• 更新日 : 2022年7月4日

合併契約書とは?雛形付きで法定記載事項や注意点を解説

合併契約書とは?雛形付きで法定記載事項や注意点を解説

企業が合併することは、しばしばあります。特に近年はM&Aが一般的になっており、合併という方法で事業の譲渡や承継を行うケースも増えています。

合併契約書を締結することで、企業の合併が成立します。この記事では、合併契約書の記載事項や作成する際のポイントについてご説明します。

   

合併契約とは?

合併契約とは企業同士が合併する際に締結する契約のことで、会社法第748条で以下のように定められています。

(合併契約の締結)
第七百四十八条 会社は、他の会社と合併をすることができる。この場合においては、合併をする会社は、合併契約を締結しなければならない。

引用:会社法|e-Gov法令検索

合併には「吸収合併」と「新設合併」があります。それぞれどのようなものなのか、見ていきましょう。

吸収合併

吸収合併は、会社法第2条27号で以下のように定義されています。

二十七 吸収合併 会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいう。

引用:会社法|e-Gov法令検索

例えばA社がB社に吸収合併された場合、B社はA社の権利と義務を受け継ぎ、A社は消滅してB社が存続します。合併後A社の資産(設備など)はB社の所有物となり、A社の従業員はB社の従業員として働くことになります。A社の事業は、B社の事業部の一つとなるといった形で存続します。

一般的に合併もしくはM&Aと呼ばれる行為の多くは、吸収合併の形態がとられます。本記事では吸収合併を軸に、合併契約についてご説明します。

新設合併

新設合併は、会社法第2条28号で以下のように定義されています。

二十八 新設合併 二以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいう。

引用:会社法|e-Gov法令検索

2つの会社が合併して、1つの新しい会社を作ることを新設合併といいます。例えばA社とB社が新設合併した場合は、両社が消滅して新しくC社という会社が設立されます。A社とB社の権利・義務は、すべてC社が受け継ぎます。A社とB社の資産はC社のものになり、A社とB社の従業員はC社の社員として働くことになります。

国内では吸収合併よりも頻度が低いものの、事業規模の拡大や対等な合併を目的として新設合併が行われることがあります。

合併契約書の雛形

ここからは、合併契約書の内容について見ていきましょう。吸収合併を想定した合併契約書の雛形をご用意しました。こちらをもとに、記載事項やポイントを説明します。実際に合併契約書を作成する際は、この雛形を参考にしていただければ幸いです。

合 併 契 約 書

 

○○株式会社(以下「甲」という。)及び株式会社◯◯(以下「乙」という。)は、両社の合併(以下「本合併」という。)に関して次のとおり吸収合併契約(以下「本契約」という。)を締結する。第1条 甲および乙は合併して、甲は存続し、乙は解散する。
2 本合併に係る吸収合併存続会社及び吸収合併消滅会社の商号及び住所は、以下のとおりである。

(1)吸収合併存続会社(甲)
商号 ○○株式会社
住所 ○県○市○町○番○号
(2)吸収合併消滅会社(乙)
商号 株式会社◯◯
住所 ○県○市○町○番○号

第2条 甲は、本合併に際し、普通株式○株を発行し、本合併の効力発生日(以下「効力発生日」という。)前日最終の乙の株主名簿に記載された各株主(甲及び乙を除く。)に対して、その所有する乙の普通株式に代えて、当該普通株式○株につき甲の普通株式○株の割合(以下「割当比率」という。)をもって割当交付する。
2 甲が発行する株式数の合計に1株未満の端数が発生した場合には、これを切り上げることとし、乙の株主に対して交付する株式数に1株未満の端数が生じた場合には、これを一括売却又は買受けをし、その処分代金を端数を生じた株主に対して、その端数に応じて分配する。
3 本合併に際して発行する甲の新株式に対する利益又は剰余金の配当は、効力発生日から起算する。

第3条 甲が合併により増加すべき資本金等の取扱いは、次のとおりとする。ただし、効力発生日前日における乙の資産及び負債の状態により、甲及び乙が、協議の上、これを変更することができる。
(1)増加する資本金の額 金○○万円
(2)増加する資本準備金の額 金○○万円
(3)増加するその他資本剰余金の額会社計算規則第◯条の株主資本等変動額から上記(1) 及び(2)の額を減じて得た額

第4条 本合併の効力発生日は、令和○年○月○日とする。ただし、前日までに合併に必要な手続が遂行できないときは、甲及び乙が、協議の上、会社法の規定に従い、これを変更することができる。

第5条 乙は、令和○年○月○日現在の貸借対照表その他同日現在の計算書を基礎とし、これに効力発生日前日までの増減を加除した一切の資産、負債及び権利義務を効力発生日において甲に引き継ぐ。
2 乙は、令和○年○月○日以降、効力発生日前日に至るまでの間に生じたその資産、負債の変動については、別に計算書を添付して、その内容を甲に明示しなければならない。

