• 更新日 : 2024年10月25日

契約書はどの部署が管理すべき?管理体制やメリット・デメリットを解説

契約書を管理する場合、その管理は専門知識を有する法務部門で行うことが最も望ましいといえます。社内に法務部門がない場合であっても、総務部門など特定の部署で一元管理することによって業務の効率化を図ることができます。

契約書はどの部署が管理すべきか?

社内に法務部門がある場合、契約書は法務部門で管理するべきであると考えられます。法務部門は法律に関する専門の部署であるからです。契約書に書かれる内容には、法令で定められているものが含まれることがあり、契約のチェックには法的な知識が求められます。

また、法務部門では自社の業務に関わる法律の調査や訴訟対応、弁護士との打ち合わせなどを行っています。契約に関するトラブルがあった際に会社としてスムーズに対応するためにも、契約書の管理は法務部門で行うことが適切です。

ただし、中小企業の場合には、社内に法務部門を設置していないこともあるでしょう。その場合、自社に関わる事務を全般的に取り扱っている総務部門で契約書の管理を行うことが考えられます。法務部門のように専門的な法律知識は持ち合わせていないかもしれませんが、契約書を各部署で分散して管理する場合と比較して、一元管理することによる効率化が期待できます。

契約書管理のパターン

契約書の管理体制には、いくつかのパターンがあります。それぞれのメリットとデメリットについて説明します。

社内の各部署が書面で管理する

まず、社内のそれぞれの部署が、書面で契約書を管理する体制が考えられます。

メリットとしては、各部署の実態に合わせた柔軟な管理を実施できることが挙げられるでしょう。また、自らが所属する職場での管理となるため、比較的取り組みやすい方法であるともいえます。

デメリットとしては、会社全体で契約書の共有ができないことが挙げられます。その結果、同じような契約を重複して締結していたり、契約に関するノウハウが集まらなかったりと、契約上の非効率が起こりやすい管理体制であるといえるでしょう。

特定の部署が書面で一元管理する

会社全体の契約書を法務部門や総務部門など、特定の部署でまとめて管理する方法です。

この管理方法のメリットは、社内に分散する契約情報を集約することで、より効率的に契約書を管理できることです。社内の契約を容易に比較できるようになるため、同じような内容の契約があれば必要なものを残して解約でき、より有利な条件の契約に一本化することも可能です。

デメリットとしては、各部署が契約書にアクセスしにくくなる点が挙げられます。契約内容を頻繁に確認する必要がある場合や、契約変更が多い場合には、各部署の負担が大きくなる可能性があります。

契約書の管理システムを利用して一元管理する

※紙・電子契約書をシステムで一元管理するパターンです。管理者=システム管理部署になります。

契約書を電子データ化して、専用のシステムで管理する方法もあります。

システムで契約書を管理するメリットは、必要な契約書を簡単に検索して閲覧できることです。システムにアクセスできれば外出先から契約書を閲覧することも可能です。また、契約書の保管場所が不要であることも大きなメリットといえます。さらに、システムによっては契約更新日が近づくと担当者に通知する機能を有するものもあり、契約の更新漏れなど、ミスの防止を期待できます。

デメリットとしては、システムの導入時にマスタ設定などの手間が必要であったり、利用料金がかかったりする点です。また、システムの運用に合わせて業務フローの見直しも必要です。

部署内で管理せず専門業者に委託する方法もある

社内で契約書を管理する体制が整っていない場合には、専門業者に委託する方法があります。

外部の専門業者に契約書管理をそのまま委託することで、法律に詳しい人材が社内にいなくても、専門的な知識をもったリソースを活用できます。

また、社内で法的知識を有する人材を採用したり育成したりするためには時間がかかるため、専門業者は即戦力としても期待できるでしょう。さらに、社内での契約書管理が不要になるため、担当者の負担を軽減できるだけでなく、契約書の管理に割いていたリソースをコア業務に投入できます。

一方で、デメリットもあります。業務委託を活用すると、社内の人材が直接業務を行わないことから、法律知識や契約書管理のノウハウが社内に蓄積しないことになります。自社にとって契約に関する業務が重要である場合には、長い目で見て、あえて委託せずに自社で契約書管理を行うという判断も必要でしょう。

