• 作成日 : 2023年9月8日

土地使用貸借契約書とは?ひな形をもとに基本項目を解説

土地使用貸借契約書とは?ひな形をもとに基本項目を解説

土地使用貸借契約書は、土地を無償で貸す使用貸借の際に使用する書類です。土地使用貸借契約書を作成し契約内容を明確にすることで、使用貸借の際に起こるトラブルを未然に防げます。

本記事では、土地使用貸借契約書の書き方を、ひな形に沿って解説します。土地使用貸借契約書の書き方を知りたい方は、ぜひご一読ください。

土地使用貸借契約とは?

使用貸借とは、対価を払わずに物品の貸借をする行為を指します。主に土地や建物が対象です。中でも、土地を無償で貸借する契約を「土地使用貸借契約」といいます。

使用貸借と賃貸借との違いは、賃料支払いの有無です。使用貸借は無償のため、賃料の支払義務は発生しません。一方、賃貸借では、借主が貸主に対して賃料を支払います。ただし、使用貸借であっても、使用している土地の固定資産税程度の支払いであれば、賃料には該当しません。

土地使用貸借契約は、口約束でも契約が成立します。しかし「貸していた土地を返して欲しいのに返してもらえない」「借りている土地に家を建てて住んでいるのに、返せと言われた」といったトラブルが発生する場合があります。契約書を作成することで、トラブルを未然に防ぎ、スムーズに使用賃借を続けることが可能です。

土地の使用貸借が契約される主なケース

では、土地の使用貸借契約が実際に締結されるのはどのような場合でしょうか。ここで代表的なケースを2つ紹介します。

親名義の土地に子が家を建てるケース

土地使用貸借契約として多いのは、親名義の土地を借りて子が家を建てるケースです。この場合、借主である子が亡くなった場合や、家を建てた子が相続人とならなかった場合が問題となります。

このケースにおいて、家を建てた子をAとします。貸主である親が亡くなり別の子Bが相続した場合、子Aの使用貸借権は継続するので、子Aはそのまま家に住み続けることが可能です。しかし、借主である子Aが亡くなった場合は、使用貸借契約の効力はなくなります。この場合、子Aの家族は家を壊して子Bに土地を返還しなければなりません。

ここで子Bと子Aの遺族のような関係でトラブルが生じるケースが多いため、事前に土地使用貸借契約を締結しておく必要があります。

親の家に子が同居しているケース

親の家に子A(次男)が住んでいる場合、契約を取り交わさずとも使用貸借契約が法的に成立していると考えられることがあります。この場合、親族間という人的関係を基に成立している契約であるため、貸主である親が亡くなり長男である子Bが家を相続しても、使用貸借契約は継続します。

ただし、遺言や遺産分割協議の結果、子B以外の第三者が相続人として家を相続することになった場合、子Aの居住する権利はなくなる点に注意が必要です。このような場合、親子間で事前に土地使用貸借契約書を締結しておくことでトラブルを回避できるでしょう。

土地使用貸借契約書のひな形・テンプレート(ワード)

土地使用貸借契約書の作成にはテンプレートが便利です。以下のページよりひな形(テンプレート)のダウンロードができるので、ぜひご活用ください。

土地使用貸借契約書の主な条項

土地使用貸借契約書には、いくつか必要な条項があります。ここからは、前掲のテンプレートを基に、土地使用貸借契約書の主な条項について解説します。

土地の所在、地番、地目、地積

最初に、使用貸借を締結する土地の所在、地番、地目、地積を記載します。地番は住所(住居表示)と異なる場合がありますので、登記事項証明書(登記簿)に記載された情報を転記しましょう。

土地を無償で貸借する文言

土地使用貸借契約書には、最初に土地を無償で貸すことを記載します(テンプレートの第1条)。返還の際に原状復帰して欲しい場合も、ここに記載すると良いでしょう。その際は、費用負担者も合わせて記載します。

