項説明書は電子データとして受け取ることもあります。従来は書面(紙)での交付が義務とされていたのですが、法改正により重要事項説明および重要事項説明書の交付についてデジタル化が認められています(電子契約に基づく重要事項説明は「IT重説」とも呼ばれる)。

電子データとして受け取った重要事項説明書は紙に出力せず、文書管理システムなどを使って保管しましょう。システム上で管理しておけば検索をかけてすぐに閲覧することができますし、アクセス権限を設定するなどして安全に保管し続けることもできます。

契約前に重要事項説明書の内容はよくチェックしておこう

重要事項説明書には多岐にわたる情報がまとめられています。情報量が多く、また専門的な内容でもあるため、すべてを確認していくのは大変な作業になるかもしれません。

それでも、取引金額の大きな不動産取引は安易に交わすべきではありません。特に重要と思われる事項がここに記載されていますので、当記事で解説した内容も参考にしながらチェックを進めていきましょう。

わからない点がある時はどんどん宅建業者に質問すべきです。宅建業者には説明義務がありますので、不安要素がなくなるまで確認していくことをおすすめします。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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