また、専門業者に預けた契約書が不正利用されるリスクもあるため、委託業者の選定は慎重さが求められます。

契約書管理が重要な理由

契約書の適切な管理は、会社が継続していく上で非常に大切です。具体的にどのような点で重要なのかについて説明します。

法令により契約書の保管義務がある

契約書は、法令によって保管が義務づけられています。

具体的な保管期間は、法人か個人事業主かによって異なります。法人の場合、会社法で10年間保存することが義務づけられている「事業に関する重要な資料」の1つとして契約書が挙げられています。

また、法人税法および施行規則では、税務関係の帳簿や契約書の保管期間が7年と定められています。

個人事業主の場合は、所得税法において青色申告者・白色申告者ともに契約書を5年間保管することが義務づけられています。

これらの法令を遵守して契約書を保管しておくためには、契約書の期限を適切に管理し、誤って廃棄・紛失しない仕組みをつくることが大切です。

社内で契約書の内容をナレッジ共有する

法務業務を行うためには、法律に関する情報や契約文言の解釈などに専門知識が必要となるため、業務の習得に時間がかかることが一般的です。

しかし、契約書を適切に管理することで、契約に関する知識をノウハウとして蓄積でき、効率的に契約に関する専門知識を身につけられます。また、ナレッジ管理により閲覧したい情報をすぐ参照できるようにしておくことで、さらなる業務効率化につなげることも可能です。

これらの情報を社内で広く共有できれば、組織として一定の基準で契約書を確認することが可能となるでしょう。

また、契約書に関する業務は知識のある社員に集中したり、属人化したりしやすい傾向にあります。知識やマニュアルなどの共有によりナレッジ管理できれば、属人化の解消にもつながるため、担当者の不在や異動時にも業務を滞りなく進められます。

取引先と紛争が発生した場合の証拠になる

契約書は取引を行う上での約束事を定めたものであり、契約当事者は契約に従って取引を行うことになります。しかし、会社が事業を行っていく過程では膨大な数の取引を行うことになるため、いかに慎重に取引を行っていても相手方と紛争が生じるリスクを常に抱えているともいえます。

万一、紛争が生じた場合、契約書は相手方との交渉や裁判などの場で非常に重要な証拠になります。契約書は取引当事者の合意が反映した書類として、特に価値が高い証拠となるからです。したがって、証拠保全の観点からも契約書の管理は大切であるといえます。

また、契約書の文言が争われるようなケースでは、契約書そのものにとどまらず、交渉過程に関する情報や事実の記録も重要な証拠となるため、関連資料は極力保管しておくことをおすすめします。

契約書管理を怠った場合のリスク

では、契約書の管理を怠った場合、どのようなリスクが生じるでしょうか。以下に説明します。

契約書の改ざん

契約書は、取引相手との合意内容を明確な証拠として残すために作成されるものです。したがって、契約書が不正に書き換えられると、契約が取引相手の意図した内容から逸脱することとなり、大きなトラブルにつながることになります。そして、一度トラブルが起こってしまうと、会社の信用や取引相手との信頼関係を大きく損なうことにもなりかねません。

そのため、契約書へのアクセス権を必要最小限の関係者に限定したり、システムのセキュリティ対策を強化したりするなど、改ざんを防ぐための仕組みを確立することが重要です。

情報漏洩

契約書には重要な機密情報が含まれているため、情報漏洩や不正アクセスといったリスクには特に注意する必要があります。契約書の管理が適切に行われていないと、契約内容が外部に流出してしまうおそれがあるためです。

契約書の紛失や情報漏洩は、会社の継続を左右する重大な問題となります。情報の流出は、自社の信頼を大きく低下させ、万一、漏洩した情報を外部の競合会社が手に入れた場合、ビジネス上の競争力低下につながるおそれもあります。

情報流出のリスクを低減するためには、契約書の適切な保管やアクセス権の設定、定期的な点検など、綿密な管理が求められます。

追徴課税や賠償などの経済的損失

契約書の適切な管理・保管は、税務上も重要であるといえます。万一、契約書を紛失してしまった場合、税務調査の際に取引の内容を証明できず、追徴課税が発生することがあります。

また、契約書の有効期限を確認していない場合、継続していると思っていた契約が、いつの間にか解除されていたということもあり得ます。その契約が、取引先に影響する重要なものであった場合には、取引先に損害を与え、損害賠償を請求されることも考えられます。

