- 更新日 : 2024年8月30日
署名とは?記名との違いや契約書への記載方法を紹介
契約を締結する際、「署名」という言葉を耳にすることがあります。似た言葉に「記名」がありますが、両者にはどのような違いがあるのでしょうか。ここでは「署名」と「記名」の違いや署名が必要になるシーン、記載方法、押印の要否について解説します。署名の定義と使い方をしっかり押さえておきましょう。
署名とは?
署名とは、ある行為の際に自筆で自分の氏名を文書に書き記すこと、または書き記した氏名のことです。「自署」や「サイン」は署名と同義です。具体的には、契約書にペンや万年筆などで自分の氏名を書き記す行為や、クレジットカードを利用する際に伝票に自分の氏名を書く行為などが挙げられます。つまり、自分が手書きで氏名を書く行為が署名です。
署名と記名の違い
「署名」は手書きで自分の氏名を書く行為ですが、「記名」は手書き以外の手段で自分の名前を記す行為です。パソコンで書類に自分の名前を入力して印刷する行為や、ゴム印で自分の名前を記す行為などが記名にあたります。第三者に手書きで名前を書いてもらうことも記名にあたります。
手書きで相手に自分の氏名を書いてもらう際に「記名してください」というのは誤用で、「署名してください」が正しい使い方です。
署名を使用するケースは?メールでも使う?
署名は単に名前を書く行為ではなく、契約において非常に重要な意味を持ちます。民法228条(文書の成立)の4項では、以下のように定められています。
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
(略)
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
引用:民法|e-GOV法令検索
文書に署名もしくは押印(印鑑)を行うと、その文書は本人が自分の意思で作成したと推定されることになります。
売買契約や請負契約などを締結する時や誓約書にサインをする時、クレジットカードでの支払い時に伝票にサインをする時などに行うのが署名です。首脳同士が外交文書にサインするシーンをニュースで見かけることがありますが、これも署名です。
いずれも、「私はこの文書の内容に同意します」という意思を示すために署名を行います。例えば、契約を締結する場合は、契約書に署名した時点で契約が成立し、後に双方でトラブルになった場合はその署名が法的証拠となります。前述の「記名」は、署名と比べると証拠能力は低いといえます。パソコンに名前を打ち込んで印刷する行為や、ゴム印で名前を記す行為は誰でもできるため、本人性が担保しにくいからです。
メールや電子契約などの電子データでは、手書きの署名の代わりに「電子署名」を用います。ファイルにタイムスタンプが付与された電子署名を添付することで、本人性が担保されます。
契約書への署名の記載方法
一般的に契約書に署名する際は、署名欄に住所、会社名、役職名、自分の氏名を記載します。契約書の末尾に署名するケースがほとんどですが、必ずしも末尾である必要はありません。後で確認しやすいように、表紙や冒頭に署名欄を設けるケースもあります。
また、右寄せや左寄せといったルールが決められているわけでもありません。契約書を作成する際は、記載しやすいよう位置や大きさを調整しましょう。下線や破線、枠を設けると記載しやすくなります。記載方法の例は以下のとおりです。
(甲)
住所:東京都●●区●●
会社名:株式会社山田商事
役職名・氏名:代表取締役 山田 太郎
(乙)
住所:大阪府●●市●●
会社名:株式会社鈴木産業
役職名・氏名:代表取締役 鈴木 一郎
マネーフォワード クラウド契約では弁護士監修の契約書テンプレートを用意しています。無料で利用可能ですので、以下のページからダウンロードしてご利用ください。
契約書に署名した時は印鑑での押印は必要?
契約書を作成する際は、署名に加えて押印を行うケースが多いです。そのため、押印欄が設けられていることもあります。しかし、必ず印鑑を押さなければならないという決まりはなく、署名も契約が成立するための必須条件ではありません。口約束やメールのやり取りであっても、契約自体は成立します。ただし、特に口頭で契約を結んだ場合は「言った」「言わない」といったトラブルに発展することがあるため、注意が必要です。
契約を締結する際は契約書を作成し、署名もしくは押印によって契約が成立したことを証拠として残すのが一般的です。
前述のとおり、民法227条では署名と押印のどちらかがあれば文書は成立するとされていますが、自筆の署名と印鑑登録がなされている印鑑を押印することでより本人性が担保され、証拠能力が高くなります。そのため、契約書では署名と押印の両方を行うケースが多いのです。
押印の詳細については、以下の記事を参考にしてください。
署名の定義と使用方法について正しく理解しておこう!
署名は自分の名前を書く行為ですが、契約においては重要な役割を担うため、内容をしっかり確認した上で署名を行いましょう。
署名の概要を知ることでスムーズに契約を締結でき、後々のトラブルを防ぐことにもつながります。「記名のみ」「署名のみ」「署名+押印」はそれぞれ証拠能力が異なるため、それぞれの違いも正しく把握しておきましょう。
よくある質問
署名と記名の違いは何ですか?
署名とは、手書きで自分の氏名を書き記す行為のことです。一方で記名は、手書き以外(印刷やゴム印)で氏名を記すこと、あるいは他人に代筆してもらうことです。詳しくはこちらをご覧ください。
署名した場合、印鑑の押印は必要ですか?
押印しなければならない決まりはありませんが、署名と押印の両方があることで証拠能力が高くなるため、契約を締結する際は署名と押印を行うケースが多いです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
新着記事
小売業で電子契約は導入できる?メリットや企業事例、サービスを選ぶポイントも
小売業における電子契約導入は、業務効率化やコスト削減に有効な手段です。多岐にわたる契約業務を抱える小売業にとって、電子契約は多くのメリットをもたらす機会となるでしょう。本記事では、電子契約の基本から、小売業で主な対象となる契約書類や導入によ…
詳しくみる電子契約サービスの導入で相手方はどんな対応が必要?ケース別に解説
電子契約サービスを導入する際には、相手方の状況に合わせた対応が欠かせません。自社が導入していても、相手方がまだ導入していなかったり、異なるサービスを利用していたりするケースがあります。 本記事では、これらのケースごとに具体的な対応策を解説し…
詳しくみる申込書にも電子契約を利用できる?電子化のメリットや電子帳簿保存法の対応も解説
電子契約は、契約書だけでなく申込書にも利用可能です。 申込書を電子化することで、迅速かつ正確な情報収集が可能となり、業務プロセスの効率化に大きく役立つでしょう。 本記事では、申込書と契約書や注文書の違いを整理したうえで、申込書の電子化による…
詳しくみる電子契約の同意書や事前承諾書が必要な書類は?作り方やひな形を紹介
電子契約の導入により、多くのビジネス契約書が電子的に締結できるようになりました。ただし下請事業者や消費者保護の観点から、一部の契約では電子化に関する事前承諾が法的に求められています。 本記事では、電子契約における同意書・承諾書の作成方法や実…
詳しくみる電子契約サービスを乗り換える方法・流れは?注意すべきポイントも解説
電子契約サービスの選択肢が増える中で、より自社に適したサービスへの乗り換えを検討する企業が増えています。電子契約サービスの乗り換えには、適切な手順と注意点の把握が不可欠です。 本記事では、電子契約サービスを乗り換える方法や流れ、注意するべき…
詳しくみる土地売買契約書の電子契約の流れは?電子化する方法やデメリットも解説
2022年5月の宅建業法改正により、土地売買契約書の電子契約が全面的に解禁されました。相手方の承諾を得れば、重要事項説明書から契約書まで、ほぼすべての書類を電子化して契約を締結できます。 本記事では、土地売買契約書の電子化に関する法的根拠か…
詳しくみる