- 作成日 : 2024年2月9日
入社や出向、退職手続きに必要な契約書まとめ!無料のひな形も紹介
企業の人事・労務担当は、従業員の入社や出向、退職時にさまざまな契約書を取り交わします。各場面で必要な契約書にはどのようなものがあるか、それぞれの記載すべき項目は何かなどを正しく把握しておきましょう。本記事では、入社や出向、退職の手続きに必要な契約書類の概要や注意点を解説します。ひな型のご紹介もしているのでご活用ください。
目次
「入社」に必要な契約書類
入社手続きでは、従業員と以下のような契約書類を取り交わす必要があります。
- 入社承諾書
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 入社誓約書
- 就業規則
それぞれの契約種類の概要を解説します。
入社承諾書
入社承諾書は、内定者が企業に入社する意思を示すために提出する書類です。入社承諾書を作成する際は、「内定取り消し事由」と「承諾条件」を明示することを意識しましょう。内定取り消し事由は、従業員とのトラブルを防ぐために明示します。
企業が入社承諾書を発行している時点で労働契約が成立するため、企業側の都合で一方的に内定を取り消すことはできません。しかし、入社承諾書に内定取り消しとなる条件を明記し、署名・捺印をした場合、その条件に当てはまった場合は内定を取り消すことが可能です。たとえば、大学を卒業できなかったケースや、提出書類などに虚偽が発覚したケースなどが該当します。
また、承諾条件も明確にしておきます。承諾条件は、「無断もしくは正当な理由なく入社を拒否しない」といった内容を、曖昧な表現を避けて記載しましょう。
入社承諾書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
雇用契約書
雇用契約書は、企業と従業員の間で、雇用契約の内容についての合意がなされたことを証明する書類です。雇用契約書には、以下のような内容を記載するのが一般的です。
- 給与(賃金)
- 就業場所
- 時間
- 業務内容
上記のような労働条件に関する事項を書面化し、企業と従業員の双方が署名捺印をして締結します。雇用契約書は、後述の「労働条件通知書」を雇用契約書の中に記載し、「雇用契約書 兼 労働条件通知書」として兼ねる方法も認められています。
雇用契約書のテンプレートは、下記のページからダウンロードすることが可能です。
労働条件通知書
労働条件通知書は、使用者と労働者が雇用契約を結ぶ際に交付する書類です。給与や勤務時間をはじめとした労働条件を記載します。
法的な作成義務のない雇用契約書と違い、労働条件通知書は、企業が雇用契約の際に交付することを、労働基準法によって義務付けられていることがポイントです。また、記載しなければならない項目も決まっています。労働条件通知書に記載が必要な内容は、以下のとおりです。
- 労働契約の期間
- 就業場所
- 従事する業務
- 始業および終業の時刻
- 休憩時間、休日、休暇
- 交代制勤務が発生する場合のルール
- 賃金
- 退職
なお、2024年4月以降は、以下の3つの項目も追加されます。
- 従事する業務の変更の範囲
- 就業する場所の変更の範囲
- 有期労働契約を更新する場合の基準
労働条件通知書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
参考:e-Gov法令検索 労働基準法15条1項
参考:厚生労働省 企業から受ける労働条件明示のルールが変わります!