契約書管理の体制を構築する手順

契約書を管理するためには、あらかじめ適切な体制を整えておくことが必要です。以下では、具体的な手順を説明していきます。

管理部署・管理者の設定

契約書の管理を行うには、まず、管理部署・管理者を決める必要があります。通常は、法務部門が管理部署となり、法務部門がない場合は総務部門などで管理することとなるでしょう。管理部署を決めておくことで、契約書の一元管理が可能となり、さらには責任の所在を明確にできます。

管理ルールの作成

契約書の管理ルールがない場合、担当によって管理方法がばらばらになってしまい、リスク管理や効率性の観点から望ましくない状態になります。

「契約書は誰が作成するのか」「契約書の審査は誰が行うのか」など、管理部署内での役割や管理フローをルールとして決めておきます。管理ルールは契約書の廃棄方法まで定めておくことで、誤った廃棄によるトラブルを軽減することもできるでしょう。

また、契約書の雛型など作成段階からルールを定めておくことで、管理業務の効率があがり、さらに契約書の品質を一定に保つこともできます。

契約書管理のフォーマット設定

契約書を管理するための台帳を作成します。管理台帳を作成することで、契約書の数が膨大になっても、一覧性を確保できます。

台帳の項目やまとめ方は、自社の業務をよく考慮して決めましょう。誰が閲覧・検索しても使いやすい内容を意識する必要があります。

例えば、台帳で最低限管理しておきたい項目には、契約書の名称、契約内容、主管部署、担当者、契約開始日、契約終了日、保存期限などがあります。

契約書の整理・回収

契約書の管理体制が整ったら、社内の各部署に分散している契約書を集めます。その際には、回収漏れが発生しないように気をつけましょう。また、移送中に失くしてしまわないように細心の注意を払う必要があります。契約書の整理をするつもりが、紛失してしまったのでは本末転倒となってしまうため、契約書を送ってもらう場合は配達記録を利用するのも良い方法です。

契約書のデータ入力および保存

各部署から契約書を集約したら、すべての契約書を管理台帳に入力してまとめます。そして、管理台帳への入力が完了したら、契約書をファイリング・収納します。契約書の入ったファイルや、ファイルを入れるキャビネットには、契約書の名前や番号をつけて、すぐに中身がわかるようにしておきましょう。

なお、契約書を保存する際は、「企業名で五十音順にする」「案件ごとにファイリングする」「日付順で保管する」といったルールをあらかじめ決めておくことで、必要な契約書を効率的に探し出せます。

マネーフォワード クラウド契約は契約書の作成〜管理までワンストップで対応

現在、契約書の管理を支援してくれるクラウドサービスが数多く提供されています。これらのサービスをうまく利用することで、上記に挙げてきたさまざまな課題の大半を解決することが可能です。

例えば、「マネーフォワード クラウド契約」は、契約書の作成から管理までをワンストップですべて網羅できる、大変便利な契約書管理サービスです。

マネーフォワード クラウド契約

具体的には、マネーフォワード クラウド契約には以下の特長があります。

  • 契約書の作成、申請・承認、締結、保存、管理まで契約業務に関わる機能をすべて網羅
  • 電子契約だけでなく紙の契約も、まとめて一元管理可能
  • 契約締結前の審査記録を残すことやステータスでの進捗管理を行うことが可能
  • 契約書の申請・承認のワークフロー機能を標準搭載
  • Slack、Salesforceなど各種ツールとの連携による、バックオフィス全体の効率化

また、導入前にさらにサービス内容を知りたい場合には、無料トライアルを利用することも可能です。

契約書の手管理に限界を感じたらクラウドサービスを検討しよう

契約書の管理は、専門的な知識を有する法務部門で行うことが最も望ましいといえます。また、法務部門がない会社であっても、特定の部署で契約書を一元管理することで契約書の管理を効率化できます。

しかし、社内に分散していた契約書を集約した場合には、膨大な数の契約書を限られた人員で管理することになります。エクセルなどの台帳による手管理に限界を感じたら、クラウドサービスの利用を検討すると良いでしょう。自社に合った管理サービスを利用することで、さらなる効率化につながります。


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