第6条 甲及び乙は、本契約締結後、効力発生日前日に至るまで、善良なる管理者の注意をもって各業務を遂行し、かつ一切の財産の管理を行う。

第7条 甲は、効力発生日において、乙の従業員を甲の従業員として雇用する。
2 甲が引き継ぐ前項の従業員の勤続年数は、乙の計算方式による年数を通算するものとし、その他の細目については甲及び乙が協議して決定する。

第8条 甲と乙は、本合併につき承認を得るため、令和○年○月○日までに、それぞれ株主総会の承認を得るものとする。

第9条 この契約締結の日から効力発生日までの間において、天災地変その他の理由により、甲若しくは乙の資産状態又は経営状態に重大な変更が生じた場合又は隠れたる重大な瑕疵が発見された場合には、甲及び乙が協議の上、本契約を変更し又は解除することができる。

第10条 本契約に規定のない事項又は本契約書の解釈に疑義が生じた事項については、甲及び乙が誠意をもって協議のうえ解決する。

第11条 本契約は関係官庁の認可を受けることができない場合又は甲乙々の株主総会の承認を得ることができない場合には、その効力を失うものとする。

本契約の締結を証するため本書2通を作成し、各自記名押印の上、各1通を保有する。

令和○年○月○日

(甲) ○県○市○町○番○号
○○株式会社
代表取締役 ○○ ○○

(乙)○県○市○町○番○号
◯◯株式会社
代表取締役 ○○ ○○

以下のページから、Word形式の雛形をダウンロードしていただけます。

合併契約書のテンプレートは下記のページからダウンロードできます

合併契約書の法定記載事項

前述のとおり、「企業が合併する際には合併契約を締結しなければならない」と会社法で定められています。合併契約書の記載事項についても会社法によって定められているので、それに従って作成しなければなりません。

吸収合併と新設合併では、契約書に記載すべき事項が異なります。それぞれについて見ていきましょう。

吸収合併契約書の記載事項

吸収合併の記載事項は、会社法第749条で以下のように定められています。

(株式会社が存続する吸収合併契約)
第七百四十九条 会社が吸収合併をする場合において、吸収合併後存続する会社(以下この編において「吸収合併存続会社」という。)が株式会社であるときは、吸収合併契約において、次に掲げる事項を定めなければならない。

引用:会社法|e-Gov法令検索

1号から6号の各号で記載事項が詳細に定められています。

一 株式会社である吸収合併存続会社(以下この編において「吸収合併存続株式会社」という。)及び吸収合併により消滅する会社(以下この編において「吸収合併消滅会社」という。)の商号及び住所

引用:会社法|e-Gov法令検索

まず、双方の会社の商号と住所が記載されている必要があります。

二 吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して株式会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅株式会社」という。)の株主又は持分会社である吸収合併消滅会社(以下この編において「吸収合併消滅持分会社」という。)の社員に対してその株式又は持分に代わる金銭等を交付するときは、当該金銭等についての次に掲げる事項
イ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式であるときは、当該株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)又はその数の算定方法並びに当該吸収合併存続株式会社の資本金及び準備金の額に関する事項
ロ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の社債(新株予約権付社債についてのものを除く。)であるときは、当該社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権(新株予約権付社債に付されたものを除く。)であるときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ニ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の新株予約権付社債であるときは、当該新株予約権付社債についてのロに規定する事項及び当該新株予約権付社債に付された新株予約権についてのハに規定する事項
ホ 当該金銭等が吸収合併存続株式会社の株式等以外の財産であるときは、当該財産の内容及び数若しくは額又はこれらの算定方法

引用:会社法|e-Gov法令検索

消滅する会社の株主や社員に対して、存続会社が交付する株式や社債、新規予約権、新株予約権付社債、その他財産の数や算定方法などについて記載する必要があります。

三 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の株主(吸収合併消滅株式会社及び吸収合併存続株式会社を除く。)又は吸収合併消滅持分会社の社員(吸収合併存続株式会社を除く。)に対する同号の金銭等の割当てに関する事項

引用:会社法|e-Gov法令検索

また、存続会社が交付する金銭について、消滅する会社の株主や社員にどのように配分するかといったルールも記載しなければなりません。

四 吸収合併消滅株式会社が新株予約権を発行しているときは、吸収合併存続株式会社が吸収合併に際して当該新株予約権の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭についての次に掲げる事項
イ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して吸収合併存続株式会社の新株予約権を交付するときは、当該新株予約権の内容及び数又はその算定方法
ロ イに規定する場合において、イの吸収合併消滅株式会社の新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権であるときは、吸収合併存続株式会社が当該新株予約権付社債についての社債に係る債務を承継する旨並びにその承継に係る社債の種類及び種類ごとの各社債の金額の合計額又はその算定方法
ハ 当該吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対して金銭を交付するときは、当該金銭の額又はその算定方法
五 前号に規定する場合には、吸収合併消滅株式会社の新株予約権の新株予約権者に対する同号の吸収合併存続株式会社の新株予約権又は金銭の割当てに関する事項