入社誓約書
入社誓約書は、労働者が会社との労働契約時に、就業規則などを遵守することを誓約する文書です。従業員が誓約書に記載している内容に違反した場合に、ただちに解雇できたり、従業員に対して損害賠償を請求できたりするわけではありません。しかし、企業と従業員の双方が誓約書に合意した内容に社会的な妥当性が認められる場合、誓約書は法的拘束力を持ちます。誓約書に記載する内容としては、以下のようなものが考えられます。
- 就業規則を守ること
- 秘密情報を保持すること
- 企業の同意なく競業他社に就職したり、競業他社を設立したりしないこと
入社誓約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます。
就業規則
賃金や労働時間などの一定の労働条件について事業場ごとに定めたものが、就業規則です。 常時10人以上の労働者を雇用している場合は必ず作成し、労働基準監督署に届け出をしなければなりません。就業規則に記載しなければいけないのは、以下の内容です。
- 始業および終業の時間
- 休憩時間、休日、休暇
- 交代制勤務が発生する場合のルール
- 賃金の決定方法、計算方法、支払方法、締切日、支払日
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項
就業規則のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
「出向」に必要な契約書類
出向の手続きでは、以下のような契約書類を企業と従業員の間で取り交わします。出向とは、出向元企業のグループ会社や子会社などの、関連する別企業に異動することです。
- 出向同意書
- 出向契約書
- 覚書
それぞれの契約書類の概要を解説します。
出向同意書
出向には、「在籍出向」と「転籍出向」の2種類があります。在籍出向では出向元企業との雇用関係は維持されますが、転籍出向では解消されます。
出向同意書は、在籍出向の際の労働条件などを記載した書類です。以下のような労働条件などを開示した上で、同意書にサインをもらいます。
- 出向期間
- 出向先の企業名
- 勤務場所
- 出向先の労働条件
出向同意書を記載する際には、労働条件通知書も一緒に作成する必要があります。
出向同意書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
出向契約書
出向契約書は、出向元企業と出向先企業で取り交わす書類です。記載する内容は、以下のような内容です。
出向契約書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
覚書
出向契約書で定めた内容の、詳細について明記したものが覚書です。具体的には、以下のような内容を記載します。
- 出向者の給与と追加費用
- 費用の支払方法
- 出向者の労働場所と内容
- 労働条件
- 両社の窓口担当者
覚書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
「退職」手続きに必要な契約書類
従業員が退職する際は、以下の書類を作成し手続きを行います。
- 退職届の受理書
- 定年退職届
- 退職証明書
- 秘密保持契約書
各書類について解説します。
退職届の受理書
退職届の受理書は、会社が退職届を受理したことを証明する書類です。退職届を受理した旨と今後の指示を記載します。退職届の受理書では、従業員が退職する状況にかかわらず、在籍中の企業への貢献に感謝し、今後の活躍や成功を祈る気持ちを伝えることをおすすめします。
退職届の受理書のテンプレートは、下記のページからダウンロードすることが可能です。
定年退職届
一般的な退職届が使用されず、定年退職届が用意されるケースがあります。定年退職届の記載項目は通常の退職届とほぼ同じです。
定年退職届のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
退職証明書
退職証明書は、企業が退職する従業員に対して、その従業員が退職したことを証明する書類です。従業員からの希望がない場合は、発行する必要はありません。ただし、発行希望があった場合は発行しなければならないことを押さえておきましょう。
退職証明書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
秘密保持契約書
秘密保持契約書は、開示する自社の秘密情報について、契約締結時に予定している用途以外で使うことや、他人に開示することを禁止したい場合に締結する契約書です。
秘密保持契約では損害賠償だけでなく、秘密情報流出につながる可能性のある行為に対する差止請求権などを規定することも可能です。
役員などのキーパーソンに対しては、1~2年程度の競業禁止条項を設けることもあります。
秘密保持契約書のテンプレートは、下記のページからダウンロードできます。
秘密保持契約書に関しての詳細は、こちらの記事をご参照ください。
また、競業禁止義務については、こちらの記事もご確認ください。
契約書を結ぶ上での注意点
入社時の契約で必要な「労働条件通知書」を電子化する場合、従業員の事前の同意がないと電子化できません。
出向契約の手続きにおいては、労働条件を出向先で伝達するのではなく、事前に出向社員に伝えておくことが重要です。また、出向について、従業員が雇用契約書や就業規則に同意している場合も、出向命令が権利濫用にならないか注意しましょう。
さらに退職届は、可能な限り、書面で受理し保管しておくことが大切です。退職理由が雇用保険の支給に影響するため、ハローワークからの確認が入ったり、争議に発展したりする可能性があります。その際に自己都合による退職なのか、会社都合による退職なのかについて、証拠を残す必要があるためです。
社内においては、必要に応じて秘密保持の徹底や、取締役であれば競業禁止などの観点から契約を取り交わすこともあります。
入社や出向、退職手続きに必要な契約書を確認しよう
入社や出向、退職の手続きでは、さまざまな契約書を取り交わします。契約書の内容に不備があると、従業員との間でトラブルが発生しかねません。それぞれの場面で必要な書面を把握するだけでなく、各書面に記載すべき事項を正しく押さえ、トラブルの発生を未然に防ぎましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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