- 更新日 : 2024年11月14日
電子契約のセキュリティリスクとは?改ざん対策やシステムの選び方を解説
電子契約には契約書の内容が改ざんされる、情報が漏洩するなどのリスクがあります。そのため、安全性を確保するために情報セキュリティを意識することが大切です。
本記事では、電子契約のセキュリティを高める方法を解説します。契約システムの選び方も紹介するため、今後電子契約の締結を検討している場合はぜひ参考にしてください。
電子契約のセキュリティリスク
電子契約に潜む主なセキュリティリスクは、以下のとおりです。
- 契約内容の改ざん
- 情報漏えい・なりすまし
- ファイルの破損
- サイバー攻撃・ウイルス感染
それぞれ解説します。
契約内容の改ざん
電子契約を締結する場合も、紙の場合と同様に契約内容を改ざんされるリスクが存在します。具体的には、「締結時にあらかじめ用意しておいたはずの内容と異なった文面になっている」「契約を締結したあとに盛り込んだ内容と異なるものに書き換えられる」などです。
改ざんがあると双方で異なった認識のもとで契約することになるため、後日トラブルにつながる可能性があります。
情報漏えい・なりすまし
電子契約には、不正アクセスにより契約書に記載された情報が漏洩するリスクも存在します。万が一情報が漏洩すると、社会的信用の失墜や金銭的損失につながりかねません。
また、なりすましが発生しうる点も電子契約が抱えるリスクです。契約内容を確認していないにもかかわらず、第三者に勝手に契約を締結される可能性があります。
ファイルの破損
電子契約を締結する場合、ファイルの破損リスクも把握しておかなければなりません。
ファイルの破損リスクとは、ファイルが消失したり破損したりすることにより、締結した契約の内容を確認できなくなることを指します。電子契約でファイルの破損が発生する主な要因は、使用しているデバイスの故障やヒューマンエラーなどです。
サイバー攻撃・ウイルス感染
電子契約を締結する以上、サイバー攻撃やウイルス感染のリスクもゼロにはできません。サイバー攻撃の被害にあうと、すでに説明した情報漏洩やファイルの破損にもつながります。
電子契約は紙で契約する場合と比べて契約書を持ち出しやすい分、サイバー攻撃やウイルス攻撃を通じて、より多くの人の目に晒される可能性があることを理解しておかなければなりません。
電子契約におけるセキュリティ要件とは?
電子契約そのものについては、法的な定義や成立要件はありません。ただし、電子契約による文書を証明力のある証拠とするためには、真正性や機密性を確保することが重要です。
紙の文書については、「本人またはその代理人の署名または押印があるときは、真正に成立したものと推定する」(民事訴訟法228条4項)として、署名・押印があることでその文書の証明力を与えることができます。
電子契約においては、電子署名及び認証業務に関する法律(以下、電子署名法)第2条、第3条により、以下の要件を満たす電子署名がなされた電子契約については、真正に成立したものと推定されます。
- 本人性(電磁記録の情報が、対象者の作成によるものであることを示す)
- 非改ざん性(電磁記録の情報が改変されていないか確認できるもの)
電子署名法2条の要件を満たす、つまり、必要な符号や物件を適正に管理して本人のみができる電子署名による場合だけが、真正に成立した電子文書として推定されます。そのためには、電子契約を締結するために利用する対象のサービスについて、他人が容易に同一のものを作成できないようになっていること(固有性の要件)が必要とされることが一般的です。
さらに、電子文書を保存する際は、民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律(e-文書法)などに従うことが求められます。
参考:デジタル庁 トラストを確保したDX推進サブワーキンググループ(第2回)資料5
なお、電子契約については以下の記事でくわしく解説しています。
電子契約のセキュリティを高める方法
電子契約のセキュリティを高めるための主な方法は、以下のとおりです。
- 複数の認証を用いたログイン
- パスワードの変更
- アクセス権限の設定
- タイムスタンプ付き電子署名
- 信頼性の高いストレージを使用
- ウイルス対策ソフトの導入
- セキュリティパッチの適用
- 従業員へのセキュリティ教育の実施
- セキュリティポリシーの定期的な見直し
ここから、各方法について詳しく解説します。
複数の認証を用いたログイン
複数の認証を用いてログインすることは、電子契約のセキュリティを高める方法のひとつです。以下の認証要素を組み合わせて電子契約のサービスにログインすることにより、本人性を確保してなりすましの被害などを防げます。
- 知識情報
- 所持情報
- 生体情報
知識情報はID・パスワードやPINコード、所持情報はスマートフォンを用いたSMS認証やアプリ認証、生体情報は指紋認証や顔認証などのことです。
パスワードの変更
対象サービスのパスワードを変更することも、セキュリティを高めるために必要な場合があります。とくにパスワードの漏洩が疑われる場合は、なりすましを防ぐために早急に他人に推測されにくいパスワードに変更することが必要です。
なお、以前は定期的なパスワード変更が推奨されていましたが、現在内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)では、「パスワードの定期変更は基本的に必要なし」との見解を示しています。なぜなら、定期的に変更することでパスワードが単純化したりワンパターン化したりする可能性があるためです。
アクセス権限の設定
アクセス権限の設定も、電子契約のセキュリティを向上させるために欠かせません。アクセス権限の設定とは、許可された人のみがファイルを閲覧したり、機能を利用したりできるようにすることです。
アクセス権限を信頼できる相手にのみ付与することにより、契約内容を改ざんされるリスクや情報が漏洩するリスクなどを軽減できます。
タイムスタンプ付き電子署名