引用:会社法|e-Gov法令検索

消滅会社が新株予約権を発行している場合は、合併に際して交付する代わりの新株予約権の内容、数や算定方法などを記載する必要があります。

六 吸収合併がその効力を生ずる日(以下この節において「効力発生日」という。)

引用:会社法|e-Gov法令検索

合併がいつから効力を有するかを記載する必要があります。効力の発生日は、存続会社が消滅会社の権利義務を継承し、消滅会社の株主が存続会社の株主になる日となります。

新設合併契約書の記載事項

新設合併についても、会社法第753条(株式会社を設立する新設合併契約)で以下のように記載事項が定められています。記載事項は以下のとおりです。

  • 消滅会社の商号、住所
  • 新設会社の目的、商号、本店所在地、発行可能株式総数
  • 新設会社の定款で定める事項
  • 新設会社の設立時の取締役の氏名
  • 新設会社の設立時の役員などの氏名又は名称
  • 新設会社が消滅会社の株主や社員に対して交付する株式などの数や算出方法と新設会社の資本金及び準備金の額
  • 上記の割当方法
  • 新設会社が新設合併に際して消滅会社の株主や社員に対して新設会社の社債等を発行する場合の金額や算出方法
  • 上記の割当方法
  • 消滅会社が新株予約権を発行している場合は、交付する代わりの新株予約権の内容及び数又はその算出方法など
  • 上記の割当方法

合併契約書で注意すべきポイント

合併契約書に記載すべき項目は法律で以上のように定められているため、これに従って契約書を作成しなければなりません。しかし、これ以外にも合併契約の際に注意すべきポイントがいくつかあります。

ここでは、合併契約書を作成する際に注意すべきポイントについてご説明します。

商号を変更する場合

新設合併では新会社を設立するため商号も新しいものになりますが、吸収合併においても存続する会社が商号を変更することがあります。

商号を変更する場合は株主総会で変更の承認を得た後、変更の効力が発生する日から2週間以内に法務局で変更登記手続きを行わなければなりません。その他にも都道府県事務所や市区町村、年金事務所、労働基準監督署などで手続きを行う必要があります。

商号を変更すると会社のイメージが大きく変わりますが、プラスに作用することもあればマイナスに作用することもあるため、商号変更は慎重に検討しましょう。

取引先について

合併の際に注意しなければならないのが、取引先との契約です。基本的に、合併前に締結された契約は合併後の会社に引き継がれます。会社法では、合併について、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併存続後の会社(もしくは合併により設立する会社)に継承させるものと定義しており、契約も「権利義務」に含まれます。

契約関係が継続したとしても、合併によって商号が変わる場合は取引先に混乱をきたすおそれがあるため、合併と商号変更について通知するとよいでしょう。

すでに取引先と結んでいる契約に「チェンジオブコントロール条項」がある場合は、新しく契約を締結したほうがよいケースもあります。チェンジオブコントロール条項とは、契約の一方当事者に支配権の変更があった場合に契約内容に制限を設けたり、もう一方の当事者が契約を解除したりすることを認める条項のことです。

印紙の額

印紙税法で定められた課税文書を作成する場合は、印紙税という税金を納めなければなりません。合併契約書は課税文書にあたり、1通または1冊あたり4万円の印紙税の納付が必要です。

4万円分の収入印紙を購入して文書に貼付して消印すると、印紙税を納めたことになります。印紙税については、こちらのページでも詳しくご説明しています。

合併の種類や契約書について正しく把握しておきましょう。

企業の合併には「吸収合併」と「新設合併」があり、いずれも合併契約を締結することで合併が成立します。合併契約書には合併の種類ごとに法律で記載すべき事項が定められているため、それに基づいて作成しなければなりません。

合併やM&Aを検討されている方は、合併の種類や合併契約書に記載すべき内容をしっかり把握しておきましょう。

よくある質問

合併契約とは何ですか?

企業同士が、吸収合併や新設合併を行う際に取り交わす契約のことです。合併契約を締結して、初めて合併が成立します。詳しくはこちらをご覧ください。

合併契約書には何を記載すべきですか?

吸収合併と新設合併で異なりますが、いずれも会社法で定められた記載事項は最低限記載する必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

監修:福谷陽子(元弁護士、法律ライター)

弁護士時代は契約書作成やレビュー、不動産取引や債権回収、破産倒産、一般民事、家事事件など多種多様な事件を取り扱っていた。今はその経験を活かし、専門的な法律知識を一般ユーザーへわかりやすく解説する法律記事の作成に積極的に取り組んでいる。
各種サイトで法律記事を執筆監修。実績は年間1000件以上。ブログやYou Tubeなどによる情報発信にも熱心に取り組んでおりチャンネルを運営中。
元弁護士・法律ライター福谷陽子のblog
世捨て人mimi
元弁護士の世捨て猫🌟ぴりか(mimi)法律ライター

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