土地使用貸借の期間

次に、土地の貸借期間を記載します(テンプレートの第2条)。契約更新の有無を一緒に記載しても良いでしょう。

土地使用貸借の用途や譲渡の制限

ここでは、耕作、駐車場など土地の使用目的を記載します(テンプレートの第3条、第5条)。第三者への賃借権譲渡、転貸(=又貸し)や共同利用など、禁止したい事項も記載しましょう。

税金や公共料金の負担者

土地には毎年固定資産税がかかります(テンプレートの第4条)。固定資産税は借主と貸主のどちらが支払うのか、事前に決めておくことも大切です。修繕費やその他費用が発生する場合も、負担者を明確にしておきましょう。

土地使用貸借契約解除および終了時の規定

本契約書に定める禁止行為に違反したときは、事前告知なしで土地使用貸借契約を解除することを記載します(テンプレートの第6条、第7条)。騒音等で周りから苦情が来ていることを催告した場合は、一定の猶予期間を置き、改善の見込みがなければ契約を解除する旨も記載しておくと良いでしょう。

反社会的勢力の排除

土地使用貸借契約においては、当該土地が反社会的勢力の活動に使われないことが大切です(テンプレートの第8条)。事前に反社会的勢力との関わりがないか、契約書でお互いに確認しておきましょう。

契約に定めのない事項

契約に定めのない事項は、勝手に決めずにお互いが話し合うことを記載します(テンプレートの第9条)。この条項により「勝手に決められた」「聞いていない」といった契約上のトラブルを未然に防ぐことが可能です。

管轄裁判所

土地使用貸借契約で裁判となった場合の管轄裁判所も、あらかじめ決めておきましょう(テンプレートの第10条)。一般的には、土地を管轄する地方裁判所を第一審の裁判所とします。

契約日と署名捺印

最後に、契約日と、借主貸主それぞれの署名押印欄を作成します。契約書は借主貸主それぞれが保管するため、2枚ともに契約日と署名押印が必要なことも記載しておきましょう。

土地使用貸借契約書の作成ポイント

それでは、土地使用貸借契約書を作成する際に押さえておきたいポイントについて解説します。

土地の住所ではなく地番を記載する

土地使用貸借契約書には、土地の住所ではなく地番を記載しましょう。ほとんどの場合、地番と住所は異なります。地番とは、個々の土地に付された番号です。土地の権利や税金関係で使用されます。一方、住所は、市区町村役所が建物に付した番号になります。

土地使用貸借権は、登記ができない権利です。とはいえ、土地使用貸借契約書は土地の権利関係を表すものなので、土地の所有権を登記するときのように、住所ではなく地番を記載しましょう。

禁止事項や契約解除事項を明記する

土地使用貸借契約書には、転貸や共同利用といった禁止事項を明記することも大切です。合わせて、禁止事項に違反した際は契約解除する旨も記載します。耕作地を貸している場合など、天災により貸主の債務履行が不可能になったときの免責事項を入れても良いでしょう。

反社会的勢力の排除条項

土地使用貸借では、契約書がなくても双方の合意があれば契約が成立します。借主や貸主に反社会勢力がいたとしても、口約束で契約を締結してからでは契約解除が難しくなってしまいます。場合によっては、損害賠償金を支払う必要があるかもしれません。

反社会勢力からの被害にあわないためにも、反社会的勢力と関わりがないことを事前に証明することが大切です。この条項に違反した場合は、速やかに無償で契約を解除できる条項を定めておくのも良いでしょう。

土地使用貸借契約書の締結でトラブル防止を

土地使用貸借契約書は、土地の使用貸借において重要な書類です。土地の使用貸借は、契約書なしでも成立します。しかし、口約束だと細かい事項が定まっていないため、トラブルが起きる可能性があります。契約の内容を定めた土地使用貸借契約書があることで、トラブルを未然に防げるでしょう。

土地使用貸借契約書には、使用貸借の期間や用途、禁止事項などを記載します。契約解除、終了時の規定も記載しましょう。

土地使用貸借契約書の注意点は、土地の地番を記載すること、禁止事項や契約解除事項、反社会的勢力の排除事項を明記することです。記載がない事項は双方の合意で決められることも盛り込むと良いでしょう。


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