電子署名に加えてタイムスタンプを活用することも、電子契約におけるセキュリティを高める方法のひとつとして挙げられます。
タイムスタンプとは、電子契約の締結日時などを記録する仕組みです。タイムスタンプを利用することで、ある時点において電子データが存在していたことやそれ以降改ざんされていないことを証明できます。
信頼性の高いストレージを使用
信頼性の高いクラウドストレージ(オンラインストレージ)を使用することも大切です。
信頼できない事業者が提供するストレージを利用した場合、電子契約のデータが消失したり、情報が外部に流出したりするリスクがあります。そのため、ストレージを選ぶ際は、各事業者がどのようなセキュリティ対策を施しているのかを十分に確認しておかなければなりません。
ウイルス対策ソフトの導入
電子契約に限らず、セキュリティ向上にはウイルス対策ソフトの導入が必須です。利用するパソコンにウイルス対策ソフトをインストールしておくことにより、サイバー攻撃やウイルス感染による被害を抑えられます。
なお、ウイルス対策ソフトを導入する際は、「動作が重くならないか」「価格は予算内か」「サポート体制は整っているか」などの点に注目しましょう。
セキュリティパッチの適用
電子契約のセキュリティを高めるために、セキュリティパッチを適用しましょう。
セキュリティパッチとは、OSやソフトウェアにセキュリティ上の欠陥が見つかった場合に、開発元が新たに提供する更新プログラムのことです。セキュリティパッチを適用することが、サイバー攻撃や情報漏洩といったリスクの軽減につながります。
従業員へのセキュリティ教育の実施
従業員に対してセキュリティ教育を実施することも、セキュリティを高めるために必要です。従業員のセキュリティに関する意識や知識が不足していると、ウイルス感染の被害にあったり、情報を漏洩させたりする可能性があります。
セキュリティに関するeラーニングの受講をうながす、定期的に集合型研修を実施するなどの方法で、従業員のセキュリティに対する意識を向上させましょう。
セキュリティポリシーの定期的な見直し
情報セキュリティポリシーの定期的な見直しも、電子契約のセキュリティを高める方法のひとつに挙げられます。
情報セキュリティポリシーとは、企業などで実施する情報セキュリティの方針や行動指針のことです。セキュリティポリシーの作成が、自社の情報をセキュリティの脅威から守ったり、従業員の意識を向上させたりすることにつながります。
作成後も定期的に見直すことで、新たな脅威の発生にも備えられるでしょう。
セキュリティに強い電子契約システムの選び方
セキュリティに強い電子契約システムを選ぶには、以下の点に注目するとよいでしょう。
- プライバシーマークを取得しているか
- データが暗号化して保存されているか
- 利用履歴のログが確認できるか
- データのバックアップ体制が整っているか
- 第三者機関による評価があるか
選び方のポイントをそれぞれ解説します。
プライバシーマークを取得しているか
セキュリティに強い電子契約システムを選ぶためには、プライバシーマークを取得しているか注目することがポイントです。
プライバシーマークとは、個人情報について適切な保護措置をとる体制を整えている事業者を評価し、マークを付与する制度を指します。プライバシーマークの取得有無に注目すれば、セキュリティへの意識が高い事業者を選べるでしょう。
なお、気になる事業者がプライバシーマークを取得しているかは、JIPDECのサイトで確認できます。
参考:日本情報経済社会推進協会(JIPDEC) プライバシーマーク付与事業者検索
データが暗号化して保存されているか
データが暗号化して保存されているかも、セキュリティに強い電子契約システムの選び方として挙げられます。データの暗号化とは、秘密鍵・公開鍵といった暗号鍵を用いて第三者からデータを解読されないようにする仕組みのことです。
電子契約には、暗号鍵による電子署名が使われます。セキュリティを確保するため、電子契約時には、どのような電子署名なのかを確認しましょう。
利用履歴のログが確認できるか
利用履歴のログを確認できるかも、電子契約を導入する際にチェックしましょう。
利用履歴のログを確認できる電子契約システムであれば、契約後にトラブルが発生した際に原因を突き止めやすくなります。また、契約を更新する際や関連する契約を締結する際に履歴を参考にすることで、自社に適した条件で更新・締結しやすくなるでしょう。
データのバックアップ体制が整っているか
データのバックアップ体制も、セキュリティに強い電子契約を選ぶ際のポイントです。
電子契約を締結する場合、データが破損したり消失したりするリスクがつきまといます。その点、データのバックアップ体制が整っていれば、サイバー攻撃や災害、ヒューマンエラーなどの理由で万が一契約内容が消えた場合にも復元できるため、安心です。
第三者機関による評価があるか
セキュリティを確保するために、第三者機関による評価や認証があるかも注目しましょう。たとえば、電子契約に使われるタイムスタンプは、第三者機関である時刻認証局が発行しています。
電子契約システムのひとつであるマネーフォワード クラウド契約は、契約書の作成から申請・承認や締結、保存、管理までひとつで完結できるサービスです。電子署名やタイムスタンプに対応しており、類似契約の締結時に過去の履歴も確認できます。詳しくは、以下のサイトを参考にしてください。
電子契約を締結する際はセキュリティ面を考慮しよう
電子契約は便利な一方で、契約内容の改ざんや情報の漏えい、ファイルの破損などのリスクもつきまといます。そのため、電子契約を締結する際はセキュリティ面を十分考慮することが大切です。
主なセキュリティ対策として、複数の認証を用いたログインや、タイムスタンプ付き電子署名などが挙げられます。大切な情報を守るため、セキュリティ対策の整った電子契約システムを利用しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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