• 作成日 : 2022年1月26日

建設業法改正のポイントは?改正項目について解説!

建設業法は建設工事の適正な施工や発注者の保護など、建設業の健全な発展とともに公共の福祉への寄与を目的として1949年に制定されました。その後何度か改正されましたが、2020年の改正は建設業界の現状を反映した内容になっています。改正のポイントをしっかり理解しておきましょう。

建設業法改正とは?目的について

法律は社会情勢の変化に応じて改正されていくものですが、今回の建設業法改正は2020年に施行された「働き方改革関連法」や、近年頻繁に発生している自然災害に対応する人の必要性などを踏まえたものになっています。今回の改正の主な目的は以下の3つです。

目的① 働き方改革の促進

働き手にとって魅力的な職場を作り、人手不足を解消するための「働き方改革」は建設業界においても重要な課題で、主に中小企業に実施を求めています。今回は、適正な工期の確保や社会保険加入の義務化などを盛り込み、建設業で働く人たちに安心・安全な環境を整えるよう法改正を行っています。

目的➁ 現場の生産性向上

建設業界の高齢化と若者離れが顕著にみられる中、限りある人材を有効活用するためには生産性の向上が必須です。一定の条件を満たせば現場の管理技術者を兼任可能にしたり、主任技術者の設置義務を緩やかにしたりすることで、人手不足の解消や合理的な現場の人員配置を促すような改正が行われました。

目的③ 持続可能な事業環境の確保

建設業に携わる人材を確保し、事業を長く継続できるような環境を整えるために、経営業務管理責任者に関する規制を合理化しました。また、経営者の高齢化などで事業継続が難しくなった場合に事業譲渡や合併が円滑にできるよう、事前認可によって事業承継がよりスムーズにできるよう改正されました。

参考:建設業法、入契法の改正について|国土交通省

公布日・施行日について

上記の改正は、正式には「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律案」として令和元年6月12日に公布されました。施行期日は「公布の日から1年6カ月以内の政令で定める日」となっていますが、改正の該当条文によって多少前後します。以下の表を参考にしてください。

建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行日
建設業法の一部(目次及び見出しの改正)
公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(17条2項)
令和元(2019)年
9月1日
附則第一条ただし書に規定する規定以外令和2(2020)年
10月1日
附則第一条ただし書に規定する規定令和3(2021)年
4月1日

改正のポイントについて

改正の目的のところで触れた建設業改正の内容を、具体例とともに解説します。

著しく短い納期の禁止

通常必要とされる工期よりも短くすることで注文数を増やすと、労働者に長時間労働を強いることになります。今回の改正では著しく短い工期が設定された請負契約の締結を禁じ、工期の適正化を図っています。中央建設業審議会は「建設工事の適正な工期の確保をするための基準」を作成し、その実施を2020年7月31日に勧告しました。当該基準に違反した契約を結んだ業者には勧告や、悪質な場合は企業名の公表ができるようになっています。

工期に影響を及ぼす事項の情報提供義務

発注側は、契約締結前に工期などに影響を及ぼすとみられる情報を請負業者に提供する義務を負います。一方、請負業者は工期に関わると思われる詳細な情報を見積り時に発注者に提出する努力義務が課されます。
「工期等に影響を及ぼす事象」の例として、地盤沈下などの地中状態を起因とするものや騒音配慮など周辺の環境に関するものが挙げられます。
参考:e-GOV法令

請負契約書に「工事を施工しない日・時間帯」を追加

工事を施工しない日(休日)や時間帯を取り決めた場合、請負契約書にその旨を記載しなければならないという項目が追加されました。休日等の取り決め自体は義務ではありませんが、取り決めた場合は契約書上で明確にすることで効力が発生します。

社会保険の加入義務化

法人の事業所だけでなく、個人事業主であっても従業員が5名以上いれば社会保険に加入しなければなりません。また2020年(令和2年)10月1日からは、建設業許可を取得するための要件に社会保険への加入が加わりました。未加入の場合は新規建設業許可を取得できず、許可があっても更新時に未加入であれば更新ができなくなりました。

下請代金のうち「労務費相当分」の現金払い義務化

元請業者が受注した工事を下請業者に委託する際、下請代金のうち労務費に相当する分については現金で支払うことが義務付けられました。下請業者が労働者への支払いを滞らせることなく、して受注できる環境を整えることを目的としています。

認可行政庁が建材製造業者へ勧告可能

資材の欠陥により生じた施工不良について、これまで認可行政庁(国土交通大臣や都道府県知事)は建設業者にしか改善などの指示を出せなかったのですが、改正後は建設業者だけでなく、資材メーカーに対しても改善勧告や命令を出せるようになりました。建設業者の責任負担が軽くなり、これまでよりも安心してメーカーの資材を使えるようになりました。

下請業者の元請による違法行為の密告を保護

下請業者は元請業者よりも立場が弱く、不利な条件でも仕事を受注せざるを得ないケースも少なくありませんでした。改正建設業法は、元請業者が請負代金を不当に低くする、期間内に支払わないといった違法行為を下請業者が行政庁などに通報した場合に、下請業者を不利に扱うことを禁じる規定を設けました。

監理技術者の兼務可能

これまでは建設業において一定以上の規模の工事を請負う際には、現場に専任の管理技術者を配置することが義務付けられていました。現場の人手不足が問題となっていることなどから、改正後は各現場に「技師捕」を置けば1人の管理技術者が最大2つの現場を兼任することが認められるようになりました。

要件を満たせば下位業者は主任技術者の配置不要

下請業者は現場に「主任技術者」を配置する義務があり、工事が再下請となってもそれぞれの業者から主任技術者を送る必要がありました。つまり二次、三次と下請先が増えると、その分主任技術者の数が増えていたのです。再下請を繰り返しても「下請」工事であることに変わりはなく、無駄に主任技術者を増やす必要がないことから、改正法は「特定専門工事」については当事者が合意すれば、一時下請業者のみが主任技術者を配置し、二次以降の下請業者は配置しなくてよいことになりました。

経営業務管理責任者要件の変更

これまでは、「5年以上役員としての経営経験がある」といった要件を満たす者でなければ許可取得に不可欠な経営業務管理責任者になれませんでしたが、組織全体で管理体制の要件を満たせば許可を取得できるようになりました。しかし、中小企業や個人事業においては実質的な要件の緩和にはつながりにくいでしょう。

事業承継における合併・譲渡の仕組み変更

M&Aや合併、相続による事業承継はさまざまな業種で行われていますが、建設業においては事業承継の際に許可を新たに取り直す必要があり、その間は営業ができないためスムーズな事業承継ができないという問題がありました。今回の改正で、相続の場合は相続発生から30日以内に認可の申請をすることで営業継続が可能になり、相続以外では事前認可ができるようになりました。

建築業法改正に対応できるようポイントを押さえておこう

2020年の建設業法改正は、建設やインフラ整備など生活の基盤を担う建設業界を、より働き手が集まりやすい環境に整えることを主な目的としており、特に下請け、孫請けとなりやすい中小企業やそこで働く労働者を守るものとなっています。改正法に対応できるよう、改正のポイントをしっかりチェックしておきましょう。

よくある質問

建築業法の改正とは何ですか?

働き方改革の促進、現場の生産性向上、持続可能な事業環境の確保を目的の三本柱として、2020年に改正されました。詳しくはこちらをご覧ください。

建築業法の改正において重要なポイントを一つ挙げてください

下請業者の労働環境の改善や人手不足の解消を推進し、魅力的な職場作りを目指すための改正が目立ちます。詳しくはこちらをご覧ください。


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